Infinite Stratos ~Eyes turn from blue to red~《瞳は蒼から紅へ》 リメイク   作:ぬっく~

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転校生が二人もやって来た!?

 

「織斑君、篠ノ之さん。ちょっといいですか?」

 

夜遅くに山田先生が訪ねてきた。

こんな時間にやってくるという事は何か特別な用事があるのだろう。

 

「山田先生、どうかしましたか?」

 

「実はやっと調整が終わって、織斑君のお部屋が決まりました!!」

 

そう言えばそんなこともあったっけ、すっかり忘れてたな。

 

「分かりました。それで、どこなんですか?」

 

俺は次に過ごすことになる部屋の場所を尋ねる。

 

「それが……ここなんですよね」

 

「はい?」

 

そんな事を言われ、俺は呆けた声を出してしまった。

 

「他に部屋を確保出来なかったんですよ。だから、織斑君にはこのまま居て貰う事になったんです。でも流石に年頃の男女が一緒というわけにはいかないので、今回篠ノ之さんは他の部屋にお引っ越しということになりました」

 

「ええぇぇぇぇ!?」

 

今度は箒が驚きのあまり大声を出していた。

もう遅いのだから、周りの事を考えてほしいものだ。

 

「い、今からですか!?」

 

「はい。荷造りなら私も手伝いますよ」

 

「いえ、先生は廊下で待っていてください」

 

箒がそう言うと、山田先生が部屋から退出した。

この後、箒に「学年別個人トーナメントで優勝したら付き合ってもらう!」と言われ、意味を理解した俺は断ったのだが……

箒はしつこく理由を求めるが、一花のことを話せばさらに厄介になると分かっているためドアを閉め、そのまま箒を放置して就寝した。

 

 

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部屋割りが決まった翌日、俺はいつも通り教室に居た。

 

「はーい皆さん。静かにして下さい!」

 

「?」

 

何だろうと心の中で想像する。

 

「今日から皆さんと一緒に勉強する。転校生のシャルル・デュノア君とラウラ・ボーデヴィッヒさんです!」

 

山田先生が言うと、教室にどよめきが広がった。

それもそうだ、いきなり転校生が二人もやって来たのだ。

しかも、その内の一人が、男子であったからだ。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。不慣れなことも多いと思いますが、よろしくお願いします」

 

と、シャルルと呼ばれる男子は礼儀正しく挨拶をする。

その一つ一つに気品があった。

 

(まるで貴公子みたいだな。)

 

俺は内心でデュノアをそう評価した。

 

「こちらには僕と同じ境遇の方がいらっしゃると聞いて、本国から転入を……」

 

そして―――

 

「き……」

 

「え?」

 

(これはヤバい!)

 

そして俺はとっさに耳を塞いだ。

 

「「「キャァァァァァァァァァァァ!!」」」

 

そしてどっかで聞き覚えのあるような女子たちの叫び声が教室を揺るがした。

 

「男子よ!これで二人目よ!!」

 

「しかもうちのクラスに!!」

 

「美形だし!しかも守ってあげたいタイプ!!」

 

「地球に生まれてよかった~!!」

 

(なんか以前よりボリュームがグレードアップしてないか!?)

 

耳を塞いでも叫び声が耳に入ってくる。

これじゃあ、耳栓は全く使い物にならない。

 

「…………」

 

そしてデュノアの隣で冷たい威圧感を放っていた生徒が居た。

背丈はデュノアより低く、銀色の髪を腰の位置まで伸ばしているが、どちらかといえば伸ばしっぱなしという感じであった。

左目には黒い眼帯をつけていて、その雰囲気から軍人という感じが溢れ出ていた。

 

「ラウラ、挨拶をしろ」

 

「はい……教官」

 

「もう私は教官ではない、ここでは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

そして、ラウラと呼ばれる少女はようやく固く閉じていた口を開いた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「あ、あの……他には……」

 

