シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

40 / 56
第四十話 こんなことでわたしの気持ちはかわらない。むしろ軽蔑する

 天帝の村を制圧した我が軍は、ビジャマ、ルイとショウキ、それからサザンクロスへの移住希望者を連れて撤収した。

 居残りを選択した者はそのまま村ごと解放してやったが、それはあの村も土地も今の俺にとっては何の価値もないからだ。

 そもそもあそこはファルコが片脚を差し出した事で例外的に拳王軍に見逃されている特区のような場所であり、周囲を拳王領に囲まれている。

 そんな場所を取っても、すぐに全方位から殴られて潰されるのは火を見るより明らかだ。

 つまり俺の支配下にするより、そのままキャッチ&リリースした方がまだマシなわけだ。

 とはいえ、ファルコと天帝のいなくなった村を今後ラオウがどうするかは分からない。

 ファルコに免じて今まで通りに特区として扱ってくれるかもしれないし、ファルコがいないなら最早用済みとあっさり拳王領に編入されるかもしれない。

 もしかしたら他の拳王領の村と同じように馬鹿なヒャッハーが派遣されて玩具として扱われるかもしれない。

 どうなるかは分からない。俺はラオウではないのだから、ラオウの行動を全て読む事は出来ないのだ。

 一応その事を説明したのだが、それでも頑なに動かない者も少なくなかった。

 なのでそいつ等は本人の選択の結果という事で、村に置いて帰って来た。

 別に俺は天帝の村の村人が欲しいわけではない。

 後に我がサザンクロスの障害となり得る勢力の出現を阻止しただけだ。

 狡賢いジャコウを頭に、天帝という旗頭と元斗という暴力装置を抱えた帝都は出来上がればかなり手強い勢力だっただろう。

 だから、帝都の誕生さえ阻止出来れば村がその後どうなろうと、村人がラオウにどう扱われようと俺にとってはどうでもいい事なのだ。

 だが同時に天帝の村を窮地に追い詰めたのは俺だ。

 だから最低限の責任として、サザンクロスへの移住を希望する者は我が国の民として迎え入れ、生活の世話もしてやるつもりだったし、残る事の危険も説明した。

 その上で残留する事を選んだならば、無理に我が国の民になれなどとは言わない。好きにすればいい。

 俺が本人の意志を無視して連れて行くのは天帝だけである。

 旗頭としての価値を持つ天帝だけは放り出していく事は出来ない。

 放置すれば誰かに担ぎ上げられるのが目に見えているからだ。

 

 それと、天帝は既にジャコウの手によって死んでいた事にしておいた。

 勿論天帝の村の連中にもそう伝えているし、ルイの姿は見せていない。天帝生存を知っているのは俺とショウキ、シュウ、サラ、ビジャマ、それからルイに付いてきたアスラという小僧だけだ。

 ダンネやレイには、ルイの事はただの身寄りのない小娘としか説明していない。

 そして問題のルイだが、ひとまず俺の城で預かる事にしておいた。

 サザンクロスの適当な村から信用出来る義理の両親を見繕って、そこに預けてもよかったのだが見えない場所に置くのも不安がある。

 ショウキはルイの側にいる事を望んだので、KINGシティの門番として雇っておいた。

 ただしルイの近くには置かないし、ルイと会う時は必ず監視を付ける。

 ショウキは原作では人格者だったし、実際に会ってそこは確かめたがそれでも元斗の男だ。

 『天帝こそ頂点にいるべき』という思想はあるだろうし、ルイを唆されても面倒だ。

 一方でアスラはルイの護衛として側に配置した。

 こいつは天帝という立場関係なしにルイという個人に片思いをしている小僧だ。

 なので唆す事はないだろうと考えての配置だ。

 後は、ルイも見知らぬ場所に来て心細いだろうと思ったので、精神安定の為に知り合いが一人くらいは近くにいるべきだろうと思ったのもある。

 とはいえ勿論ジョーカーの配下による監視付きだ。余計な事を吹き込む素振りが少しでもあれば即刻引き離す用意は出来ている。俺は優しくないのだ。

 

