シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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殉星「お見せしましょう! わたくしの更なる進化を! ゴールデン殉星ですよ! オーッホッホッホ!」
シン「何をしても光るのを止めない……無敵か……?」


第三十六話 新たなる強敵(とも)! その名はファルコ!

 拳王軍支配下の村の一つ――今、そこは地獄と化していた。

 村人達が柱に括りつけられ、離れた位置には武装したモヒカンの男達が佇んでいる。

 中央には身長2mを超すかという大男が立ち、巨大な岩をその手にしていた。

 

「ひっ、ひいいー! やめてくれえー!」

「グフフ……」

 

 村人達の悲鳴を聞きながら嫌らしく笑い、男――この村の管理を任された小隊長が岩を投げた。

 岩はゴロゴロと地面を転がり、運よく岩が当たらなかった一人を除いて村人達に容赦なく衝突、そのまま弾き飛ばした。

 村人達は宙を舞い、地面に衝突して赤い華を咲かせる。

 

「あー! 惜しい!」

「ちっ、一人残っちまったか」

 

 彼等が今やっている事……それは、村人をピンに見立てての人間ボウリングであった。

 拳王軍は決して村人を皆殺しにする為に制圧したわけではない。

 あくまで恐怖で統治し、抑えつける為の支配である。

 しかし元々暴れる事しか脳にないようなチンピラが、そんな面倒な命令にいつまでも従うはずがない。

 ラオウが行方を晦ませている今、彼等は縄に繋がれていない狂犬も同然。

 貴重な労働力であるはずの村人を面白半分に殺し、その数をどんどん減らしている。

 

「よーし、次だ」

 

 小隊長は新しい岩を手にし、別の場所へ視線を向ける。

 そこにもまた柱に括りつけられた村人達が並ばされており、恐怖に顔を引きつらせていた。

 

「どうだ? 次、誰かやってみる気はないか? ストライクを出せばそいつだけは助けてやるぞ!」

 

 まだピンにされていない村人達へ小隊長が呼びかけた。

 しかし村人達は首を横に振り、誰もが拒否している。

 仲間を殺すなどとんでもないし、そもそもの問題として巨大な岩を投げる力など無い。

 しかし、村人の中から一人の男が歩み出した。

 

「俺がやろう」

 

 それは全身を襤褸で隠した、体格のいい男であった。

 小隊長は、こんな村にも見所のある男がいたと思い、ニヤニヤと笑う。

 

「よーし、やってみろ」

 

 岩のサイズは男よりも大きく、高さにして2mはある。並の力では投げるどころか動かす事すらままならないだろう。

 しかし男は両手で岩を抱え込むと、苦もなく持ち上げてしまった。

 その怪力に拳王軍が感嘆する中……だしぬけに男は、大岩を拳王軍へ向けてブン投げた!

 

「え?」

「ば、馬鹿! こっちじゃ……アバー!」

「ひでぶ!」

「あ、すげえ……ストライクだ」

「テメエ! 何をしやがる!」

 

 拳王軍の雑魚達が纏めて吹き飛ばされ、小隊長のニヤケ面が怒りに染まった。

 小隊長はすぐに手元の斧を掴んで男に斬りかかるが、斧の一撃は襤褸を裂いただけで男の身体に傷一つ刻んでいない。

 そして襤褸の中から現れた姿に、拳王軍が青褪めた。

 

「き、貴様……! ケ、ケ、ケ……ケンシロウ!!」

 

 ――その男の名は、世紀末救世主ケンシロウ!

 紺色のレザージャケットに、両肩のパッド。ボサボサの黒髪に鋭い眼。

 鍛え抜かれた肉体は鋼であり、服で見えないが胸元に刻まれた七つの傷。

 ラオウ失踪の直接の原因である北斗神拳正当伝承者が、殺意に満ちた眼でこの荒野に住む悪しき男達を睨む。

 

「下らんゲームは終わりだ。続きは地獄でやっていろ」

「ほ、ほざけえ! お前達、何をしている! やれ!」

 

 啖呵を切るケンシロウに小隊長が怯み、しかしすぐに数の利を思い出して部下をけしかけた。

 各々の武器を手にケンシロウを取り囲む拳王軍。しかしケンシロウの顔に動揺の二文字はなく、静かに敵を見据えていた。

 拳王軍が一斉に飛び掛かり、ケンシロウも即座に迎え撃つ。

 

「ホォーア! アァタタタタタタ!」

 

 その場で180度旋回するように回転しつつ、全方位に鋭い蹴りを放つ!

