シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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北斗の拳新作アニメってマ?


第三十七話 世紀末不器用頂上決戦

 ラオウは、敵を求めていた。

 それもただの敵ではない。この拳王と戦うに相応しい強い敵だ。

 以前ケンシロウから受けた傷を癒す為にラオウは一時的に身を隠し、今日まで療養に務めてきた。

 その間に拳王軍の威光は陰り、部下達もこれ幸いと好き放題に動いている。

 今、ラオウは窮地に立たされている。

 拳王府の崩壊から始まった逆風の数々……志を同じくした同じ修羅の国出身のソウガは冥王から受けた傷が原因で死に、レイナもラオウ不在中に勢い付いた聖帝軍との衝突によって重傷を負って戦線離脱を余儀なくされた。

 拳王軍もラオウ不在中にシン率いるサザンクロス軍によって各個撃破され、弱体化の一途を辿っている。

 そして天を握るラオウの前に立ち塞がる三人の男達。

 北斗神拳の歴史上最も華麗な技を持ち、本来ならば伝承者になっていたはずの実弟トキ。

 ラオウに傷を負わせた本人であり、救世主としてその名を轟かせる北斗神拳正当伝承者ケンシロウ。

 そしてサウザーを倒し今や南斗最強となった最大派閥、サザンクロスのKINGシン。

 いずれ劣らぬ恐るべき男達……奴等を倒すには、ラオウも万全でなければならない。

 ラオウは、天地に恐れるものなしと自負しているが敵を侮るような愚か者ではない。

 万全ではない状態で挑めば、天を掴むという大望を果たす前に討ち取られるだろう事は流石に分かっていた。

 だからこそ、己の傷の治り具合を確かめるための敵が必要だ。

 生半可な相手では負傷の有無に関係なく、ラオウが軽く撫でただけで命を散らすだろう。

 だからこそ、拳王復帰戦の相手としてラオウは、かつて師リュウケンと並んで龍虎と称された男コウリュウに目を付けた。

 しかし……コウリュウの洞窟を訪れたラオウが見たものは、既に住人のいなくなったもぬけの殻であった。

 ラオウの脅威が近付いたのを察してコウリュウが逃げた……とは思わなかった。

 かつてリュウケンと並び称された男が自ら逃げるとは考えにくい。

 つまり、コウリュウを手引きした者がいるのだ。ラオウに先んじてこの場を訪れ、コウリュウの心変わりを誘発した誰かがいる。

 ケンシロウではない。そもそもケンシロウはこの場所を知っているかすら怪しい……いや、きっと知らないだろう。あの末弟は正当伝承者のくせに色々と知識不足が過ぎる。

 トキでもない。トキならばこの場所を知っているだろうが、北斗の使命に殉じようとする男を止める程の傲慢さはトキにはない。死ぬと分かっていても相手の意志を尊重して送り出す……トキとはそういう男だ。

 今は亡きサウザーでもない。子供に苦しみを強いる南斗の暴君を、コウリュウは決して認めないだろう。

 ならば残るは一人――この時代は力こそが全てと言い切り、勢力圏を広げ続ける傲慢にして狡猾なもう一人の南斗の王――シンしかいない!

 奴ならばやる。コウリュウの意志を尊重などせず、己の都合に従わせるくらいの事は、何の罪悪感も迷いもなくやってのけるだろう。

 

「北斗の男ともあろう者が……シンの甘言に絡めとられたか! コウリュウ!」

 

 ラオウは全身から怒りの気を発し、腕の一振りでコウリュウが彫った彫刻の数々を破壊した。

 まるでシンの高笑いが聞こえるようだ。

 遅かったなラオウ、コウリュウは俺が貰ったぞ……奴がそう言っているのが分かる。

 

「うぬ~~~~! 小賢しい青二才めが!」

 

 額に青筋を浮かせ、地を揺らしながらラオウは洞窟を後にする。

 外に待たせていた黒王に跨り、帰ろうとする寸前……ラオウは、視界の端に怪我をしたカラスを見付けた。

 足を痛めているのか、ヒョコヒョコと歩くその姿にラオウは一人の男を思い出した。

 以前、村一つの安寧と引き換えに片脚をラオウに捧げた男がいた。

 奴ならば、とラオウは考える。

 あの男……ファルコならば片脚を失って尚コウリュウの代わりとして不足なし。いや、コウリュウ以上だ。

 拳王の誇りにかけて、あれほどの男の片脚と引き換えにした約束を反故にするような真似はしない。だから天帝の村にラオウから手を出す事はない。

 普段ならば問答無用で殺すジャコウを見逃し、殺すように忠告するだけに止めたのもファルコの顔を立てたからこそだ。

 村人一人の血も流したくないと言ったあの男の願いがあったからこそ、一応あの村の住人だったジャコウを殺さずに素通りしたのだ。

 それほどにラオウはファルコの覚悟を買っている。彼の差し出した片脚の価値を認めている。

 だからこれからも、向こうから何かしてこない限りは天帝の村には何もしない。

 しかしファルコ本人は話が別だ。

 

