シン・南斗の拳 俺達の戦いはこれからだ!   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十九話 修羅の国救世主伝説ラオウ

 勝った! 修羅の国編、完!

 

 いきなり何事だと思われるだろうから、まずは説明をしよう。

 といっても、そんなに長い説明にはならない。

 結論から言えばケンシロウ達がカイオウを倒して帰って来た。以上だ。

 とはいえ、聞いた所によるとその内容は大分俺の知るものとはズレてしまっていた。

 

 まず上陸して早々ケンシロウ達が見たのはユリアではなく、ユリアを連れ去ったギラクの死体だった。

 ユリアは案の定、修羅に誘拐されて群将カイゼルへの貢ぎ物となったらしい。

 そして早速エンカウントする砂蜘蛛こと名も無き修羅だが、今はまだ十五歳程度。

 迎え撃つはケンシロウ、ラオウ、ジュウザ、フドウの「何やこの厨パ」と言いたくなるようなパーティー。負ける要素を探す方が難しく、あっけなくラオウがワンパンで粉砕したらしい。そらそうよ。

 その後馴れ合いを好まないラオウは、拳王軍解散後もラオウに忠誠を誓った部下達と共に別行動。そういえば猛将バルガとか軍団長ザクとか見かけないと思ってたんだが、そっちに行ってたのか。

 ジュウザもスタンドプレーに走って一人で別行動を取り、ここでパーティーが三つに分散した。

 固まってた方がいいと思うんだが……まあ焦ってたんだろうな。

 早く救出しないとユリアがどうなるか分からない以上、とにかく探索の手を広く伸ばすしかない。

 そしてジュウザはカイゼルの城へ、ラオウは導かれるようにジュウケイの許へ、そしてケンシロウ一行はハンの城へと向かった。

 

 本来ならシャチが倒すはずのカイゼルは、ユリアを救いたい一心で魂を取り戻したジュウザが苦戦の末に粉砕。そこでデスマッチの勝者に与えられる褒美の花嫁として囚われていたユリアを救出した。

 しかし流石にカイゼルは手強く、ジュウザも重傷を負ってしまったらしい。

 それでも瀕死の身体でユリアを守りながら修羅の包囲を突破し、愛した女を助け出すという最大の使命を成し遂げたジュウザは、ユリアに看取られる形でこの世を去った。

 ……と思いきや、気絶しただけで普通に生きていたらしい。しぶといな意外と。

 そんな手負いの状態で修羅の包囲を突破するのは無理じゃないか? と思ったのだが……どうもカイゼル配下の修羅の半数がユリア側に寝返ったらしく、彼等が命を捨てて活路を切り拓いてくれたらしい。

 相変わらずやばいなユリア……これいっそ、救出せずに放置しとけば修羅の国が勝手に割れて滅んでたんじゃないか?

 次にラオウだが、彼はジュウケイから全ての話を聞いた後に何とジュウケイを殴り飛ばして彼の拳を破壊し、龍頷を突いてそのまま放置という暴挙に及んだという。残念でもないし当然。

 そりゃな……尊敬する兄カイオウに屈辱を与えて英雄になれる未来を閉ざした元凶がジュウケイだ。ラオウからしてみれば何を仲間面で寄って来てんだこのクソジジイとしか思わないだろう。

 むしろジュウケイは何で自分の過去の所業を棚上げして「全部ラオウが何とかしてくれる(はぁと)」とか思ってたんだ。馬鹿か? ……あ、馬鹿か。

 まあ原作と違って死ななかっただけラオウに感謝するべきだろう。この先ずっと風が触れるだけで激痛が走る人生だが、同情の余地は微塵もない。

 色々言われるリュウケンでさえ、ジュウケイと比較すれば聖人になるレベルで酷いからな、あの爺さん……。

 リュウケンの駄目さ加減を42000とするならばジュウケイは53万……いや、1億2000万だ。

 

 最後にハンの城に向かったケンシロウはそこでハンと対決。

 互角の戦いの末にケンシロウが勝利した。

 それからラオウとケンシロウは打倒カイオウを目指して動くが、ここで二人の性格の差が出た。

 一見猪突猛進に見えてその実、結構慎重なラオウはすぐにカイオウの城を目指さずに、カイオウ攻略の鍵となる北斗宗家の秘拳についての情報収集を始めた。

 逆に冷静に見えて何も考えてないだけなケンシロウは真っすぐにカイオウの城に向かってしまい、返り討ちにあってしまった。

 北斗宗家が憎いカイオウにとって北斗宗家であるケンシロウは憎悪の対象だ。なので憎悪により魔闘気の出力UP。更にケンシロウ本人が悪いわけではないとはいえカイオウの母が死んだ原因なので更に憎悪増し増しでもう一つおまけに魔闘気の出力UP。

 「母の死の原因である北斗宗家」という点ではケンシロウとヒョウは同じ条件なのだが、ヒョウは幼い頃にカイオウと一緒に遊んだ事があったりしてカイオウも多少の情を抱いてしまっているので憎悪はそれほど強くない。

 しかしケンシロウは赤子の頃に修羅の国を出ているので、カイオウはケンシロウへの思い入れなど一切ない。カイオウ視点で見たケンシロウはただの「母を身代わりにしてのうのうと生き残った憎むべき北斗宗家」でしかないのだ。

