Infinite Stratos ~Eyes turn from blue to red~《瞳は蒼から紅へ》 リメイク   作:ぬっく~

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あまねく奇跡の始発点

「…………」

 

旅館の一室に飾られている時計は4時前だった。

ベットで横たわる一夏は、もう3時間以上寝ていた。

その横に控えている箒は、ずっとこうしてうなだれていた。

 

(私のせいだ…………)

 

いくら絶対防御があるからと言って完全には守り切れない。

一夏は人体に届いた熱波に焼かれ、至る所に包帯が巻かれている。

 

(私のせいで一夏が…………)

 

ぎゅうっとスカートを握りしめる箒。

作戦室では山田先生と織斑先生が投影ディスプレイに映る福音の監視を続けていた。

 

「福音は依然と停止していますね……本部はまだ私達に作戦の継続を?」

 

「解除命令は出ていない以上は……継続だ」

 

「織斑先生……」

 

 

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俺は意識が朦朧としながら、電車に乗っていた。

窓から差し込む夕焼け、俺以外の乗客は誰もいなかった。

 

(確か……俺は……)

 

箒をかばって―――そうだ、俺は福音の攻撃を受けたんだ。

 

「そう……一夏はまた、境界線を越えようとしちゃったね」

 

「一花……?」

 

「うん。そうだよ」

 

向かいの席に流星一花が座っていていた。

一花に言われて、一夏の意識がハッキリする。

 

「私としては、こちら側に来てほしくはないんだけどね」

 

両目を閉じなら一花は苦笑いする。

こちら側に来させないように、シッテム箱や写輪眼を与えたのに……

 

「俺は……一花に会えるだけでも―――」

 

「私としては、それも嬉しいけど。それじゃダメなんだよ……」

 

この先起こる災害を乗り越えて欲しくて一花は一夏に力を与えなければなかった。

しかし、強大な力はそれだけ危険性が伴う。

 

「少し迷ったけど……一夏には生きて欲しいから、この力を開放させるよ」

 

そう言って、一花は―――

 

「システム開放。コード……『あまねく奇跡の始発点』」

 

すると、一花の手元がいきなり眩い程の輝きを放ち始める。

光の球は一夏の中へと吸い込まれて行く。

 

「一花……俺は―――」

 

一夏は何かを言おうとした時、何かに意識が引っ張られ、その場から動けなかった。

 

「さようならは言わない。だから―――またね」

 

一花がそう言って、俺の意識が途切れる。

 

 

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「…………」

 

海上200メートルで『銀の福音』は胎児のようにうずくまっていると、不意に顔を上げる。

次の瞬間、超音速で砲弾が福音の頭部に直撃し、大爆発を起こした。

 

「初弾命中! 続けて砲撃を行う!!」

 

5キロ離れた場所に浮かんでいるIS『シュヴァルツェア・レーゲン』とラウラは、福音が反撃に移るよりも早く次弾を装填して発射した。

 

「ちぃっ!」

 

続けて砲撃を行うが、福音の翼から放たれるエネルギー弾によって半数以上撃ち落としながらラウラへと迫る。

 

「―――セシリア!!」

 

迫って来た福音の上空から複数のビームが降り注ぐ。

セシリアの狙撃。ステルスモードで待機していたセシリアの射撃が福音への強襲だった。

 

『敵機Bを認識。排除行動へと移る』

 

「遅いよ」

 

セシリアの射撃を避ける中、真後ろから別の機体が福音を襲う。

ショットガン二丁によるシャルロットの『高速切替』で福音は姿勢を崩す。

 

「行ったよ!」

 

福音はその場から逃れようと無理矢理、セシリアとシャルロットの狙撃を振り切るが、その先に鈴が待ち構えていた。

 

「逃がすかああああああ!!」

 

海面が膨れ上がり、爆ぜる。

鈴の衝撃砲の直撃を受けるが、福音は未だに健在だった。

 

『《銀の鐘》最大稼働―――開始』

 

両腕を広げ、さらに翼も外側へと向けると、眩い程の光が爆せ、エネルギー弾の一斉発射が始まった。

 

「く!」

 

「これはちょっと、キツイね」

 

福音の異常な連射を立て続けて受ける事はやはり危険だった。

シャルロットはタンク役として装備を変更してもらっていたが、その為の物理シールドが一枚、完全に破壊される。

 

「鈴! 箒! お願い!!」

 

「もらったあああっ!!」

 

鈴と箒の突撃。エネルギー弾を全身に浴びながら、福音の頭部に接続されたマルチスラスター《銀の鐘》を狙う。

お互いに深いダメージを受けながら、遂にその斬撃が福音の翼を奪う。

両方の翼を失った福音は、崩れるように海面へと降りる。

 

「やったか……!?」

 

誰もが勝利を確信した瞬間だった。海面が強烈な光の球によって吹き飛ぶ。

球状に蒸発した海は、未だにへこんだままだった。その中心に青い雷を纏った『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が自らを抱くかのようにうずくまっていた。

 

「『第二形態移行(セカンド・シフト)』だと!?」

 

ラウラが叫んだ瞬間、その声に反応して福音が顔を向ける。

無機質なバイザーに覆われた顔からは何の表情も読み取れない。だが、そこには確かな殺意を感じた。

 

『キアアアアアア…………!!』

 

まるで獣の咆哮を上げ、福音はラウラに近づく。

 

「なぁ!?」

 

あまりにも速いその動きに反応出来ず、ラウラは脚を掴まれる。

そして、切断されたはずの頭部から、まるで蝶が蛹から孵るかのようにエネルギーの翼が生えた。

 

「しまっ―――」

 

ラウラはその眩い程の輝きと美しさを併せ持ったエネルギーの翼に抱かれ、ゼロ距離のエネルギー弾雨を食らい、全身をズタズタにされて海へと堕ちた。

 

「ラウラ!」

 

シャルロットはショットガンを福音の顔面へと銃口を向けて、引き金を引く。

しかし、胸部、腹部、背部から装甲がまるで卵の殻のようにひび割れて、小型のエネルギーの翼が生えてくる。

それによるエネルギー弾の迎撃がショットガンを吹き飛ばし、シャルロットも吹き飛ばす。

 

「軍用とはいえ、これは異常ですわ!」

 

射撃を行おうとしたセシリアの前に福音が迫る。

そして、次の瞬間には両翼からの一斉射撃。セシリアは、反撃らしい反撃も出来ず、海へと堕ちる。

 

「よくも!!」

 

急加速によって接近した箒は、福音に回避と攻撃を繰り返しながら、徐々に出力を上げる。

 

「うおおおおっ!!」

 

わずかだが、福音を押し始め、箒が勝利を確信した瞬間だった。

 

「なっ! エネルギー切れだと!? ぐあっ!」

 

その隙を見逃さない福音が箒の首を捕まえ、エネルギーの翼が包みこもうとした瞬間だった。

強力な何かによって狙撃を受けて吹き飛ぶ福音の姿だった。

 

「(一体何が―――)」

 

戸惑う箒の耳に届いたのは、聞こえるはずのない者の声だった。

 

「待たせたな……福音」

 

白く、輝きを放つ機体を纏った―――一夏がそこにいた。

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