シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十三話 全ては最後の将の為!

 アンナの村の連中が避難を求めてきてから二月ほど経過した。

 あれからジャギとアンナ、それからアンナの兄とバイクチームは軍に所属させて宿舎に住む事を許可した。

 軍といっても当初の希望通り前線で活躍する部隊ではなく医療班や食事の配給班、武具の製造や管理、バイクや車両の点検、修理などの後方勤務に振り分けている。

 アンナは宿舎の清掃や食事の用意をする役で、軍人というよりは宿舎のスタッフだ。

 少々気が強いが明るく、美人で気立てもいいので軍の連中からは好評だ。

 ただしアンナにちょっかいをかける馬鹿はいない。俺が最初に言い聞かせておいたのもあるが、アンナの側には常に怪しい七つの傷の鉄仮面がいるからだ。

 それから、どう頑張っても軍に所属させる事の出来ない老人や子供は、義勇軍見習いという形でマミヤの村が引き取ってくれた。

 これに合わせて人材を派遣し、急ピッチで村を拡大させている。

 

 トキは相変わらず女医の看護を受けながらの療養生活だ。

 血色は以前より大分よくなり、かなり全盛期に近い状態まで持ち直した。

 だがそれでも感じられる生命力の弱弱しさは変わっていない。やはり寿命を僅かに伸ばしただけでトキの死そのものは防げないだろう。

 そしてケンシロウは少しでも拳王軍の進軍速度を落とす為に、再び緩衝地帯へ旅立って行った。

 ケンシロウはリンとバットを残して出発したのだが、リンは例の如く「ケーン!」とケンシロウを追尾し、バットもそんな彼女に付き合わされる形でサザンクロスから出て行った。

 リンはケンシロウに吸い付く磁石か何かなのか?

 

 それはともかく最近、南斗の都がおかしな動きをしている。

 以前も話したように南斗の都は我がサザンクロスを壁にするようにして、かつて青森県だった場所に居座っていた。

 だがどういうわけか、僅かな部隊だけを残して東――かつては海だった場所への大移動を開始し、そこにあらかじめ建設しておいたリハクの城に移住したようだ。

 そういえばアニメ版でヒューイやシュレンが個別に城を持っていたような気がするが、リハクも南斗の都の城以外にちゃっかり自分用の城を持っていたらしい。

 住人丸ごと移動したので、今後はそこが南斗の都となるのだろう。

 とりあえずもぬけの殻と化した旧南斗の都は後で占領してしまうとして、リハクの考えが分からんな。

 サザンクロスの近くにいては近々俺に攻撃されると思ったのだろうか? あながち間違いではないが、このタイミングでの大移動だ。それだけが理由ではあるまい。

 

「ふむ……ヒューイが風の旅団を率いて南下……か。サラ、我が領内にヒューイが入り込んだという報告は?」

「国境に近い位置を走っていたという目撃情報なら」

「サザンクロスを迂回……狙いは拳王軍との接触でしょうね」

 

 執務室で俺とサラとリュウロウは、リハクの狙いを見抜く為に頭を悩ませる。

 原作通りならば、ヒューイとシュレンが不用意にラオウを刺激し、ラオウが南斗の都を目指して移動を開始する。

 しかしこの世界では南斗の都と拳王府の間にサザンクロスがある。

 そしてリハク達は何故か移動し、南斗の都は空っぽとなった。

 

「……拳王軍を私達にぶつける気かもしれません」

「なるほど。同盟は無理と見て、使い潰す方向に舵を切ったか」

 

 リュウロウの言葉は十分ありえる仮定であった。いや、むしろしっくりくる。

 リハクは南斗正当血統であるユリアと北斗神拳の伝承者であるケンシロウをくっつける事が世界の平和に繋がると信じている。

 そして、その為ならば他の者は全て駒だ。

 当然サザンクロスや俺も奴にとっては例外ではない。

 まずリハクは同盟という形で、こちらの怒りを買わないように穏便な形で駒にしようとした。

 だが俺が取りつく島もなかったので、やり方を変えた。

 同意を得て穏便に駒にするのに失敗した時リハクはどうするか。

 諦める? 勿論、否だ。ここで諦めるような男ならばジュウザを眠らせて強制連行して死地に放り込んだりしない。

 答えは一つ、同意を得られないならば同意を得ずに利用する。

 その為に奴はヒューイにラオウを挑発させ、サザンクロスに突撃させようと企てたのだ。

 

「ラオウは迂回するかしら?」

「いいや、奴は前進しかしない」

 

 南斗の都に辿り着こうにも、サザンクロスが邪魔で通れない。

 その時ラオウはどうするか?

