シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十八話 死体は切り刻んで畑にまきなさあい! それが荒れ地を蘇らせる早道じゃからねえ!

 ――今、俺の前には気まずさという名の地獄の光景が広がっていた。

 一つのテーブルを囲み、俺を始めとするサザンクロス首脳陣に南斗六聖のシュウ、レイ……更に反対側にはラオウ、ケンシロウ、ジャギの北斗ブラザーズに、南斗五車星のリハク、フドウ、ジュウザまでもが一堂に会して食事を取っていた。

 重苦しい沈黙の中でカチャカチャという食器の音だけが響き、ラオウも黙々とゆで卵を食べている。

 意外な事にラオウとジュウザは好物が同じなのか、二人とも卵料理しか注文していない。

 ラオウから料理の注文を受けている料理長はあまりのプレッシャーに「わァ……ァ……」と震えていた。泣いちゃった!

 俺の隣に座るダンネは居心地が悪いのか、今にもこの場を離れたそうだ。

 前回のあの見事なトキの最期から一体何をどうしてこんなカオスな光景へと繋がってしまったのか……それを語る為にトキが死んだ所から話そう。

 

 ラオウとの戦いの後、ほどなくしてトキが逝った。

 女医の言葉によると、穏やかで満足したような最期だったという。

 見事だった、と心から思う。

 前も少し話したが、俺はどうせトキは勝てないと奴を軽んじていた。

 もしかしたら、トキならあるいは……そんな期待を抱きながらも、それでも心の根幹には諦めがあったし、トキが負けた後の事ばかりを考えていた。

 しかしトキは俺のそんな浅い予想を覆し、運命を変えてみせた……ラオウに勝利した。

 そんな光景を見せられては、俺の間違いを全面的に認めるしかないだろう。

 俺はトキという男を、大きく見誤っていたのだと。

 そしてトキの勝利が、俺の知る運命の流れを大きく変えた。

 ラオウは生きているが、『世紀末覇者拳王』は死んだ。

 ラオウ自らが拳王の敗北を部下達に伝え、拳王軍の解体を宣言したのだ。

これにより勢力間の戦力バランスが崩れ、サザンクロス一強時代が到来した。

 とはいえ拳王軍の脅威が完全に消えたわけではなく、ラオウを無視して残党と化した馬鹿共があちこちで暴れているようだ。

 元々拳王軍は、ただ好き放題したいだけのヒャッハーが過半数を占めている。

 そんな連中が、ラオウが拳王軍を解体すると言っただけで大人しくなって今日から僕達真面目に生きます……なんてことに、なるわけがない。

 その結果、拳王軍解体に賛同しなかった馬鹿共が独立して残党と化すのは至極当然の成り行きであった。

 そのトップを務めるのは拳王軍の元副軍師ウサという男だ。

 ……ジョーカーからの報告で一応『拳王軍の軍師にそういう名前の奴がいる』と名前だけは知っていたが、あまり覚えのない名前だ。小物である事は間違いないだろう。

 ラオウの敗北を知ったウサは拳王軍解体に納得がいかない暴漢達を連れて独立してしまった。

 ここまでは予想の範疇だった。

 愚かだと思うし、勝ち目がない事も理解出来ないのかと呆れもするが……まあ、そういう連中が固まって残党軍が出来るだろうとは俺も予想していた。

 だが、ウサよりも更に愚かな行動に出た小物がいた。

 思慮の浅い小物の行動は時に、こちらの予想を上回る……いや、下回る。

 「まさかここまで馬鹿じゃないだろう」とこちらが考え、予測から除外した行動を平然とやったりするのだ。

 その男の名は元拳王軍総参謀ギラク。マントをハンググライダーのようにして空を飛ぶ、なかなか便利そうな技を持つ男だ。

 こいつは何を血迷ったのか、何とユリアを誘拐して海の向こう――即ち修羅の国へ逃げてしまったという。

 ラオウの後ろ盾を得られなくなったこの地を捨て、ユリアを手土産に修羅の国に取り入ろうとした……のだろうか?