 ルイを近くに置く事に不安があるか無いかで言えば少しはある。

 俺はこれまで、もう一人の天帝であるリンをユリアほどではないが警戒してきた。

 それはリンの持つ、わけの分からん補正……天運のようなものがどう働くか分からないからだ。

 しかしだからといって、目の届かない場所に置くのは更に不安がある。

 天帝の名が持つ力は大きい。いかに元斗という暴力装置があったとはいえジャコウ如きが代弁者として好き勝手出来るほどに。

 目の届かない位置に置いて、それで余計な野心を持った誰かに目を付けられて利用されては折角天帝の村に攻め込んだ意味がなくなる。

 そうなるくらいならば、まだ俺の手元に置いておく方がいいだろう。

 それに……多分ルイは、リンと比べてそれほど天帝としての才はないと思う。

 リンは劇場版においてケンシロウに勝利したラオウに謎オーラを発しながら近付き、ケンシロウを殺さないように懇願した。するとラオウは説得に応じてリンに「早く大きくなれリン」と言い残して退却という本来の彼ならばあり得ない行動を取った。

 この時ラオウは恐らくリンが天帝である事を見抜いたのだろうが(この時天帝設定はなかったはずだが……)、つまりラオウが見て分かるほどの天帝のオーラか存在感を出していたという事だ。

 他にも成長してからは軍師であり五車星最後の生き残りであるリハクや、実際に最前線でリーダーシップを発揮しているバットを差し置いて北斗の軍の真のリーダーと認知されている。

 恐るべきご都合……いや、カリスマ性。生まれながらに頂点に立つ事を運命付けられた天帝の才というものなのだろう。

 一方でルイにそうした才能は正直感じない。実際に見てもただの小娘だし、変な力もない。

 というか仮にルイにリンほどの超補正があったなら、原作で視力を失うまで幽閉なんかされない。絶対誰かしらが『偶然』ルイの幽閉場所を発見して、何人かが犠牲になりつつ、それが美談として扱われてルイだけは無傷で助かっただろう。

 俺が思うに、天帝としての才の大半はリンが持っているのではないだろうか。

 

 ともかく、これで天帝は消えた。

 ジャコウもしっかり殺したので、帝都の誕生は阻止できたと見ていいだろう。

 それとジョーカーからの報告により、ファルコの死も確認した。

 ……実は少し、ファルコが勝つか相打ちになる事を期待していたんだが、やはりファルコでもラオウは無理だったか。

 この後の流れは原作通りならばトキとラオウの宿命の兄弟対決、リュウガの暴走、南斗最後の将の軍とラオウの衝突、そしてケンシロウとラオウの最後の決戦だ。

 まず、トキとラオウの対決に関しては介入の余地がない。下手に横槍を入れるような真似をすれば最悪、俺が北斗の兄弟全員から袋叩きに遭う。

 リュウガの暴走は、そもそもリュウガが死んでいるので無い。

 南斗最後の将は勝手にやってろと言いたいが、地理的にサザンクロスを挟んでいるので他人事ではいられない。リハクめ、厄介な場所に構えおって!

 南斗の都なんだから原作通り南に作れ! 何で北に都を作った!

 いっそ『勝手にやってろ』と拳王軍にサザンクロスを素通りさせるか……いや、ないな。

 一度はそれも考えたが、そんな真似をすれば絶対サザンクロス内で余計な略奪や殺しをするだろうし、そもそも拳王軍を領土に入れる王など民からの信頼を失う。

 召喚士は通す、ガードも通す。だが拳王軍とキマリは通さない。

 

 近いうちに訪れるだろう慈母星軍と拳王軍の衝突に備える必要がある。

 つまりはサザンクロスの国力と戦力向上だ。

 リハクは間違いなくサザンクロスを盾にするだろう。

 そしてラオウはサザンクロスを邪魔と思うはずだ。

 ならば俺は、どちらの軍に対しても優位を取れるようにしておきたい。

 具体的にはちょっかいをかけてきたら慈母星軍も拳王軍も構わず潰すぞと圧力をかけられるようになりたいのだ。

 それを可能とするのは十分な兵力と武器だ。

 だからこそ、俺はビジャマを引き込んだ。奴の科学力はこれからの戦いを変えるゲームチェンジャーとなる。

 なのでこれからの打ち合わせの為に、ビジャマに与えた屋敷を訪れたのだが……。

 

「見るがいいミュウよ! この屋敷は俺がKINGとの交渉で手に入れたものだ! これは俺への期待の証! 俺はサザンクロスのKINGがこれほど期待をかける男なのだ! そしてKINGは言った! 俺は必ずや人類に文明の光を取り戻した偉大な天才として後世に記される事となると!」

 

 屋敷に近付くと丁度、バルコニーでビジャマが両手を挙げながら、自分の偉大さをミュウに得意げに話している所であった。

 この屋敷はKINGシティの外れにある、切り立った崖に面した豪華な建物だ。

 元々ここにあったのをリフォームした物で、いくつかあった住居候補の中からビジャマはこの建物を選んだ。

 確かにこれが一番豪華な建物だが……難点としてはやはり崖に面していて危ないという事だろうか。

 バルコニーから落ちれば命はまずない。

 ビジャマとミュウの世話役(兼監視)として付けてやった兵士達や使用人達は俺を見て一礼をする。

 彼等は俺を応接室に通そうとするが、折角なのでこのままバルコニーを見続けてもいいかもしれん。

 それにしても必ずと言った覚えはないんだがな? 『貴様が真の天才なら』とちゃんと言ったはずなんだがな?