「この俺の回復を確かめるに相応しい敵はファルコ、うぬしかおらぬ! 黒王よ、天帝の村へ向かえ!」

 

 本来ならばここで戦えていたはずの敵を奪われた拳王は、敵を求めて運命のレールを外れた。

 しかし事態は更に予想外の方向へと進んで行く事となる。

 天帝の村へ向かったラオウだったが、そこには予期せぬ光景が広がっていた。

 破壊された家屋、引き裂かれた大地、そして地面に広がる血の跡。

 明らかに何かの襲撃を受けたと分かる景色がそこにあった。

 

「け、拳王……! おのれ、KINGに続いて今度は拳王までもがこの村を! これ以上はやらせぬぞ!」

 

 一体何があったというのか? 村の前で呆然と立ち竦むラオウに武装した兵士達が襲い掛かった。

 無論、相手になるはずがない。

 ラオウの拳一発で兵士達は枯れ枝のようにへし折れて宙を舞い、地面に墜落した。

 ラオウはその中から生き残った兵士を捕まえて無理矢理話を聞き出した。

 すると判明したのはKING軍による襲撃。そして元斗の拳士達の死であった。

 どうやらシンは天帝を潰す為に村にやってきたらしい。

 そして目当ての天帝は既にジャコウによって殺されていた、と言い残して立ち去ったという。

 

「シンめ……古い権威を排除しにきたか。天をも恐れぬ不敵な男よ」

 

 サウザーとの一戦以降、シンの動きは明らかに変わった。

 これまでは本当に必要な時以外はラオウとの戦いを避けていたが、今は違う。

 直接対決を最後の手段として、なるべく避けるように動いているのは同じだが……戦いになったら、それはそれで別にいい。今のシンからはそういう大胆さが感じられる。

 戦いになっても勝てるという傲慢な自信が今のシンにはある。

 むしろ戦いを避けているのはラオウの方だ。

 ――今の俺では勝てぬかもしれん……。

 心のどこかで、そう考える弱気な自分がいる事を否定出来なかった。

 だからこそラオウは強敵を求めているのだ。

 万全の強さを取り戻し、更なる飛躍を果たす為に。

 シンがサウザーとの戦いで上のステージへ飛翔したのと同じように、こちらも壁を超えなければならない。

 結局ラオウは目的を達成出来ないまま引き返す羽目になったが……さしものラオウも予想していなかった。

 まさか、その目的の方からやってきてくれるとは……。

 

 

「拳王様! 一大事でございます! 元斗の拳士達が襲撃をかけてきました!」

 

 拳王府へと帰還して少し経った頃、ラオウの耳に驚くべき報告が入ってきた。

 あの保守的なファルコが同志二名を引き連れて拳王軍を襲撃し、次々と部隊長が潰されているというのだ。

 ラオウは一瞬意表を突かれたような顔をするも、その顔はすぐに好戦的な笑みに変わった。

 何という僥倖! やはり天は、このラオウの完全復活を望んでいる!

 ファルコが何を考えているかは分からぬが、この好機を逃す手はない。

 すぐにラオウは自ら出陣し、そしてファルコ、オグル、ソリアの三人と相対した。

 

「久しいなファルコよ。よもや貴様が俺に牙を剥けるとは思わなかったぞ」

「ラオウ! 貴様がかつての俺との約束を違えた今、俺が戦いを避ける理由はない! 天帝の村を滅ぼした罪、その身で贖ってもらう!」

「何!?」

 

 それはラオウにとって、寝耳に水であった。

 ラオウは確かにファルコに狙いを定めた。だが天帝の村を襲撃したのはラオウではない。

 しかしそれはファルコには分からぬ事。

 あの日……コウリュウの洞窟へと向かったファルコが見たのは、誰もいない洞窟……そしてどこかへと続く巨大な馬の蹄の跡であった。

 これほどの巨大な蹄を持つ馬は黒王しかいない。

 ファルコはすぐに跡を追い、そして辿り着いたのが滅ぼされていた天帝の村であった。

 一体何があった! ファルコはまだ息のあった兵士へと尋ね、そして拳王の襲来を知った。

 ラオウはあの日の約束を違えた……怒りに燃えるファルコはすぐに出陣し、そして拳王軍を蹴散らしてここまでやってきたのだ。

 

「ラオウよ、何故約束を違えた!? 天帝をどこへやった!?」

「……知らぬな。このラオウにとってはどうでもよい事よ」

「貴様!」

 

 このファルコの片足を差し出した約束を……天帝をどうでもいいと言うか!

