聖龍伝説 タイムスリップ外伝 作:セイントドラゴン・レジェンド
私と同じ銀魂ファンなら分かってもらえるネタばかりだと思います。
お楽しみください。
[全ての始まり]
ある日、修司は聖龍隊への依頼で映画館へと赴いていた。
その映画館では上映作品の無断撮影が行われており、修司は常に目を光らせて見張ってた。
そして修司は映画を撮影してた「映画泥棒」を捕まえる事に成功。
「やれやれ、まったく……映画館での感動は胸の奥に仕舞っておくのが筋ってもんだぜ」
映画泥棒を捕まえた修司は、個室で二人っきりになって映画泥棒が本当に上映作品を盗撮してるか確認してみる。
確認の為、映画泥棒の録画された動画を拝見してみると。
次の瞬間、映画泥棒のカメラの頭部を覗き込んだ途端に、映画泥棒の頭部から発せられた激しい光に修司は呑み込まれてしまう。
激しい光に呑み込まれた修司が眩しさから閉じてた目を開けてみると、そこは墓地だった。
何が起きたかスグには理解できず、困惑する修司は自分が寄りかかってた墓石の表側に回ってみる。
すると墓石には驚きの文字が彫られてた。
「小田原修司ノ墓」と。
自分の墓に驚く修司は、自分の身に何が起きたか状況を理解しようと都市部へと駆け出す。
しかし都市部にやって来た修司の目に飛び込んできたのは……荒廃したアニメタウンだった。
「ど、どうなってるんだ……!」
修司は何ゆえ、アニメタウンがあっという間に荒廃したのか、そして自分はなんで此処に居るのか迷走した。
「それは私がお答えしましょう」
後ろから掛けられた声に修司が振り向くと、其処には修司が映画館で尋問してた映画泥棒の姿が。
「お、お前は……映画泥棒!」
修司が状況に戸惑いながらも返事すると、相手は修司を真っ直ぐ見据えて名乗るのだった。
「失礼ですが、私は映画泥棒ではありません。強いて言うなら…………時間泥棒です」
「じ、時間泥棒……?」
自らを時間泥棒と名乗るカメラ男の言い分に修司が困惑してると、時間泥棒は修司に述べ始めた。
「はい、私は貴方がいた二年前の時代より、この二年後のアニメタウンに連れてきたのです。お解りですか?」
「! つ、つまり……ここは俺がいた時代より二年経過しているアニメタウンって訳か!?」
「その通り。私は貴方の秘書を務めていたウッズ氏より改造された時間泥棒改め、一種のタイムマシンなのです。全ては貴方を……小田原修司を過去より連れてきて、この荒廃したアニメタウンを救ってほしくて行動したまでです」
「………………!」
時間泥棒の淡々とした説明を聞いて、修司は愕然とするばかり。
「ここは……貴方様が活躍した聖龍伝説、その伝説が終わったアニメタウンなのです」
「こ、此処が……全てが終わった、俺達の…………世界…………!」
修司は此処で全てを理解した。
自分がやって来たのは、元いた時代から二年の月日が経過した、荒廃したアニメタウンである事を。
[変わり果てた相棒と義弟]
映画泥棒あらため時間泥棒と名乗る謎の存在によって、小田原修司は二年後のアニメタウンへとタイムスリップしてしまった。
しかもアニメタウンは荒廃しており、修司は何ゆえアニメタウンがこうなったかを時間泥棒に問うた。
「ど、どうして……なんで、アニメタウンは此処まで荒れたんだ……!?」
「それでしたら、まずは私を改造してくださったウッズ氏に会って訊ねてください。そして貴方自身の目で確認する為にも、今の時代の聖龍隊の方々とも会う必要があります」
さらに時間泥棒は修司に衝撃の事実を告げた。
「そしてアニメタウンがこうなってしまったのは……全ては小田原修司、貴方がアニメタウンはもちろん聖龍隊の方々の前から姿を消した事から、事態は悪化していったのです」
「!!」
時間泥棒から、アニメタウンが荒廃したのは修司自身が消えた事から始まったのだと告げられた修司は愕然としてしまう。
そんな修司に時間泥棒は歩み寄り、唐突に修司の首に何かの装置を取り付けた。
「ああ、ですが二年前の過去から貴方がやって来たのを、この時代の方々が気付くとタイムパラドックスなどの問題が発生してしまうので、貴方にはこの首輪を随時着用してもらいます」
「な、なんだ? この首輪は……?」
「これは周りの方々に幻を見せる装置です。修司氏、貴方の素顔を全くの別人に見せる為の機械ですよ。これを着けていれば、小田原修司ではなく全く別の人間として周りの人達は認識します」
「な、なるほどな。俺が俺で見られなくなるという機械か……そ、それで、まだあんたに訊きたい事がある」
「はい、なんでしょうか?」
「い、今の……今の聖龍隊は……!」
と、修司が時間泥棒に訊ねようとした矢先。
なんと修司の目の前で時間泥棒に何処からか飛来してきたバズーカ砲が直撃し、修司の目の前で時間泥棒はボロボロになったカメラ部分の頭部を残して木っ端みじんになってしまった。
「え…………え、えええぇぇぇッ!!」
目の前で時間泥棒が吹っ飛んだのを目の当たりにした修司は、慌てて自分の方に飛んできた時間泥棒の頭部であるカメラを持ち上げて混乱した。
「おおいッ! 勝手に壊れてんじゃねえ! 一体この時代の聖龍隊はどうなってる!? それに俺が消えてからアニメタウンが荒れてるって、どういう事!?」
修司は慌てた様子で完全に壊れた時間泥棒の頭に訴えるが、そんな時に修司の前に現れたのは。
「ウッヒャーー! おいおい、こんな街中にまだ人が居るとはよォ……!」
「久々に痛め付けて鬱憤晴らしてやるぜーー!」
なんと修司の目の前に現れ、修司を取り囲んだのは、厳つい改造バイクに搭乗してる厳つい強面のモヒカン達だった。
(な……なんなんだ!? このモヒカン野郎たちは!! 厳つい強面のモヒカンって、完全にこれじゃ「北斗の拳」ならぬ「聖龍の拳」じゃねえか……!!)
目の前で自分を取り囲むモヒカン達を目撃して、修司は心の中で叫ぶ。
「おい、にいちゃん、有り金全部出しな!」「でなきゃ、痛い目見るぜ?」
恐喝してくるモヒカン達を前に、修司はどう対処しようか頭の中で考えを巡らせていた。
と、その時だった。
修司にモヒカン達が襲い掛かろうとした瞬間、モヒカン達の一番後ろの方から何者かがモヒカン達を薙ぎ払ったのだ。
「!」「だ、誰だ!?」
驚く修司にモヒカン達。モヒカンが驚きながらも反応すると、砂煙の中から一人の人物が詰め寄ってきた。
「ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ喧しいんだよ……! 発情期か、テメェら?」
それはなんと、ぴっしりとしたスーツを着こなした上にスカウターを左目に装着しているバーンズだった。
(なッ!!)
スーツなど普段は着ず、更にスカウターを装着しているバーンズを目の当たりにして驚愕する修司。
そんな容姿のバーンズを目の当たりにして驚く修司を尻目に、バーンズは周りのモヒカン達を次々に薙ぎ払って片付けていく。
修司が圧倒されて黙り込んでいると、そこにモヒカン達の増援で更なるモヒカン達が改造バイクに跨って駆け付けてきた。
「新手か……ふん、戦闘力たったの5か」
(たったの5ってなに!? ドラゴンボールの有名なシーンだよね!?)
増援をスカウター越しに視認したバーンズの発言に、修司は心の中で激しくツッコむ。
そんな内心激しく動揺してる修司の目前で、バーンズは辺り構わず周辺のモヒカン達を片付けていく。
(こ、こいつ……ホントにバーンズなのか?)