 それとも、ラオウが修羅の国を目指すという情報を先に得て、ラオウが執着しているユリアを連れて修羅の国に先回りしてラオウに再び拳王になるように説得しようとした?

 まさかユリアの色香に狂って、ラオウが追って来られないだろう場所として修羅の国まで飛んで逃げた?

 どちらにせよ愚かとしかいいようがない。

 ともかくユリアとケンシロウはまたしても再会出来ず、ケンシロウはユリアを助けるべく海を渡る事を決めた。

 ケンシロウの他に、元々修羅の国にいつか戻る気だったラオウと、五車星のジュウザとフドウ、更にしぶとく生きていたらしいリハクも同行するようだ。

 やはり修羅の国か。いつ出発する? 私は同行しない。

 ……行かないのかって? 必要ないだろう。そもそも俺にユリアをそこまでして助ける理由がない。

 それに今は拳王軍残党の処理で忙しいのだ。今俺がこの地を離れるわけにはいかない。

 早急に残党の馬鹿共を皆殺しにして領土を広げ、この地に秩序を齎さなければならんのだ。

 まあ大丈夫だろう。ケンシロウに加えてラオウとジュウザとフドウまでいるのだ。この面子ならそのままカイオウまで倒して修羅の国を潰してくれるかもしれない。そうなれば後々海の向こうに支配域を広げる際に楽になる。

 万一敗れても、大ダメージを与える事は間違いない。どちらに転んでも俺にとっては得だ。

 

 そんなわけで俺はケンシロウ達には船だけ貸してやる事にし、今は船を出すまでの待機として全員がこのKINGシティに集まっている。

 しかし雰囲気が……雰囲気が重い!

 ラオウは覇道を降りたとはいえ、つい先日まで俺と覇を競っていた相手であり、おまけにユリアを誘拐して慈母星軍を壊滅させた張本人だ。

 なのでリハク、フドウ、ジュウザからは敵意を変わらず向けられているし、ついでに俺も慈母星軍と敵対関係にあるのでこっちはこっちで空気が重い。

 

「それにしても……まさかトキ様がラオウに勝利して止めなさるとは……読めなかった……この海のリハクの目をもってしても」

 

 フドウとハートに挟まれる位置に座っているリハクが悔いるように言い、顔を伏せる。

 やはり読めてなかったか、と思うもこれは仕方ない。

 俺だって、まさかこんな展開になるとは流石に思わなかった。

 

「お許し下され、ケンシロウさん。我等が余計な事をしたばかりにユリア様は……このリハク一生の不覚!」

「……いいんだ」

 

 リハクの謝罪に、ケンシロウは気にしないように告げる。

 こいつなんだかんだで心広いよな。

 今、軽くユリアの位置にサラを置き換えて俺だったら許せるか想像してみたんだが、俺だったら二秒でキレてリハクを殺している。

 というかリハク、お前はケンシロウより先にジュウザに謝った方がいいんじゃないか?

 さっきからジュウザがめっちゃお前の事睨んでるぞ。

 あまりの空気の悪さに、隣のダンネが何とかしろと俺の脇腹を何度も小突いてくる。

 これを何とかしろと言われてもな……いっそ、ここにジェネリックトキを……いや、止めよう。

 流石にラオウにマジで殺されそうだ、ジェネリックトキが。

 

「ケンシロウ、ラオウ……こちらの事は気にするな。残党如き、俺が全て始末する。

貴様等は後ろを気にせずに修羅の国へ行くがいい」

「ああ……ありがとう、シン」

「……俺も堕ちたものよ……自らの不始末を他者に委ねるとは」

 

 ケンシロウとラオウが返事をし、ラオウは複雑そうに顔を歪めた。

 命令に従わない間抜けな残党とはいえ、それでもかつてのラオウの部下だ。思うところはあるのだろう。

 そして二人の間で、何故か挟まれる位置に座ってしまったジャギは哀れにも縮こまっていた。

 

「ところでジャギ、貴様も修羅の国に行くのか?」

「…………!!」

 

