Infinite Stratos ~Eyes turn from blue to red~《瞳は蒼から紅へ》 リメイク 作:ぬっく~
「海だァ~~~っ!!」
臨海学校初日、天候にも恵まれて無事に快晴。
陽光を反射する海面は穏やかで、心地よさそうな潮風にゆっくりと揺らいでいた。
「ヤッパリ海を見るとテンションが上がるよなぁ」
7月初旬、俺達IS学園臨海学校に来ている。
各国から送られたISと装備、それを二泊三日で稼働試験するのだ。
一日目の今日は、自由行動と言う訳で―――
「一夏!」
「シャルロット」
「一緒に準備体操してもいい?」
「おう! その水着似合ってるな」
「そう? そう言ってもらえると嬉しいな」
余談だが、本当の性別を明かしたシャルロットは、女生徒として学園に通う事になった。
結果的に皆を騙していた訳だが、その事を責める人は一人もいなかった。
もちろん、部屋割りは変更になり、今はシャルロットはラウラとなった訳だが―――
「そう言えば、ラウラは一緒じゃないのか?」
「ラウラならさっきからそこに……水着が恥ずかしいってずっとこうなんだよ。僕は大丈夫だって言っているのに……そのまでいるなら僕だけ一夏と遊んできちゃうよ?」
「うう……笑いたければ笑うがいい……」
「ああ、ちょっと驚いたけど、可愛いと思うぞ」
「かっ、かわっ……!?」
ラウラは試合の後、大きく変わった。
俺に対するわだかまりは無くなったみたいだ。
「いーちーかー!!」
「ん?」
「隙ありっ!!」
「のわぁっ!?」
いきなり俺に飛び乗って来たのは、鈴だった。
「鈴……お前なあ! 身軽なのはいいけどいきなり飛び付くなよ!」
「にししっ♪」
鈴は俺の身体をしゅるりと駆け上がって肩車の体勢になる。
「一夏、沖まで競争しない?」
「話を聞けよ!」
「り、鈴さん!! 何してるんですの! 早く降りてください!!」
パラソルとビニールシートを両手に持ちながらセシリアが現れた。
「や~だよ~だ!」
「また、子供のような事を言って貴女は……!! 全く、鈴さんには慎みと言う物が欠如していますわね!」
いつものメンバーも集まったと思ったが……いまだに現れていないのが一人いた。
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時間はあっという間に過ぎ、大広間三つを繋げた大宴会場で俺達は夕食を取っていた。
「「「いただきまーす!!」」」
全員、浴衣を着用していた。
どう言う訳か、この旅館は『お食事中は浴衣着用』が決まりらしい。
「んん~! このお刺身、活きが良くて美味しい~!」
「うう。魚を生で食べるのは慣れませんわ……」
「本ワサの風味もいいなぁ」
「本ワサ……?」
「情けないな。補給がたたれたら生き残れないぞ」
「シャル!? 今わさびの山、直接食べなかったか!?」
「ら、らいじょうぶ、らいじょうぶ……」
「何やってんのよ! ほら水!」
その後もあれやこれらやとあり、気付ければ満腹になるまで食べてしまった。
「ふ~、さっぱりした」
食事の後は風呂に入った。
海を一望できる露天風呂。
それを一人で使った。
なんと言う贅沢だろう。
かなり上機嫌で部屋へと戻ると、ちょうどそこに織斑先生が帰ってくる。
「ん? なんだ、一人なのか?」
「女の一人でも連れてこいてか? 織斑先生も知っているだろうけど、俺は一花以外とは付き合う気はないぞ?」
それにこの部屋は一応、織斑先生の部屋でもあり、誰も近寄らない。
よく見ると織斑先生の髪が濡れていた。
「そうだ、千冬姉」
チョプが飛んでくる。
「織斑先生と呼べ」
「べつにいいだろ、風呂上がりだし、久しぶりにどうだ?」
織斑先生をあるものに誘う。
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その頃、部屋の外では……箒と鈴の女子二名が張り付いていた。
近くを通りかかったセシリアが二人に話しかける。
「鈴さんに、箒さんまで何を―――」
どうやら二人は微かに漏れている声を聞いていた。