そして山田先生は恐る恐る聞いてきた。

 

「以上だ」

 

そして、また口を閉じた。

俺とボーデヴィッヒの目が合った。

 

「おい……貴様」

 

そうしてボーデヴィッヒは俺の前にやってくる。

 

「…………」

 

そして右腕を上げて平手打ちをしようとしてきた。

 

「っ!?」

 

しかし振り下ろされた瞬間に、俺はその右腕を掴んで平手打ちを回避する。

 

「挨拶代わりに平手打ちか?ドイツも随分と過激な国になったもんだな」

 

「貴様!」

 

ボーデヴィッヒはすぐに掴まれている腕を引き抜き、左腕を振るってくるが、それも腕を掴んで止めた。

 

「遅い」

 

「くッ……」

 

「この程度か? なら出直してくる事だな」

 

俺がそう言うとボーデヴィッヒは悔しそうな表情を浮かべながら俺を睨んでいた。

 

「貴様等、そこで睨み合っていないで席に着け」

 

千冬姉のその一声でボーデヴィッヒは渋々といった感じで引き下がった。

 

「私は認めない……貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

ボーデヴィッヒはそう言った後、そのまま席に向かった。

 

「HRは以上だ! 今日は二組と合同で模擬戦闘を行う!! すぐに着替えて第二グラウンドに集合!」

 

「織斑、デュノアの面倒を見てやれ! 同じ男子同士だろ!」

 

「分かりました」

 

そして俺は席から立って、デュノアの元に行く。

 

「織斑くんだよね? よろしく。僕は……」

 

「悪いけど、話は後だ」

 

そして俺はシャルルの手を取り、一緒に教室を出た。

すると、シャルルは若干顔を赤らめていた。

一体何故だ?

 

「ねえ、どうしてこんなに急いでるの?」

 

デュノアからそんな質問が飛んでくる。

 

「ん? あぁ、デュノアは初めてだよな。俺達みたいな男子はアリーナの更衣室でしか着替えることができないからな。だから急がないと授業に遅れてしまうんだ」

 

「あ、そうなんだ」

 

デュノアは納得したようだ。

 

「それと、遅れれば織斑先生のキツイ一撃が飛んでくるから、こういう実習の時は気を付けろよ」

 

俺がそう言うと、デュノアは青い顔をしながら走るスピードを上げ始めた。

多分、千冬姉の一撃を食らいたくないからだろうな。

そんな調子で急いでいると―――

 

「あぁ! 転校生発見!!」

 

「しかも織斑君も一緒だ!!」

 

「者共! であえであえ!!」

 

そう言いながら、アスリート顔負けのスピードで女子達が群がってきた。

 

(おいおい! 今日はなんかいつもより多くないか!?)

 

多分、デュノア目当てだったのだろうが、そこに俺も巻き込まれてしまったようだ。

 

「この数は厄介だな……」

 

「えぇと、どうして?」

 

「どうしてって、俺達しかISを動かせる男は居ないからな」

 

「あっ、そうだね」

 

そう話しているうちに女子生徒の数はどんどん増えていく。

 

(仕方がないか……)

 

「デュノア、少し我慢してくれ。」

 

「え?……って、うわぁ!?」

 

そして俺はデュノアをお姫様抱っこのようにして抱え、そのまま走り出して

 

床を蹴ってジャンプし、壁を蹴って上に上がって女子の大群を飛び越した。

 

「えぇ!?」

 

その光景を見て女子陣は驚きの声を上げる。

そして、女子達が驚いている隙にデュノアを降ろし、更衣室に向けて走り出した。

 

 

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「ふぅ……到着っと」

 

急いで走ったお陰で予定よりも早く更衣室に着く事が出来た。

何よりデュノアの足が速かった事も大きかった。

 

「さてと、自己紹介がまだだったな。俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ」

 

俺はデュノアに向き直りそう言った。

 

「うん、僕のことはシャルルでいいよ」

 

