シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第三十話 南斗爆殺拳

 ――北斗神拳伝承者ケンシロウは南斗最強の男、聖帝サウザーの前に敗れた!

 

 事前にシンからサウザーの秘密を聞いていたケンシロウだったが、サウザーにも本来あるはずの油断はなかった。

 以前のラオウとの戦いでシンも自分と同じような身体を持っている可能性を提示されていたからだ。

 だから、シンと交流のあったこの北斗神拳伝承者に既に秘密を話しているかもしれない。

 そう警戒したサウザーはケンシロウに秘孔を突かせず、一方的に勝利してみせた。

 ケンシロウの敗因は一つ。ラオウとの戦いのダメージが完治するのを待たずにサウザーに挑んだ事だ。

 

 傷付いたケンシロウは、あえて止めを刺されずに今は牢獄に監禁されている。

 まだ殺されていないのは、サウザーが建設させている聖帝十字陵の頂点に積む最後の聖碑の下敷きに生きた人間を捧げようと考えているからだ。

 云わば人柱。生きた人間の血を捧げる事で、聖帝十字陵は真の完成を見る。

 そしてその人柱には、北斗神拳伝承者の血こそが相応しい。

 そうしてこそ、南斗が北斗に勝利したというこの上ない証となる。

 南斗と北斗がこの世に誕生してより今日まで、常に北斗の影に怯え、後塵を拝してきた先人達の無念が晴らされる。

 そのサウザーの拘りが、ケンシロウをかろうじて生き永らえさせていた。

 だがケンシロウの命の火は最早風前の灯。自力ではもう動く事も出来ず、このままでは確実に聖帝十字陵完成と同時に人柱にされて死ぬ。

 このままケンシロウを死なせてはならない。彼こそ最後の希望。

 彼を救う為に……この世界の未来の為に。

 レジスタンスは捨て身で彼を救出する事を決意し、そしてその役目は仁星のシュウの一人息子であるシバに委ねられた。

 

 行けば決して生きて帰る事は出来ない。

 聖帝の拠点に侵入し、満身創痍のケンシロウを逃がすなどまず不可能と断じていい。

 侵入だけならば、見付かりにくい子供なら可能だろう。

 ケンシロウを救出するのも不可能ではないだろう。

 しかし動けないケンシロウを連れて逃げれば、確実に見付かるし追い付かれる。

 その時、追っ手を引き受けてケンシロウが逃げるまでの時間を稼がねばならない。

 だからシバは、ケンシロウの為に命を捨てる覚悟を決め、ダイナマイトを隠し持ってこの任務に挑んだ。

 もし敵に追い付かれたならば、このダイナマイトで敵諸共自爆する! そうすればケンシロウは逃げられる!

 

 そして、その時は訪れた。

 ケンシロウを何とか救出したシバは、彼を抱えて荒野を走った。

 しかし満足に動けぬ足手まといを抱えての逃亡は、すぐに追いつかれてしまった。

 最早これまで……未来の希望の為に、今こそ仁星の宿命を果たす。

 その覚悟でシバは、ケンシロウを物陰に隠して立ち上がった。

 

「ケンシロウさん、ここは私が引き受けます」

「ば、馬鹿な! 止めろ!」

「大丈夫、私にはこれがあります」

 

 不安そうにするケンシロウの前で、シバはジャケットを捲くる。

 その中にあったのは自決用のダイナマイト。

 シバが何をする気か理解したケンシロウは、言葉を失った。

 

「ケンシロウさん……さらばです!」

「ま、待て、シバ!」

 

 シバは気丈にも笑顔を見せ、そしてケンシロウを振り切って走り出した。

 この先にあるのは、自分よりもまだ若く幼い少年の死。そう分かっても、今のケンシロウでは彼を止める事すら出来ない。

 また、死んでしまう。また人が、自分の為に死んでしまう。

 ケンシロウはこれまで、自分の為に犠牲になる人々を見てきた。

 幼き日に、南斗十人組手に敗れたケンシロウを救う為にシュウは光を失った。

 あの核戦争の日に、ケンシロウとユリアの為にトキは死の灰を浴び、伝承者への道が閉ざされた。

 リュウガは、ケンシロウを北斗の宿命に目覚めさせるために死んだ。

 ライガとフウガは到着の遅れたケンシロウに代わって、リュウロウやリン達を守る為にラオウと戦って散った。

 そして今度は、シュウの息子まで……。

 誰か止めてくれ、誰か……! そう願うも、シバの背中は遠ざかり――。

 