 俺の問いにジャギはブンブン、と勢いよく首を横に振った。

 余りに勢いがよすぎてヘルメットがラオウの肩に当たり、ラオウの機嫌が悪くなる。

 なんだ、行かないのか。

 まあジャギは修羅の国に何の因縁もないし、そりゃそうか。

 

「船はビジャマに改修させた戦艦を用意してある。船長はラオウの部下の赤鯱とやらが務めるという事でいいな?」

「ああ。船を操る事にかけて奴以上の男はおらん」

 

 修羅の国に渡るにあたって、元拳王軍や慈母星軍の兵士も大勢同行する。

 なので赤鯱の海賊船だけでは全員を運びきれず、俺が船を用意する事になったわけだ。

 これに関して、別に俺に反対する理由もないので許諾しておいた。

 ラオウが修羅の国に突撃してくれるのは好都合だし、今後厄介になりそうな兵士達を連れて行ってくれるなら喜ばしい事だ。

 まあ、多分……弱い奴はほとんど向こうで死ぬだろうがな。

 

 さて、何人生きて帰って来るものか。

 

 

「では、各部隊の成果を聞かせてもらおうか」

 

 俺は玉座に腰かけながら、大広間に集った我が部下達、及び協力者達を睥睨する。

 一般兵はこれだけで怯んでしまうが、部隊長レベルにもなれば耐性も出来ているようで揺らぎもしない。いい傾向だ。俺が睨んだだけで怯むような軟弱者が上にいては困るからな。

 すると、まず最初にハートが腹をボヨンボヨンと叩きながら前に出た。

 

「ブッヒッヒッヒ。ハート軍は拳王軍残党占領下の町に侵攻し、残党を始末しました。指揮官のレギドは生捕りにしてあります」

 

 ハートがそう言い、見知らぬ男を俺の前に放り投げた。

 知らん奴だな……拳王軍で要職に就いていたならば俺も名前くらいは知っていてもいいのだが。

 さしずめ、ラオウがトップの時は活躍出来なかったような、小賢しく頭を使うタイプなのだろう。

 

「我がスペード軍はデビルリバースと協力して、国境に攻め込もうとしていた馬鹿共を全て消した。全て殺してしまったから指揮官が誰だったのかは分からん」

「構わん、よくやった」

 

 以前から引き続き国境警備を担当させているコウリュウは随分拳の勘を取り戻しているようで、絶好調だ。今ならトキと戦う前のラオウが相手ならいい勝負が出来たかもしれない。

 コウリュウが死なせてしまったらしい指揮官は多分拳王軍の元幹部の誰かだとは思うが、どうでもいいだろう。死人になど興味はない。

 そもそも生捕り自体が「余裕があればやっておいてくれ」程度の重要度の低さである。

 まず自軍の被害を出さない事が最優先。生捕りはあくまで、その最優先を果たせる事前提の追加指示であり、生捕りに拘って兵士を失うくらいならば無理せず仕留めろと言い聞かせている。

 兵士一人であろうと、一人前になるまで鍛えるのは大変なのだ。それを失うくらいならば、敵軍の将なんぞ死体にして構わん。

 それにどうせ生捕りにしても80%は処刑、20%は強制労働だ。

 その20%も本当に改心して真面目に働くようになる奴なぞ1%で、残る19%はカスのままなので、そのまま死ぬまで働くか、反抗的になるので結局始末するかのどちらかだ。

 ぶっちゃけ、結果を見れば生捕りにせず殺すのとあまり変わらん。何なら餌代がかからなくて済む分、討ち取った方がいいまである。

 

「ダイヤ軍、拳王府を制圧しました。城を占拠していた残党は殲滅し、指揮官のゲルニは捕らえました」

「クラブ軍、新生智将軍を名乗っていた残党を処理した。指揮官のギオンは捕らえたが、それ以外の雑魚共は実験台にしていいか?」

「いいだろう。好きに使え」

 