「分かった、シャルル。じゃ、自己紹介も済んだし着替えるとするか」

 

「う、うん。そうだね」

 

そうして、俺とシャルルは更衣室で着替えを済ませ、グランドへと向かった。

 

「本日から格闘……および射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

「「「「はい!」」」」

 

千冬姉が仕切っていき、1組、2組の生徒が返事をする。

 

その様子はまさに軍隊での訓練のようだった。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。鳳! オルコット! 前に出ろ」

 

「えっ!? 私!?」

 

「私ですか……」

 

急な名指しで2人は前に出る。

しかし2人のモチベーションは低かった。

 

「そうだ、専用機持ちはすぐに始められるからな」

 

「はぁ……」

 

「そうですけど……」

 

どうやら見世物のようにされるのが嫌らしい。

そんな2人に千冬姉が近づき、耳打ちで何やら話しかけていた。

すると、2人の目つきが変わった。

 

「イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットにお任せ下さい!!」

 

「まぁ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」

 

さっきの態度とは一転、やる気に満ちている。

 

(流石千冬姉だ、伊達に教師はやってないみたいだな。)

 

俺は内心で千冬姉に感心する。

 

「それで相手は? 鈴さんとですか?」

 

「返り討ちにしてやるよ」

 

二人とも既に準備が出来ているようで、対戦相手を探していた。

 

「慌てるなバカども。対戦相手は……」

 

「ああああーっ! ど、どいてください~!」

 

千冬姉の声と共に落下音が聞こえて全員が上空を見ると

ラファール・リヴァイヴを纏った山田先生が落下してきた。

このまま落ちてくれば俺が巻き込まれるのは確実なコースだった。

巻き込まれるのは御免なので、俺は素早く白式を展開して、その場で落ちてきた山田先生を抱きかかえて受け止めた。

 

「大丈夫ですか? 山田先生。」

 

「あ、はい。ありがとうございます織斑君」

 

山田先生のお礼を聞き、俺は山田先生を降ろす。

そして俺は殺気を感じ、白式のハイパーセンサーで背後を確認する。

そこにはスターライトmarkⅢをこちらに構えているセシリアいた。

しかも、セシリアは(目の笑っていない)満面の笑みであり、このままだと俺が攻撃される事は確実だろう。

そして、セシリアからレーザーが飛び出して来たのを確認して、身体を僅かにずらしてレーザーを回避する。

 

「大丈夫ですか? 織斑君」

 

山田先生も二人の殺気を感じ取っていたようで、俺の腰に手を当てていた。

もし、回避出来なかった時の為の準備をしていてくれていたのだ。

 

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

 

俺はお礼を返す。

 

「さて小娘ども、いつまで遊んでいる。さっさと始めるぞ」

 

千冬姉のその一声で場の空気が変わる。

 

「え? あの2対1で?」

 

「いや、流石にそれはちょっと……」

 

空に滞空する山田先生を見て二人は渋っていた。

流石に2対1で、しかも相手は量産機なのに、自分達は専用機だ。

普通ならば、そのハンデはやり過ぎと言えるだろう。

 

「安心しろ……今のお前らならすぐに負ける」

 

しかし千冬姉はあっさりと二人を挑発する。その言葉を聞いた二人は流石に頭に来てしまったようで、二人とも空へと飛び立ってしまった。

 

(二人とも完全に千冬姉に乗せられてるな……)

 

千冬姉の言葉に乗せられてしまう二人に少し不安を覚える。

 

「―――では、始め!!」

 

千冬姉の声を合図に鈴は双天牙月を、セシリアはスターライトmarkⅢを構える。

対して山田先生はマシンガンを呼び出し、構えた。

 

「手加減はしませんわ!」

 

「さっきのは本気じゃなかったしね……実力見せてあげる!」

 

「い、行きます!」

 

鈴が突撃して2対1の模擬戦が開始された。

 

「さて、今の間に……デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

 