 あまりのラオウの理不尽さにファルコが静かに怒り、黄金の闘気が滲み出す。

 

「もう一つ聞こう……ミュウという女の名に心当たりはあるか」

「ミュウ……?」

「俺が愛する女だ。貴様が連れ去るのを見た者がいる……言い逃れは出来ぬぞ。

コウリュウとやらが住んでいたという洞窟からここまで、巨大な馬の蹄の跡が続いていた。一体何の為に天帝の村へ向かったのだ、答えよラオウ」

 

 ファルコの問いにラオウは表情を険しくした。

 ミュウという名に心当たりはない。

 ファルコの話から察するに、ミュウという女を誘拐した容疑が自分にかかっているのは分かる。

 そしてファルコは誰から聞いたかは知らないが、このラオウを探してコウリュウの洞窟へ向かい、そこから黒王の蹄の跡を見てラオウが村を訪れたのを知ったのだろう。

 向こうから見れば暫定誘拐犯が何故かコウリュウの洞窟から村に行き、そして目的を達成して帰ったように見えるわけだ。

 つまりは濡れ衣……しかしラオウは悪辣な笑みを張り付け、挑発するように言った。

 

「フフフ……それを知りたくば、その拳で聞いてみるがよい! 俺を倒せたならば教えてやろう」

「よかろう……かつて避けた戦いだが、今戦わねばならぬ時が来たのだ」

 

 ラオウは、ファルコの持つ愛という弱さを利用して自分への敵意を高めようと考えた。

 本来ならばここでファルコと戦おうとは思わなかっただろう。

 ラオウは大胆な男だが、同時に臆病とも取られかねない慎重さも兼ね備えている。

 彼の最終目的はあくまで、天。この乱世を支配して修羅の国に攻め入り、実兄カイオウを止める事こそが彼の最大の宿命だ。

 そこに至るまでの覇道の途中で倒れるわけにはいかない。

 だからラオウは極力、排除出来るリスクを排除して事に当たる傾向があった。

 サウザーとの戦いを避け、トキを幽閉したのも彼の慎重さによるものだ。

 戦っても勝てる自信はある。しかしサウザーもトキも、戦うとなればラオウをして死を覚悟して挑まなければならない強敵だ。だから戦いを避ける事が出来るならば避ける道をラオウは選ぶ……もっとも、トキとの戦いは兄弟の宿命だ。最早避ける事は出来ないだろう。

 そしてファルコもまた、ラオウを脅かし得る脅威の一人であった。

 だから本来ならば、ここでファルコと遭遇してもミュウなどという女は知らん、で話は終わっていただろう。ファルコもビジャマに謀られた事を察し、急ぎ天帝の村へ帰還しただろう。

 この二人の衝突は本来の歴史では、最後まで発生しない。

 しかし今は違う。ラオウはコウリュウに代わる敵を求めている。

 そしてファルコは、その求める条件に相応しい強い男であった。

 

「元斗皇拳のファルコが相手ならば、俺も地に降りて戦おう」

 

 黒王から降り、マントを脱ぎ捨てる。

 拳王の逞しい肉体が陽光の下に晒され、最後に兜を放り投げた。

 ファルコも同じくマントを脱ぎ捨て、ラオウと相対する。

 戦う理由が出来たのはラオウだけではない。

 ファルコもまた、ミュウの事とは関係なくここでラオウを倒すべきと心を決めていた。

 ここに来るまでの道中で、拳王軍に苦しめられる無辜の民を見てきた。懸命に今日を生きようとする力なき人々が踏み躙られ、流す涙を見た。そして弱き人々の為に戦う強敵(とも)がいる事を知った。

 

「ラオウよ……俺はここに来るまでに、拳王軍の暴挙を見てきた。踏み躙られる民を見た。

全てはこのファルコの甘さ故の過ち……あの時、俺は刺し違えてでも貴様を止めるべきだったのだ!」

「ククク……その氷のような眼! どうやら甘さは捨てたようだな、ファルコ!」

 