 カレンとビジャマもそれぞれ任せた地域を制圧し、残党を順調に処理してくれたようだ。

 ビジャマは実験台として残党を欲したのでくれてやったが、それなら今回の褒美は少な目でいいだろう。

 実験台にされる残党がどうなるかは知らん。まあロクな目に遭わないだろうが、今日まで散々好き勝手やって村人を虐殺してたような連中だ。ここで死ななくてもどうせそのうちケンシロウに爆死させられてただろうし、結末は変わらない。

 ああ、そうそう。ビジャマにはクラブの後を継がせて今では四重臣の地位に置いている。

 不満が出ない程度の幹部の座として、クラブの椅子は丁度良かった。

 

「アスガルズル軍、野盗団を七つ殲滅し、支配されていた村を解放しました。サザンクロス領への編入を希望されています」

「そちらで調査をし、問題ないと判断したら入れて構わん。ただし前科のある者、少しでも怪しいと思う奴がいたら俺に報告しろ」

 

 アスガルズル女王改め、アスガルズル領主ユウに、村の扱いを任せて下がらせる。

 元々は国だったアスガルズルだが、サザンクロスに編入するにあたって国ではなく領に格下げした。

 国という形を残してしまうと、今はよくても後で絶対に独立やら内戦やらの火種になるので、あくまで領の一つとしている。

 

 それから四大軍団の他にもサンダー軍団やブラックバード軍団からも残党狩りの報告を聞き、俺は急速にサザンクロス領が広がっているのを実感した。

 何ともまあ他愛ない。サウザーとラオウがいないだけで、こうも手応えがなくなるか。

 とはいえ、本当に大変なのはここからだ。

 支配とは、領土を広げてトップに立ってそれで終わりではない。むしろそこからが真に手腕を問われる本番だ。

 

「さて……まずは捕らえた連中だな。指揮官連中は全員、前に出ろ」

 

 俺の命令に、指揮官共が震えながら前に出た。

 

「これから貴様等の処遇を決める。だが使い道があれば生かしてやってもいい。この場で自己アピールをしてみせろ。使い道がなければ殺す」

 

 俺の言葉に指揮官共はビクリと震えた。

 裁判? そんなものはない。ここでは俺が法だ。

 そもそもこいつ等全員、戦争前なら確定で死刑になるような奴ばかりだ。生存チャンスがあるだけむしろ有情だろう。

 

「お、俺は! 俺は千人の部下を率いていた! いくつもの村を滅ぼし、自警団を叩き潰した実績がある! 俺は役に立てる!」

「私はラオウに敗れる前は複数の野盗を率いた派閥の長でした! どうか、どうか温情を!」

「わ、私はかつて知将軍を率いておりました! 我が知略、必ずやお役に立てるものと!」

「お、お許し下さい……どうか、どうか……わしはただ、虐げられる生活から脱したくて……」

 

 俺は指揮官共を見て、溜息を吐きたくなった。

 どれもこれも、まるで駄目だ。とりあえず村を滅ぼしたと自慢している馬鹿と野盗を率いていたカスはこの場で処刑するとして、後はどうするかな。

 自称知将も小賢しい悪知恵だけ働くタイプだろうし、あまり期待は出来ない。

 むしろこういうタイプは変に温情をかけてしまうと、最初は従順でも後になって反乱を企てる可能性がある。

 強制労働させようにも体力もあるようには見えないし……まあ、一応様子見してみるか。

 分かっていた事だが今回は全部外れか……そう思いかけた所でふと、俺は一人の男を見て視線を止めた。

 ……ほう。やはり一応確認だけはしておくものだな。いるではないか、()()()()が。

 

「そこの男、名を名乗れ」

「はい! 俺はかつて拳王様に仕え、仲間からは切込み隊長のジンバと……」

 

 俺の命令を無視して勝手に喋り出した馬鹿を、無言で蹴り飛ばしてジェネリックトキの前に転がして黙らせた。

 