 迂回してくれれば楽なのだが、そうはならないだろう。

 奴の性質上、間違いなく直進する。

 そうしなければ『敵を避ける姿』を部下に見せる事になり、それは拳王の齎す恐怖に罅を入れるからだ。

 だからこのまま指をくわえて見ていればヒューイがラオウを誘い出し、そしてラオウは南斗最後の都に進撃する為にサザンクロスに突撃する。

 勿論いずれは雌雄を決するべき相手だ。だがリハクの掌の上で踊らされて戦うのは気分が悪い。

 

「風の旅団が手紙のやり取りに使っているのは確か鳩でしたね」

「どうする気?」

 

 リュウロウが何か思い付いたように話し、サラが不思議そうにする。

 それからリュウロウはリハクの策への対抗策を話し、俺もその案に乗る事にした。

 俺は早速、リュウロウのアドバイス通りに即席で手紙を書き、それを伝書鳩の足に括りつけて飛ばした。

 サザンクロスでは普段は鷲を使うのだが、こういう時の為に他の鳥も一応飼育している。

 

「リハクめ……俺を利用しようとしても、そう上手くはいかんぞ。ラオウと戦いたいならば自分でやれ」

 

 南斗の都が移動してくれたのは俺にとって都合がよかった。

 いつまでもサザンクロスを盾にするように居座られるのは鬱陶しかったが、常に敵意を示し続けたのがここにきて上手く機能した。

 リハクはラオウという『敵』と俺という『味方ではない奴』を上手くぶつけようとしたのだろう。

 そして巻き添えを食わぬようにユリアと住民を逃がしたのだ。

 

 だがリハクは自らの策という名の海に溺れた。

 ここでそのまま、軍団ごと溺死してもらおうか。

 

 

「我が母星南斗をおびやかす北斗の死神! 今消滅する時が来たのだ!」

 

 勢力拡大を狙い日々村々を侵略するラオウの前に、慈母星の遣いである五車星――そのうちの一つである「風」を名乗る男が立ち塞がっていた。

 自らを風のヒューイと名乗った男は拳王侵攻隊を次々と襲撃し、遂にラオウ本人へと戦いを挑んだのだ。

 

「はあーーー!」

 

 ヒューイは風のように軽やかに跳んだ。

 彼に与えられた使命はラオウを焚き付け、南斗の都へ誘い出す事!

 今頃はリハクがユリアを連れて南斗の都から脱出し自らの城へ匿っている頃だろう。

 つまりラオウは抜け殻の都を目指すのだ。

 そしてその道中にはあのシン率いるサザンクロスがある。

 ラオウはその性格上、避けて通るような真似はしない。

 つまりこの作戦が上手くいけば、ラオウとシンと衝突させる事が出来るのだ。

 いかにラオウといえど、シンと戦えば無傷では済まない。勝利しても拳王軍はほぼ壊滅するだろう。

 そうなれば後に戦うケンシロウが圧倒的に有利になる。

 ……とはいえ、それはあくまで次善策。最善はここでヒューイが勝利する事。

 この場で拳王を倒してしまえば何の問題もないのだ。

 だからこそヒューイは自らの勝利と実力を信じ、ラオウに無数の手刀から発生する風の刃を浴びせた。

 

「そんな柔な拳ではこの身体に傷一つ付ける事は出来ぬ!」

 

 しかしヒューイの放った刃はラオウどころか、その身に纏う鎧すら砕くには程遠い。

 ラオウはヒューイの貧弱さを笑い、本当の攻撃はどういうものかとお手本を示すように拳を握り込んだ。

 

「ぬう!!」

 

 繰り出されたラオウの巨拳!

 結構呑気してたヒューイも拳が一瞬巨大に見えるほどの圧力にはビビった!