修司は普段着てないようなスーツに身を固めてるバーンズを見て、本当にバーンズ本人なのか疑問に思い始めた。
だが、モヒカン達の一人が不意をついてバーンズの後頭部にショットガンを撃つのだが、散弾を浴びたバーンズの頭部は瞬時に再生して元通りになるのだった。
(やっぱりバーンズだ! プラナリア以上の再生能力はバーンズしかねえッ! 俺がいつもツッコミ代わりに銃器をバンバン撃ってもスグに再生できるバーンズだ!!)
と、修司は過去にバーンズへ銃器でバンバン弾を撃ち込んでツッコミしてた情景を思い出していると。
なんと遠方の崩落したビルの高所から二人の狙撃手が、地上で応戦している修司とバーンズに狙いを定めていた。
そして二人の狙撃手が狙いを澄まして、地上で応戦する修司とバーンズを狙撃しようと引き金を引こうとした。その時。
「「うぎゃッ!」」
二人の狙撃手は後方から迫ってきた何者かに殴られて、そのまま高所から地上へと落下してしまう。
「なに!?」
修司は自分達を狙撃しようとしてた狙撃手を誰かが殴り飛ばしてくれた事に気付き、一時ばかし立ち止まる。
「ッ! あいつら、余計な事を……!」
一方のバーンズは持ち前のテレパスで誰が狙撃手を殴り倒したか把握している様子だったが、実に不快な表情を浮かべてた。
そして狙撃手を殴り落とした二人は、そのままビルの高所からビル側面を滑る様に降り、地上へと着地する。
「バーンズ、あなたまだ昔みたいに人助けしてる訳?」
(! この声……)
舞い上がる砂煙の中から聞こえてきた女の声に聞き覚えのある修司。
「チッ、うっせえな! そもそも、この何処の馬の骨か分からねえ奴が危険地帯の中、突っ立ってんのがいけねえんだよ!」
歩み寄ってくる二人にバーンズは怒鳴り返す。
「大体、一人だけで粋がって聖龍隊の活動しないでほしいわね」
「ウルセーーな! お前らこそ、カップルで勝手に活動しないでくれ! 聖龍隊の恥さらしが!!」
「………………」
砂煙の中から話し掛けてくる女と言い合いするバーンズの言動に、修司は彼女達とバーンズが知り合いである事を悟る。
そして砂煙の中から現れたのは。
「その程度で聖龍隊を名乗らないでほしいね」
そうバーンズに文句を言うのは、女と共に現れた修司の弟分ジュニアだった。そしてジュニアと行動を共にしているのは、あのアプリコットであった。
(ウッソッ!!)
修司は砂煙の中から現れた二人が、二年前とはかけ離れた容姿である事に驚愕する。
ジュニアは筋肉ムキムキのガタイのいい体格に変貌し、アプリコットは何故か水色のチャイナ服を着てる巨乳美女に変貌してた。
そして乱闘にそのジュニアとアプリコットも参戦する。
(知らねーー! こんなキャラ知らねーーーーッ!!)
完全に二年前とはかけ離れた容姿をしているバーンズ、ジュニア、アプリコットの三人に修司は応戦しながらも愕然としてた。
(バーンズ、お前のその恰好はなんだ!? なんでそんな碇ゲンドウみたいな制服着てるの!? なんでドラゴンボールのスカウター装着してるの!?)
更に修司は荊の鞭を振るって戦うジュニアの容姿にもツッコむ。
(ジュニア! お前いつの間に、そんなにムッキムキになったの!? いつからそんなゴリマッチョに変わっちゃったの!? マーベルのホークアイ以上に筋肉モリモリマッチョマンだよ!?)
そして最後に修司は変わり果てたアプリコットにツッコんだ。
(アプリ! お前あくまで異世界の妖精王女だよね!? なんで、そんな生足を露出させたチャイナ服着てる訳!? いや、というかなんでチャイナ服を着てる訳なの!?)
そんな心の中で激しいツッコミをしながらも、修司はバーンズとジュニアとアプリコットの三名と共闘しながらモヒカン達を倒していくのだった。
[小田原修司が居なくなったアニメタウン]
ウッズによって改造されたと自称する時間泥棒によって二年後のアニメタウンに飛ばされた小田原修司。
その未来で修司が出会ったものは……変わり果てた仲間のバーンズとジュニアとアプリコットの三人だった。
修司は自分に絡んできた半グレ集団であるモヒカン達をバーンズらと共に倒して追い払った後、改めて三人に礼を述べるのだが。
「そ、その……ありがとう。お陰で助かった、よ……」
しかし当の三人は互いに言い合いをして修司のお礼に気付かない。
「だーーかーーら! アニメタウンはオレ一人で護るってんだから! お前ら二人はしゃしゃり出るなって!!」
「バーンズ、君みたいな考え足らず一人で今の荒れ果てたアニメタウンを護って行くのは限りなく不可能だ!」
「そうよっ、もう私とジュニアに任せて、あなたは早くアニメタウンから逃げなさいよっ! 例の病に罹っても知らないわよ……」
こんな感じで言い争う三人を目の当たりにした修司は、遂に堪忍袋の緒が切れて言い争うバーンズとジュニアの頭に一発ずつ拳を叩き込んだ。
「「ッ~~!!」」「っ……!」
突然頭を殴られて悶絶するバーンズとジュニア、そして二人が殴られたのを目の当たりにして驚き言葉を失うアプリ。
「まっ~~たく! なにやってんだ二人とも! アニメタウンが荒れ果ててるってのに、喧嘩してる場合じゃねえだろうがッ!!」
この怒鳴り声と説教に、どこか懐かしさを感じた三人はふと顔を見上げて修司の方へと視線を移す。
「し、修司……!?」「義兄さん……?」「修司さん……?」
しかし三人の目に映るのは、例の首に装着されてる装置によって全く別人の顔として認識される修司の顔だった。
「「って、いきなりなに殴るんだッ!!」」
と、修司と認識できないバーンズとジュニアは二人同時に修司にアッパーを叩き込んで吹っ飛ばす。
後方へと激しく転倒する修司に、バーンズとジュニアは激しく怒鳴る。
「な~~に、いきなり頭ド突きやがる! 何処の馬の骨か分からねえ奴がッ!」
「いっくらなんでも失礼じゃないかい!? 初対面の人を叩くなんて!」
このバーンズとジュニアの発言に、修司は思い出した。
(ッ! そうだった! 時間泥棒が言ってたな。俺の首に取り付けた首輪で、俺が小田原修司だって周りの人間には認識されないって……!)