 いや、まあ、ビジャマの中では『俺は真の天才=真の天才なら後世に記される=俺は後世に記される』となったのかもしれないが、

 

「この屋敷だけではない! いずれは領地も、人も、宝石も! 全てがお前のものとなるのだ! あんな小さな村で不自由な暮らしを強いていたファルコとは違う! 俺はお前に十分な暮らしをさせてやる事が出来る!」

「……そのような事をしても、私の心は変わりません」

「フン、頑固な。だが俺の偉大さを知れば必ず変わる!」

 

 やり取りはここで終わりのようだ。

 ビジャマは去り、バルコニーにはミュウだけが残されて遠くを見つめていた。

 きっとファルコがいつか助けに来てくれる事を待っているのだろう。ファルコがもう死んでいるとは知らずに。

 それにしても……何か、何だろう……嫌な既視感があるな。

 何でかは知らんが俺は今、ビジャマに強い親近感というか、同族意識というか、そういうものを覚えている。

 

 いや勿論気のせいなんだがな。うん、気のせいだ。

 でも何か、そのうちミュウが飛び降り自殺しそうな予感がするな。何故だろう。

 

 

「見ていたぞ。随分と手こずっているようだな」

「フン、今だけだ。いずれ必ず俺を愛させてみせる」

 

 応接室に通された俺は、まずは軽い挨拶程度にビジャマをからかってやった。

 するとビジャマは自信満々に答えるが、何故か上手くいく未来が全く見えない。

 何故かは分らんが、俺は個人的にビジャマの片思いを応援したい気持ちになっている。

 だが未来はとても暗い。

 

「早速だが本題に入ろう。お前に預けたい施設がある」

 

 俺の言葉に、ビジャマは面白そうに口角を上げた。

 サザンクロスに所属していきなり投げられた仕事の大きさに興味を引かれたようだ。

 普通ならばこういうのは新顔にやらせるべきではないのだろう。

 最初は小さな仕事から回していき、信用に値すると見極めてから徐々に大きな仕事をさせるのが普通だと思う。

 しかしそんな段階を踏んでいる暇など、この世紀末の荒野にはない。

 使える奴は使う。能力のある者を悠長に遊ばせている暇などないのだ。

 

「サザンクロスの領内……KINGシティから北に11㎞の地点に比較的保存状態が良好な軍事工場跡地がある。核爆発の際に崩れた周囲の建物に埋もれる事で結果的に瓦礫がシェルターの役割を果たしたのだろう」

 

 初仕事として俺がビジャマに任せるのは一つの軍事工場跡だ。

 勿論裏切りの可能性は常に考慮しなければならないだろう。

 ましてや俺は、ゆくゆくはこいつにインフラの復旧をやらせたいと思っている。

 原作で帝都が常に電気の輝きで満たされていた事を考えれば、こいつならば十分出来ると俺は踏んでいる。

 しかしサザンクロスにそうした電気設備が必須になった所で裏切られて、『これからも快適な暮らしを送りたければ俺の言う事を聞け』と脅される可能性はゼロではない。

 こいつに発電所などの新たな社会的基盤施設を作らせる事は即ち、サザンクロスに新たな心臓を作るという事であり、その心臓を握られるという事だ。

 一応リュウロウがもたらしてくれた風力発電所と併用ではあるし、風力発電所も着実に増えている。

 しかしそれを上回るものを作られ、こちらが依存した所で裏切られれば厄介な事になるのは間違いない。

 

「瓦礫は既に全て撤去した。しかし施設内の機械を再稼働させる事が出来ん」

「なるほど、それを俺に直せと」

「そうだ。上手くいけば兵士全員を銃火器で武装させる事が出来る」

 