「貴様ではない、邪魔だ。アミバ、そいつは秘孔の実験台にしていいぞ」

「ある秘孔を突く事で身体の痛みは数倍になる」

「ひぎっ!?」

「しかしその痛みと引き換えに身体の痛みは数倍になる」

「やめてくれえ!?」

 

 ジェネリックトキが遠慮なくジンバとやらの秘孔を突き始める。まさに悪魔だな……。

 あいつ、木偶を与えると勝手に他人の刹活孔を突くとかいう外道をやり始めるけど、最近刹活孔を突かれた木偶の寿命がちょっとずつ伸びてるんだよな……。

 そのうちノーリスク刹活孔とか発見するんじゃないかと密かに期待している。それはともかく……。

 

「そこの跪いているスーツの男……貴様の名を聞いている」

「ひいい~! お許しを……どうかお許しを!」

 

 俺に声をかけられていると気付き、ひたすら土下座の姿勢を取り続けている男は、恐怖のあまり足元に水溜まりが出来ていた。

 こいつ、俺の城で粗相を……!

 ……いや、だが……許そう。この男が俺の知っているあの男ならば、このくらいは見逃してやる。

 

「名乗れと言った」

「はひいい……わ、私は……私はコウケツと申します。た、ただの馬の世話係でございます……」

 

 俺は思わず笑いそうになるのを堪えた。

 思った通り……この世紀末でスーツなんか着ているから、やけに目立つとは思ったのだ。

 

「ただの馬の世話係か……その世話係が何故拳王軍から独立をした?」

「わ、私は、拳王軍ではドブネズミと呼ばれ、虐げられておりました……だ、だから……見返そうと思い、私の持っている農業の知識で……私の農場を作り……食料で今まで私を虐げて来た連中を見返し、いずれはこき使ってやろうと……夢を、夢を見ていただけなのでございます! どうか、どうかお許しを!」

 

 これは俺の勝手な意見だが、原作世界においてこのコウケツという男はケンシロウと同じかそれ以上に世界に貢献した男だと思っている。

 ケンシロウはどこまでいっても引き算だ。野盗や悪党を始末して民を守る事はするが、民に新しいものを与える事は出来ない。

 あいつは何も生み出せない。倒すべき悪がいなければ、ただの置物と化す。

 確かにこの世紀末においてケンシロウは救世主だろう。だがより正確に言えば、ケンシロウという男は()()()()()()()()()()のだ。

 弱者を虐げて笑っている悪党の『今日』を終わらせる事は出来ても、腹を空かせて泣いている子供達が腹一杯食べられる『明日』を作る事は出来ない。

 ケンシロウを不要と言っているわけではない。むしろ間違いなく必要だ。

 だが俺の目指す最終地点は『ケンシロウが不要になる世界』なのだ。

 世界は救世主を求めている? 違うな、本当に求めているのは『救世主がいらない世界』だ。

 救世主が必要になった時点で既に、世界は涙と苦しみに満ちている。

 

 そしてコウケツの功績は足し算! 農場を開拓し、食料を安定して供給出来る場を作り上げた。

 それは原作初期のミスミ爺さんの目指した、食料を奪うのではなく作り上げる世界だ。

 ある意味で『今日より明日』を誰よりも実践したのがこの男だと俺は思う。

 間違いなく、この男の作り上げた農場は多くの人間を明日に生かしただろう。

 悪党には違いない。外道畜生の類だろう。

 だがそれを差し引いても、この男は生かすに値する。

 そもそもこの時点だと馬の世話しかしてないはずだから、何の悪行も働いてないだろうしな。

 

「農場か……どの程度の規模だった?」

「我々が確認したところ、それほど広くはありませんでしたが、確かに畑が確認されました。その男の言葉は事実かと」

 

 コウケツを捕らえた部隊長に話を聞くと、確かに狭いながら既に開拓が始まっていたようだ。

 このまま行けばゆくゆくは農場を広げて原作のような巨大農場を作り上げ、一大勢力を築いていたのだろう。そしてケンシロウに爆死させられてしまうだろう。それはあまりに惜しい。