 止めに久しぶりにラオウと会えるとワクワクしていたのに、よりによって母の死の原因+宗家のケンシロウが空気を読まずにやって来たので、憎悪が更に上乗せされて魔闘気がこれ以上ないほどUP。

 この時のカイオウの心境を例えるならば、映画の脚本家兼プロデューサーが「ラオウ伝説」という生涯最高の作品を作り上げ、主役は「絶対こいつ!」と指名していざ本番スタート、という所で突然大嫌いな俳優を捻じ込まれてそいつが主役としてカメラの前にしゃしゃり出て来た……というところか。

 そら「お前なんか呼んでねーよ! 帰れ!」としかならんだろう。

 北斗琉拳の究極の到達点とされる魔界は憎しみの境地。相手が憎ければ憎いほど強くなる。

 そこから突入した強制スーパーハードモードでケンシロウはボコボコにされた。

 ああ、原作でジュウケイが「ケンシロウじゃ無理」って言ってたのって、そういう。

 北斗宗家(ケンシロウ)が相手だと憎悪補正でパワーアップするのか、カイオウ……。

 ラオウならカイオウを倒せると言われてるのに、そのラオウに勝ったケンシロウがボコボコにされるってどういう事だとはずっと思っていたのだが、何の事はない。対ケンシロウ戦時に限りカイオウの強さが150%……いや、下手すれば200%くらいまで増しているだけだ。つまりカイオウはケンシロウメタだったのである。

 『対ケンシロウ時』に限りカイオウはラオウよりも圧倒的に強いと考えていいだろう。

 対悟空限定で攻撃力が9倍になるジレンみたいなものだ。

 ジレンはバニラになった。ジレンの悲しみは計り知れない。

 

 その後ケンシロウは処刑と称してボコボコにされるが、赤鯱が命掛けでケンシロウを救出して何とか死亡回避……するも、身代わりになるように赤鯱が死んでしまった。

 瀕死のケンシロウを連れて何とか逃げたリハクとフドウとユリアだが、今度は運悪くヒョウとエンカウント。

 途中合流した元ラオウの部下レイナとケンシロウの従者である黒夜叉の助力を得て何とか逃げる事に成功するも、黒夜叉はヒョウと戦って死亡。

 意識を取り戻したケンシロウは驚異の回復力とユリアの謎パワーで全快し、ヒョウとの兄弟対決に臨んでこれを制したという。

 そして……。

 

 

 修羅の国で今、二人の王が向かい合っていた。

 世紀末拳王ラオウ。

 修羅の国の魔王カイオウ。

 血を分けた実の兄弟であり、どちらも比類なき力の持ち主だ。

 ラオウは兄への敬愛の眼差しと断固たる決意を瞳に宿し、カイオウは漆黒の鎧に包まれその表情は分からない。

 カイオウを中心に漆黒の魔闘気が広がるが、ラオウの放つ闘気がそれを押し留める。

 二人の放つ闘気によって空間がひしゃげ、まだ戦いが始まっていないというのに既にその場は二人以外の何者も近寄れないほどの熱気の地獄と化していた。

 

「敗れたな」

 

 口を開くなり、カイオウはラオウへと失望の言葉を投げつけた。

 ラオウは静かな表情で、その罵倒をただ受け入れる。

 

「かつてお前は俺に言った。世に覇者は一人……いずれこの国は貰うと。

俺はお前こそ最大の障壁となるとずっと思っていた」

 

 それは、二人の間でかつて結ばれた宣戦布告だ。

 カイオウが修羅の国を地獄へと変えるならば、ラオウは弟としてカイオウを倒し、修羅の国を貰う。そう宣言した。

 そしてカイオウもまた、いつかその未来が来ることを疑わなかった。

 己の認めた弟ならば必ず天を握り、そして海を渡ってやって来るだろう。そう思った。

 そして確かにラオウは海の向こうからやってきた……だが。

 

「失望させてくれる。海を渡ってきたのは覇者ではなく、負け犬だった。

お前は最早俺の知るラオウではない。情などを持ったが為にトキなどに敗れた弱者ラオウはこのカイオウの唾棄すべき愚弟!」

「言いたい事はそれで全てか?」

「……ぬうっ!?」

 

 トキに敗れた。天を握る事は出来なかった。

 全てその通りだ。否定はしない。

 だがそれを恥とは思わない。この敗北という傷は、最愛の弟トキが最後に刻んだものだ。

 そしてトキが託してくれた願いと魂が、この胸の内に宿っている。

 

「否定はせぬ、俺は確かにトキに敗れた。だが……それが俺の拳を聊かも鈍らせておらぬ事、その身で確かめてみるがよい!」

 

 ラオウはマント越しに己の胸を掴み、そして目を閉じる。

 トキの言葉を思い出す。僅かな命を振り絞り、この兄を越えようと願い、そして成し遂げたあの素晴らしい男の声を、今でも鮮明に思い出す事が出来る。

『私の魂は、兄さんと共に』……決して、忘れることはない。

 

 

 

 ――往くぞ……トキ。

 

 

 

 マントを脱ぎ捨て、世紀末拳王が闘気を高めた。

 たとえ敗れ、天を握らずとも。それでも彼の強さと魂は決して崩れない。

 トキは誓いを果たした。

 ならば次は己の番。トキからラオウへ託されたこのバトンを、カイオウへ繋げる。

 魔道に堕ちた兄を止めるは弟の役目! 今こそ誓いを果たす時!