 その一撃一撃が拳王軍の兵士達の身体を打ち、動きを止めた。

 

「アタァ! アタタタタタ! ホゥワッチャー!」

 

 やがて全員を蹴り、ケンシロウは跳躍して囲いから脱出。

 そのまま拳王軍の兵士達に振り返る事もせずに小隊長へ向けて歩いた。

 無視される形となった拳王軍は慌てて振り返る――だが、それと同時に彼等は動けなくなった。

 全身に痺れが走り、激痛が脳を支配する。

 そして……。

 

「ストライク!」

「ターキー!」

「オールウェイ!!」

「ハイスコア!!」

 

 奇声をあげて彼等は()()した。

 その光景を見た小隊長は一瞬で戦意喪失してしまい、斧を捨てての逃走を図る。

 冗談ではない。ただ拳王軍に入って、拳王の名をバックに好き勝手にやりたかっただけなのだ。

 あんな化け物と命をかけて本気で戦う気など最初からない。

 だが、その彼の前に何者かが立ち塞がる。

 

「なんだあテメエ! そこを退きやがれ!」

 

 立ち塞がった者の全貌は見えない。

 どういうわけか、金色に輝く光が邪魔をしてシルエットしか見えないのだ。

 だがそんなのはどうでもいい。今はただ、あの恐ろしい北斗神拳の使い手から逃げるのが先決だ。

 邪魔者を退かすべく小隊長が拳を突き出し――だがその一撃は容易く砕かれ、逆に頭部を熱い掌で鷲掴みにされた。

 

「下衆め……滅せよ!」

「あぎゃああああああああ!!」

 

 掴んだ掌から金色の闘気が迸り、小隊長の頭を消し去った。

 その威力にケンシロウすら驚愕し、冷や汗を流す。

 やがて小隊長を葬った男が金色の光の中からマントを揺らして歩み出し、その全貌をケンシロウは目の当たりにした。

 金髪の角刈り。鍛え抜かれた強固な肉体。鋼鉄の意志を宿した瞳。

 一目で只者ではないと伝わる威容に、ケンシロウは無意識で構えを取る。

 油断してはならぬ相手だと北斗二千年の本能が叫んでいるのだ。

 

「……名は?」

「……ファルコ。元斗皇拳のファルコ! 天帝守護の拳!」

「元斗……皇拳」

「貴様のその拳……北斗神拳だな。ならば貴様は北斗神拳伝承者、ケンシロウに違いないか」

「そうだ」

 

 金色の男――ファルコは見定めるようにケンシロウを見下ろす。

 二人の間に流れる数秒の沈黙。

 やがてファルコが眼を見開き、右手に闘気が集約された。

 

「ぬっ!」

 

 ケンシロウが素早く横に跳び、彼の立っていた場所をファルコの拳が砕いた。

 地面が抉れ、まるで高熱で溶かしたかのように融解する。

 

「何の真似だ」

「北斗神拳。世紀末覇者ラオウと同じ、天帝の脅威となる魔拳……ならば、天帝守護の拳としてここで葬るが天帝の為!」

「やめておけ……」

 

 ケンシロウが忠告をするが、ファルコに臆した様子はない。

 彼は手をゆっくりと、惑わすように動かして金色の闘気を掌へ集める。

 

「ふは~~~! くらえ元斗白華弾!」

 

 ファルコが貫手を繰り出すが、ケンシロウはこれを軽々と手の甲で叩いて軌道を逸らした。

 それだけに終わらず、攻撃直後の隙を狙い打つように蹴りを放つ。

 だがファルコも凄腕だ。ケンシロウの蹴りを的確にブロックし、二人は一度距離を空けた。

 

「…………」

「…………」

 

 互いに余計な言葉は一言も発さず、じりじりと間合いを詰める。

 このレベルの達人同士の戦いとなれば、間合いのほんの1mm、タイミングのほんのコンマ一秒のズレがそのまま勝敗、ひいては生死に直結する。

 故に迂闊に踏み込む事が出来ず、相手の隙を探り合っているのだ。

 円を描くようにゆっくりと立ち位置を変え、そして二人が同時にここを勝負を仕掛けるべき時だと判断した。

 

「ホワタァ!」

「ぬおお!」

 

 ケンシロウの拳とファルコの掌底が繰り出され、激しく衝突する。

 間髪を入れず第二撃。二人の拳が今度はぶつからずに素通りし、両者の顔面へ吸い込まれるように伸びる。

 衝突の一瞬……しかし、二人の拳はどちらも相手に届く前に止まった。

 

「……何故止めた」

「お前の眼に邪気を感じなかったからだ」

 

 ファルコの問いに、ケンシロウは迷いなく答える。

 この男は悪人ではない。それが彼の拳と眼を通してケンシロウが感じた事であった。

 するとファルコは一転して穏やかな表情を浮かべ、拳を下げる。

 

「流石だ、北斗神拳伝承者。お前はラオウとは違うようだ」

「ラオウを知っているのか」

「フッ……この片脚は奴にくれてやったもの。俺は奴ほど強大な漢を知らぬ。

だがその弟もまた、果てしなく大きな漢であった」

 

 ファルコは自らの義足を軽く叩き、過去に出会ったラオウの力強さを語った。

 それから表情を険しくし、ケンシロウへ問いを投げかける。

 

