Infinite Stratos ~Eyes turn from blue to red~《瞳は蒼から紅へ》 リメイク 作:ぬっく~
週末の日曜日。
俺は、来週から始まる臨海学校の準備もあって、シャルロットと二人で街に繰り出していた。
「どうした、シャルロット? なんか調子が悪いようだが?」
心配になって顔を覗き込むと、ぐいいいっと顔面を押し返された。
しかも無言で、それなのに視線は何かこう避難囂々を告げている。
「シャルロット、あの―――」
「一夏」
「お、おう?」
「一夏の思い人って……誰なの?」
唐突な質問だった。
シャルロットの言いたい事は分かっていた。
千冬姉に暴露されたあの日以降、箒やセシリア、ラウラ、その他多数の生徒達から同じ質問があった。
一々返すのも面倒で、誤魔化して来たが、正直それも面倒になって来た。
「……流星一花。それが彼女の名前だ」
そう言って、俺はポケットに入れていた懐中時計を取り出す。
蓋を開けるとその裏に写真が埋め込まれていた。
「その人が……」
シャルロットは一夏から許可をもらい懐中時計を受け取り、その写真を眺める。
そして、この懐中時計に違和感があった。
「ねぇ、この時計……止まっている?」
そう、この懐中時計は止まっていたのだ。
秒針すら動いておらず、時間が止まっているのだ。
そして、その裏に―――
「『Don't forget 3.OCT.11』?」
シャルロットがそう刻まれた文字を読むと一夏は何も言わず、そっと懐中時計を返してもらう。
触れてほしくないのだろう、一夏は何も言わなかったが、その雰囲気をシャルロットは感じ取っていた。
「(『Don't forget 3.OCT.11』……11年10月3日を忘れるな。あれってどういう意味なんだろう……)」
また、謎が深まる。
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駅前へと向かって歩き出す一夏とシャルロットを物陰から見つめる二つの影があった。
二人が青になった横断歩道を渡って人混みに消えると、頃合いとばかりに茂みから姿を現す鈴とセシリアだった。
「ほう、楽しそうだな。では私も交ぜるがいい」
「「!?」」
いきなり背後からかけられた声に、驚いて振り返る。
そこに居たのは、ラウラだった。
「なっ!? あ、あんたいつの間に!」
「そう警戒するな、今の所、お前達に危害を加えるつもりはないぞ」
「信じられるものですか!」
二対一で負けた事が鈴とセシリアの懐疑心を強くしていた。
「あの事は、まあ許せ」
「許せって、あんたねぇ……」
さらりとそう言われ、二人は呆けてしまう。
「それとは別の事なのだが、一夏の思い人が誰か知っているな?」
鈴は、ラウラのその質問にビックと驚く。
「あの時、唯一一夏に詰め寄らなかったのは、お前だけだった。つまり、お前は知っていたと言う事だ。そうだろう」
「そうなんですか! 鈴さん!」
鈴は問い詰められるが、何も言わなかった。
「それより、あいつを追わなくていいの?」
尾行対象がそろそろ視界から消えかけていることを教えると、はっと思いだしたのか、再び追跡を開始する。
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「水着売り場はここだな」
俺たちは駅前のショッピングモール、その二階いた。
「ところで、シャルロットも水着を買うのか?」
「そ、そうだね……」
買おうと迷っている所に、見知った二人の女性が声をかけて来た。
「あれ? 織斑くんとデュノアさんでは?」
山田先生と千冬那姉がいたのだ。
「山田先生と千冬ね―――織斑先生がどうしてここに?」
「私たちも水着を買いに来たのですよ。あ、それと職務中ではないので、無理に先生と呼ばなくてもいいですよ」
しかし、そう言われても、山田先生は兎も角、千冬姉はサマースーツを着ている訳で、言いにくいのだ。
「それはそうと……そろそろ出て来た方がいいんじゃないか?」
ギクッと言う音が聞こえた。
「そ、そろそろ出てこようと思って……」
「え、ええ。タイミングが……」
「うむ……」
と言う訳で柱の陰から、鈴とセシリア、ラウラが出て来る。
「あ、あー。私ちょっと買い忘れた物があったので行ってきます。えーと、場所が解らないので凰さんとオルコットさん、ついて来てください。それとデュノアさんとボーデヴィッヒさんも」
何か閃いたかのか、山田先生は四人を連れて何処かに行ってしまった。
「……全く、山田先生は余計な気を遣う」
「え?」
「まあ、いい。で、お前の方はどうなんだ?」
「え? 何が?」
「何がも何も、あいつがいなくなって、そろそろ2年だ。心の整理は着いただろう」
「いや、まだついていないさ。それに……俺は一花が死んだとは思っていない」
「ほう。それは何故だ?」
「うーん、感だけど、生きている気がするんだ……」
まだ確信が持てていない為、俺はそう言い返す。
千冬姉は、それ以降何も言ってこなかった。
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山田先生に連れていかれた4人組は、カフェスペースに居た。
「あのー」
「はい。なんでしょうか?」
鈴が手を挙げ、山田先生が答える。
「何か買い忘れたのですよね? 行かなくても良いのですか?」
「あれは、建前ですよ。こうでもしませんと」
嵌められたと一同は理解する。
「それに、凰さんに聞きたい事がございましたら」
「何でしょうか?」
「織斑くんの……その、思い人の事で」
再びのそのことで、鈴は呆れていた。
「そのことで、僕も聞きたいことがあるんだけど」
シャルロットは、一夏が持ってる懐中時計の裏に刻まれていた言葉の意味を鈴に問う。
「一夏が持っていた懐中時計の裏に『Don't forget 3.OCT.11』……11年10月3日を忘れるなと刻まれていたんだけど、何か知らない?」
「何で、あんたがそれを知っているのよ……」
鈴はシャルロットがそのことを知っているのかに驚く。
「そうですわ。鈴さん答えてください! 一夏さんの思い人は一体誰なのですか!」
セシリアにも問い詰められ、視線が鈴に集中する。鈴も諦めた様に深い息を吐く。
「分かったわよ」
「うむ。では、その者は誰だ?」
「流星一花。それがあいつが唯一愛した者の名前よ……」
「流星一花……そんな、生徒いましたけ?」
山田先生は、一年生の生徒名を思い返しているが、鈴は首を横に振る。
「一花はIS学園にはいないわ」
「そいつは、今何処にいる?」
鈴は上をずっと見つずける。
ラウラも、鈴の視線を追うと―――
「もう、この世にはいないわ……」
ラウラはそれを聞いて、思わず鈴を凝視する。
「どう言う事だ?」
「むしろ、あんたがよく知っていると思うんだけど……」
「? どう言う事だ?」
ラウラには分からなかった。
鈴が出したヒントを言われるまでは。
「第二回モンド・グロッソ……」
「それって、織斑先生が……」
「うむ。教官が唯一優勝を逃した大会だな。そして、一夏が誘拐された……」
「そうよ。その誘拐に巻き込まれて、一花は死んだのよ。……2年前の11年10月3日に」
「あの意味って、そう言う事だったの……」
そう言われ、誰も何も言えなかった。
一夏の思い人は、もう既にこの世には居なかったのだ。