 

「はああああ!」

「ぬうっ!」

 

 ラオウが走り、カイオウが迎え撃つ。

 まずは手四つ。地響きを立てて二人の巨漢が手を握り合う。

 闘気と魔闘気が衝突して大地を砕き、嵐となって吹き荒れる。

 力は……互角! どちらも一歩として譲らない。

 

「見縊っておったわ……腐っても我が弟か! ラオウ!」

「カイオウよ、受けてみるがよい! 我が剛拳!」

 

 手を放し、ラオウが拳の弾幕を放った。

 カイオウも同時に連撃を放ち、正面から拳同士が何度もぶつかり合う。

 互いに非情の剛の拳。激流対激流。

 以前のラオウとトキの戦いとは違い、完全な同属性対決だ。

 そうである以上、勝敗を分けるのは単純な強さの差となる。

 相性はない。ただ強い方が勝つ……それだけのシンプルな戦いがそこにある。

 両者が同時に弾かれ、宙に浮かぶ。

 だが次の瞬間、紅蓮の闘気によって加速したラオウがカイオウに蹴りを叩き込んだ。

 

「ふん!」

 

 そのままカイオウの足を踏みつけて地面へ落下。膝を突いてカイオウと至近距離で向き合う。

 『拳王は決して膝など突かない』……それはラオウが常日頃から言っている事だ。

 だが今ここにラオウは拳王としてきているのではない。

 ただ一人の男として……尊敬する兄カイオウを止める弟として来ている。

 何より、幼き日より苦難と忍耐を強いられてきたこの兄を見下す気にはなれない。

 故にこそ、今だけはあえて己の縛りを解いて膝を地に付ける。

 高みより見下すのではなく、地に足を付けて同じ目線で兄と語らう為に。

 

「ふっ……幼き頃を思い出すなカイオウよ。あの頃の我等の目線は丁度このくらいだったか……いや、しゃがんでもまだ今の我等の目線の方が高いな」

「ラオウ……!」

「これでは顔が見えぬな。まずはその邪魔な鎧を剥ぎ取るとしよう」

 

 ラオウの猛攻が始まった。

 拳打、足元への蹴り、立ち上がって打ち下ろしの一撃。そして腹への強打!

 

「ジョイヤー!」

 

 カイオウが吹き飛び、壁に衝突して跳ね返る。

 そこにラオウが追いつき、またしても足を踏みつけてその場に固定した。

 そこから今度は両手で空に跳ね上げ、跳躍して蹴ると同時にまた地面へと縫い付ける。

 更にラオウには珍しい、威力よりも手数を優先した拳の連打!

 殴る、殴る、殴る、殴る、殴る!

 しかしたかが連撃、されど連撃。その全てが重い剛拳だ。

 魔闘気を抑えるカイオウの鎧がひしゃげ、壊れていく。

 

「ば、馬鹿な……何故!? 我が魔闘気はラオウの闘気が俺に届く前に全て吸収しているはず!」

「愚かなりカイオウ! たとえ闘気を吸収できたとしても、この俺の剛拳の拳圧までは防ぎきれぬ! 闘気を防げたとしても俺の拳は誰にも防げぬ!」

 

 再び蹴り、打ち下ろし、強打で吹き飛ばし、追いついて足を固定する。

 かつて兄を修羅の国に残したまま海を越えた先に渡り、離ればなれになってしまった。

 兄だけをこの地獄に取り残してしまった事をずっとラオウは悔いていた。

 故にこその、もう離さぬという意思表示。

 この一連の攻撃を前にカイオウは成す術がない。

 

「お、おのれラオウ……! こんな……!」

「知るがいい、カイオウよ。このような重い鎧に身を包んだまま戦えるほど、この俺は温くないという事を!」

 

 何度も吹き飛び、追いつかれ、連撃が休む事なく続く。

 ラオウは鎧越しの攻撃で兄に語りかける。

 『俺がその気ならとうに死んでいたぞ』……と。

 『そんな鎧は脱ぎ捨てて全力でかかってこい』……そう拳で語る。

 

「天将奔烈!」

 

 連撃の締めにラオウ渾身の奥義が直撃し、鎧の砕けたカイオウが壁にめり込んだ。

 普通ならばこれで終わりだ。

 北斗の長兄の奥義を受けて立っていられる者などこの世に存在しない。

 しかしカイオウは普通ではない。

 ラオウの勝利を確信して近付いてきた黒王を下がらせ、ラオウは構えを再び取る。

 

「我が拳は無類無敵! これでもまだ俺の強さを疑うか?」

 