修司は、自分が周りに小田原修司本人ではなく全くの別人に周りの人間達が認識されている現状を思い出すと、立ち上がってバーンズとジュニアに謝った。
「す、すいません、ついノリツッコミ的な感覚で叩いてしまって……で、ですが、同じ聖龍隊の隊士だというのに喧嘩してはマズいですよ……」
「「「………………」」」
そう謝罪する修司の顔を見て、三人は完全に不審者を見るような目付きで修司を見返す。
「……そういうあなたは?」
不審者を見る目で修司に問い掛けるジュニアに、修司は迷ってしまう。
「!(……ど、どうする? 俺は小田原修司なんて言えないし……なんて名乗れば……)」
一時ばかし迷った修司だったが、彼は意を決して噓の名を名乗った。
「ち……珍素公と仰います……」「「「………………」」」
思わず名乗ってしまった珍素公(ちんすこう)という名に、三人だけでなく修司本人もドン引いていた。
重たい空気が流れているのを察した修司は半ば強引に話題を変えて三人に問うた。
「と、ところで……あんた達、ウッズが今どこに居るか知ってるか?」
「!?」「父さんを……?」「……」
修司の問い掛けに三人は一瞬きょとんとするが、すぐにジュニアが問い返す。
「ウッズは僕の父ですが……なんであなたが僕の父さんを?」
「じ、実は俺、ウッズに呼ばれてこのアニメタウンにやって来たんだ! このカメラ……そう、これを直してもらわないと困るんだよ!」
修司は戦闘の最中も必死に死守していた時間泥棒の頭部を三人に見せ付けながら説明した。
「お前、ウッズの知り合いか?」
すると今度はバーンズが質問してきたので、修司は自分の正体がバレないように語った。
「そ、そう! ウッズに呼ばれてアニメタウンに来てみたけど……アニメタウンは荒廃してて、聖龍隊も見かけない! 何がどうなってるのか解らないから、そこんところも説明してくれたら嬉しいね!」
修司の嘆願に、三人はそれぞれ顔を見合わせてから修司に言った。
「あんた、ひょっとして………………異世界から来たのか?」
「? ……! そ、そうだよ! 異世界から来てみたら、アニメタウン滅茶苦茶で困惑してるんだよ! 一体全体、なにがどうなってるんだ!?」
バーンズに返事する修司の問い掛けに、三人は暗鬱な表情で下を俯いた後、街中を進みながら説明するのだった。
「……
「アニメタウンから、その奇病は始まり、未だにその治療法も確立されてない」
「遂にはアニメタウンは国外から完全に見放され、更に疫病を恐れて多くの人々がアニメタウンから逃げ去る様にいなくなった」
「………………」
アプリコット、ジュニア、そしてバーンズの語る謎の疫病に聞かされた修司は、黙々と三人の話に耳を傾ける。
「今じゃ、アニメタウンには……この国を離れる事ができない貧困者や悪党、そしてアニメタウンを捨て切れない頑固者しか残っていない訳だ」
「そ、それじゃ……小田原修司は? 聖龍隊は、どうなったんだ?」
バーンズの現状説明に修司が未来の自分と聖龍隊について問い掛けると、バーンズは重く険しい顔付きで語り明かした。
「……不思議な事に、疫病が流行り出してから数か月後に修司は忽然と姿を消しやがった。今じゃ生きてるのかどうかも不明のまま」
「!」
「修司が居なくなったことで、一枚岩だった聖龍隊も自然と散り散りに分散しちまって……今じゃアニメタウンで活動している聖龍隊は、オレと其処のバカップルだけだ」
「バカは余計だ」
バーンズの説明に驚きを隠せない修司。そんなバーンズの話にツッコミを入れるジュニア。
「それじゃ、聖龍隊はもう……」
修司は内心衝撃を抑え切れず途方に暮れた。弱者を護る為に自分が設立した聖龍隊が、何故か姿を消した自分そう小田原修司の失踪を皮切りに散り散りに分散してしまった顛末に動揺を隠し切れなかった。
「……どうした? 聖龍隊とは関係ないアンタが落ち込む理由なんてないだろ」
そんな失意に暮れる修司を見て、バーンズは声をかけるが当の修司からは返事が無かった。
「……ふぅ。まあ、あれだ。ウッズを慕って来てくれたんなら、ちょいと一杯ぐらい奢ってやるから元気出せよ」
そうバーンズに励まされつつ、修司はバーンズに連れて行かれ、ジュニアとアプリコットの二人は正体を隠してる修司の動向が気になったのか行動を共にした。
「マスター、酒」「僕らはノンアルコールで」
バーンズに連れられてやって来た彼の行きつけのBARで、バーンズは酒を頼み、ジュニアとアプリコットはノンアルコールの飲み物を注文。
「ほれ、確か……珍素公だっけ? お前も飲めよ」
「そ、それじゃ……マスター、ウーロン茶を一杯」
「おいおい、酒類じゃなく茶かよ。まるで修司みたいだな」
バーンズに言われて注文する修司だが、修司がウーロン茶を注文したのを見てバーンズは呆れてしまう。
そして四人はカウンターでそれぞれ飲むのだが、それでも何処か気落ちしている修司にアプリコットが話し掛ける。
「……あなた、大丈夫? そんなに聖龍隊のファンだった訳?」
「い、いや……まあ、正直ショックなのは本当だが……まさか、今じゃ分散しているなんて……」
聖龍隊の現状に戸惑いを隠せない修司に、三人は気難しい顔を浮かべる。
「年月が過ぎれば変わるもんだってあるんだよ。オレだってまさか、此処まで状況が悪くなるなんて思ってもみなかった」
「それは僕らだって同じだよ。義兄さんが消え、謎の疫病が流行って、アニメタウンは荒廃した上に在住してる人々もめっきり減少したんだもの」
「小田原修司が描いていた理想と希望の国家アニメタウンは、今や昔の話って訳」
バーンズやジュニアそしてアプリコットの話に、修司は黙然と下を俯くばかり。
「そ、それじゃ……今、聖龍HEADの方々は……?」
ふと修司が訊ねると、バーンズ達はそれに返答する。
「セーラームーンやエンディミオンは、ネオ・トーキョーを統治しつつ、奇髪病の対策に追われてるよ」
「コレクターズの三人は、電脳世界で奇髪病の情報を収集してるから滅多にリアルではお目にかかれない」
「魔法騎士の三人は、奇髪病からの避難場所として認可されている異世界セフィーロを守護しつつ、感染拡大を防いでいるわ。後はみんな自由気ままに活動してる感じ」
口々に語られる聖龍HEADの現状を聞いて、修司はかつて同じ志を持ってた仲間達の現況に心痛する。
すると「そうだよ、にいちゃん。二年も過ぎちゃえば、変わるもんは変わっちまうんだよ」と、修司たちの後ろの席で飲酒してた酔っ払いが唐突に話し掛けてきた。
その声に修司が振り向いてみると、酔っ払いを見た修司はまた愕然と驚いた。
「はっはっは、いやぁ……俺も昔みたいに粋がれなくなっちまったよ……歳は取りたくないぜ、まったく……」
と、ヨボヨボの老体で震える手で酒をグラスに注いで飲もうとする、変わり果てたウェルズの姿を修司は目撃した。
(う、ウェルズ!? お前どうしたんだよ!? 完全に二年の月日じゃないよね、肉体の老化が……! 完全に50年は経過している様なヨボヨボの老体じゃないか!!)
心の中で激しくツッコむ修司を横目に、ウェルズの甥であるジュニアが叔父に歩み寄る。
「叔父さん、また昼間っからお酒に入り浸ってるの? もう歳なんだし、お酒は程々に……」
「ウッセェ! 俺はまだそんな歳じゃねえよ!」
(いや! もうグラス持つ手はガタガタ震えてるし、完全に高齢者だよね!!)
ジュニアとウェルズのやり取りを前にして、修司はまたも心の中でツッコんだ。
「見ろよ、珍素公。ウェルズの奴も修司が居なくなったりと色んな事が積み重なって、すっかりジジイに変わっちまってる」
(いや! だからといって、二年前は精々40後半から50前半の設定だった奴が、たった二年で完全にジジイに変わるのは可笑しいって!!)
バーンズの説明に、修司はまたも心の中で激しくツッコんだ。
「変わると言えば、成長も表しているけど……バーンズ、君は僕らみたいに変われたのかな? それで一人だけでアニメタウンを護ろうとしてるね」
(いや、確かにお前らは色々と成長してるけど! ジュニアはムキムキ、アプリコットはボンッキュッボンの体型に成長してるけど!)