 普通に考えればこんな施設をいきなり投げるべきではないだろう。

 小さな仕事からやらせていき、信用に足る人物か見極める期間が必要だ。

 しかし狡猾に裏切る奴は、段階を踏ませようとこちらが信用し切ったタイミングでどのみち裏切る。

 だからビジャマに、信用度を計るためのテストのようなものは必要ない。こいつが裏切る気ならばそんなテストをしても容易にすり抜けるからだ。

 必要なのは信用ではない。こいつがサザンクロスを裏切らない為の利害の一致と旨味だ。

 サザンクロスと俺を裏切っても損しかしない。むしろ利用し合う事でこそ己の得になる。そう思わせるべきだ。

 次に大事なのは保険。ビジャマには手足として技術者を与えるが、そいつらには貪欲にビジャマの知識と技術を学び、吸収してもらう。

 そいつ等が成長してくれれば万一ビジャマが裏切った時に即座にビジャマを抹殺しても、そいつらで代用出来るようになる。

 ビジャマは馬鹿ではない。自分の下に付けられた技術者を見てすぐに俺の意図を察するだろう。だからこそ裏切っても何の旨味もないと気付けるはずだ。

 そして最後に人質。これは俺の想定外だったのだが、ビジャマはミュウをサザンクロスの保護下に入れてしまった。

 これは痛恨の一手か、それとも自分は裏切る気は今の所はないと俺に言外に告げる妙手か。

 ミュウをサザンクロスの保護下に入れるという事は即ち、俺の手の内という事。

 そう……俺はいつでもミュウを殺せる。そうである以上ビジャマは俺を裏切れない。

 戦国大名は相手の信用を得る為に自らの血縁者を相手に差し出し人質としたという。

 ミュウは血縁者ではないがビジャマの最も大事な人間……つまりビジャマは戦国大名と同じ事をしているわけだ。

 

「大型火器の製造は無視していい。今はとにかく数を揃える事を優先してくれ。それとお前の手足として技術師団を派遣する。今の世の中では貴重な人材だ、潰さないように使え」

「破格の待遇だな。お前は恐ろしい男だ、シン」

 

 ビジャマは何かを察したように笑い、俺も薄ら笑いで返した。

 やはり頭の回転はいい。技術師団の派遣だけで、俺の意図を理解した。

 ビジャマがこの先、俺に対して敬服するだとか心からの忠誠を誓うだとか、そうなる事は永遠にないだろう。

 常に裏切る事のメリットとデメリットを天秤にかけ、同時に俺が上に相応しくないと思えば内部から遠慮なく浸食しにかかるはずだ。

 しかし上手く使いこなせばこの上なく有能で便利な男だ。

 ならばやってみせるさ。この程度の曲者くらい上手く使えなければ、世紀末の荒野を変える事など出来るわけがないのだからな。

 今後の働き次第では丁度空席となっていた最高幹部(クラブ)の椅子を与えてやってもいい。

 ……後、それはそれとして……。

 

 

 

「…………ところでビジャマよ、話は変わるが飛び降り(サラダバー)防止用のフェンスをバルコニーに設置してみてはどうだ? いや、理由はないんだがな……だがまあ、付けておいた方がいいと俺は思う」

「……?」

 

 とりあえず、バルコニーにフェンス付けとけとビジャマに助言しておいた。

 いや、本当に理由はないんだよ、うん。何となくだ。

 

 

殉星×2 ピカー

シン「……増えてね?」

 

【キマリ・ロンゾ】

通してもらえない事で有名なFF10のマスコット。

かつてはFF10随一のネタキャラだったが、今ではその座もワッカに取られている。

ストーリーでは特定の役割がないから弱くなりがちだし、やり込みでは単発攻撃しかないから2軍落ちしやすいし、序盤無口なせいで戦闘中の掛け合いもないしで色々と不憫。

「キマリは通さない」と意地悪されるが、実際はこの時戦うビランとエンケはキマリのステータスに合わせて加減してくれるので通す気満々。優しい。

スタッフも多分、「この辺までくるとキマリ戦力外になってるプレイヤー多そうだな」と分かっていたのだろう。

プレイしていた当時、ユウナレスカに「ガードを一人究極召喚獣に変えましょう」と言われた際に「キマリを究極召喚にしてFF8に登場したグリーヴァにするんだな!」と期待したのは私だけではないはず。

ついでにFF8を再プレイした時にグリーヴァの名前をキマリにしたプレイヤーは果たしてどのくらいいるのだろう。

 

ちなみに私は初プレイ時、リュックルートで盗むと使うを習得→逆走してティーダルートに入るという凄い中途半端な育成をしてしまったせいで見事に戦力外化してしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。