 ラオウはまるで油断する事なく問いかける。

 まだカイオウは倒せていない。

 今のは、言ってしまえば試合で一本先取したようなもの。

 こちらを舐めて鎧を着たままのカイオウを痛い目にあわせただけだ。

 事実カイオウは今受けた傷を魔闘気によって無理矢理に塞ぎ、ゆっくりと立ち上がっている。

 さしものラオウの剛拳も、鎧に加えて闘気を吸収無効化してしまう魔闘気越しでは大したダメージにはなっていないようだ。

 流石はカイオウといったところか。修羅の国の魔王は伊達ではない。

 しかしそれでこそ、尊敬した兄だ。

 

「……ラオウ!」

 

 崩れる鎧の中からカイオウの素顔が現れた。

 それはラオウと瓜二つの……しかしより険しさを増した魔神の顔であった。

 すっかり変わり果ててしまった尊敬する兄を見てラオウの瞳に哀しみが宿る。

 二人が同時に踏み込み、拳を顔に叩き込む。

 秘孔と破孔、本来ならば北斗の技を使う者に一撃を許すのは死を意味する。先程までの鎧の上からの攻撃とはわけが違う。

 だがラオウもカイオウも恐るべき戦闘センスで秘孔への攻撃をズラし、致命の一撃を避けていた。

 続けて二撃、三撃と拳の交換が行われる。

 一撃ごとに重い打撃音が響き、地面が揺れる。

 

「ぬうおおおおお!」

 

 カイオウが地面を殴り、崩落させた。

 二人は地の底に落ち、毒ガスが充満する地下空洞へと落ちる。

 何者であろうと硫摩黄煙によって全身が麻痺し、酸欠地獄へ陥る。

 それはカイオウ自身さえも例外ではないが、しかしカイオウは奥義・呼頸虚塞により無呼吸闘法を可能とする。

 この毒ガス地獄の中でカイオウだけが、自由に動けるのだ。

 

「俺は勝負に手段は選ばぬ! いくぞ! 卑劣と呼ばれても構わぬ!」

「…………」

 

 ラオウへ向かうカイオウ。

 迎え撃つラオウは呼吸を止めたまま拳を握り、全闘気を一点に集約させた。

 思い出すのは、拳王を止める為に命を燃やし尽くしたトキの勇姿。

 トキが命をかけたように、今こそ自分もまた命をかけよう。

 これまでの歩みが脳裏を過ぎ去り、そしてラオウは拳を突きあげた。

 ……我が生涯に一片の悔いなし! たとえここで命尽きようとも!

 

 ――北斗剛天衝!

 

 ラオウの生涯最高の剛拳が天へと昇り、毒ガスを全て消し飛ばした。

 そればかりか天をも貫き、修羅の国を覆っていた暗雲を蹴散らしてしまう。

 暗黒に覆われていた修羅の国に陽光が注ぎ、人々はそこに青空を見た。

 まさに拳王。まさに剛拳。

 カイオウの小細工を真正面から粉砕し、ラオウが大きく息を吸った。

 

「ば……馬鹿な……だが見るがよい! この地の石柱を! これこそが北斗逆死葬!」

「なるほど……北斗七星の形に並んだ石柱により俺の動きを封じるか」

「そうだラオウ! 北斗七星の星列は死角の動き、貴様は必ずやその動きを取る! 拳を極めれば極めるほど死角に潜り込むのだ!」

「……フッ」

 

 明かな北斗神拳への対策。北斗神拳を封じる為だけに用意された地形。

 それを前にラオウは笑った。

 

「何がおかしい!?」

「そんなに北斗神拳が恐ろしいか、カイオウよ」

「ぬう……!」

「この石柱こそまさに、北斗神拳への恐れそのもの……だが知るがよい。こんなものは俺にとって、何の意味もないと!」

 

 ラオウはリュウケンとの戦いを思い出し、前に踏み出す。

 この石柱を避けるように移動する事は可能。だがあえてラオウは正面からの粉砕を選択した。

 故に使う奥義は一つ……七星点心!

 この石柱が北斗七星の星列に沿っているというならば、あえてこの技を使ってみせよう。

 ラオウが北斗七星の動きをなぞり、当然のようにその先には石柱がある。

 

 そして――そのまま石柱を砕きながら移動を継続した!

 

「なにっ!?」

 

 驚愕するカイオウの前で次々と石柱が砕けていく。

 ラオウに後退はない。あるのは前進勝利のみ。

 行く手を阻む石柱など、剛の拳で全て打ち砕くのみ!

 作戦も小細工も地形さえも無関係に全て粉砕し、勝利する。これこそが誰もが恐れた拳王だ。

 この剛拳一つあれば全てが叶う。

 これこそが神をも恐れぬ男、ラオウなのだ。

 カイオウが恐れるように跳躍して地上に飛び出し、ラオウもその後を追う。

 その瞬間、狙い打ったようにカイオウが切り札となる奥義を発動した。

 

「暗琉天破!」

 

 カイオウの全身から今まで以上の魔闘気が放たれた。

 この奥義こそ、ケンシロウを破った技だ。

 圧倒的な魔闘気によって生まれる無重力空間により、相手に位置を見失わせる。

 この技の前では無想転生すら意味をなさない。

 しかしラオウに動揺はなかった。

 両拳をぶつけ合わせて闘気を高め、ラオウもまた魔界の奥深くに到達した者しか纏えない闘気を纏う。

 だが輝くその闘気は決して魔闘気にあらず。

 魔界すら走破する高潔な魂にて操るその力はまさに王気。

 トキとの戦いで覚醒した力をもってして、兄の憎悪を完全に跳ねのけた。

 