ジュニアの指摘に修司はまたしても心の中で激しくツッコむが、そんなジュニアにバーンズは返答する。
「結構な言い様だな、ジュニアにアプリコット。オレも昔の様に修司の相棒という枠の中だけに納まる器じゃ無いんだぜ。もう女の尻を追っかけ回すスケベなバーンズは居ねえ……今ではオレの彼女である瀬川おんぷだけを応援してる。今じゃおんぷは立派にAV女優に転身して成長できたんだ。オレだって変わらなきゃ、おんぷに申し訳ねぇ」
(いや、まさかのおんぷがAV女優に転身!? おんぷ成長できたっていうか、逆に色んなモンを失ってるじゃねえか!!)
バーンズが自分の彼女である瀬川おんぷのまさかの転身を語るが、それに対しても修司は心の中で激しくツッコんだ。
それからBARで一休みした一行は、再び外に出て街の中を移動。いつの間にか修司たちは川沿いの道を進んでた。
一方の修司は、BARで知ったウェルズと瀬川おんぷの変わり果てた現状に驚き疲れていた。
「どうした? 折角オレが奢ってやったのに、まだ元気出ねえのか?」
「奢ってやったって、ウーロン茶一杯だけじゃないか。相変わらず万年金欠なんだから」
生気の無い顔の修司にバーンズが声掛けするが、そんなバーンズの台詞にジュニアが軽くツッコむ。
そんな互いに張り詰めている三人に、修司が恐る恐る問い掛ける。
「と、ところで………………ウッズは結局どうなってるの? 何処に居るの? 時間泥……いや、このカメラを元通りに直してくれないと困るんだよ。それに俺もウッズ本人から聞きたい事がたくさんあるし……」
この修司の質問にバーンズとジュニアとアプリコットは振り返って修司の顔を見るや否や、三人とも怪訝な表情でバーンズが言った。
「……ついてこい」「?」
バーンズの一言にきょとんとする修司だったが、修司は言われたままにバーンズ達に着いていく。
四人が歩を進めていくと、とある河原に辿り着く。
そこでは何か重々しい空気の中、三次元政府の役人達が蔓延っていた。
「お、おいおい。なんで三次元政府の役人達が此処に居る?」
修司が驚いていると、ジュニアがその疑問に返答する。
「二次元界が奇髪病で蔓延した後、聖龍隊が自然分散したのは聞いてるだろ。それ以降、二次元界の情勢は悪化し、政権は崩壊。今や三次元政府が聖龍隊やアニメタウン市長に成り代わって二次元界を牛耳ってる訳さ」
「! 三次元人が、実質的に二次元界を支配してるって事かよ……!?」
ジュニアの説明に修司はただただ驚くばかり。
すると修司が二次元界の現状に驚いている最中、目前では三次元界の役人達が何やら動き出した。
「な、なにが始まろうとしてんだ?」
修司の疑問に再びジュニアが答える。
「公開処刑だよ」
「こっ、公開処刑!? なんでまた……!」
驚愕する修司に、今度はバーンズが答えた。
「奇髪病の蔓延によって治安は悪化、それに伴い
「おいおい、マジかよ……!」
バーンズの説明に修司は驚くばかり。
と、ここで修司はとある疑問を脳裏に浮かべた。
「! おい、なんで俺を此処に連れてきた? 俺はウッズに会わせてほしくて……」
と、修司が返答を求めようと問い掛けた矢先、修司たちと同様に公開処刑に集まっていた群衆が騒ぎ始めた。
「お、おい、出て来たぞ!」
群衆の一人が指さす方へと修司が目を向けると、なんと其処に居たのは。
顔に活気の見えない丸顔の初老の男性へと変わり果てたウッズだった。
「………………………………」
罪人として公の場に引っ張られてきたウッズを目の当たりにして修司は酷く困惑する。
「ええッ!! これどーーいう事!? なんでウッズが罪人としてこの場に居る訳!?」
困惑する修司が三人に問い掛けると、バーンズがそれに答える。
「ウッズの野郎、修司が居なくなってから何かの研究に没頭して……遂には何を血迷ったか街中に置かれてた人形を改造して破壊兵器にして街中を壊しまくっちまって、今じゃあそこまで落ちぶれちまった訳よ」
「なに!? なんで人形を改造して破壊兵器にしちゃった訳なの!? なあ、ジュニア君! 君の父親だよね!? なんとかして助けられないの!?」
「三次元界の武装役人が大勢いるこの場で、僕らだけで父さんを助け出すなんて無理だ! 様子を窺い、チャンスを見計らないと……!」
「いや! だからって! なにか策かなんか無いのかよ……!」
と、修司がバーンズやジュニアと言い合いしていると、再び群衆が騒ぎ出した。
「お、おい、もう一人出て来たぞ!」
群衆の声に修司が再び視線を戻すと、公開処刑の場に引っ張り出されたのが。
なんと目に生気のない変わり果てたガイア・スコーピオンの姿が目の前にあった。
「……って、えええッ!?」
ウッズに続き、ガイア・スコーピオンまでも公開処刑の場に出てきた現状に修司は更に困惑。
「おいッッッ! なんでガイアまで処刑場に出てくる訳!? いや、元々悪党であるアイツがいても可笑しくはないけど、けどなんで!?」
混乱する修司にバーンズが再び説明した。
「ガイアの奴、修司が居なくなってから更にちせへのストーキングが激しくなってな……それで街中で看板でもある店先の人形に変装している所を、ウッズが改造して破壊兵器になって街を暴れ回ったから捕まったらしい」
「なに!? ウッズが改造した人形って、ガイアの変装だった訳!? というかガイアの奴、ちせにストーキングするまで悪化しちまった訳なの!?」
バーンズの説明に修司が驚いていると、今まさにウッズとガイアの処刑が始まろうとしていた。
「お、おい! どうすんだよ、このままじゃ二人とも……いや、ガイアは別にどうでもいいが、ウッズはどうするんだよ……!!」
修司が困惑していた、その時だった。
[変わり果てた仲間達]
ウッズとガイアの両名が今まさに処刑される寸前。
なんと処刑場に一個の煙幕弾が投げ込まれ、あっという間に処刑場は白煙に包み込まれた。
「な、なんだ? 何が起こってるんだ?」
騒然とする処刑場を前に修司が困惑してると。
「アイツら、遂にやりやがったか……!」「へ?」
「父さんやガイアを助ける為に、手を組んだか」「?」
「ようやく行動に移れたようね」「??」
バーンズやジュニアそしてアプリコットの反応に修司が更に困惑していると、白煙に覆われる処刑場に次々と人影が飛び出してきた。
「総員、ウッズさんとガイアを助け出せ!」
「村田順一の言う通り、我々も共に二人を救い出すのです!」
なんと最初に白煙の中に突撃してきた二人は、何故か悪役風の黒い衣装を纏っている修司の一番弟子の村田順一、そして順一と共に皆を取り仕切るのはガイアの双子の弟であるキラー・ウォーター・クリスタル・スコーピオンだった。
(ええッ!? なんで!? なんであの二人が一緒な訳!?)
心の奥で修司は、なぜ二年前までは日本皇軍のトップであり日本将軍であった村田順一が敵方である筈のクリスタルと一緒なのか訳が分からず混乱する。
そんな混乱する現場が目前に広がる中、順一とクリスタルの指示で二人の後方から続々とスター・コマンドーやスコーピオン同盟の面々が飛び出して、処刑場を取り仕切ってる三次元政府の役人達を倒していく。
「柊兄弟! しっかりしろよ!」「互いに背を合わせましょう!」
「ああ、頼んだぞ! ユウ、ニナミ!」「おうッ、任せな!」
何故か二年前までは敵対してた筈の間柄なのに、今ではすっかり身なりまでもガラリと変わってしまった元殺し屋コンビのユウとニナミに、何故か侍風の衣装で二人と共闘する柊恵一と柊潤の兄弟を見て、修司は絶句した。
(おおいッッッ!! ユウ、ニナミ! 他のスター・コマンドーの連中もだけど、なんでお前らそんなガラの悪い悪役みたいな衣装なんだよ!? 一体、この二年間で何があった!? そして柊ブラザーズ! なんでお前ら揃いも揃ってサムライ風のコスプレで登場してる訳!? 恵一、お前に限っては緋村剣心、潤は完全に相楽左之助じゃねえか……!!)