『千冬姉? 久しぶりにやるから、緊張しているのか?』
『そんな訳ではないが………んっ!』
『ここはどうた?』
『くっ! そこは……』
『すぐ良くなる、さ』
『あぁぁ!』
「…………(これは、一体…………)」
セシリアは理解出来なかった。
さらに鈴と箒はお通夜モードだった。
その瞬間、3人はドアに蹴られた。
「「「へぶっ!!」」」
反射的に漏れた声が聞こえた。
「何をしている?」
「は、はは……」
「こ、こんばんは」
「さ、さようなら」
3人は脱党のごとく逃走開始するが……呆気なく捕まった。
「ちょうどいい。入っていけ。それと凰、ボーデヴァッヒとデュノアも呼んでこい」
「イエスマム!」
そうして鈴は2人を呼びに行った。
少ししてボーデヴァッヒとデュノアが到着した。
「全員来たか、ほれ、好きなとこに座れ」
全員座布団の上に座った。
「さて、織斑。お前はもう一度風呂に入ってこい」
「ああ、そうするよ」
俺はタオルと着替えを持って部屋を出た。
なにをしたらいのかわからない五人。
「おいおい、いつものばか騒ぎはどうした?」
「いや、その……」
「こうして織斑先生と話すのは……」
「はじめてで…………」
「はぁ~、私が飲み物を奢ってやろう。何がいい?」
旅館に備え付けの冷蔵庫からラムネ、オレンジ、スポドリ、コーヒー、紅茶を取り出す。
「「「「「い、いただきます」」」」」
全員の喉が動いたのを確認して、ニヤリと笑った。
「飲んだな?」
「は、はい?」
「口封じですか?」
ラウラは織斑先生の考えていたことがわかったらしい。
「その通りだ」
そう言って、冷蔵庫からビールを取り出す。
「さて、そろそろ肝心の話しをするか」
ビールを飲みながら話す千冬。
「お前たちは一花と言う女を何処まで知っている?」
一花……流星一花の事だろう。
名前が同じで、その者は既に亡くなっている。
その質問にセシリアが答える。
「一夏さんの初恋の相手で……2年前に亡くなっています」
「ほう。そこまで知っていると言う事は、凰から聞いたな?」
「はい……」
箒以外の一同は、返事をする。
「そいつは、もう亡くなっているのか!?」
鈴もそう言えば、話していなかったことを思い出す。
「そうだな、あいつは中々いい女だったよ。この私が数少ない認めた女だったよ」
千冬はビールを一口飲み、話を続ける。
「今まで会って来た女の中では、唯一一夏をくれてやってもいいと思った程にな」
「そ、そんなにですか?」
「そうだ」
ラウラも千冬からそんな言葉が出て来るかとは思ってもおらず驚いていた。
「凰ならその意味は分かるよな?」
「ま、まあ……分からなくもないです……一花は、何というか次元が違うと言えばいいのでしょうか? 勝てる気がしなかったので、色んな意味で……」
この中で唯一一花と直接面識があったのが鈴だけで、その鈴が一花の異常さを知っていた。
「そうだ。あいつは……私以上の怪物だ」
「教官以上ですか……」
ラウラも千冬が怪物と比喩されることは否定しない。
素手でIS装備を扱う存在を怪物と言わないで何と言うのか。
「ああ、あいつは……生身でISを20機以上潰した。正真正銘の怪物だぞ」
その一言は、その場に居た誰もが驚く。
「ちなみにこれは事実であるが、記録には一切載っていない事でもあるがな」
「それはどう言う事ですか……」
「ボーデヴィッヒ。最強の兵器であるISをこうもあっさり倒され、その上相手は生身の人間だぞ? 報道できる訳ない。しかもその真実を抹消するしかないのだ」
ドイツで起きたあの事件の裏を知ってしまったのだ。
第二回モンド・グロッソの裏で起きた織斑一夏の誘拐事件は、一切報道されていない。
それどころか、ドイツ側は監禁場所にあった無惨に破壊されたISの記録すら国家機密として封印してある。
「その者は、本当に何者なんですか……」
セシリアのその質問は、誰もが思った質問だった。
「さあな。だが、あいつは危害を与える者にしか牙を向けない……それに、あいつ自身一夏の事を愛していたからな。ドラゴンみたいな存在だったよ」
三本目のビールを口にし、実に楽しそうな表情でそう言った。