「カイオウよ……やはり俺を憎む事は出来ぬか」

「な、なに……!?」

「この脆弱な魔闘気が教えてくれるわ……今、兄者が俺に向けている憎悪は無理矢理絞り出したものに過ぎぬ。本来の魔闘気には程遠いとな」

 

 ラオウが憐れむようにカイオウを見る。

 魔闘気の力の源は憎悪だ。憎むほどにその力を増す。

 だからケンシロウとの戦いでは、カイオウは圧倒的な魔闘気によってケンシロウを叩きのめす事が出来た。

 だがその時と同じだけの力を、ラオウ相手では発揮出来ていない。

 ……最愛の弟を憎む事が、どうしても出来ない。

 

「この国について、『ラオウ救世主伝説』というものを何度も聞いた。その出所は兄者だな?」

「ぬ……うっ!」

「兄者はいずれ来たる俺との戦いに、このままでは勝てぬと知っていた。俺が相手では憎悪の魔闘気を満足に使えぬと……だから、あえて俺の救世主伝説を広める事で俺を自身の最大の邪魔者としたのだ。俺を弟ではなく『敵』として憎む為に! そう、『ラオウ救世主伝説』とは……俺との戦いの為に用意した憎しみの種!」

 

 この修羅の国にはラオウを救世主として待ち望む人々がいる。

 それは、この国に彼を救世主とした伝説があるからだ。

 しかしその出所は他でもない、ラオウに倒されるはずの魔王カイオウ自身。

 普通に考えればこんな伝説を広める意味もメリットもカイオウにはない。

 ただ人々が希望を持ち、カイオウの邪魔になるだけだ。

 だがカイオウはあえて自らの邪魔になる伝説を広めた。そうしなければラオウを憎めないと分かっていたからだ。

 その兄の苦悩を思い、ラオウの目からは自然と涙が溢れた。

 

「何故泣く……ラオウ……!」

「き、効かぬ……効かぬのだ、カイオウ……!

哀れカイオウ……修羅の国を地獄へと変え、魔王と成り果てても尚……全身に傷を刻んでも尚! 俺への情をその心から消せぬか!

兄者のその情深き心が……そしてそれだけの男でありながら魔王へと成り果ててしまった兄者の苦しみが、トキとの戦いで枯れたはずの俺の涙を再び呼び覚ました!」

 

 カイオウの本質は『英雄』である。

 その力と情と、そして統率力で皆を率いて光輝く道を走る者。誰よりも前を走り皆に勇気を与える勇者。

 それこそが本当のカイオウの姿だ。

 本当ならばこの修羅の国を導く偉大な男になっていたはずだ。

 それがこうまで歪んでしまった……歪まざるを得なかった。

 その兄の苦しみを思い、どうして涙を流さずにおられようか。

 

「憎しみがないのはうぬも同じはずだラオウ! うぬのその闘気はなんだ!? 魔闘気ではない……だが魔闘気と同じ性質を持つその闘気は!?」

「これは憎悪の底にあった、俺の心そのもの……我が弟トキへの……願いを同じくした同志への……そして何よりも、誰よりも尊敬した兄カイオウへの、愛と哀しみが生み出した力!」

「な、何故! 何故、それほどの高みに……!」

「北斗の長兄としての誇り、北斗の次男の命を捨てた献身! それが俺を高めたのだ」

 

 輝くラオウに、カイオウは完全に気圧されていた。

 勝てない……そうハッキリと思わされる。

 たとえケンシロウ相手の時と同じだけの憎悪を振り絞ったとしても、今のラオウには届かないだろう。

 あまりにも大きく強くなった弟を見上げ、カイオウは震える声で言う。

 

「うぬぬほ……

北斗の長兄であるがゆえにこの俺を凌駕したというのか!!」

 

 カイオウは知らず、その場から下がっていた。

 背丈が変わらないはずのラオウが巨大に見える。

 まるで自分が小人になったかと錯覚するほどに、今のラオウはでかい。

 

「そうだ。長兄となる事でこの俺もまた、兄者の哀しみを身に纏う事が出来た!」

 

 カイオウはラオウを睨む。

 だがどれだけ凄もうと、魔闘気は強くならない。

 いや、それどころかむしろどんどんと魔闘気が萎み、力を失っていた。

 カイオウは理解してしまったのだ。

 自分の心の中には結局、最後まで捨てきれなかったラオウへの愛があったのだと。

 そして自覚してしまえば、もう終わりだ。

 魔闘気を使う事は、もう出来ない。

 

「……フフ……見事だ弟よ……お前は俺の中にあった憎悪を完全に消してしまった……」

「……兄者」

「だが!」

 

 カイオウは己の敗北を悟り、それでも尚前へ踏み出した。

 魔闘気は通じない。拳の勝負でも勝てない。

 それでもここで退けない。退けない理由がある。もう後戻りは出来ない。

 

「俺は修羅の国の魔王! 羅将カイオウ! 最早止まる事は出来ぬ!」

 