修司が心の奥底で四人の服装にツッコミを入れていたが、完全に服装や風貌が変わり果てているスター・コマンドーやスコーピオン同盟の面々の中でも異質に変わり果ててた二人いや三匹に修司は愕然とする。
(おいッッッ!! 徹之進! ハル! お前らどっちも完全に獣人型の二次元人に変貌しちまってるじゃねえか! もうセレブナイトでも人工兵器でもなけりゃ、血に飢えたケダモノじゃねえか……! そして最後にスコーピオン同盟のランダージョ! お前なんでゴーグル着けて武器持って戦ってる訳!? ワンピースの革命軍にそんな感じの猫いたけど、酷似してるじゃねえか……!!)
修司は目の前で血に塗れながら戦う徹之進とハルに蒼褪めながら、ゴーグルを着用して武器をぶっ放すランダージョを目撃して内心激しくツッコんでいく
「よし、オレらも参戦するぞ!」「え?」
「そうだね! 父さんを助けないと……!」「?」
「ほらっ、あなたもウッズさんに会いに来たなら手伝いなさい!」
「ちょ、ちょっと……って、うわ!」
バーンズにジュニアの言動に修司が戸惑っていると、そんな修司の背中をアプリコットが押し出して強引に乱闘に参戦させようとする。
しかし修司は自分が行方不明になってから完全に変わり果ててしまった弟子であるスター・コマンドーや敵対してたスコーピオン同盟の変わり様に驚いて、上手く乱闘に参戦できずにいた。
「ん? 君は誰だい? 素人が戦闘に参加しちゃダメだよ」
そう修司に言いながら、スコーピオン同盟の兵部京介が超能力で周囲の三次元政府の役人達を倒していくと、そこに敵対してたスター・コマンドーの明石薫たちも戦いながら修司に話し掛ける。
「兵部さんの言うとおりだぜ、あんた。というか、あんた見かけない顔だな」
修司が時間泥棒によって装着された首輪で本人の顔だと見分けられない状況で、修司に話し掛ける薫に続き、同じサイキックチルドレンズだった野上葵や三宮紫穂も役人達を倒しながら修司に話し掛ける。
「ホンマに見ない顔やな」「と、いうか……何だか破廉恥な顔ね」
葵や紫穂の台詞に動揺しながらも、修司は此処で焦った役人が慌ててウッズの首を刎ねようとしているのに気付く
「! う、ウッズ……!」
修司は急ぎ、周りの役人達を殴り倒してウッズへと駆け寄った。
「へえ、あの男……なかなかやるじゃないか」
「そうですね! 見かけによらず、かなり武術に長けています!」
「でもあの人……ウッズさんの知り合いなのかしら?」
そんな修司の戦闘を目の当たりにして、共闘しているスコーピオン同盟のシルクァッド・ジュナザードとスター・コマンドーの白浜兼一と風林寺美羽が言葉を交わす。
一方で修司はウッズの首が刎ねられそうになるのを阻止する為に急いで駆け付けようとするが、その道中でバーンズとジュニアと衝突してしまう。
「「「うわッ!」」」
互いに衝突してしまうと、バーンズとジュニアは言い争いを始めてしまう。
「いってェ……! おい、ジュニア! お前は引っ込んでろ!!」
「何を言うんだバーンズ……! 息子が父親を助けるのが筋ってもんでしょ!? そっちこそジャマだよ!!」
「お、おい、二人とも……喧嘩してる場合じゃ……」
「「お前は黙ってろ!!」」
言い争うバーンズとジュニアを修司が宥めようとするが、二人から逆に怒鳴り返されてしまう。
と、バーンズとジュニアが言い争うのを修司が宥めている、まさにその時。
慌てた役人が振り下ろした刃がウッズの首を刎ねてしまったのだ。
「え?」「「!」」
それを目の当たりにした修司は唖然とし、言い争ってたバーンズとジュニアも目を見開いた。
のだが……なんと刎ねられたウッズの首は、そのまま修司の手元まで飛んできて、自然と修司がウッズの断頭を受け止めてしまう。
すると、修司が受け止めたウッズの頭部から電子音が鳴った直後、機械音声が頭部から聞こえてきた。
「爆発まで、3・2……」「「「……え?」」」
突然頭部から聞こえてくるタイムリミットに、修司もバーンズもジュニアも呆然とするばかり。
そして「……1・0」タイムリミットが0になった途端、修司が受け止めたウッズの頭部が大爆発。三人は爆発に巻き込まれて、処刑場全域が白煙に包まれて辺りは更に大混乱の上に騒然とかした。
修司たち三人は爆発に巻き込まれて黒焦げの頭アフロになって呆然と立ち尽くしてしまうのであった。
時は過ぎて夕方しかも分厚い雲が空を覆う曇天の中、三次元政府に反発してウッズとガイアを救出した一同と、彼らに協力してた面々が隠れ家にて救出したガイアを招いて祝賀会を開いてた。
「……えーー、今回のウッズ氏とガイアの救出劇成功を祝って、僕たちスター・コマンドーとスコーピオン同盟そして協力してくれた旧聖龍HEADの方々の祝賀会を此処に開催します!」
スター・コマンドー総部隊長の村田順一の祝言から祝賀会が始まり、その場の一同は皆々楽しくドンチャン騒ぎを始め出す。
「いやあ、ジュン! まさか昔は敵同士だったお前さんとオレ様達が手を組むとは、昔じゃ考えられなかったぜ!」
「ガイア、僕らは救うべき命を救う為に手を組んだだけだよ。君もウッズさんも死ぬべき命じゃないからね。何より、疫病で衰退しているからって二次元界を武力で支配している三次元政府に黙って従うほど、僕らは曇ってないよ」
互いに祝いの酒を酌み合うガイアと順一の二人を皮切りに、他のスター・コマンドーやスコーピオン同盟の面々も昔の様に敵対してた者ではなく同じ目的を持つ同志として楽しく騒ぐのだった。
「お前さん達も、やっと仲直りしてくれたみたいだな! 修司が居なくなってから、お互い険悪になってたけどオレ様やウッズを一緒に助け出してくれてよ。ほら、そこの初見のあんちゃんも一杯やってくれッ」
「オレらは別に仲直りした訳じゃねえよ。テメェらの襲撃のどさくさに紛れちまって仕方なく……」
「しかも息子の僕ですら知らされてなかったけど、父さんが本物でなく偽物のロボットと入れ替わってたなんて……まったく」
ガイアに会釈されながらやむを得ず杯を交わす修司に反して、助け出そうとしたウッズがロボットと入れ替わってた事実を含めて不満そうに怪訝な顔を浮かべるバーンズとジュニアの二人。
「まあまあ、どちらにしても君たちの乱入も効果あってガイアを助け出せたのは事実。ホントに感謝するよ、バーンズ、ジュニア」
「三人とも、あの小田原修司が居なくなった後から不仲になっているとは風の便りで聞いてたけど、もういい加減仲直りしたらどうだい? そうだろ、えーーと、名前は……」
「あ、あの………………珍素公と、言います」
楽しく宴会するスコーピオン同盟のピエールにワルドに話し掛けられ、修司は戸惑いながらも偽名を名乗る。
「いやーー、まさかバーンズさん達も乱入して公開処刑を台無しにしてくれたのには驚きました! 聖龍隊が自然分散した後は小規模ながらも活動してたって話は聞いてたけど……なぁ、るちあ」
「ええ! バーンズさんやジュニアも助太刀してくれたのは嬉しい限りね! ……また聖龍隊、結成しないかな」
「るちあ、アクアレジーナのお前でも言っていい事と悪い事があるぜ。オレ達はもう昔には戻れねえ……疫病が蔓延し、修司も居なくなった今となってはな」
そして裏方では三次元政府に楯突いたスター・コマンドーやスコーピオン同盟の面々に陰ながら協力してた堂本海斗とアクアレジーナの七海るちあの台詞に、バーンズが酒を片手にやっかむ。
「……いや、それにしてもよ。まさか悪党同名のスコーピオン同盟とスター・コマンドーが手を組んだのも驚きだが、その二組の後ろ盾がアクアレジーナ様方とは嘆かわしいね。確かに聖龍隊も今じゃ影も形もないね、こりゃ」
「お前、ワイセツ物な顔だって言うのに、言ってくれるな。バーンズさん、こいつ誰ですか?」
「解かんねえ。どうやらウッズに用事があるっていう異世界の住人らしいが……」
スコーピオン同盟と手を組んだスター・コマンドーだけでなく、その二組を陰で支援してたアクアレジーナたちに難癖をつける修司に対して、修司本人だと気付かない海斗がバーンズに問い掛けてた。
「ミナサマ、アタラシイオチャヲオモチシマシタ」
と、スター・コマンドーにスコーピオン同盟そしてアクアレジーナ一行の宴会に、ふすまを開けて出てきた人物にガイアは魅了された。
「おおっ、ちせちゃん! 久しぶり! 相変わらずカワイイね!」
ガイアの言動に、修司は宴会場に出てきた仲間だった最終兵器ちせに目を向けたのだが。
「アタラシイオチャ、ソソギマスネ」
なんとその場に現れたちせの姿は二年前とは程遠く変わり果て、まるで茶運び人形の様な容姿に脚部は完全にキャタピラと化していた。
(ええェッッッ!!)