 

「ぐは!!」

 

 ズシャ、と地面に墜落しヒューイは大量の血を吐き出した。

 たったの一撃だったが、それだけで身体中の骨がへし折れ、内臓が潰れてしまった。

 明らかな致命傷だ。もうヒューイは助からない。

 だがヒューイは遠のく意識の中で、作戦の成功を確信していた。

 敗れはしたが、これでラオウの興味を引く事は出来た。後はラオウが南斗の都を目指し、その道中でサザンクロスとぶつかるだけだ。

 未来にある将の勝利を信じ、目を閉じようとする――その瞬間、伝書鳩がヒューイの身体を過ぎった。

 

「む……どこの伝書鳩だ? 撃ち落とせい!」

 

 伝書鳩の足に手紙が括りつけられている。

 その事を一目で見抜いたラオウは部下に伝書鳩を攻撃するよう指示し、放たれた矢が無情にも鳩を地に堕とした。

 すぐに拳王軍の部下が手紙と鳩を回収し、手紙をラオウへ届ける。

 鳩も今の時代では貴重な鳥肉だ。後で調理され、食卓に上がるだろう。

 渡された手紙を確認し……ラオウは、薄笑いを浮かべた。

 

「なるほど……最後の将は俺とシンを戦わせ、自らは巻き添えを食う前に都を離れたか」

「……っ!」

 

 ラオウの言葉に、声を出す事も出来ないヒューイが驚愕した。

 それは確かに最後の将の……いや、リハクの策に間違いない。

 だがそれを手紙で持ってくるとはどういうつもりだ!?

 リハクが何を考えているのか分からず、ヒューイは意識が死に近付いていくのを実感しながら戦慄く事しか出来ない。

 

「手紙の到着が一歩遅かったな」

 

 ラオウが哀れむように言う。手紙には以下の内容が記されていた。

 予定を変更し、最後の将の安全を最優先し拳王軍との対決を避ける事に決めた事。

 拳王軍を挑発・誘導してサザンクロスにぶつける事。

 その為にヒューイはここで死なずにラオウを挑発だけして撤退して欲しいという事。

 退却後は速やかに同封した地図に記したリハクの城に向かい、合流して欲しいという事。

 これらの内容からラオウは推察する。

 恐らく、最後の将と五車星は元々はラオウと対決する気だったのだろう。

 しかし彼我の戦力を分析して自分達では勝てない……あるいは最後の将の身に危機が迫ると結論付けた。

 そこで予定を変えて拳王軍をサザンクロスにぶつけようと考えたのだ。そうすればどちらが勝つにしても確実に弱らせる事が出来る。

 南斗の都の位置はサザンクロスの後ろ。即ちラオウが最後の将を目指せば必然的にサザンクロスが邪魔になる。

 ラオウに迂回の選択肢はない。そしてシンもまた拳王軍に自領を素通りさせる事はないだろう。

 即ち激突必至。この手紙の主はそれを狙ったに違いない。

 そして巻き添えを食わぬように自分達は移動し、このままではラオウに挑んで死んでしまうだろうヒューイに予定変更の書を出したのだ。

 だがそれは一手遅かった。ヒューイは既に致命傷を負い、そして最後の将にとって最悪な事に手紙はこのラオウの手に渡ってしまった……というわけだ。

 

 違う、とヒューイは叫びたかった。

 作戦内容そのものは確かにリハクの語った通りだが、全てがその通りではない。

 ヒューイは最初からその作戦を知っていたし、リハクの城の位置も知っている。わざわざ手紙で知らされる必要などない。

 何よりヒューイに下された命令は『命を賭してラオウを誘い出す事』! 命を惜しんで挑発だけして撤退しろなどと、リハクは命じていない!

 そしてその使命は果たした。間違いなく上手くいったのだ。

 ヒューイの命を餌としてラオウの興味という大魚を釣り上げた。後はこのままラオウが最後の将のいるはずの都を目指し、その途中でサザンクロスと衝突……そこで死ぬか、勝利しても消耗するかのどちらかになるはずだった。

 なのに何故、それを台無しにするような手紙を……!?

 

 ――馬鹿な……リハク、何を考えて……!?

 

 その疑問への答えをヒューイが得る事は永遠にない。

 己の死をたったの一枚の手紙で無駄死にと変えられてしまった事への疑問と怒り、失望を抱きながら風の男は事切れた。

 

 

リハク「それわしの出した手紙じゃねーし……てゆーか何で別の誰かが出した偽の手紙って思わないかな」

ヒューイ「リハクなら正直このくらいやっても不思議じゃないかなって。そもそも原作で無駄に俺を突撃させて最後の将に興味を示してなかったラオウの興味を無駄に引いたのがもう意味不明だし。あれ、そもそも俺やシュレンをラオウにぶつけずにこっそりケンシロウ様とユリア様を合流させりゃよかったんじゃね?」

リハク「…………う、うっせー、ばーか」

 

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