 大勢を殺した。

 国を地獄に変えた。

 己を信じてくれたヒョウを裏切り、操り人形にした。

 今更改心しようと、その罪は消えない。

 犯してしまった過ちはなくならない。

 どこか子供のような柔らかさを感じる表情で、大きくなった弟を見る。

 

「ラオウよ……幼き日のあの頃のように、共に力比べをしようぞ」

「よかろう……次の一撃にてその苦しみから解き放ってやろう」

 

 カイオウの決意をラオウも受け取った。

 今更余計な説得などはしない。

 やり直せ、心を入れ替えろ……そうした言葉は覇道を歩む者にとって、この上ない恥辱。

 一度突き進んだ血の道を今更外れる事は死ぬよりも辛く難しい。

 だからこそラオウは、兄にせめて誇り高い死を与える事を心に決めた。

 それこそが、最大の救いになると信じて。

 

「往くぞラオウ!」

「……久しく見るな、その構え」

「フッ……これこそ誰に教えられたわけでもなく、生まれついてよりこのカイオウに染みついていた構え……俺の本来の拳! この構えより撃ち出す拳は未だ不敗!」

 

 カイオウの構えを前に、ラオウが懐かしそうに目を細めた。

 かつて憧れた偉大な兄のこの構えを、ラオウは知っている。

 そして今やその正体も……。

 カイオウが使うこの構えこそ、天帝の盾として君臨した北斗宗家の拳。

 北斗宗家を憎むカイオウだが、他ならぬ彼自身もまた北斗宗家の血を継ぎ、技を身に着けていた。

 だからこそ、彼の運命があまりに辛い。

 誰よりも北斗宗家を体現する英雄になれたはずが、一人の老人の無知によって北斗宗家の影となる事を強いられ歪んでしまった事が。

 

「ならば見せよう……このラオウの……北斗の長兄の一撃を!」

 

 対し、ラオウはあくまで北斗神拳の構え。

 ここに来る前の調査で北斗宗家の拳の事は知っている。その受け技さえも。

 だがラオウはそれを無粋として切り捨てた。

 この戦いを北斗宗家の戦いにしてはならない。

 カイオウとラオウの兄弟の戦いのまま終わらせなくては。

 そう思ったからこそ、ラオウは北斗神拳に拘った。

 

「ゆくぞラオウ! このカイオウ、最期の一撃とくと見よ!」

「受けてみよカイオウ。この拳に我が生涯の全てを込めて……」

 

 カイオウとラオウが同時に闘気を高める。

 それは天にまで届き、青空を照らした。

 蒼天が空に広がり、陽が差し込んで二人を照らす。

 ……一瞬の静寂。

 ラオウとカイオウの視線が交差し、幼い子供のような表情で二人は微笑んだ。

 そして直後、終わりの瞬間が訪れる。

 

「さらばラオウ!!」

「天に滅せい!!」

 

 二人の拳が正面からぶつかった。

 光が拡散し、周囲全てが吹き飛ぶ。

 大地が砕け、そして天の星が輝いた。

 

 ――……感謝するぞ、ラオウ……我が最愛の弟よ。

 

 そして光の中でラオウは確かに、カイオウの声を聞いた。

 

 

 

 

 

「お……おお……! これは……!」

 

 ヒョウとの戦いを制したケンシロウ達――ケンシロウ、ユリア、リハク、ヒョウ、レイナが再びカイオウの許を訪れた時、既に全ては終わっていた。

 ラオウ一人だけが立ち、そしてその腕の中ではカイオウが安らぎを得たような静かな寝顔で死んでいた。

 ラオウは静かに涙を流し、兄をいつまでも抱えている。

 

「お、おお……! カイオウが……カイオウが……!」

 

 カイオウの死を前に、ケンシロウの実兄ヒョウが泣き崩れた。

 彼はずっと、カイオウの手によって記憶を失い闇の中にいた。

 正気を取り戻したのはつい先ほどで、自分がいたせいでカイオウの英雄の未来を奪っていた事を知った。

 ヒョウはカイオウを恨んでいなかった。

 むしろ謝りたかった。だが……もう、その相手はいない……。

 嗚咽を漏らすヒョウの横を通り、ケンシロウがラオウの前に出る。

 

「終わったのだな……兄さん」

「ああ……我が尊敬する兄カイオウの苦しみは今、終わった。そして修羅の国の絶望も……」

 

 ラオウはヒョウの前に向かい、そして彼の前にカイオウを横たえた。

 

「ヒョウよ。うぬを兄者の最大の友と見込んで頼みたい。兄者を丁重に葬ってやってくれ……」

「あ……ああ! ああ! 任された! 任されたとも! カイオウの友として成し遂げよう!」

 

 信頼出来る者に兄を託し、ラオウは背を向けて歩き出す。

 その後ろには黒王が従おうとするが、ラオウはそれを拒否した。

 これより往く先は一人。黒王であろうと同行は認められない。

 

「兄さん……何処へ……!?」

「俺の役目は終わった。俺の覇道も……ならば俺もまたトキとカイオウの待つ天へ還ろう」

 