変わり果てたちせを目撃して、修司は心の中で絶叫した。
(ちせえええぇぇぇッ!! お前なんだよ、その体は!? お盆を両手に乗せてって、完全にそれじゃ江戸時代に作られた茶運び人形というかカラクリ人形じゃねえか!! そして脚部がキャタピラって……! 完全にガンタンク! いやちせタンクじゃねえか!! 泣くよ!? お前そんなんじゃ高橋しん先生泣くよ!? 号泣すっぞ!!)
最終兵器ちせの余りの変わり様に驚愕する修司であったが、そんな変わり果てたちせ相手にもガイアは見惚れていた。
それからもスター・コマンドーとスコーピオン同盟そしてマーメイドプリンセスたち合同の宴会が続いたのだった。
[疫病の元凶]
宴会が夜通し続いて、夜明けに近付いていく中。
未だ曇天の空を見上げる様に、宴会に使用してる和室から空を見上げるバーンズにジュニアそして堂本海斗に修司が歩み寄り声をかける。
「……曇り空で薄暗くても、アニメタウンはアニメタウンだな。聖龍隊が護り抜いてきただけの事はある」
「「「………………」」」
「……なあ、あんた達が思う所は今じゃバラバラなのは分かったよ。ただ、なんで小田原修司は居なくなったのか? そして奇髪病という疫病がなんで此処まで広がってるのか……分かってる事があったら教えてくれよ」
修司は三人に、何ゆえ未来の自分が失踪したのか、そして謎の疫病である奇髪病が蔓延してるのかを問うた。
するとジュニアが此処で重い口を開いて零した。
「……ヴァルツ……」「え……?」
ジュニアが零したその名に修司は一瞬真顔できょとんとすると、堂本海斗が続けた。
「Drヴァルツ……怪しげな催眠暗示などの人体実験をしてたっていうマッドサイエンティストさ」
「……!」
「修司さんが失踪したのも……そして奇髪病が蔓延したのも、そのDrヴァルツが関与してるって専らの噂だが……真相は闇の中さ」
海斗が語ったDrヴァルツの名に、修司は戦慄が走った。Drヴァルツ、その人物は過去に修司に「殺戮陽動プログラム」という催眠暗示を植え付け、修司自身を最強最悪の人間兵器にした精神科医というマッドサイエンティストだった。
(おかしい。Drヴァルツはもう、この世にはいない筈……)
修司は既にDrヴァルツが存命していない可能性の方が高いと考え込んでいると、最後まで黙り込んでいたバーンズが重い口を開いて発した。
「修司は……」
「!」
「修司は、オレたち二次元人を護る為に、Drヴァルツと関わりを持っちまって、殺戮陽動プログラムを受け入れちまった。それからアイツは色んな事で自分の手を血で染めてきて……色んな罪を一人で背負っていたんだ。オレ達は、それに気づかないまま……」
「………………」
「業を背負うのは、お前だけじゃないだろ……修司」
「!!」バーンズの台詞に衝撃が走る修司。
バーンズは、仲間達は修司が一人で多くの業を、罪を背負ってまで戦い抜いて事に苦しんでいた。修司は仲間達が自分に対して非常に思いやってくれている事実に衝撃を受けてた。
と、修司がバーンズやジュニアそして堂本海斗達から奇髪病の元凶がDrヴァルツかもしれないという情報を聞いた直後。
ふと窓から視線を外に向けた修司が直視してると、修司の視線の先そのずっと先に謎の人物が電柱の上に突っ立っていた。
電柱の上に立つその人物は、編み笠をかぶり顔や腕全体に包帯を巻いており、黒の布切れを纏っている素顔の見えない人物。
その人物と屋内の修司が目が合った瞬間、修司は何かを感じ取り、察したのか急ぎ窓から外へと飛び出した。
「「「!!」」」
修司が窓から飛び出したのを目の当たりにして、バーンズとジュニアと海斗は一驚する。
一方の修司は慌てて謎の人物を目撃した付近まで駆け付け、辺りを見渡す。
(い、今のは……!)
