シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十五話 ここは私の故郷。私はここで生まれ育った

 正直なところ、外に行かせた時点で俺はジュウザの生存をほぼ諦めていた。

 絶対リハクの部下が接触してくるし、ユリアと再会したら「お前の命を私にくれ」と言われるだろう。

 ジュウザはユリアの為ならば喜んでラオウに挑むが、残念ながらラオウには勝てない。

 なのでジュウザの死はほぼ確定……と思っていたのだ。

 しかしケンシロウを追ったのが運命を変えたらしい。

 ケンシロウを遠くから監視させている部下からの報告によると、サザンクロスを出た後にジュウザは無事ケンシロウと合流し、ケンシロウと一戦を交えたようだ。

 そしてケンシロウを一発殴ってスッキリしたのか、それともケンシロウの強さと人々を救う姿に心を打たれたのか、最終的には負けを認めてケンシロウと意気投合した。

 その後フドウが原作通りケンシロウに接触したが、ここで問題が起きた。

 本来ならばフドウがケンシロウを都に連れて行くまでの時間稼ぎをするはずだったジュウザが、ケンシロウと一緒にいたのだ。

 つまりこの時点でジュウザを城に連れて行く→ユリアと再会させる→ラオウにぶつけるの流れが不可能となった。

 

 ジュウザという足止め役がいなくなった事による変化は大きかった。

 拳王軍はあっさりとリハクの城に到着し、城を破壊し尽くしてユリアを誘拐してしまったらしい。

 これリハク、もしかして死んだか……?

 まあ俺にとっては世界統一の妨げとなる敵なので死んでてくれた方が有難いっちゃ有難いが、死んだら死んだで何か妙な悲しさがあるな。

 何だろう……上手く言えないのだが、他の五車星を死なせておいて自分だけ生き残りつつ「見えなかった! この海のリハクの眼をもってしても!」とか言っていて欲しかったというか。

 うん、我ながら歪んだ感想だな。いやまあ、まだ死んだと決まったわけじゃないが。

 で、一方俺はトキを連れて、トキが生まれ育ったという約束の地に到着した。

 トキは四つの小さな墓の前に座り、思い出すように語る。

 

「ここは私の心の故郷。私はここで生まれ育ったも同然」

 

 何やら、少し俺の知っている台詞と違う気がする。

 原作だと「ここは私の故郷。私はここで生まれ育った」と断言していた気がするんだが。

 やはりあれは言葉のあやで、肝心な部分を省いてしまっていただけなのだろうか。

 しかしこの墓……父親はともかく母親はどういう事だ? トキの母は修羅の国で死んだはずだが。

 分骨か、それとも育ての母なのか。

 

「どうした、シン。何か聞きたそうな顔をしているが」

「……何でもない。気にするな」

 

 凄く聞きたい……だがこれは俺が知っているはずのない情報だ。ここで話せば不信感を植え付けるだろう。

 多分、父の再婚相手とか、そんなオチだとは思うのだが。

 俺がもやもやしていると、何者かがこちらに近付いて来る気配を感じた。

 ラオウかと一瞬思い、身構えるも、現れたのはケンシロウ一行だった。

 ケンシロウ、リン、バットの三人に加え、ジュウザとフドウの五人組だ。多分、リハクの城を目指して移動中なのだろうが、もう手遅れだぞ。

 というか今更ながらリハクは何でケンシロウの迎えにフドウを寄越した?

 鈍足だけど強いフドウはユリアの守りに回して、適当な部下をバイクに乗せて迎えに行かせてケンシロウをバイクに乗せればよかったのでは……。

 フドウの図体じゃ乗れるバイクがないから徒歩にしかならないし、案内役のフドウが徒歩ではケンシロウもそれに合わせるしかない。マジで人選ミスだろ、これ。

 一方ジュウザは、何が気になるのか何度もトキを見返しては首を傾げている。

 

「ケンシロウか。何故ここに?」

「リンが、この地に呼ばれている気がすると言ってな……」

 

 トキの質問にケンシロウが答え、祈るように手を組んでいるリンを見る。

 宿命の瞬間に兄弟を巡り合わせた幼い導き手にケンシロウとトキは優しく微笑むが、俺は内心戦慄していた。

 え……何それ、怖……。

 リンの北斗ホーミング性能高すぎないか?

 まあこのくらい出来ないと、広い荒野に飛び出してケンシロウとピンポイントで合流するなんて出来ないのかもしれないが、それにしても大概おかしい能力してるなこの天帝。

 何が何でも北斗の男を見付けだして自分を守護させようという天帝の本能のなせる業だとでもいうのか!?

