シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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黒兎可様よりFAをいただきました。
感謝……!
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ラオウ「無想転……いや、なんだコレ……」


第四十二話 この世界は空気中にプロテインが含まれているかもしれない

「さて、ケンシロウ……話はそれだけではあるまい」

 

 アンナの村の連中をどうするかで一段落した所で、俺はケンシロウに次の話を振った。

 話がこれだけならばジャギはともかく、ケンシロウ達が同行してきた意味がない。

 つまり村人達の保護とは別にケンシロウ達も俺にやって欲しい事があってここまで来たのだ。

 するとケンシロウは頷き、次の話へと移った。

 

「シン……トキの病を、何とかする事は出来ないだろうか」

「無理だな」

 

 ケンシロウの問いを、俺は一瞬の間もなくバッサリと切り捨てた。

 こんなの考えるまでもない。どう考えても不可能に決まっている。

 ケンシロウは俺の事をドラえもんやキテレツとでも思っているのか?

 ハッキリ言ってトキの容態はブラックジャックだって匙を月にブン投げるくらい酷い。

 投げた匙は月の永琳に直撃し、キレた永琳とブラックジャックの間で匙の投げ合いが始まるだろう。

 常人の致死量の数億倍の死の灰を浴びた奴をどうしろと?

 トキに関してはもう、むしろ逆にお前何でまだ生きてるんだってレベルの話なのだ。

 俺の返答を予想していたようにトキは微笑を浮かべ、隣にいた女医(サラ)は沈痛な面持ちをした。

 

「お前が俺を頼った理由は分かる。今現在、このKINGシティ以上に医療設備と医者が充実している場所はないだろう。

しかしそれでも核戦争以前と比べれば何もかもが足りていないのが事実だ。いや、仮に核戦争以前の世界最高の医療設備と医師団が揃っていたとしてもトキは治せん」

 

 実際は核戦争前どころか俺の前世である令和の時代ですら無理だけどな!

 22世紀まで連れて行ってドラえもんにタイムふろしき被せてもらうくらいしか助かる方法ないんじゃないかな、マジで。

 

「そもそも、現代医学から見て奇跡としか形容できないような治療を可能とするものこそが北斗神拳であり、トキほど北斗神拳を用いた治療を知り尽くして実践している男はいない。そのトキ自身が治せないならば、この時代では打つ手などないと思っていい」

「っ……」

 

 俺の出した結論にケンシロウが何も言えず俯いた。

 元々、ケンシロウだって分かっていたのだろう。それでもここに来たのは駄目元か。

 北斗神拳による秘孔治療はまさに出鱈目だ。薬品を被って失った視力を回復させ、高熱も下げ、麻痺していた足だって治す。

 

 その北斗神拳……しかも今いる使い手の中では間違いなく最も博識だろうトキと、伝承者であるケンシロウが揃っていて手の打ちようがないのだ。

 ここからどうにかしようと思ったらもう、花京院の魂を生贄にブラックジャックとスーパードクターKと鎬紅葉を召喚して魔法カード融合でブルーアイズアルティメットドクターにするくらいしかない。

 ついでに永琳も魔法効果の矢で混ぜておけば万全だ。

 

「……本当に……もう、どうしようもないのか?」

 

 ケンシロウが僅かな可能性を探すような、か細い声を出した。

 トキが死の灰を浴びたのはケンシロウとユリアを救う為だった。

 本来ならば伝承者になっていたはずの男から未来を奪ってしまった事を、ケンシロウなりにずっと悔いていたのだろう。

 せめて少しでも長く生きていて欲しい、という気持ちがこいつの言葉に滲み出ている。

 

「治療という点において、北斗神拳の秘孔治療に勝るものはない。

しかし北斗神拳ではどうしようもない部分を埋める事なら出来なくはない……効果が出るかは未知数だがな」

「っ! そ、それは一体……!」

「食事療法……即ち栄養だ」

 

 北斗神拳は人体に対し、奇跡のような効果を齎す。

 原作最終回のドリルで穴だらけにされたバットなど、何故あれで助かったのか本気で理解出来ない。というかアレ、あの後絶対死んでるだろ。

 そもそもアレで助かるなら、もっと他に助かったキャラいるんじゃないかと小一時間問い詰めたい。アインとかどう見ても最終回のバットに比べれば軽傷だったろ……ファルコも刹活孔突かなきゃ普通に助けられたんじゃないか? 絶対ドリルで身体中穴だらけにされたバットよりまだ助かる見込みあったって。

 そんなわけで俺は、『バットはあの後死んでる』派だ。

 ……え? でもその後を描いたゲームではピンピンしててリンと結婚式してた? 嘘だろ承太郎。

 それはともかく、秘孔による治療はハッキリ言って滅茶苦茶だ。

 しかしそれでも、無から何かを生みだせるわけではない。

 体内に足りないタンパク質を秘孔を突いただけで増やしたり、不足していたビタミンが突然体内に生まれたり、水分が充填されて乾きと無縁になるわけではない……多分。

 いやまあ、この世界は割と空気にプロテインが含まれてる説あるからタンパク質は全然足りてるかもしれないが、とにかく補給出来ていない栄養というのはあるはずだ。

 