千冬姉はシャルルにそう振った。

 

「あっ、はい。フランス、デュノア社製第二世代型ISラファール・リヴァイヴ。苦手とする距離を持たない汎用型のISで第二世代最後発のため高い整備性と安定した性能から七ヵ国でライセンス生産、十二ヵ国で制式採用され専用機として様々なカスタム機があります。一番の特徴は操縦者を選ばない操縦の簡易性と武装による全距離対応可能になる面で複数機でチームを組む場合に選ばれることが多い機体となっています」

 

スラスラとシャルルが説明を始める。

淀みなく話すその姿に周りは小さい歓声を上げた。

俺はシャルルの説明を聞きながら、模擬戦を見ていた。

 

(二人とも連携が取れてないな、鈴は衝撃砲を撃ち過ぎだ)

 

模擬戦を見て最初に思ったのはそれだった。

 

(セシリアは射線を予測されまくりだな。あ、そこも読まれてるぞ)

 

セシリアに関してはそう思った。

だが、ビットを出した状態でも射撃は出来るようになったようで、ビットの攻撃で逃げ道を封じつつ、ライフルで攻撃していた。

どうやら俺のアドバイスが役に立ってくれたようだ。

尤も、射線を読まれているせいで全く当たっていないところを見ると、まだまだ未熟と言うしかない。

 

「よし、それでいい……もう決着がつく」

 

千冬の声と共にグレネードランチャーの直撃を受けた鈴とセシリアが錐もみ回転して轟音をあげて墜落した。

 

「うぅ……まさかこの私が……」

 

「ア、アンタねぇ、何面白い様に予測されてんのよ!!」

 

「鈴さんこそ、衝撃砲をバカスカ撃ち過ぎですわ!!」

 

地面に衝突した二人はお互い機体を待機状態に戻した後も罵り合っていた。

 

(俺から言わせてもらえれば、五十歩百歩なんだけどな)

 

内心でそう思いつつ、二人に近づく。

 

「まあまあ、二人とも。落ち着けって」

 

「一夏!? セシリア鈴さんの肩を持つの!?」

 

「一夏さん!? 鈴さんの肩を持つのですか!?」

 

二人の声がハモる。

 

「別にそんなつもりは無いさ。ただ二人に一つだけ言いたい事が有ってな。」

 

「何? 一夏」

 

「何ですの? 一夏さん」

 

また声がハモった、出来ればそれを実戦で発揮してほしいと思う。

 

「連携はちゃんと取るように……な?」

 

「うん……」

 

「はい……」

 

俺からの指摘にまた声をハモらせながらそう返事をした。

二人ともこういう場面だと息が合うのだろうか?

 

「これで諸君らにも教員の実力は判っただろう。以後は敬意を持って接する様に」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

「ではこれから実習に入るが、まずは各専用機持ちを班長としたグループに分かれて貰う。織斑、デュノア、鳳、オルコット、ボーデヴィッヒの五名は各生徒の補助をする様に」

 

生徒達はそれを聞いた瞬間、シャルルと俺に突撃した。

 

「デュノア君って、代表候補生なんだよね!? 操作技術見せて!!」

 

「織斑君! 手取り足取り教えて!!」

 

「えっ、ちょっ、ちょっと待ってっ!」

 

「お、おい。まずは順番に並んでくれ」

 

女子達の大部分は俺とシャルルの方にやってきた。

だが、どちらかと言えばシャルルの方が僅かに多かった。

まあ、仕方ないだろう。人間新しい物には目が無いからな。

 

「はぁ……この馬鹿共が。全員出席番号順に各班へ入れ!! 遅れた者はグラウンド10週させるぞ!!」

 

その言葉を聞いて全員が先程と同様に軍隊のようにピッタリ並んだ。

まあ、千冬姉の説教&ペナルティーは受けたくはないよな……

 

「最初からそうしろ、全く……ではまず各班のリーダーは訓練機を取りに来い。今日は歩行と起動を中心に行うように」

 