修司は何かしらのシンパシーを感じ取れた謎の人物を探すのだが、既にその謎の人物は姿を晦ましていた。
「お、お前……! なにを突然……!?」
血相を変えて飛び出した修司を追って、バーンズとジュニアも駆け付けると修司は二人に言葉を投げかけようとする。
「い、今! ここに……」
「「?」」
「い、いや……なんでもない」
だが修司は二人に問い掛けるのを自制した。
そして駆け付けた二人と共に、修司が宴会場へと戻ろうとしたその時。修司は脳裏に一人の少女を、自分を救ってくれた異性を思い出した。
「そ、そうだ……!」「「?」」
修司の声に二人は立ち止まり顔を向けると、修司は二人に訊ねた。
「な、なあ……ミラーガールは、加賀美あつこは今どうしてる? 他の聖龍HEADの女たちは元気みたいだけど、魔鏡聖女は……?」
修司が二人に問い掛けると、バーンズとジュニアは途端に重たい表情に一変して黙り込んでしまう。
「へっ? お、俺……なんかマズい事、訊いちゃった……?」
二人の重く切ない表情を前にして、修司は酷く戸惑うのだった。
ところ変わって、ここはアニメタウンの総合病院。
ある病室から聖龍HEADであったナースエンジェルとその恋人である宇崎星夜が出てきた所に、お見舞いに来てくれた一団が声をかける。
「……お久しぶりね、りりかちゃん」「……うさぎさん……」
声をかけてきたプリンセス・セレニティこと月野うさぎに、ナースエンジェルである森谷りりかが答える。
「星夜くん、彼女の容態は……」「亜美さん……相変わらずです」
悲しげに受け答えするうさぎとりりか同様に、セーラーマーキュリーこと水野亜美と医師である宇崎星夜も悲愴感に苛まれながら対話する。
「ごめんなさいね、いきなりこんな大勢で押し掛けちゃって……」
「私達セーラー戦士だけでも多いのに、病院の入り口でハニーさんとばったり出くわしちゃって……」
そうナースエンジェルと星夜に申し訳なさそうに伝えるのは、キューティーハニーこと早見ハニーとセーラーマーズこと火野レイの二人。
セーラー戦士達とハニーの総勢11人のお見舞いに宇崎星夜とナースエンジェルは笑顔で申し開く。
「良いって事ですよ! 彼女も賑やかなのは大好きだったんですし、もしかしたら……」
「そうね。もしかしたら、みんなの賑やかな声を聞いたら目が覚めるかも」
医師である宇崎星夜とナースエンジェルの言葉に、セーラー戦士達とハニーは微笑むのだが、其処に。
「その言いようだと、まだ彼女は目覚めてないみたいね」
その何処か辛辣ながらも悲しそうな声に皆が視線を向けると、そこに居たのは真紅たち五体のローゼンメイデン達に木之本桜、そして東京ミュウミュウの六人だった。
「みんな……!」「驚いたな、かつての聖龍HEADがやって来るなんて……!」
ナースエンジェルと星夜が驚いていると、ミュウイチゴが苦笑いしながら返事する。
「へへ、さっきまでチンピラ達の暴動から市民を護ってたから、ちょっとボロボロだけど……」
「そっちは相変わらず暴動の制圧や市民の安全を守ってるのか。偉いな」
ミュウイチゴの説明を聞いて、キング・エンディミオンは微笑んだ。
「あの、りりかちゃん。あの人はまだ……」「ごめんなさい、まだ目覚めないの……」
さくらの問い掛けに、ナースエンジェルは首を横に振って答える。
「ナースエンジェルでもダメなんだね。奇髪病はホントに恐ろしい」
「ああ、まったくだ。でもナースエンジェルやセーラームーンの治癒能力だけじゃない、俺の医師としての腕がもっと良けりゃ……!」
「星夜のせいじゃないわ! 星夜はアッコさんだけでなく、たくさんの奇髪病患者の為に頑張ってるじゃない……!」
蒼の騎士の台詞に、宇崎星夜は悔しそうにしてるとナースエンジェルが宥めてあげた。
「……ここじゃ、ちょっと廊下を通る人の邪魔になるでしょうし、病室に。アッコさんもみんなが来てくれたなら喜ぶわ」
「ここにバーンズやジュニアたちも来てくれたらいいんだけどね」
「仕方ないわ。修司くんが失踪してから、バーンズやジュニアそしてアプリちゃんは個々で活動し始めて、聖龍隊そのものが自然分散しちゃってるんだから……」
ナースエンジェルに言われ、セーラーウラヌスとセーラーネプチューンが悲しげに呟く中、皆は病室に入っていった。
[病床の聖女]
医師である宇崎星夜とナースエンジェルの許可の元、一同が入室した病室は感染防止の為に個人病室となっていた。
そして、その個人部屋のベッドに横たわっていたのは。
美しかった赤毛の髪の毛が今ではすっかり白髪に成り代わり、衰弱して意識すら失っていた加賀美あつこの変わり果てた姿だった。
「アッコちゃん……」「アッコちゃん、目を覚ましてくださいです……っ」
ローゼンメイデン達がお見舞いに持参した千羽鶴をベッドの横の、たくさんの千羽鶴の隣にかけている中、セーラーマーキュリーが自分達が持参した花を病室の花瓶に生けて、古い花と取り換えていた。
「うっ、なんで……なんでアッコちゃんが……!」「ハニーさん……っ!」
思わず悲しみで涙を流してしまうハニーに、さくらも貰い涙を目に浮かべる。
「修司がいなくなり、アニメタウンに奇髪病が蔓延……! そして今ではバーンズもジュニアも一人で勝手に行動する様になって……! 昔の聖龍隊は今じゃもう……!!」
「まもちゃん……うっ、うぅ……!」
キング・エンディミオンもセレニティも涙を流して悲観する。
そんな友である皆の涙声や泣き声にすら、アッコは反応せず静かに病床で瞳を閉じて深い眠りに就いてた。
セーラー戦士達に早見ハニー、そして木之本桜と東京ミュウミュウにローゼンメイデン達。皆が病室で意識のないアッコに悲観していたその時。
廊下ではバーンズやジュニアたちに説明されて、慌てて駆け付けてきたが病室の皆の会話を聞いて蒼然となり、壁に寄りかかる修司の姿があった。
「………………………………」
アッコが奇髪病に感染し、意識すらも失っている現実に蒼然とする修司。
そんな修司の横では、同じくバーンズとジュニア、そして三人と共に病院に駆け付けたアプリコットの姿が。
バーンズもジュニアも、アプリコットも、三人とも愕然とする修司以上にアッコの現状に嘆いていた。
「……いつからだ。いつから……加賀美あつこは……!」
愕然とする修司が問うと、バーンズが悲愴感に押し潰されながらも答えた。
「修司がオレ達の前から……アニメタウンから消えたほぼ直後だった。アッコもまた、奇髪病に感染して……今じゃ、意識すらない……!」
するとバーンズに続き、アプリコットも絶望に打ちのめされつつも答える。
「もう誰からの呼び掛けにも反応しなくなって……何度呼び掛けても起きないの……っ!」
悲痛な思いを一生懸命胸の奥から吐き出すアプリコットの言葉に、修司はただただ愕然とするばかり。
「こんな時……こんな時、義兄さんが……小田原修司が居てくれれば……!」
そうジュニアが悲愴と絶望の中で零すと、それに反応してバーンズがジュニアの胸倉を掴んで怒鳴り散らした。
「言うんじゃねえよ!! お前だって解ってるだろ!! 修司は……修司はもう居ねえんだよ!!」
そう怒鳴り散らすバーンズの目からも、そんなバーンズに胸倉を掴まれて怒鳴られるジュニアの瞳からも、そんな二人を前にするアプリコットも、三人とも大粒の涙を堪え切れずにいた。
三人が各々の苦境を吐き散らし、病室ではバーンズの怒鳴り声も気付かないほど暗鬱な空気に支配されている。そんな現状を察した修司は無言で歩き出す。
「!」「え、ちょっと……!」「あ、あなた……!?」
バーンズにジュニアそしてアプリコットの三人がそれぞれ突然歩き出して病室に入っていく修司を前に唖然とする中、修司は病室の引き戸を開いて入室する。
「おいおい、お前ら。病人が寝てるんだぞ。それなのにお見舞いに来てるテメェらが暗くなってたら、それこそ病気が悪化しちまうもんだろ」
懐かしい声、懐かしい口調に反応し、病室内にいた皆々は一斉にドアの方へと顔を向けた。
「やあ……どうも」
しかし皆の目に映る修司の顔は、修司ではなく猥褻物に酷似した顔付きの別人に捉えられてた。