「――救世主の為の犠牲か。気に食わんな」

 

 ――何者かが、上空から降ってきた。

 巻きあがった砂塵で、その姿は見えない。

 しかしケンシロウはすぐに理解した。

 あの高圧的な声。砂塵の向こうに見えるシルエット。

 感じられる強者のオーラ。

 まさか、とは思う。ここはサザンクロスからは離れている。

 しかし、それでも……ケンシロウはそこに、大空を駆ける大鷲を見た。

 

「シン!!」

「無様だな、ケンシロウ。地獄でリュウケンが嘆いているぞ」

 

 砂塵の向こうから現れたシンが、開口一番ケンシロウを罵倒した。

 その言い草にシバがむっとしたが、当のケンシロウは何も言い返せない。

 

「き、貴様はKING!」

「何故ここに!」

「ちょ、丁度いい! ここで貴様の首をとってくれるわ!」

 

 シンの登場に唖然としていた聖帝軍が我を取り戻し、各々の武器を構えた。

 だがシンは彼等の存在など、まるで無い物として扱っているかのように振り返りすらしない。

 相手をする価値もない――そう言われているようで、聖帝軍の怒りが頂点に達した。

 

「な、舐めやがって!」

「かかれー!」

 

 背を向けたままのシンに、聖帝軍が一斉に突撃した。

 だがその直後にまた何者かが空から飛来し、聖帝軍の真ん中に着地する。

 

「お前達などKINGが相手するまでもない……翡翠旋風殺!」

 

 新たな乱入者は女だった。

 羽織っているパーカーの背にダイヤマークを刻んだ若い女が、左足を軸にその場で回転し、右足で周囲180度にいた敵兵全てを見事な足技で切り刻んだ。

 それから大きく溜息を吐き、シンを見る。

 

「あの……シン様。やっぱり人間砲弾で飛ぶの、やめません? 心臓に悪いですよ、これ」

「だが移動用としては悪くあるまい」

「いや、まあ、確かに敵の城壁も無視出来るから、ふざけた色物と思いきや意外と理にかなってるんですけど……やっぱり、自分が大砲の弾になって空を飛ぶのは慣れないといいますか……」

「慣れろ」

 

 女――カレンの進言を無情に切り捨て、シンは地平線を見る。

 ケンシロウも釣られてそちらを見ると、バイクで砂埃を巻き上げながらこちらに近付く集団が見えた。

 それはブラッディクロスを掲げた武装集団! サザンクロスが誇るKING軍の精鋭達だ。

 そしてその先頭には何と、戦車が走っている。

 彼等はシンから少し離れた位置で停止し、王の命令を待った。

 

「さて……まずは、ケンシロウを安全な場所まで運ばねばな。受け取れ、ゴラス!」

「はっ!」

 

 シンがケンシロウの襟元を掴んで投げ捨てる。

 すると戦車に乗っているゴラスと呼ばれた男が受け止めた。

 彼はKING軍が統括する軍団の一つ、『サンダー軍団』の隊長を務める男だ。

 サンダー軍団は全員が元スピードレーサーであり、KING軍で最も機動力に長けている。

 特に隊長を務める彼は、どういうわけか戦車まで操縦出来る凄腕だ。

 彼が戦車の中にケンシロウを押し込むのを見てから、カレンがシンに次の行動を聞く。

 

「シン様、これからどうしますか?」

「まずは撤退だ、シュウと合流する。だが……」

 

 シンは遠くに見える聖帝十字陵を見て、性格の悪い笑みを浮かべた。

 

「折角ここまで来たんだ。サウザーに挨拶をしてやろう」

「あの……シン様? まさか……」

「ゴラス、照準用意。狙いはアレだ……外すなよ」

 

 シンの命令に応え、ゴラスは戦車を操縦する。

 砲身が動き、そして聖帝十字陵にセットされた所で止まった。

 

「受け取れサウザー。俺からの完成前祝いの花火だ――撃て!!」

 

 号令と同時に発射。

 放たれた砲弾は狙いを外す事なく聖帝十字陵へ向かい――爆発。

 聖帝の権威の象徴である三角錐の一部を大きく抉り、ついでに近くにいた聖帝軍も巻き添えにした。

 余談だが、建設員である子供達は今はいない。

 聖帝十字陵は既に九割九分完成していて、後は聖碑を積むだけだったからだ。

 

