Infinite Stratos ~Eyes turn from blue to red~《瞳は蒼から紅へ》 リメイク   作:ぬっく~

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乱入者

アリーナは大混乱に見舞われていた。

原因は鈴との試合の途中で現れた異形のIS。

そして俺と鈴はそのISと対峙していた。

そのISは細い胴体にその胴体よりも太い腕という、いかにもアンバランスな姿だった。

 

「いきなり乱入とはお前は何者だ!」

 

俺はそのISに向けてそう言うが相手は何も答えない。

 

(だんまりか……だが、やることは変わらない!)

 

戦う気満々の俺に、鈴からプライベート・チャンネルが飛んで来た。

 

「一夏、試合は中止よ! 早くピットに戻って!」

 

鈴が脱出を促してくる。

 

「あいつ、アリーナの遮断シールドを破壊してきたのよ。とんでもない火力を持ってる……そんな火力で撃たれたらタダじゃすまないわ。あたしが時間を稼ぐから一夏は早く逃げて!」

 

確かに鈴が言う事は尤もだろう。

あのISはアリーナのシールドを小細工なしで破壊して侵入してきた。

それだけの相手と張り合うぐらいなら逃げた方が得策だろう。

だが……

 

「鈴……悪いがそれだけは出来ない!」

 

「何でよ!? 危ないって言ってるじゃない!」

 

鈴は俺の言葉を聞き、そう聞き返す。

 

「鈴、お前の気持ちは嬉しいけど、ここで俺が逃げたら沢山の人に被害が及んじまう。そうなっちまう位なら俺もここに残って戦う事を選ぶ!」

 

相手が自分達の前にこのような形で乱入してきた以上、周りの人間に被害が及ぶ。ならば、その危険性は排除すべきだ。

 

「そして何より、幼馴染を置いていける訳がねぇだろ!!」

 

鈴は大事な幼馴染の一人だ。

そんな鈴を置いて行くほど俺は腰抜けじゃない。

 

「な、何言ってんのよ!? こんな時に!」

 

俺の言葉を聞きそう言う鈴。

なんか変な事でも言っただろうか?

 

「何も倒そうとは思ってないわ。いずれ学園側がこの事態を収拾してくれるわ。だからそれまでの間誰かが時間を稼がないと……」

 

鈴がそう言って俺への説得を続けていると、向こうのISの腕が光り出していた。

 

「危ない!!」

 

俺は危険を感知し目を発動させ、鈴を抱きかかえてその退避する。

そして次の瞬間、その場を閃光が通り抜ける。

 

(危なかった。一瞬でも対応が遅れていたら……)

 

そう思うと、自然と冷や汗が流れる。

 

「鈴、大丈夫か!?」

 

俺は鈴にそう聞く。

 

「ええ、大丈夫よ。それよりもいい加減下ろしなさいよ!」

 

鈴にそう言われ、俺は鈴を下ろす。

そして黒いISは更に追撃してくる。

鈴と俺は敵のISから放たれる攻撃の回避に専念する。

 

(今の光、それにアリーナのシールドを破壊したあの威力……)

 

俺は回避しつつも今までの敵の攻撃から、敵の放つ光の正体を考える。

 

(レーザーにあれだけの威力は無い、とすればビームが妥当だな)

 

今までの特徴を総合したうえで結論を出す。

すると、鈴のISから山田先生の声が聞こえてきた。

どうやら鈴に通常回線で通信を掛けてきたようだ。

 

『鳳さん、織斑君、聞こえてますか! 今すぐアリーナを脱出して下さい! すぐに先生達が制圧に行きます!!』

 

山田先生は俺達に向かってそう言うが、黒いISはどうやら見逃してもらえそうになかった。

さっきからずっとアラートが鳴り止まないのだ。

 

「すみませんが、それは出来ません。今この状況で俺達が脱出したら多くの被害が出ます。それに先生方が来るのにも時間がかかります。それならば、俺達が残った方が得策です」

 

俺はそう言って山田先生の言葉を撥ね退ける。

 

『何言ってるんですか! 早く脱出を……』

 

しかし黒いISの追撃によって通信どころでは無くなった。

敵から放たれる激しいビームの嵐をひたすら回避し続ける。

 

(クソっ! 攻撃がキツイ……だがやってやる!)