千冬姉の一声で実習が始まる。

俺も班長なので、訓練機を取りに行く。

訓練機はラファール・リヴァイヴと打鉄の二種類があり、長い期間使い込んでいたラファールを選ぼうかと思ったが、今回は初めての実習という事で敢えて打鉄を選択した。

理由は、打鉄の方が安定性が高いからだ。

そして、周りを見てみると既に実習を始めている班もあり、その班に分かれている女子達は専用機持ち達の説明に興味津々といった感じで聞き入っていた。

……もっとも一か所だけ暗い雰囲気ではあったが。

 

(ボーデヴィッヒ……)

 

俺は打鉄を運びながら、その暗い雰囲気の流れる一角に目を向ける。

すると、いち早く俺の視線に気付いたボーデヴィッヒに睨まれてしまった。

俺はすぐさま視線をずらし、早急にその場を離れた。

 

「じゃあ、始めるぞ。出席番号順だから始めは……相川だな」

 

「はいはーい! 相川清香です!! ハンドボール部所属。趣味はスポーツ観戦とジョギングです。よろしくお願いします!!」

 

相川が手を上げて俺に近づいてきた。

見た感じでいかにもスポーツ系って感じがするな。

 

「あぁ、よろしくな」

 

俺は相川の自己紹介に軽く返事をして、打鉄を地面に下ろした。

 

「さてと、まずは歩くイメージなんだけど、基本的には普段通りに歩く感じで大丈夫だ。それじゃ、取り敢えず歩いてみて乗っている時の感覚に慣れることから始めよう」

 

そして大きな問題もなく、初めての実習は無事終了したのであった。

 

 

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その日の昼休み、俺はシャルル、鈴、箒、セシリアの4人でIS学園の屋上に来ていた。箒から一緒に昼食を食べようと誘われたので、この際シャルルと他の皆の親睦を深めるために箒以外の知り合いも誘い、今に至る。

 

「……どういうことだ?」

 

しかし、箒は不機嫌そうにそう聞いてくる。

 

(はて? 何か気に触るような事をしたかな?)

 

そう思いつつ、俺は箒に何が不満なのかを聞く。

 

「何が?」

 

「何故、鳳やオルコット、デュノアが居る?」

 

成程、どうやら俺以外の人間が居る事が理由か。

 

「大勢で食べた方が美味いだろ? シャルルとの親睦を深めるっていう狙いもあるしな」

 

俺は箒に皆を誘った理由を話す。

しかし、箒は相変わらず不機嫌そうな顔だった。

 

「箒、その顔は少し酷いと思うんだが?」

 

「一夏の言う通りよ。箒」

 

俺の言葉に同意した鈴がそんな事を言いながら小さいサイズのタッパーを取り出した。

 

「鈴、それは?」

 

「酢豚よ、作ってきたのよ」

 

「美味そうだな、お手並み拝見と行くか」

 

そこにセシリアが割って入る。

 

「一夏さん、私も今日はお弁当を持ってきましたわ」

 

するとセシリアは手に持ったバケットを俺に差し出してきた。開けるとそこにはとても美味しそうなサンドイッチが並んでいた。

 

「へぇ~、これも美味そうだ。ありがとなセシリア」

 

「いえ、どういたしまして」

 

セシリアに礼を言い、セシリアはそう返事をする。

そこで箒が一夏の袖を引いた。

 

「箒、どうかしたのか?」

 

「わ、私も弁当を持ってきたのだが……」

 

箒は弁当箱を手にしていた。俺は苦笑いして箒から差し出された弁当箱を受け取り、礼を言う。

 

「箒もありがとな」

 

「あ、ああ」

 

箒は照れ臭そうにそう返してきた。

 

「それじゃ、そろそろ頂くとするか」

 

そう言って俺はセシリアが作ってきたサンドウィッチを1つ食べる。

 

(うーん……これは酷い味だ……)

 

その味はお世辞にも美味しいとは言えなかった。

しかし、彼女の様子を見ると、わざとこのような味付けにしたわけではなさそうだ。

 

(セシリアの場合は、味見をしてないってパターンだな)

 

ここは正直に感想を言って、この事を知らせるべきか?