「退却! シュウのレジスタンスと合流するぞ! フハハハハハハハハ!!」

 

 そしてシンはカレンとシバを掴んで戦車の上に飛び乗り、高笑いを上げながら去って行った。

 

 

 サウザーへの挨拶(挑発)を終えた俺は、シュウのアジトに合流してケンシロウを預けた。

 先程の挑発行為に何か意味があるのかと問われれば、勿論ある。

 あれはサウザーの頭に血を上らせることで冷静さを奪うと同時に、人質を封じる為に撃ったものだ。

 サウザーがレジスタンスを人質に取ろうと、俺は構わず戦う。

 俺は世界をこの手にするまで死ぬつもりはない。その欲望と野心の為ならば、非道にもなれる。

 だが、心情的な事を言えば『そうなれば止むを得ずやる』だけであって、喜んで見殺しにしたいわけではないのだ。

 一応、人質を取られた時の為にカレンも連れてきたが、念には念だ。

 だからサウザーを挑発した。

 聖帝十字陵はサウザーにとって恩師の眠る大事な墓であり、残された最後の愛と決別する為の象徴である。

 それを破壊されれば当然サウザーは怒るだろう。それこそ、己の手で俺を殺したいと思うほどに。

 そうなればしめたもの。ケンシロウとの戦いでそうだったように、俺と戦いになっても『人質など必要ない』と自分で来てくれるかもしれない。

 また、聖帝十字陵に躊躇なく砲撃を撃ち込む事は、俺が子供など気にせず攻撃する冷血漢であるという事を相手に印象付ける役目も果たしている。

 実際は事前に双眼鏡で近くに子供がいないのを確かめていたのだが、そんな事をサウザーは知らない。

 ならば俺に人質など何の意味もないと受け取るはず。それこそ俺の狙い通りだ。

 

「シンさん……ケンは大丈夫よね?」

 

 見るからに固そうなベッド……というか台の上で寝るケンシロウを心配しながら、俺を上目遣いであざとく見るのはケンシロウの連れの少女にして天帝リン。隣にはバットもいる。

 ……何というか、何でいるんだとしか言えない。

 こんな危ない場所にケンシロウが連れて来たとは考えにくい。なのでどうせ、ケンシロウを探して「ケーン!」と勝手に飛び出して合流したのだろう。

 多分リンは、天帝の守護者である北斗神拳伝承者(ケンシロウ)の近くが最も安全と本能で理解している。だからケンシロウの姿が見えないと途端に不安になって、周囲の迷惑も顧みずにケンシロウを探して飛び出すのだ。きっと。

 そう言えばケンシロウの方も、アニメでリンが「ケーン!」と呼ぶだけで声が聞こえるはずもない遠くからすっ飛んでくるシーンがあった気がする。

 確かトキがリュウガに襲われた時だったかな。

 

「心配はいらん。こいつの生命力はゴキブリ以上だ」

 

 俺はそうリンに吐き捨て、シュウのいる作戦会議室へ向かった。

 そこにはシュウ親子の他にカレンやゴラス、そしてレジスタンスの中でそれなりに実力があるのだろう連中が待機していた。

 

「シン、まずは礼を言わせてくれ。私の息子はお前のおかげで助かった……ありがとう」

「泣いて感謝するくらいならば、最初から息子を捨て駒にするな。赤の他人の為に自らが愛する者を死に向かわせる……俺には理解出来んな」

 

 シュウが涙を流しながら頭を下げてきたが、俺はそれを突き放した。

 シュウは間違いなく善人で、間違いなく我が子を愛している。

 だからこそ分からない。己の愛する者を、どうしてそう簡単にケンシロウという他人の為に捨てる事が出来る。

 あるいはそれも、ケンシロウの持つ天の運命のせいなのか。

 誰もがケンシロウの為に平然と命を投げ出す。自分の大切なものすらケンシロウの為に犠牲にする。それが俺には、恐ろしいものに見えた。

 ……そんなもの、当のケンシロウ自身が一番望まないだろうにな。

 

「シン様! そんな言い方……!」

「いいんだ、カレン」

「……師父」

 

 俺の言い方にカレンが噛み付いたが、それをシュウが諫めた。

 それからシュウは、見えていないだろうに、何か眩しいものを見るようにカレンへ顔を向けた。

 

「シン、お前は……カレンの事も、闇から救い出してくれたのだな……」

「使えそうな奴が落ちていたから拾っただけだ。それより、今話すべきは聖帝軍との戦いだ」

 