「人間は食い、飲まねば生きていけん。それは北斗神拳の使い手といえど例外ではない。身体を維持するには様々な栄養が必須となるが、トキにはその栄養が圧倒的に足りていない」

 

 栄養というのは重要だ。ただ腹一杯になればいいというものではない。

 偏った食生活を続ければ栄養バランスが崩れ、不健康になり病気の発症から死に至る。

 ましてやこんな時代だ。必要な栄養をバランスよくしっかり取れている者などサザンクロス以外では見付ける方が難しいだろう。

 しかもケンシロウ一行は食料入手がちゃんと出来ているかの時点で怪しい上に、トキの事だから自分の分までバットやリンに分け与えている可能性が高い。

 

「栄養とは人体を動かすエネルギー源だ。それが枯渇していてはいくら秘孔で応急処置をしてもどうしようもない。いくらバイクを修理しようがガソリンがなければ走らないのと同じだ。だから単純な方法ではあるがトキにはしばらくKINGシティに滞在してもらい、食事療法に務めてもらう事になる。勿論メニューはこちらの医療チームが用意する」

「シン……! ありがとう……」

「すまないシン。恩に着る」

 

 俺の提案にケンシロウとトキの兄弟が頭を下げた。

 しかし礼はいらない。ハッキリ言ってこんなのは気休めに過ぎないのだ。

 正直な話、俺はこれでトキの身体が治るなどと全く思っていない。

 ただ、もしかしたら……ここでトキの状態をほんの少しでも原作よりマシにしておけば、あるいはラオウに勝てないまでも痛手を与えてくれるかもしれないと思っての提案である。

 トキがラオウに痛手を与えてくれれば、ラオウは再び雲隠れするだろう。

 そうなれば、ラオウ不在の拳王軍は今度こそ瓦解する。

 レイナもソウガもいない今、ラオウさえ姿を消せば拳王軍を壊滅させるのは容易い。

 もしラオウが雲隠れせずにそのまま戦いを続行するなら……その時は俺としても納得のいかない勝ち方になるが、手負いのラオウを遠慮なく仕留めさせてもらおう。

 

「勘違いをするな。俺はお前達を助けようと思っているわけではない。

トキ、お前はラオウと戦うつもりだろう? お前がラオウに勝利してくれれば、それは俺にとってもありがたい。ただそれだけの話と思え」

「構わない。私が感謝をするのとは、それはまた別の話だ」

 

 トキは微笑を浮かべて立ち上がり、俺に向けて手を差し出した。

 俺もそれに合わせて立ち、トキの手を握る。

 本音を言ってしまえば、俺はトキは負けると思っている。

 ラオウはケンシロウやユリア、リンほどではないが変な運の良さがある。

 仮にこの食事療法で少しだけトキの状態がよくなってラオウを追いつめたとしても、どうせ肝心な所で吐血して「こんな時に病が!」となってリュウケンコースで負けるに決まっている。俺は詳しいのだ。

 なのでこれは本当に駄目元だ。どうせ当たらないと分かっていて宝くじを買う感覚に似ているな。

 だがもしかしたらトキならあるいは……と思ってしまうのは、期待のしすぎだろうか。

 

 

 トキ達がKINGシティを訪れて一月が経過した。

 シンが用意してくれたホテルに泊まり、デュラン率いる医師団の監修のもと適切で健康的な食生活を送る事でトキは目に見えて活力を増し、痩せ細っていた身体はガッシリとし、顔にも生気が戻った。

 トキと一緒に当然のようにケンシロウ一行が宿に入った際にはシンが妙に渋い顔をしていたし、ジャギに至っては愛用のショットガンと含み針を没収されてしまったが、とりあえず滞在を許されている。

 トキの命の砂時計を完全に止める事は出来ないが、それでも確実に遅らせる事には成功している。

 勿論これは、トキ自身の秘孔治療や女医(サラ)の献身的な看護もあっての事なのは言うまでもない。

 また、ビジャマの作った闘気増幅装置を用いた余命延長も今の所効果を発揮していた。

 これは原作でラオウがユリアに闘気を与えて余命を伸ばした事からヒントを得て、シンとビジャマとトキもどきが考案した新しい治療法だ。

 

「へへへ……お、こっちのハンバーグも美味そうだ。これも入れて……っと」

 

 ここに滞在して一か月。ケンシロウ達の今の一番の楽しみは朝食と夕食の二度訪れる疑似ビュッフェだ。バットは食品サンプルを見て、テーブルに置かれている食券を皿に入れた。

 この皿は実際には使わない。あくまでこのくらいの大きさの皿に盛るから、ちゃんと考えて選べという基準として置いてあるだけだ。

 

「ケンは……またビーフカレーばっかか。本当に好きだな」

 