しかし、ストレートに言えば彼女をかなり傷つけてしまう。

色々考えた結果、ここはセシリアにも実際に自分の料理を食べてもらう事にした。

 

「セシリア、ちょっとこれ食べてみてくれないか?」

 

「どうしてですか?」

 

「いいから、ほら」

 

俺が促すと、セシリアはあっさりとサンドイッチを食べた。

セシリアは最初は平然としていたが、すぐに顔を真っ青にしてなんとかそれを飲み込んだ。

 

「……すみません一夏さん。このような物を食べさせてしまい……」

 

「別に、良いって。これからはこうならないように、ちゃんと味見するようにな?」

 

意気消沈するセシリアにアドバイスをする。

 

「そういえば、シャルルは専用機を持ってるのか?」

 

「持ってるよ。でもそれがどうかしたの?」

 

俺からの質問に、シャルルはそう返した。

 

「じゃあ、今日の放課後暇だったら、俺と模擬戦しないか?」

 

俺はシャルルの答えを聞いて、そう提案する。

強いと思ったら一度は戦ってみたいという欲求に駆られるのだ。

 

「別に良いよ、一夏」

 

「よし、じゃあ決まりだな」

 

シャルルとの模擬戦の約束を取り付ける事に成功する。そうして、しばらく談笑しながら昼休みを過ごした。

 

 

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放課後となり一夏達5人は第三アリーナに来ていた。昼休みの約束通りにここでシャルルと模擬戦をする為だ。

既に一夏は『白式』を、シャルルは『ラファール・リヴァイヴカスタムⅡ』を展開してアリーナの中央に立っていた。

互いに機体を上空に浮遊させ、視線をぶつけ合う。

 

「さてと……それじゃ、始めようぜ!」

 

「いいよ、一夏」

 

その一言と同時にカウントダウンが始まり、そして……0になる。

 

「遠慮なく行くぜ!!」

 

「行くよ!一夏!!」

 

一夏は早速雪片弐型を展開し、シャルル目掛けて突撃する。

 

「そんな動きじゃ、狙い撃ちだよ!」

 

しかし、シャルルは両手にマシンガンを展開し、弾幕を張って一夏に接近を許さない。

 

「これは随分と手厳しい御挨拶だな!」

 

絶大な火力を誇る多量の武器とそれらを状況に応じて完璧に使いこなすシャルルの技量が相まって、一夏も容易に接近することが出来ないでいた。

 

(手強い……けどな!)

 

しかし、一夏とて伊達に今までISに乗り続けてきた訳ではない。

襲いかかる弾幕を雪片弐型で切り払いつつ、少しずつシャルルに接近していく。

 

「そこだぁぁぁ!!」

 

「甘いよ!」

 

そして一夏が雪片弐型で斬りかかろうとするが、シャルルはそれを防御し鍔迫り合いになる。

 

「この程度じゃ、僕には当たらないよ」

 

「だろうな!」

 

一夏はそう言うと同時に、スラスターを最大限に吹かし無駄の少ない動作で背後に回り込んだ。

 

「……!?」

 

いきなりの一夏の行動に反応できずに背後から蹴りを入れられ吹き飛ばされるシャルル。素早く体勢を立て直し、すぐに背後に武器を構えるが、そこに一夏の姿は無かった。

 

(消えた?一体どこに!?)