 

そうして俺は機体の体勢を整え、雪片弐型を黒いISに向かって構える。

 

「鈴、悪いが手伝ってくれ。一対一でやるより二人で掛かった方が良い。時間もかけてられないしな」

 

「仕方ないわね。手伝ってやるわよ! どっちみちあいつを倒さないとこっちだって危ないし」

 

鈴もそう言って、双天牙月を構えなおす。

 

「決まりだ。それじゃあ行くぞ!!」

 

そうして俺達は黒いISに立ち向かった。

 

 

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黒いISと交戦してから既に10分は過ぎていたが未だに敵は健在である。

何故ならば、その巨体からは想像もつかない速度で攻撃を回避され、例えこちらの攻撃が当たったとしても、そこまでのダメージを与える事が出来ない。

おまけに凄まじい攻撃の嵐のせいで迂闊に近づくことさえできず、有効打を与える事が出来ないからだ。

 

「いつになったら倒れるのよ、あいつ!」

 

いつまでたっても倒す事が出来ないイライラからか、鈴からそんな言葉が飛び出す。

しかし、俺は敵のISの動きを冷静に観察していた。

 

(やはり動きがワンパターンだな……)

 

さっきから試しにライフルで攻撃しているが、敵は回避したらビームを撃ち返す

という挙動しか見せない……はっきり言って単調すぎる。

 

(まるでプログラミングされた動き……といったところか)

 

無論それ以外にも不審な点は多く、敵の今までの行動パターンを踏まえ、A.R.O.N.Aも同じ結論を出す。

 

「鈴、アイツおかしいと思わないか?」

 

「当たり前じゃない! いきなりこんな事仕掛けてきて、おかしくない訳が無いじゃない!」

 

「いや、俺が言ってるのはそう言う事じゃなくてだな。アイツの動きとかの事を言ってるんだ」

 

「それがどうしたのよ?」

 

「俺が思うに、アイツは無人機だ」

 

「はぁ? 何言ってんのよ。ISは人が乗らないと動かないのよ?」

 

俺の言葉を聞き、鈴は信じられないといった声でそう言った。

 

「勿論理由はある。まずはさっきからのアイツの挙動だ。いくらなんでも単調すぎる。あらかじめプログラムされているような感じの動きだった。それにアイツの動きは人間に出来る動きじゃない。もし生身の人間がアイツと同じ動きをしたら確実に身体が壊れるだろうな」

 

A.R.O.N.Aが割り出したあのISの動きが、純粋な人間では不可能に近い事を鈴に話す。

 

「だから、あいつは無人機っていうの?」

 

「おそらくな」

 

どうやら鈴もある程度納得したようだ。

 

「でも無人機だからってどうするのよ。それがわかったって今の状況は変わらないわよ。」

 

鈴は俺に向かってそう言うが、根本的な解決になっていないのだ。

そう、通常であれば。

 

「いいや、状況は変わった。アイツが無人機である以上俺の奥の手が使えるからな。あとはアイツの足を止めるだけだ。だから鈴、アイツの足止めを頼む」

 

「言いきったわね。乗ってやろうじゃない」

 

そうして再度俺達は黒いISに攻撃を仕掛ける。

鈴は黒いISを足止めしようと龍砲を放つ。

そして俺は目を閉じ、集中する。

今から発動するのは余りにも威力の高い攻撃の為、相当の集中力が求められる。

傍から見れば鈴だけが戦い、俺はそれをただ見ているだけだと思われるだろう。

勿論俺は鈴だけに戦わせ続けるつもりは無い。

そして鈴が放つ龍砲の攻撃を黒いISが掻い潜り、鈴にビームを放とうと右腕を前に突き出した。

その瞬間、黒いISの足は止まっていた。

 

(今だ!!)

 

絶好の機会をみすみす逃す訳にはいかない。

俺は踊り出るように鈴の前に高速で移動し雪片弐型を前に突き出す。

そして一瞬で照準を合わせ、雪片弐型に纏った雷が放たれた。

この技は、A.R.O.N.Aから教えてもらった剣術……いや、正確には、一花が残した剣術だった。

この技を使用すれば、相手の機体は良くて中破、悪くて大破するだろう。

人が乗っていれば大惨事になりかねないが、今目の前に居るのは無人機だ。

 

「(一撃必殺だ! これで決める)神鳴流奥義! 極大 雷鳴剣!!」

 

そして俺は雪片弐型に纏った雷を放ち、それとほぼ同時に黒いISからもビームが飛んでくる。

空中で二つの閃光がぶつかり合い、二つの閃光は互いに消滅するかに思われたが、俺の放った閃光が勢いを増して黒いISのビームを飲み込んでいき、黒いISの右腕に直撃した。これによって相手の右側への攻撃手段を封じる事が出来た。

 

(だが、胴体に当たらなかったのは痛いな……)

 

流石に一撃で決められなかった事に関しては俺の落ち度だ。

 

(単一仕様能力はまだ使えるな……いける!)