 ラオウが闘気を全身から放つ。すると彼の闘気によって大地が抉れ、風圧だけでソリアとオグルが一歩分押し出された。

 ファルコの全身からも黄金の闘気が放たれる。それはラオウの闘気と衝突し、中央で拮抗した。

 

「見よ、ラオウ……天が泣いている」

 

 ファルコが空を指差す。

 天には雷雲が差し込み、太陽を覆い隠してしまっていた。

 じきにここには大雨が降るだろう。それは天が零す涙だ。

 

「天帝はお嘆きだ。我等が天帝の眼を涙で曇らせる北斗の悪しき巨星……ここに堕ちるべし!」

「ぬう、この気迫……! 片脚を失っても聊かの衰えも見られぬ! そうでなくてはこのラオウの相手は務まらぬ!」

 

 ラオウとファルコが互いに一歩間合いを詰める。

 あと数歩近付けば互いの拳が届く死の間合いだ。

 高まる緊張感に大気が震え、ただ睨み合っているだけだというのに、火山が噴火する寸前のような不吉さをオグルは感じていた。

 しかしその時、一人の男が間に割り込んだ。

 

「待て、ファルコ! お前は天帝に必要な男! ここで死なせるわけにはいかぬ!」

「ソリア!」

 

 ファルコの戦友であるソリアが間に割って入ったのだ。

 ラオウの強大さを肌で感じ、このまま戦えば勝敗に関係なくファルコは死ぬと彼の直感が告げたのだ。

 まだファルコは死ぬべきではない。ファルコが死ねば誰が天帝をジャコウから守るのだ!

 同じく天帝の守護者としての使命が、この死地に割り込むという選択をソリアに選ばせた。

 

「ラオウとやらの相手、このソリアが引き受けた!」

「止めろソリア! お前の勝てる相手ではない!」

 

 ファルコが制止するが、ソリアは構わず前進した。

 その姿にラオウは嘲るように嗤い、余裕を見せる。

 ラオウにしてみれば脅威はあくまでファルコ一人。同じ元斗皇拳であってもファルコ以外など相手にならないという絶大な自信があった。

 

「死を望むか……名を聞こう」

「俺は元斗皇拳伝承者の一人紫光のソリア! 逆賊北斗は滅びるべし。貴様はここで死ぬのだ」

 

 ソリアは緩やかな足取りでラオウへと無遠慮に近付いていく。

 緩急を付けた動きによってソリアの実体がブレ、幾重にも重なった残像がラオウを惑わした。

 しかしラオウの表情は変わらず、絶対の自信は揺るがない。

 

「はあーーー! 元斗流輪光斬!」

 

 ラオウに先んじて、ソリアが仕掛けた。

 手刀を素早く振るい、紫光の異名の通りに紫に輝く闘気が斬撃となってラオウに飛来する。

 ラオウはその攻撃を避ける素振りもなく全弾命中――肌が裂け、血が溢れた。

 しかしラオウが少し力むと筋肉の圧迫によって止血され、ソリア渾身の奥義は掠り傷に終わった。

 

「温いわ! このラオウの肉体は無類無敵! その程度の児戯では俺の命に届かぬ!」

「ぬ、ぬぐ……ならば、これならどうだ!」

 

 ラオウにまるでダメージを与える事が出来なかった。

 その事実に気圧されたソリアは次の技へと入る。

 

「もういい、止せ、ソリア!」

 

 ファルコが止めるが、ソリアもここで退くわけにはいかない。

 ソリアはファルコに命を捧げた男だ。だからこそ、ファルコをここで死なせるわけにはいかないという気持ちは誰よりも強い。

 実力差は百も承知。だが命と引き換えにしてでも拳王を倒す……いや、倒せないにしてもせめて傷を与えてファルコが勝てる確率を上げてみせる。

 その覚悟のもと、生涯最高の練度を以てしてソリアは、今自分が使える中で最も威力に優れた奥義を放った。

 

「ふは~~~……受けよ拳王!」

 

 両手を輪のように廻して闘気を練り上げ、それを両手のみに集約させる。

 防御に回す闘気はない。全てこの攻撃に費やす。

 闘気のない無防備な身体を攻撃されれば死は免れない。だが、防御を捨てたこの一撃ならばラオウの肉体といえど砕けるはずだ。

 即ち命を捨てた捨て身の一撃! ラオウの反撃によって確実に死ぬ事を織り込んだ上で、持てる全ての力を攻撃のみに集中させたのだ。

 

「全ての闘気が両手に集まっている……フフフ、己の命を捨てたか! そこまでしてこの拳王の命が欲しいようだな!」

「そうだラオウ、貴様ならば避ける事は容易いだろう! だが、逃げたならば俺は地獄で貴様を笑い続けよう! 格下の攻撃に恐れをなして逃げた臆病者と笑おう!」

「フッ、言いよるわ」

 