 

シャルルはすかさずハイパーセンサーで周りを確認しようとするが―――

 

「隙だらけだ!」

 

再び背後から衝撃が襲い、体勢を崩される。

俺はその隙を見逃さず、一気にシャルルへ肉薄して雪片弐型の一撃を浴びせる。

シャルルは瞬時にショットガンを呼び出し、一夏に向けて引き金を引く。

俺は跳躍してシャルルの攻撃を回避し、頭上を通り過ぎてそのままシャルルの背後に着地する。

 

「そこ!!」

 

シャルルは素早く振り返り、勢いをつけながら薙ぎ払うようにブレードで攻撃するが、俺は振るわれたブレードの動きに合わせて横に水平移動した後、曲線を描きながら移動して再び背後を取り、雪片弐型で斬りかかるも、シャルルはその一撃を何とか上半身を反らせて回避し、お返しと言わんばかりにブレードで攻撃するが、俺はそれを雪片弐型で軽々と受け止めた。

そして、俺はシャルルから逃げるように上空へ飛行し、シャルルも一夏を追うように上空へと飛び、そのまま空中で鍔迫り合いになる。

 

「どうしたシャルル? まさかこの程度じゃないよな?」

 

「勿論だよ、一夏!!」

 

一夏の挑発とも取れる発言に、シャルルはそう返す。

 

「そうこなきゃな!!」

 

俺がそう言うのと同時に、シャルルは両手にマシンガンを装備し、距離を取ろうとする俺に向けて引き金を引こうとした―――瞬間だった。

いきなりシャルルの右手にあったマシンガンが爆発した。

俺は離れる瞬間、神鳴流―――五月雨斬りを放ち、マシンガンを切断して破壊したからだ。

シャルルはいきなりの事に動揺し、一瞬動きを止めてしまう。

俺はその隙にスラスターを噴射して滑り込むようにシャルルの真下を通過しながら攻撃する。

動揺していたせいで、動きが止まっていた上にいきなりの真下からの攻撃にシャルルは対応しきれずに、雪片弐型の攻撃をもろに受けてしまう。更に俺は追い打ちをかけるように一気に接近し攻撃する。

 

「これ以上はさせない!」

 

シャルルは空いている右手にブレードを装備してその一撃を防御しようとするが、勢いの乗った一撃を受け止めきれる筈がなく、シャルルの右手は大きく跳ね上げられ、ガラ空きになった個所剣先が向けられる。

シャルルはその場を急いで離脱して距離を取り、反撃と言わんばかりに弾幕を張るが、俺はそれを回避しながらも、アリーナを縦横無尽に駆け回りシャルルを翻弄していく。

シャルルは俺の動きに翻弄され、未だにダメージを与えられずにいるばかりか、一夏の攻撃によってシャルルのダメージはかなりのものになっていた。

 

(何で当たらないの!?)

 

未だに攻撃が当たらず、ダメージが増えていくことに次第に焦りと苛立ちを募らせるシャルル。

そのせいか、攻撃に粗が見え始める。

 

「貰った!!」

 

そこを一夏は見逃さず、そのまま神鳴流―――百花繚乱を放った。

二人を中心とした辺り一面に花びらが舞い上がり、視界が一気に悪くなる。

こうなれば二人とも互いの姿を確認する事が出来ない。

 

「これで隠れたつもりかな?」

 

シャルルはISのセンサーを赤外線センサーに切り替えて辺りを見渡す。

視界が塞がれた状況では、直接目視するよりも赤外線センサーで熱源を探知した方が早く敵を見つけられるからだ。

そして、シャルルは上空に熱源がある事を確認する。

 

「見つけたよ! 一夏!!」

 

シャルルはそこにありったけの弾薬を撃ち込んだ。

この状況下では、いかに素早く動けたとしても先に仕掛けられてしまえば少なからずダメージを受けるのは必至だ。

シャルルは自分の攻撃が一夏に届いたと思い、気分を高揚させていた。

そして、徐々に視界が晴れていく……が、しかし、熱源のあった場所には―――

 

一夏の姿は無かった。

そこにいると思っていた場所に一夏が居なかった事でシャルルは完全に混乱していた。

 

「俺はここだ!」

 