 ラオウの覇道はトキに挫かれ、天を掴む事は出来なかった。

 それでもまだ生き恥を晒していたのは、カイオウを止める使命があったから。兄との約束が残っていたからだ。

 ならばその役目を終えた今、いつまでもこの世に残るは恥辱。

 だが悔いはなかった。天を握る事は出来なかったが、海の向こうにはそれを任せられるもう一人の王がいる。

 互いのやり方の違いから最後まで相容れる事はなかったが……それでも向いている先は同じだった。

 奴だけが、この血に塗れた覇道を……その先に目指す未来を理解してくれた。

 

 もしも……もしも最初から、同じ場所に立って、同じ先を見て歩めていたならば……。

 意地を捨てて、北斗と南斗で手を取り合いこの暗闇の世界に立ち向かっていたならば……。

 

 シンとラオウが並び立ち、弟達や六聖の戦士達が並び立って同じ未来を目指す、そんな夢の世界。

 そこまで夢想し、ラオウは未練を切り捨てるように笑った。

 ……あり得ぬことだ。そんなに器用ならば、ラオウも、サウザーも、シンもこんなに道を迷っていない。

 IFであっても決してあり得ぬ光景。しかしそれでいいと思った。

 不器用で、戦う事でしか己の道を切り開けない男達……だが、確かにそれは自らの意思で歩んできた道だった。

 そしてだからこそ信じ、託す事が出来る。

 奴ならばきっと、この先の世界をよりよいものへと変えてくれるだろう。

 そして北斗神拳の歴史は、ケンシロウが受け継いでいく。

 最早、この生涯に悔いはない。

 ……無い……はずだった。

 

「――ラオウ!」

 

 背中に、誰かが抱き付いた。

 振り返らずとも分かる。先に修羅の国に返していた同志であるレイナだ。

 

「離すがよい、レイナ」

「嫌よ! だって……ここで離したら、ラオウは行ってしまう! 二度と私の手が届かない所へ……!」

 

 ラオウは既に己の最期を受け入れている。

 天を目指し、何人も殺め、血まみれの道を歩んできた。それも未来を願えばこそ。

 そうまでして求めた天を掴めず、約束も果たした今何故生きろというのか。

 ラオウはレイナを振りほどき、地面に倒れたレイナを見下ろす。

 

「邪魔をするなレイナよ! うぬは俺にまだ生き恥を晒せというか!」

「ええ、そうよ! まだ修羅の国はカイオウの支配を脱したばかり……ここで貴方が死ねば、誰がこの先の修羅の国を纏めるの!? 貴方以外の誰が出来るの!?」

「ぬうう……!」

 

 ラオウの表情が怒りに染まり、拳を握る。

 それでも手を上げないのはレイナが同志で、女だからだ。

 男だったなら、とうに殴り飛ばしていた。

 そんなラオウに、予想だにしない方向から声がかけられる。

 

 ――ラオウよ。貴方がここに来るのはまだ早い……。

 

 ラオウの前に現れたのは、かつて命を捨てて彼を止めたトキであった。

 きっと温かく迎えてくれると思っていた弟からのまさかの否定にラオウは憤る。

 だがトキは優しく微笑むと、レイナの方を指差す。

 そしてラオウは見た。レイナの腹に宿る小さな光を。

 

「ま……まさか……!」

 

 わなわなと震えるラオウに、レイナは小さく頷いた。

 

 

 ――と、まあ、こんな感じだ。

 決着後にラオウはトキとカイオウの待つ天へ還ろうとしたが、レイナが間一髪でラオウの自害を止めた。

 拳王としての野望は果て、兄も止めた今最早この世に悔いはないラオウだったが、レイナの涙ながらの説得と愛によって踏み止まって、荒れ果てた修羅の国を再建する方向に舵を切ったようだ。

 まあ流石に我が子が生まれると知って「我が生涯に一片の悔いなし!」は出来んわな。

 そしてラオウと、ラオウに従う元拳王軍の者達を残し、ケンシロウ達は帰って来た。

 しかしカイオウ亡き後の修羅の国か……とりあえず、しばらくはラオウの手腕を見て、本当にいい国になるなら機を見て接触を図ってみるのも悪くない。

 とはいえ、まだまだこっちの統治に専念しなければならないので、修羅の国を気にしている暇などない。

 

 ともかく一番厄介だと思われていた修羅の国の脅威度は大幅に下がった。

 ラオウがいる以上、大っぴらに侵略などしようものならばラオウと戦う羽目になるだろうが、それでもカイオウが支配している状態と比べれば危険度は段違いだ。

 少なくとも、こちらから手出ししない限りは無害と考えていいだろう。

 

 それから修羅の国から帰って来た後、ケンシロウはユリアと過ごす安寧の地を求めて、俺の所へやって来た。

 こいつ俺の事、頼めば何でもやってくれるドラえもんか何かと思ってないか?