 

敵に一撃を浴びせたのはいいが、極大 雷鳴剣を最大出力で使用した分のシールドエネルギーを消費してしまい、もう後が無い。

ならば、零落白夜で一気にケリをつけるしかない。

 

(勝負は一度っきりだ! やるしかない)

 

「鈴、今だ! アイツの右側を狙え!」

 

「分かってるわよ!」

 

俺の言葉を聞いて鈴が黒いISに攻撃を仕掛ける。

勿論ガラ空きの右側をだが、敵の注意が鈴に向いている間に、俺は白式の単一仕様能力『零落白夜』を発動し、黒いISに一気に接近する。

相手はこちらに未だに気付いていない様子で、鈴に向かって攻撃し続けていた。

 

(ここだ!!)

 

その隙を突き俺は雪片弐型を最大出力に移行し、黒いISの胴体目掛けて振り下ろした。

流石の敵も機械とはいえ、咄嗟の出来事には手も足も出せず、その胴体を綺麗に両断され、最終的に爆散し残ったのは残骸だけだった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

黒いISが完全に沈黙し、同時に白式のシールドエネルギーが完全に底をつき、強制的にISが解除され、その先の事は何も覚えていない。

 

 

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IS学園の地下50メートル下にある一室。

暗い部屋の中では機械音と共に光が灯っていた。

そして部屋の中央にあるベッドのようなものの上には、ボロボロになった残骸が横たえられていた。

 

「解析はどうだ、山田先生?」

 

私は山田先生にそう尋ねる。

 

「はい……それが、やはりあのISは無人機でした。コアも調べてみましたが……どこの国家にも登録されていないものです」

 

「やはりな……」

 

私はその犯人を知っている。

コアを作ることが出来るのは世界でただ一人だからだ……

 

(束……お前は一体何を考えている?)

 

親友の事を心の中で思った。

 

「なにか心当たりが……」

 

「いや……ない。今はまだ……な」

 

そう言って、私は山田先生に作業を続けるよう促し、その様子を見守っていた。

 

 

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謎のISの乱入もあったが、なんとかクラス代表戦を終え、俺は今は保健室にいた。

理由は無理に極大 雷鳴剣を使用したからである。

尤もそこまで怪我は負っていないが、あの後、気絶した上、軽く火傷をした程度で保健室にいるのは微妙だと思うが……

 

(暇だな~)

 

そんな事を思いながら保健室にいると、鈴に声を掛けられた。

 

「一夏、具合は大丈夫なの?」

 

「あぁ、全身に軽い火傷かあるけど……それ以外はなんともないさ」

 

「そう、大したことないなら……いいけど」

 

俺の言葉を聞き、鈴は少し戸惑いながらもそう言った。

 

「おまえの方は大丈夫なのか?」

 

「ええ、見ての通りよ。」

 

俺は鈴の身体を心配するが、鈴はいつも通りの反応をする。

 

(怪我とかが無くて良かった)

 

そんな事を思っていると、鈴がある疑問を問うてきた。

 

「ねぇ、一夏。あんたに聞きたい事が有るんだけど」

 

「ん? 何だ聞きたい事って?」

 

俺はそう聞き返した。

 

「あんたの目……あの時、青から赤に変わっていたよね?」

 

鈴は心底不思議そうにそう聞いてきた。

どうやら、雷鳴剣を使用した時にあの目になっていたようだ。

どうも、極限状態になると勝手に切り替わるらしい。

 

「やっぱり気になったか……話長くなるけど聞くか?」

 

「ええ、私は構わないわ」

 

そして俺は今の目の状況を話した。

 

「……一花がね」

 

一通り話し終えると、今まで沈黙を貫いていた鈴がそう言った。

その声には、同情が込められていた。

 

「俺からしたら嬉しい事だしさ。むしろそのおかげで俺は強くなることもできた」

 

俺は鈴にそう返した。

 

「そっか……」

 

鈴は俺にどこか悲しげな声でそう返した。

 

「聞きたい事ってそれだけか?」

 