一夏の声が聞こえ、シャルルが後ろを振り返ると、そこには雪片弐型を構えた一夏がいた。

 

「楽しかったぜ 、シャルル。」

 

そして、その一言と共に零落白夜がシャルルに直撃する。

それと同時にラファールのシールドエネルギーが0になり、模擬戦は終了した。

 

 

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「一夏! 何だあの動きは! 今まで実力を隠していたのか!!」

 

模擬戦が終わり、アリーナの地面に降り立つと同時に箒に詰め寄られる。

シャルルはその光景を見て苦笑し、鈴とセシリアはやれやれといった表情だった。

 

「べ、別に、隠すつもりは……」

 

「では、何故隠していた!!」

 

俺は一応箒の質問に答えるが、箒は更に質問攻めしてくる。

箒の言いたい事は分かるが、この状況じゃ話しづらい。

 

「箒さん、そんなに詰め寄られては一夏さんが話せませんわ」

 

セシリアが箒を宥めてくれたおかげで、箒は渋々といった感じに引き下がってくれた。

 

「でも箒の言うとおりね。対抗戦の時に比べたら動きが全然違うし、隠してたとしか思えないわ」

 

「私との模擬戦の時も、あのような動きはしていませんでしたわ」

 

鈴とセシリアもどうやら疑問に思っているようだ。まあ、無理もないだろうな。

 

「今までは機体のデータを取る為に、機体に負荷を掛けるような動きはしばらく避けてくれって言われてたんだ。だから仕方なく力を抑えてたってわけだ。といっても、別にセシリアや鈴との試合で手を抜いていたわけじゃないぜ」

 

俺がそう言うと、その場に居た皆は納得したような顔をしていた。

その時、一台のISが現れた。

 

「あれって、もしかしてドイツの第3世代……? まだ本国でトライアル段階だって聞いたけど……」

 

すると、いきなり周囲にいた訓練中の生徒がざわつき始めた。

 

(何かあったのか?)

 

何事かと思い、周囲のざわつきの原因となっている方向に眼を向ける。

すると、そこには黒いISが立っていた。

 

(見た目からして、ドイツの第3世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』に間違いないな)

 

だとすればあのISを使えるのは、この学園の中でも一人しかいない。

 

(ドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒか)

 

何が目的なのかは不明だが、わざわざ第3世代型を持ち込んできたのだ……何かあるに違いない。

 

「おい、お前も専用機持ちだそうだな。私と戦え」

 

ボーデヴィッヒからそう声を掛けられる。

どうやらボーデヴィッヒは俺との模擬戦がお望みらしい。

 

(普通なら、ここで受けてやれば丸く収まるんだろうが……)

 

「断る、戦う理由がねぇよ」

 

俺は敢えてボーデヴィッヒの要求を断った。

すると、ボーデヴィッヒがいかにも不機嫌だと言わんばかりの顔をしながらも声を発する。

 

「貴様には無くとも、私にはある。もう一度言う、私と戦え!」

 

「それはそっちの都合だ。とにかく、俺は戦うつもりはない」

 

ラウラは俺の言葉を鼻で笑い言った。

 

「ならば戦わざるを得ないようにしてやろう」

 

すると、シュヴァルツェア・レーゲンの右肩に装備されているレールガンの銃口が俺を捉え、すぐさま弾丸が発射された。

俺は手に持っていた雪片弐型でその弾丸を切り捨てようとしたが、シャルルが間に入って弾丸を防御してくれたので、事無きを得た。

 

『――そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

そこにアリーナの監督をしていた教師からのアナウンスが流れる。

 

「ふん、興が削がれた。今日のところは退いてやる」

 

ボーデヴィッヒはISを待機状態に戻した後、そんな言葉を残し去っていった。

何とか一難去ったが……近いうちにまた何か行動を起こすだろう。

 

(何事も無ければいいが……)

 

そんな不安を抱えながら、俺はアリーナを後にした。

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