 それは、ソリアの命を捨てた挑発であった。

 全ての力を攻撃に回した捨て身の一撃……だが、ラオウならばノーリスクで返り討ちにする事は十分可能だ。

 ソリアの攻撃を避け、無防備な肉体に渾身の一撃を叩き込めばいい。それだけでソリアは一矢報いる事も出来ずに死ぬだろう。

 ソリアもそれは分かっている。だからこそラオウに回避させぬ為に挑発したのだ。

 ラオウの、拳王を名乗るほどの自分の力への絶対の自信を揺さぶる事で迎え撃つように誘導する……それがソリアに出来る精一杯であった。

 

「よかろう。どこからでもかかってくるがいい!」

 

 クワッ、とソリアが眼を見開く。

 ――乗った! ならば後は、この全身全霊の一撃を叩き込むのみ!

 ソリアは高く跳躍し、生涯最後にして最大の戦いへと身を投じる。

 

「ファルコ、後は任せるぞ! オグル、俺に代わってファルコを頼む!」

「よせ、ソリアァァァ!」

「元斗皇拳奥義! 破の輪!」

 

 最大まで高めた闘気を纏わせた掌圧がラオウに迫る。

 しかしソリアはこの瞬間、ラオウという男の巨大さと恐ろしさを目の当たりにする事となった。

 ラオウはソリアと同じく闘気を両手に集め、あろう事か正面からソリアの技を受け止めたのだ。

 ソリアの両手がラオウの握力によって砕かれ、ベキベキと嫌な音を立てる。

 

「ぐぬわああ! ば、馬鹿なあ!」

「ふははは! 拳王にそのような攻撃は通じぬ!」

「ぐ、ぐぬうう!」

 

 両手を砕かれたソリアは苦し紛れに蹴りを放った。

 しかし予期していたようにラオウが肘打ちで迎撃し、ソリアの足がへし折れ、千切れ飛ぶ。

 痛みに怯んでいる暇はない。ラオウは両手を離してソリアを解放すると、固く握った拳をソリアの無防備な肉体へ炸裂させた!

 

「ぐあは!」

 

 ソリアは血飛沫をあげて吹き飛び、数秒空中を漂った後に地面に追突した。

 勝敗は決した。いや、元よりソリアではラオウに勝てるはずもなかったのだろう。

 手足はひしゃげ、両手の拳は砕け、片脚は千切れ、そして腹には大穴が空いている。

 誰が見ても助からない致命傷だ。

 ファルコはソリアに駆け寄り、抱き起す。

 

「ソ、ソリア……何という無茶を!」

「ぐほっ……む、無念……拳王の力は……俺が思うよりも遥かに……巨大であった……ファ、ファルコ……お前の力になれなかった俺を…………許…………」

 

 ソリアの震える手がファルコの頬に触れようとした瞬間、力を失ってそのまま地に落ちた。

 戦友の死にファルコは涙を流し、砕けてしまったソリアの手を強く握る。

 だが悲しみに浸っている暇など与えてくれるほど拳王は温くない。

 ラオウは一歩前進し、ファルコへ無情な言葉を放つ。

 

「余興は終わりだファルコ。次はうぬ自身で来るがよい」

「……ラオウ!」

 

 ファルコはソリアの遺体を横たえ、見開いたままの瞼を閉じさせた。

 そして立ち上がり、ラオウと向かい合う。

 この二人の戦いは最早、何人であろうと止める事は出来ない。

 どちらかが死ぬまで戦うしかないのだ。

 

 

【少し分かりにくかったので時系列】

1、ファルコがビジャマとジャコウに騙されて出発

2、途中でケンシロウと遭遇して数日間一緒に行動

3、トキからコウリュウの洞窟の事を聞いて移動開始

4、ラオウがコウリュウの洞窟へ到着。コウリュウいねえ!

5、ファルコを戦う相手と決めて移動開始。ここでジョーカーからの報告がシンに入る

6、シンがシュウを連れて天帝の村襲撃

7、シン撤退

8、ラオウが村に到着。兵士が襲い掛かってきたのでぶっとばして帰る。

9、ファルコが村に到着。近くで転がっていた兵士からラオウにやられた事を聞く。おのれラオウ!

10、ファルコが拳王軍に殴り込みをかける←今ココ。

 

Q、どうしてこんな大惨事に……?

A、ラオウもファルコもどっちも相手の話をちゃんと聞かない&説明しないから

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