俺がそう聞くと、鈴は今までの雰囲気をガラリと変えてきた。

 

「ええ、まだ有るわ」

 

「そうか、何が聞きたいんだ?」

 

俺がそう尋ねると、まあ、予想通りの質問が帰って来た。

 

「ねぇ、一夏。一花って本当何者なんだろうね?」

 

そう聞いてきた。

 

(確かに……)

 

「この目のこともそうだし、中学の時もそうだったよな……」

 

「そうだったわね」

 

俺は一花が死ぬ前に一度だけ聞いたことあるが―――『 例え、世界が私の敵になったとしても一夏くんは私の味方でいてくれる? 』としか話してくれなかった。

尤もその時は言葉の意味がわからなかったが、今ならなんとなくわかる。

 

(この目には世界すらも揺るがすほどの力があり、それを使う可能性があったのかもしれない……)

 

色々と考えたが、やはり今出ている答えだけでは、まだ足りない。

 

「鈴、俺は……」

 

「一夏さん!! 具合はいかがですか?」

 

しかし、俺の言葉はセシリアの言葉で途中で遮られてしまった。

鈴はいきなり俺の名前を呼んだセシリアに視線を向ける。

 

「このわたくしが来たからにはもう心配は……あら?」

 

鈴は不機嫌そうな顔をしていた。

 

「鳳さん……貴方がどうしてここに? 二組の方に見舞われる筋合いはなくってよ?」

 

鈴は挑発するかのようにセシリアに話す。

 

「あたしは一夏の幼なじみだからいいのよ! あんたこそ他人じゃん」

 

「なんですって!?」

 

「なによ、やろうっての!」

 

「おーい……」

 

すでに、遅かった。

その後、俺はもう自室に戻っても良いと許可が下り、自分の部屋に戻ったのだった。

 

 

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何かの機械で埋め尽くされた部屋の中で、一人の女性がモニターに向かっていた。

 

「いや~、流石はいっくんだね~」

 

この部屋には似つかわしくない明るい声でそう言ったのは、二十代前半と思われる女だ。

しかし成人を過ぎた女性にしては何というか格好が少しばかりおかしい。

ウサギの耳のような機械を頭に載せ、エプロンを付けた西洋の給仕服、いわゆるメイド服に似た服を着込んでいた。

この女性の名は、篠ノ之束。

ISという画期的な物を開発したまさに天才にして天災である。

この世界をいまのような形にした張本人である。

篠ノ乃束は満足気にモニターに食い入っていた。

 

「いっくんの力を見れたからそれでよしとして……」

 

篠ノ乃束は声のトーンを変えずにそう言いながら、モニターから目を離す。

 

「まだいっくんは全力じゃないみたいだし、また送りこむのもアリかな……」

 

しれっと、問題発言を言っているが当の本人はそれを気にも留めていなかった。

 

「でもさ、おかしいんだよねぇ」

 

しかし、その一言で今までの声とは違い、やや低めの声になる。

 

「だって、いっくんの目って…………コバルトブルーの筈なのに……」

 

一瞬の間、静寂がこの部屋を支配する。

 

「ま、今はそんな事どうでいいや」

 

しかし、そんな静寂も彼女の明るい声で掻き消されてしまう。

 

「さぁ~、早く残った仕事を片付けないとね」

 

そうして篠ノ乃束は部屋の奥へと消えていった。

 

 

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織斑千冬は、山田真耶から無人機のISの検査結果を一通り聞いた後、地上に上がらず、更に下の方へと行っていた。

そこは、一部の者にしか入る事を許されない場所、IS学園地下特別区画。

 

「…………」

 

そこで千冬は数十のケーブルに繋がれた水槽を見つめていた。

 

「あいつは、着々と強くなっているぞ……一花」

 

第2回モンド・グロッソで死んだはずの一夏の恋人がそこにいたのだ。

どういった理由で、このIS学園の地下特別区画に居るのかは、わからない……だが、彼女は、何かを抱えながら今も眠り続けている。

 

「…………」

 

千冬の指先が水槽に触れる。

僅かに冷たく、ひんやりとした感触。

しかし、その奥には鼓動を感じさせる。

 

「お前が目覚める時が、全て終わる時なのだろうな……」

 

そう呟く千冬の姿は、どこか寂しそうであり、それでいて確信めいたものがあった。

 

「……いつか、全てを話してもらうぞ。愚義妹」

 

そう言い残して、千冬は部屋から出て行く。

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