 一番楽で俺にとってリスクが少ないのは、ケンシロウの回復を待ってから再びケンシロウをサウザーにぶつけるというものだ。

 一度目はケンシロウが敗れたが、サウザーの強さを学んだ二戦目に同じ失敗はないだろう。

 天翔十字鳳もケンシロウなら次はきっと攻略出来るはず。

 拳法の腕だけなら、俺もケンシロウに負けているつもりはないんだが……天翔十字鳳の確実な攻略法が南斗聖拳にはない。

 南斗鳳凰拳は南斗の頂点。したがって、頂点たる鳳凰を落とす術など南斗聖拳にあるはずがない。

 何故なら鳳凰を堕とす事は、自分達の失墜そのものに繋がるからだ。

 なのでケンシロウの回復を待ちたいところだが、原作通りならこの後……。

 

「シュウ様! シン様! 大変です……聖帝軍が、こちらに迫っております!」

 

 部屋に飛び込んでくるなり、そう叫んだレジスタンスの兵士を見て、俺は溜息を吐いた。

 まあ、こうなるよな。

 

 

【ケンシロウの敗因は一つ】

実は一つじゃない。

文章がクドくなるのでカットしたが実際は3つくらい敗因がある。

 

1、そもそもケンシロウが原作より弱い

原作でのKING軍との戦いがなく、リュウガも原作シンより格落ちするボスなので経験値不足。

レイも死んでないので哀しみゲージも不足している。

流石に車とレイじゃね……。

じゃあなんでラオウと互角に戦えたのかというと、ラオウ側もサウザーから受けたダメージが完治してないまま来てしまったから。

ちなみにサウザーはじっくり療養に専念したので完治している。

 

2、サウザーがいきなり本気

ケンシロウとシンが戦前から交流があった事は知っており、シンから秘密が既に伝わっている可能性も考慮していきなり本気でかかってきた。

 

3、ケンシロウのダメージが残っている

これは作中でも書いた通り。

ラオウが療養に専念するほどのダメージを受けているので当然ケンシロウも受けている。

平気そうに見えるのはただの痩せ我慢。

後、リュウロウが戦士として再起不能となり離脱してしまったのでメンタルも結構ガタガタ。

でも死んでないので哀しみゲージは上がらないし、自分の到着が遅かったせいでリュウロウは戦えなくなって気分は落ち込むしという最悪の離脱の仕方をリュウロウはしてしまった。

 

【シバ】

仁星のシュウの息子。何故かシュウから白鷺拳を教えてもらっていない。

拳法の才能がなかったのだろうか?

サウザーに敗れて死を待つだけだったケンシロウを救助し、彼を逃がす為に自爆した。

シュウは何故自分の息子にそんな役をやらせてしまったのか……。

あるいはそんな役だからこそ、他人の子に任せる事が出来なかったのかもしれない。

それでいて、ケンシロウの為に我が子を犠牲としながら、人質となったレジスタンスを見捨てる事が出来ずサウザーに一矢報いる事も出来ず敗れてしまっているのが何というか、物凄く不器用。

シュウさん……あんた、優しすぎて将向いてないよ……。

結局の所、南斗六聖のうち人格者寄りのレイとシュウがあまり大きな組織の長になれず、悪党寄りのサウザー、シン、ユダが大組織の長になれたのも、そうした非情さの差なのだろう。

ユリアは棒立ちしてるだけでリハクが勝手に組織を作って運営してくれるので除外。

というか慈母星軍は実質、リハクが最後の将みたいなもの。ユリアは将というか神輿。

 

【ゴラス】

アニメ版で大幅に底上げされたKING軍のアニオリ部隊長の一人。

メンバー全員が元スピードレーサーで構成されたサンダー軍団の隊長。

何と戦車まで運用出来る、地味に有能な男。

 

【空飛ぶ不思議なKING(2度目)】

今度はカレンも連れて飛翔した。空を飛ぶ時のポーズはサラバダー!のポーズ。

そして空から降って来る時はイチゴ味で南斗5人揃った時によくやるポーズである。

南斗人間砲弾を何気に気に入っている模様。

ここがイチゴ味の世界線なら、南斗五人で揃って南斗人間砲弾で空を飛ぶという未来もあったのかもしれない。

 

【もしかしてシンのせいでアジトの位置バレた?】

違うのでご安心を。アジトがこのタイミングでバレるのは原作通りです。

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