 それにこいつは、クソ野郎である事は間違いないが、制御できるタイプのクソ野郎だと俺は思っている。

 こいつの原作での主な悪事は元拳王軍の猛将バルガとその部下達の子供を人質にしてコキ使っていた事だろう。

 しかしバルガ達は本当にただの可哀想な被害者だろうか。

 作中では何も悪事を働いていない善人みたいな扱いを受けていたが、拳王軍で名を挙げているって事は拳王軍健在時は無辜の民からの略奪や虐殺に加担しまくってたって事だ。

 そもそもあいつ、略奪を封じられた平和な世界で生きる術がなかったからって大勢の部下をトレインしてコウケツの所に押し寄せたとかいう、割とクソ迷惑な奴だし……。

 せめて一人でいけよ。大人数でいったら、そらコウケツは小心者なんだから反乱防止の手立ての一つや二つ打ちたくなるに決まってるだろ。

 コウケツが全面的に正しいとまでは言わないが、コウケツ視点で考えると折角新しい時代での生活が軌道に乗ってきた時に、昔の上司がワラワラと部下を連れてやってきたわけだから、多分凄い迷惑だったんじゃないかな。

 しかもコウケツは拳王軍時代は虐げられていたわけで……そりゃコウケツにしてみれば「何でこんな奴助けにゃならんねん」となるだろう。

 子供を人質にするのはクソ野郎と言われても反論出来ないが、変に追い返してそれで力にものを言わせて暴れられても困るし、そのまま受け入れるにしても元拳王軍の軍勢なんてせめて首輪を付けないといつ反乱されるか分かったもんじゃない。

 だから、コウケツ視点で考えると案外、情状酌量の余地があるんじゃないかと俺は思う。

 ……っと、話がずれた。

 要するにこいつを飼いならすのに大事なのは……身の安全を保証してやる事だ。

 そうしなければ小心者のこの男は自分を守ろうとして過剰な防衛に出てしまう。

 

「正しい」

「……え?」

「貴様は正しいと言った。武器がなくとも人は生きていけるが、食がなければ死ぬ。

これから世界は俺が支配する平安の世に変わる。ならば、貴様のような人材こそ必要だ」

 

 とりあえずコウケツには土地と人を与えて開拓させてみようか。

 勿論悪名を広められては困るので、ある程度行動に枷は付けるがな。

 原作のように、開拓に志願してきた民を荒地に送って死ぬまで働かせるとかは流石に駄目だ。

 その代わり肥料などはこちらで手配してやるので、原作のように人間ばら撒き農業はする必要がない。

 コウケツはひとまずお手並み拝見として……後はいらないな。

 他の指揮官やヒャッハー共は筋力を奪って強制労働行きか、処分かのどちらかでいいだろう。

 いや、コウケツに預けて荒地開拓用の人員にするのも有りだな。真面目に働けば待遇も改善されるという飴も付けてやれば、一割くらいは真面目な人間として改心するかもしれん。

 

 ……え? 改心しなかったら?

 その時はまあ、世紀末農法の肥料かな。

 人間ばら撒き農業はする必要がないとは言ったが、改心しないヒャッハーなんぞ肥料にするくらいしか使い道ないだろ。

 それか、ジェネリックトキの木偶にしてしまうのもいいかもな。

 

 

トキモドキ「身体の痛みは数倍になる(刹活孔)」

ジンバ「いでえ!?」

トキモドキ「身体の痛みは数倍になる(刹活孔)」

ジンバ「ひぎい!?」

トキモドキ「身体の感度は3000倍になる(刹活孔)」

対魔忍「おほお!?」

トキモドキ「身体の痛みは数倍になる(刹活孔)」

ジンバ「うわらば!?」

 

【ラオウとジュウザは卵が好物?】

そんな設定は原作にはない。

ただ、わざわざトキが木に登ってまで取ろうとしてたので(そしてジュウザが奪ったので)少なくとも嫌いではないはず。

 

【料理長】

シンに文句を言われるわ、ラオウのプレッシャーに晒されるわで散々。

前世で何か悪い事でもしたんか?

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