 

「ふっ……父と母が我等をこの地に呼び寄せたか」

 

 しばらく話していると、重い足音を響かせてラオウと黒王がやって来た。

 一瞬、部下も連れてきていないかと周囲を見回すが、どうやらラオウと黒王だけでここまで来たようだ。

 まだリハクの城が落とされたばかりなので、多分拳王府に帰る途中なのだろう。

 戦利品のユリアを部下に預け、自分だけでこの地に来たというわけか。

 ラオウは俺達を一人一人見て、そしてフドウとジュウザを見付けて視線を止めた。

 

「フドウとジュウザか……なるほど、うぬ等がケンシロウを迎える役目であったか。道理で手応えがないわけよ。最後の将を守護する『山』と『雲』とはうぬ等の事に違いないか?」

「まあ一応そうなるかな。俺は正直、どうでもいいんだがな」

 

 ラオウの問いにジュウザがへらへらしながら答えた。

 その返答にラオウはおかしなものを見るような視線を寄越し、その態度にジュウザが訝しむ。

 一方フドウは険しい顔で冷や汗をかき、ラオウを睨んでいた。

 

「ラオウ……ここにいるという事は、まさか……!」

「その通りだフドウ。最後の将は俺がもらったわ……うぬ等は出遅れたのだ」

 

 ラオウはそう言い、兜をフドウの足元に投げて寄越した。

 それは確かに最後の将が被っていた兜であり、フドウはワナワナと震えている。

 そんなフドウの様子を見て、ジュウザはまだ気楽に「あーらら」などと言っている。

 

「ほう……冷静だな、ジュウザよ。うぬが一番取り乱すと思っていたが」

「俺が取り乱すだって? へっ、冗談だろ。最後の将か何か知らねえが、お前の手に落ちたなら所詮その程度の()だったって事だ。どうなろうと俺には関係ねえ」

 

 軽薄に笑いながらジュウザが肩をすくめる。

 しかしその姿がラオウに一つの確信を抱かせたらしい。

 ラオウは思わずといった様子で吹き出し、やがて大笑いをあげた。

 

「ふっ……ふはははははは! そうか、そういう事か! 先程から何かおかしいと思っていたが……ジュウザよ、うぬは最後の将の正体を聞かされておらぬと見た!」

「あん? その通りさ。俺は最後の将の鎧の中身も知らねえ。自分の顔も見せねえ、声も聞かせねえ……五車星の使命だか何だか知らねえが、腹を割って話す事すら出来ねえような()なんぞ、命を張って守る価値なんかねえだろ」

 

 ジュウザの言葉は、まあ否定出来るものではないだろう。

 誰もが生きるだけで精一杯なこの世の中で、『最後の将だから』というだけの理由で自分は五車星に守られて当然とふんぞり返り、自分の声も姿も相手に明かさない気に食わない奴――それがジュウザ視点で見た最後の将だ。

 確かにそんな奴を守ろうと思わないのは当然の事。俺がジュウザの立場でも見捨てるだろう。

 何故なら守ろうにも、その守る対象がどんな奴なのかすら分からないのだ。

 とんでもない下衆かもしれないし、威張るしか能のない間抜けかもしれない。

 ジュウザには『五車星が守らないといけない最後の将』という情報しかなかったのだ。

 つまりジュウザ自身が守りたいと思うモチベーションが皆無で、義務だけが押し付けられていたようなもの。これでジュウザが動くわけがない。

 

「冷たい同胞達だ。フドウよ、うぬの口からジュウザに真実を伝えてやってはどうだ?」

 

 ラオウは一呼吸を置き、ジュウザを……そしてケンシロウを嘲笑うように語った。

 

「――最後の将の正体はユリアだとな!」

「――っ!!」

「……!」

 

 ラオウの吐き出した真実に、飄々としていたジュウザと、無表情で事の成り行きを見守っていたケンシロウの顔色が変わった。

 ジュウザの顔からは一瞬で笑みが消え、傾奇者の仮面が脆く剥がれ落ちる。

 

「……! ユ、ユリア!?」

「ど、どういう事だ……!?」

 

 今、二人の頭の中には様々な考えが浮かんでは消え、混乱している事だろう。

 これは動揺狙いの嘘なのか、だがここで自分達を動揺させて何の意味があるのか。フドウは何故否定しないのか。事実ならば何故教えてくれなかったのか。

 信じたいという思いと信じたくないという思いが交差し、表情が不安定に何度も変わる。

 その一方でトキは他の三人に比べると反応が薄く、僅かに冷や汗をかいているだけだ。

 

「その反応……知っていたか、トキ」

「ああ。かつて私の村に最後の将が治療の為に訪れた事がある……その時に最後の将から、ユリアと同じ風を感じた。そしてシン、お前も……」

「可能性は高いと踏んでいた。ユリアは南斗正当血統であり、そもそもユリアを誘拐したリュウガはあやつの兄だ。だが確証はなかった」

 

 俺が聞くと、トキは何故ユリアの生存を知っていたのか理由を語った。

 ケンシロウに教えなかったのは、トキ自身確証が持てなかったからだろう。

 一方俺は実は確証を持っていたのだが、その確証の出所は前世知識だ。

 なので前世知識抜きで考えた場合、俺も実はユリア=最後の将と断定するだけの情報は得ていない。つまり嘘は吐いていないのでジュウザよ、俺を睨むな。

 