 皿にビーフカレーの食券ばかりを入れているケンシロウにバットは呆れるが、こんな時代だ。

 好きな物を好きなだけ食べられるというのは幸せな事だと理解しているから止めるような真似はしない。

 シンがケンシロウ達の宿泊先として手配してくれたホテルでは朝と夜の二回ビュッフェスタイルで食事が提供される。

 本来ならば並べられた料理から好きな物を取っていくのがビュッフェスタイルだが、そんなフードロスが激しいスタイルなど今の時代に許可するわけがないだろうとシンに却下されてしまった。

 そこでこのホテルでは、せめてビュッフェの雰囲気だけでも再現しようと疑似的なビュッフェスタイルを提供している。

 食品サンプルを用意し、その前に食券を置く。この食券を皿に乗せて最後に厨房前の受付に渡してしばらく待てば注文通りの組み合わせで出してくれるわけだ。

 シンはこのホテルの料理長に「それはもう普通に注文するのと同じじゃないか?」だの「非効率の極み」だの「だったらメニュー表をテーブルに置いて注文用紙に書かせればいいだろう」だの「ビュッフェごっこのオママゴト」だの「お前もう船降りろ」だの散々ボロカスに文句を言って扱き下したが、こういうのは雰囲気が大事なのだと涙ながらに力説されたので渋々許可している。

 

「ねえアンナさん、この後温泉に行かない?」

「いいわねえ。一緒に行こうかリンちゃん」

 

 女性陣は朝から温泉に行く事を話し合っており、楽しそうだ。

 好きな時に湯に浸かれるなど、この時代ではとても贅沢な事である。

 ここにいる間くらいしか出来ないのだから、今のうちに堪能しておきたいと彼女達は考えていた。

 女性陣以外ではもう一人、トキも朝から温泉に入るがこちらは治療の為である。

 

「もう俺、ここにずっと住みてえよ。なあケン、シンさんにずっと住ませてもらえるよう言ってみないか? ケンはシンさんと昔からの友達なんだろ? だったら少しくらいはお願いも聞いてくれると思うんだよ」

 

 バットは何とかここに留まれないか考えているようだが、他でもないシン本人から「ずっと滞在する気なら対価を取る」と言われてしまっている。

 今はあくまでトキの治療の為に、そのオマケとして滞在を許されているだけだ。

 これはシンがトキにそれだけの価値を見出しているからであり、トキが抜けた後にバットやリンが単体で残ろうとしてもシンは躊躇なくサザンクロス内にある適当な村への移住手続きを進めるだろう。

 

「フフッ……」

「……楽しそうね、トキさん」

「ああ。こんな時代にこんな光景を見る事が出来るとはな。シンには感謝してもしきれん」

 

 そんな楽しそうな仲間達を見て、頬を緩めるのは椅子に座るトキだ。

 彼だけはなんちゃってビュッフェスタイルに参加せず、医師団の用意した健康的な食事をとっている。

 

「トキさん……バット君の言う事も一理あるわ。戦いなんか捨ててここでずっと暮らしましょう?

戦えなくても貴方には秘孔治療がある。シンさんも貴方を邪険には扱わないわ」

 

 女医(サラ)は無駄と分かりつつも、トキがここに留まるように説得する。

 実際彼女の言葉は正しい。仮にトキが戦いを放棄してその上でKINGシティに留まりたいと言っても、シンは大歓迎で受け入れるだろう。何故ならトキにはそれだけの価値があるからだ。

 先が長くない病人ではあっても実力は超一級。いるだけで軍団千人以上の戦力であり、何もせずとも滞在しているだけで大きな抑止力になる。

 また、秘孔治療を活かした医療技術も最高峰。死ぬまでの僅かな時間でも大勢を救えるだろうし、彼の治療術の一端でもKINGシティの医師団やジェネリックトキに学ばせる事が出来ればその時間の価値は値千金に匹敵する。

 何なら「どうせ勝てないラオウとの戦いに命を燃やすより、ここに留まってくれた方がありがたい」とまで思われているのが事実であった。

 

「ありがとう……だがそれは出来ない。私はラオウとの約束を果たさねばならんのだ」

 

 しかしトキは止まらない。たとえどれだけ周囲に説得されようと。

 その先にあるのが自らの死のみと分かっていても、もう立ち止まって考える時間すら彼にはないのだから。

 いずれ訪れるだろう宿命の戦いを想い、トキは窓の外の景色を見た。

 この、人々が幸せに暮らしている希望に満ちた光景を眼に焼き付ける為に。

 そして……この景色の向こうで今も孤独に戦っている兄を想いながら……。

 

 

【窓の外】

トキそっくりの誰か「カカッテクルガイイ」 ブー挑発

トキ「!?」

女医「!?」

トキそっくりの誰か「カカッテクルガイイ」 往復ブー挑発

トキ「…………」

女医「あの……トキ? あれは……?」

トキそっくりの誰か「カカッテクルガ……」再往復ブー挑発

シン「南斗獄屠拳!」

トキそっくりの誰か「ココマデカ……」

ウィーンシン パーフェクト

トキ「??? ? ??」

女医「今のは一体……。」

 

【バット単体で残ろうとした場合】

実はバットは車を組み立てる事が出来るので、その技術を売り込めば技術者として普通にKINGシティで雇ってもらって、ケンシロウとリンを養いつつ暮らしていける。

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