「ケンシロウよ、ラオウが今どこにいるか知っているか」

「いや、知らぬ……何故聞く」

「俺はかつてラオウとの戦いを避けた。だが今は愛する女を取り戻す為に戦わねばならぬ」

 

 誰かを思い出すように遠い目をするファルコ。

 そんな彼の背後から、二人の男が遅れてやってきた。

 

「紹介しよう。この二人は翠光のオグルと紫光のソリア。俺と同じく元斗皇拳を極めた拳士だ」

「……やめておけ。ラオウは簡単に倒せる男ではない……死ぬぞ」

「奴の強さは承知の上! だがここで退く事は男として出来ぬ!」

「そうか……ならばもう何も言うまい」

 

 ケンシロウはファルコの決意の強さを知った。

 ならば同じ男として、これ以上止める理由はない。

 

「ラオウが今どこにいるか俺は知らぬ。だがトキならば知っていよう」

 

 ラオウが今どこにいるかはケンシロウも知らない。

 あの一戦以来雲隠れし、今は傷を治す事に専念しているという事は分かるが、それだけだ。

 拳王軍すら知らないラオウの行方など、むしろケンシロウが知りたいくらいだ。

 だがトキならばあるいは、と思う。

 サウザーに敗れたあの時……サウザーの暴虐は結果的にシンが止めてくれたが、あの時ラオウもトキと共にその場に現れていた。

 どういう方法を用いたかは知らぬが、トキはラオウの居場所を突き止めて彼と合流したのだという。

 ならばトキならばきっと、今ラオウがいそうな場所にも心当たりがあるはずだ。

 

「トキか……その男は今、どこに」

「俺達が世話になっている村に……案内しよう」

「うむ」

 

 かつて愛する女を守れなかったケンシロウにとって、愛する人の為に戦おうとするファルコは眩しく見えた。

 だからだろう。せめて手助けをしたい、と思ったのは。

 ケンシロウが村の方を見ると丁度、迎えに来た車が視界に入った。

 あれはシンが用意してくれた二台目のキャンピングカーで、あれがあるおかげで遠出する時でもバットやリンを野宿させずに済んでいる。

 ケンシロウはファルコ達を先導するように歩き出し、元斗の男達もその後に続いた。

 

 

 トキのいるアンナの町へ向かう道中、いくつもの拳王軍に支配された村を救いながらケンシロウと元斗の男達は荒野を進んだ。

 決して長い時間ではなかったが、ケンシロウとファルコの間には確かな絆と相手への信頼が芽生えていた。ファルコは……そしてソリアとオグルは紛れもなくケンシロウにとっての強敵(とも)となった。

 やがて彼等はトキと合流し、ラオウが療養しているだろう場所を聞いた。

 今、ラオウは傷の治り具合を確かめる為に強敵を求めている。

 ならば奴が向かうは、先代北斗神拳伝承者リュウケンと互角と呼ばれる男、コウリュウの住む洞窟!

 その情報を聞いたファルコ達は早速、その洞窟へ向かう事にし、ケンシロウとはここで別れる事となった。

 

「ケンシロウよ、世話になったな。俺達はこれよりコウリュウの洞窟を目指し、ラオウと相対する」

「ファルコ……死ぬなよ」

「次にここに来る時は、ミュウも一緒だ。そして……」

 

 ファルコは馬に乗り、ケンシロウを穏やかな目で見る。

 視線はトキ、ジャギ、アンナ、バットへ移り……そして最後にリンへ慈しむような視線を送った。

 この村に来てリンを見た時は本当に驚いたものだ。

 ファルコはリンを知っている。忘れるはずもない。

 今の天帝ルイがこの世に生まれた時、同時に産み落とされた双子の妹がいた。

 天帝が二人いては天が割れる。ならば片方は殺さなければならない。

 しかしファルコは赤子を手にかける悪魔にはなれず、秘密裏にもう一人の天帝を逃がして知り合いの夫婦に預けた。

 その少女こそがリン……もう一人の天帝なのだ。

 だがその事を今語るつもりはない。彼女が生きていると知れれば必ずやジャコウの魔の手が伸びるだろう。

 それに彼女の近くにはケンシロウがいる。何も心配はいらない、とファルコは信じた。

 

「次に会えたその時は、俺もお前達と共に戦おう。この世紀末の荒野に光を取り戻す為に!

だからそれまで、しばしの別れだ……我が友よ!」

 

 この暴力の荒野には、ケンシロウという男が必要だ。

 ファルコはそう確信し、そして全ての問題に決着を付けた後には必ず彼の仲間となる事を決意した。

 ケンシロウとファルコは頷き合い、そして元斗の男達は打倒ラオウの為に旅立って行った。

 

 

【二代目キャンピングカー】

性能は先代とほぼ同じ。運転手は主にバット。

ケンシロウはリンやバットを危険に近づけないように村に車を置いて一人で徒歩で出掛けるが、安定の北斗ホーミングミサイルと化したリンが「ケーン!」と飛び出し、放っておけないのでバットも車で追いかけて結局合流する。

 

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