 まあ、『安寧の地を提供した恩人』というトロフィーを獲得しておくのは、後の事を考えれば悪い事じゃない。

 世紀末クリーパーの爆発確率を下げる為に、そのくらいはしてやろう。

 

「村から離れた場所に一軒家を用意しておいた。豊かな畑に、山羊や牛といった家畜も付けてある。自給自足で十分食べていけるだろう。残された貴重な時間、精々二人で過ごすといい」

「シ、シン……! すまない……俺とユリアの為にそこまで……! この恩、決して忘れぬぞ」

「ああ、精々恩に着ておけ。いずれ利息付きで返してもらうとしよう。

それと連絡用の鷲も付けておく。何か必要になれば手紙を鷲の足に結び付けて飛ばすといい」

 

 俺の提供したものにケンシロウが感涙しているが、これは勿論俺なりの考えがあってのものである。

 余命僅かなユリアと過ごせる時間の為に、二人だけで過ごせる場所を用意した……というのは建前だ。実際はただ、ユリアをサザンクロスの住人や主要人物と接する事の出来ない場所に隔離しておきたかっただけである。

 他人と接触出来る位置にユリアを置いたら、そいつが洗脳されるだろうが!

 世話役なんぞ置いてみたが最後、そいつは三日後には「ユリア様こそこの世の永遠の光!」とか言い出して信奉し出すぞ。

 断じてそんな事は許さん! 頼むから死ぬまでケンシロウと二人きりで暮らして、誰とも会わずにいてくれ!

 

「闘気増幅装置を用いた延命治療は一応行ってやる……だがそれでもユリアの死期は近いだろう。未来を先延ばしには出来ても変える事は出来ん。残された時間、悔いなく過ごせよケンシロウ」

「ああ……何から何まで世話になる」

 

 ユリアは原作と違ってラオウから気を分けて貰っていない。

 なのでこちらでビジャマの闘気増幅装置を用いた延命治療を行おうと思う。

 正直なところ俺の中にはユリアはさっさと死んでほしい気持ちと死なずに細々と命を繋いで欲しい気持ちの両方がある。

 別にユリアに生きていて欲しいわけではない。

 最後の将であり、妙な影響力と魅了染みたカリスマ性を持つユリアは俺にとって非常に厄介な存在だ。

 しかし死んだら死んだで今度は悪霊化して雷落として記憶を奪うとかやるからな、こいつ……。

 ケンシロウの行動が気に食わないからって、空に突然泣き顔ドアップで出現して雷ドッカーンはもう祟り神の所業なんよそれは……。

 あれは悪霊とか祟り神とかのマイナスなものではなく、天からケンシロウを見守っていただけ?

 そう言えば何か美談に聞こえない事はないが、それなら見守るだけに留めとけよと言いたい。死者が生者の行動に干渉するなや。というか、そんなの出来るならカイオウに雷落として倒せばよかったんじゃないか?

 ともかくさしもの俺も、実体を持たない悪霊なんぞ手に負える気がしない。

 そんなわけでユリアはある意味、死んだ後の方がオカルトで厄介な奴なのだ。

 だから俺にとって、死んでほしいが死んでほしくないという複雑な立ち位置にいる。

 

 とりあえずあまり動かず、弱った状態で細々と長生きしててくれ。

 それが一番無害で扱いやすいし、その範囲内でなら幸せを掴めるように協力もしてやるから。 

 

 

【修羅の国編ダイジェスト】

最初はちゃんと書いていたのだが、シンが登場しない話が何話も続く事になったので流石にこれではグダると判断してダイジェストとなった。

じゃあシンも修羅の国に乗り込ませて出番与えりゃええやんと思うかもしれないが、このSSのシンの性格や行動的にわざわざ修羅の国に行くわけがない。

シンにしてみれば、ラオウが去った後の残党を始末してまずは統治する方が大事。

なので目玉であるラオウVSカイオウのみ描写。

 

【カイオウ】

壊滅的に師匠運がなさすぎた人。あまりにも不憫。

ラオウの実の兄で、原作ではケンシロウに勝利した数少ない一人。

よくラオウと彼のどっちが強いか議論になるが、このSSでは

VSケンシロウ時のカイオウ>ラオウ=カイオウ>VSラオウ時のカイオウ

としている。

ただしこのSSのラオウはトキ戦で覚醒済みなので、カイオウが憎悪マシマシモードだったとしても勝てる。

 

【ヒョウ】

ケンシロウの実の兄。

こっちもこっちで色々不憫。師匠運がなさすぎた。

 

【ハン】

特に血筋関連の因縁がないのに羅将の座に君臨している男。

こいつもしかして、一番のバグ枠では……?

 

【ジュウザ死亡回避】

ケンシロウの無想転生の時に背後に出る強敵(とも)が物足りなかったので本当はここで死なせる気だったけど、画面外でダイジェストで死ぬのも何かアレなので生存。

無想転生メンバー今の所リュウガとファルコとソリアとトキ……ちょっと寂しいけど、トキがいればお釣りがくるからまあええか。

 

【ラオウ救世主伝説】

カイオウが修羅の国に広めた伝説。

原作だと何でこんな事をしたのかよく分からない。

とりあえずこのSSではそれっぽい理由をでっち上げておいた。

 

【シャチどこいった?】

現時点ではただのキッズなので船でお留守番。

 

【何でカイオウはラオウがトキに負けた事知っとるん?】

ギラクが喋った。

 

【サヤカ】

出番の全くなかったカイオウの妹。ヒョウの婚約者だし、この時期でももう大人なのかもしれないし、まだ子供かもしれない。

過去回想に一切出ないので、ラオウやトキとの関係は不明。

腹違いの妹なのかもしれないし、妹分というだけで血の繋がりがない他人なのかもしれない。

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