「俺も驚いたわ。最後の将を討ちに向かってみれば、まさか将の正体が追い求め続けたユリアだったとはな!」

 

 そしてラオウも、原作と違ってジュウザと戦っていないので最後の将の正体に気付かないまま城に攻め込んだようだ。

 そしていざ殺そうとしてみればユリアだったのだから、ラオウの驚きは大きかっただろう。

 ラオウは勝ち誇ったように笑い、ケンシロウ達は歯噛みする。

 

「……ここまできては隠す意味はもうないでしょう。ラオウの言う通りです、ケンシロウさん。

我等五車星の守るべき南斗六聖慈母星、最後の将とはユリア様なのです!

そしてラオウよりも先にケンシロウさんをユリア様と会わせる事が私の使命でした」

「フフフ……雲が動かなかったのが痛手だったな。おかげで楽に攻め入れたぞ」

 

 フドウの告白とラオウの嘲笑に、ジュウザがワナワナと震えた。

 ジュウザ視点だとリハクの「ラオウの足止めをしてくれ」という要求を再三突っぱね続け、いざ最後の将が誘拐されてみればそれがまさかの愛した女だったのだ。

 きっとジュウザの中には怒りと後悔が渦巻いている事だろう。

 

「な、何故……何故俺にそれを言わなかったーーーっ!! 知れば疾風となってユリアの下へ走り、ラオウとも戦ったものをーーー!!」

 

 ジュウザは叫んだ。

 いや、ほんとな。マジでそれ。何でリハクはジュウザを仲間外れにしたんだろう。

 そいつ六星にも匹敵する最大戦力だろ。一番ハブっちゃ駄目な男だと思うんだが。

 むしろジュウザの性格的に最後の将をいつまでも『五車星の使命で守らないといけないらしい、見知らぬ男』のままにしたら、そりゃ動かないだろうとしか……。

 まあきっとリハクなりに何か考えがあって、リハクなりに肝心なものを見落としてこの結果になったんだろうが。

 可能性としては、ジュウザがユリアにアプローチして落としてしまう可能性を危惧した……とかか?

 万一にでもケンシロウ以外とくっつかれては困るから、ユリアに特別な感情を向けているジュウザにはギリギリまで伝えるべきではないと思ったのかもしれない。

 まあどちらにせよ、リハクは打つべき手と明かすべき情報を間違えた。あいついつも間違えてばっかだな。

 こんな時はきっと、あの迷台詞を聞けるのだろうが、残念ながらこの場にリハクはいない。

 なので今回は代わりに俺が言ってやろう。

 

「こんな結果になろうとはな……見通せなかったわ。この俺の目をもってしても」

 

 とりあえずこれで、俺が最後の将の正体を知っていながらも教えなかった最低限の言い訳にはなっただろう。リハクだってこれで大体許されてるしいけるいける。

 駄目なら次は伝家の宝刀『一生の不覚!』でも試してみよう。

 俺がユリアの事をジュウザに伝えなかった理由は単純に、ユリアの事を知ればほぼ確定でジュウザがユリアの為に戦って死ぬからだ。

 そしてケンシロウに伝えなかった理由は、早い段階で伝えてしまうとケンシロウはユリアの為に南斗の都に留まってしまい、原作のように悪党を殺して回る世紀末クリーパーをやってくれなくなるからだ。

 それに俺は慈母星軍との敵対も視野に入れていた。そしてもし衝突するとなった時、ケンシロウが向こうにいると面倒だ。だから伝えなかった。

 ……というのが本音だがそんな事を言うほど俺は正直者ではないし誠実でもない。

 だからここは、別の言い訳を用意している。

 

「将の正体を知らなければラオウは興味を示さぬだろうと思っていたのだがな……リハクの奴はどうやら藪を突いたらしい。愚かな男よ」

 

 嘘は吐いていない。

 ラオウをリハクの城に誘導したのは俺だが、無駄にヒューイをけしかけてラオウの興味を誘ったのは間違いなくリハクだ。

 そもそも先にこっちにラオウをトレインしようとしたのは向こうなのだ。文句を言われる筋合いはない。

 ……しかしこれ、この世界が漫画として見られていたら『KING節穴説』とか出てそうだな。

 まあ北斗キャラは時々無能ムーブするくらいで丁度いいみたいな部分あるし、別にいいか。

 

 

もしこの世界線が漫画になってたらシンの見通せなかった発言は「ケンとジュウザの追及を逃れるための嘘だよ」派と「シンは割とアホだからマジで見通せなかったよ」派と「これ『リハクがここまで馬鹿だと思わなかったわwww』って煽ってるだけじゃね?」派の議論が起こってそう。

まさか三つ全部正解とは思うまい。

追及を逃れるための嘘:その通り

マジで見通せなかった:ジュウザは死ぬと思ってたからこれもその通り

リハクを煽ってる:その通り

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