「……って、誰だテメェは!!」
「修司くんの口調や台詞、勝手に真似ないでよね!」
「というか、お前だれだよ!」
「け、蹴らないで蹴らないで! って、いうか星夜くん!? 医者である君が暴力行為はマズいんじゃない!? ヴィーナスも蒼星石も暴力ダメ!」
突然現れた修司を、修司本人だと認識できない状況で暴力という激しいツッコミを入れてくる三人に、修司は蹴りなどのツッコミを受けながらも訴える。
そんな殺伐とする状況を前に、セレニティやハニーたちが呆然と冷ややかな目で修司を見詰めていた、その時。
「……修司……修司なの……!?」『!』
なんと今までずっと意識不明の容態だったアッコが言葉を発し、その場の皆は一驚した。
医師である宇崎星夜は慌てて修司へのツッコミをやめてアッコの容態を確認する。
「ウソだろ……!? 1年半以上、意識が無かったって言うのに……!」
医師である星夜は、今まで意識が無かったアッコが反応して声を発した事態に目を丸くして驚くばかり。
すると星夜やセーラーヴィーナスそして蒼星石たちのツッコミを受けていた修司が立ち上がり、意識を取り戻したアッコへと歩み寄る。
「修司、修司なのね……! やっと、帰って来てくれたのね……」
病床のアッコは、目覚めたばかりな上に病のせいで視力も殆ど無かったが、寝たきりの自分の横に居るのが修司であると本能的に察していた。
周りの皆々は、修司を修司と認識できない為に、アッコが病弱な故に認識を誤っているのだと呆然とするが、そんな所に修司の後ろからバーンズとジュニアそしてアプリコットも歩み寄る。
「そうだぜ、アッコ。やっと修司が帰って来たんだ」
「もう何処にも行かないってさ」
「アッコさん、安心して。私達がきっと、アッコさんの病気を治す手段を見付けてみせるから!」
バーンズ、ジュニア、アプリコットの優しい言葉にアッコが鏡の様に美しい瞳から涙を流す。
「……もう、病気のせいで、まともに見えない筈なのに……修司の顔が、はっきりと見えるわ……」
「………………」
「もう一度見たかったな……修司達みんなの笑顔」
そう呟くアッコに、修司は彼女の左手を右手で握り締めて笑顔で言った。
「笑顔ならいつだって見せてやるぜ。俺みたいな三枚目の面で良いなら、いくらでも笑ってやるよ」
するとそんな修司の手をバーンズとジュニアも取って、三人でアッコの手を包み込む様に握ると二人も笑みを浮かべて言った。
「オレたち聖龍隊のビック3が揃えば、なんだって出来ちまうよ。なんせ、鬼神・風神・地神の三人なんだからよ」
「アッコさんはもちろん、アニメタウンの未来も……僕らが護って見せる。だから安心して休んでて」
バーンズとジュニアの言葉を聞いて、修司もアッコに再び言葉をかける。
「だ、そうだ。だから病弱のお前はゆっくり横になってろ。お前が元気になった頃には、聖龍隊もすっかり昔の様に賑やかになってるよ」
修司たちの言葉を聞いて、アッコは心より安堵した。
「……良かった……修司が戻って来てくれて。やっぱり聖龍隊は楽しくなくちゃ……」
そう言うとアッコは微笑んで、再び眠りに就くのだった。
[過去の自分が残したもの]
病床のアッコが再び深い眠りに就いて、廊下に出た一同を背に修司が病院から立ち去ろうとすると。
「……勘違いするなよ。さっきのはアッコを励ます為にやった演技だ。修司が居なくなって、分散した聖龍隊がまた活動できる訳は無ェ」
そう立ち去ろうとする修司にバーンズが話し掛けてきた。
「……解ってるよ、それぐらい。壊れたもんは二度と元には戻れねえ。それは組織も同じだ」
『………………………………』
「……でもよ、継ぎ接ぎだらけとはいえ、壊れたもんをまた繋ぎ直す事ぐらいはできるんじゃねえのか?」
『ッ……!』
「何より……聖龍隊ってのは、それだけで誰かの、居場所のない連中の拠り所なんじゃなかったのか。その聖龍隊って言う居心地のいい場所を、帰るべき場所を求めている奴が……女がいるなら、その女の為に努力しなきゃならないのが本筋ってもんだろ」
『ッ!!』
修司の台詞を聞いて、バーンズたち四人も病院に先に集まってた面々も衝撃を受ける。
そんな衝撃を受ける一同を背に、修司は再び歩き出した。
「俺は一人でもやるぜ。たった一人の女が懐かしがってる場所なら、その場所を死んでも守らなきゃいけねえしよ。まあ、その前に俺はちょいとウッズに会って確かめなきゃならないけどよ」
そう言い残して、修司は病院から去ってしまう。
その場に残された一同は、修司の台詞に何を思うのか立ち尽くすばかりであった。
一方の修司は、そのまま足を元市長宅でもあった邸宅へと運ばせていた。
そこではいつの間にか自身とロボットを入れ替わらせて脱獄してたウッズが双子の弟であるウェルズと楽しく酒と茶で談笑し合ってた。
「ははははははっ、まさかよ兄貴! 自作のロボットと入れ替わって脱獄してたとは驚きだな!」
「私も大変でしたよ。なんせ看守の目も欺かなきゃならなかったので、順一さんやクリスタルさん達スター・コマンドーやスコーピオン同盟にも知らせられなかったので大変でした」
「でも敵を欺くには、まず味方からって言うだろ! まっ、上手く行ったんだから結果オーライだよ」
そう楽し気に談笑する兄弟を前に、修司が二人の背後まで迫るとウッズがお茶を啜ってから語り出す。
「まあ、私も大変でしたよ。時間泥棒なんて大層なモノを作ってしまい、それを使って過去の修司様を未来でもあるこの時代まで連れて来させたんですから」
このウッズの言葉を聞いて、修司はムスッとした顔でウッズに言った。
「おいおい、お前らは最初っから気付いていた訳なのか? タチ悪いなホント」
修司はウッズが最初から、修司が修司である事を認識した上で事を進ませてた事、それでいて周りにはそれを悟られない様に振舞っていた事を察した。
「すいませんね、修司様。でも、私はただ言いつけを守っただけなんですから、怒るのは筋違いですよ」
「何が筋違いだよ。誰がお前に言ったんだよ。そもそも、あの時間泥棒なんてふざけたタイムマシンなんで作った上に、俺だけを過去から未来に飛ばした訳? こんな事態、俺だけじゃ……」
と、修司がウッズに文句を垂れ流そうとした矢先、ウッズが衝撃の事実を修司に語った。
「仕方ないでしょ。なんせ、あの時間泥棒は………………元は修司様、貴方が作っておいてくれと私にお願いしてきた代物なんですから」
「!?」
ウッズの告白に修司は衝撃を受けるが、ウッズはそのまま淡々と驚愕する修司に語り続ける。
「二年前のある日のこと、あれは修司様がアニメタウンから失踪する以前の話になりますが……ある日突然、貴方は私に人一人転送できるタイムマシンを作ってくれと言い出したんです。私は驚きましたが、貴方は自分の身に何かが起きて居なくなったら、過去から自分を連れて来れるようにしてほしいと私に頼んできたんです……それからです。貴方が失踪し、アニメタウンに疫病が流行り出したのは……まるで修司様、貴方は未来で起こる全ての災いを予知していた様に、自分が消えた後に起きる悲劇を阻止できる様に過去の自分を未来へと連れて来させる様にと……私に時間泥棒を作るよう命じて、それから姿を消したのです」
「………………!」
ウッズの説明を聞いて、修司は愕然と衝撃を受けるばかりだった。
「ああ、それと安心してください。貴方から預かった時間泥棒の頭部は、私が責任をもって修理しておきますので。修司様は修司様で、やるべき事があるでしょ」
最後にウッズはそう笑顔で修司に伝えるのだった。
ウッズから彼にタイムマシンである時間泥棒を作らせ、二年前の自分を二年後の未来へと連れて来させたのも自分自身という事実を知って呆気に取られる修司。
修司は呆然としながらも、かつて聖龍隊総長であり、アニメタウン市長であった自分が使ってた自室へと足を運んでた。
部屋は長い間、放置されていて誰の手も入ってないのか埃だらけだった。
「……ふぅ、わざわざ二年前から自分を連れてきてまで、俺に一体なにをさせたかったんだよ。こんな、アニメタウンも聖龍隊も滅茶苦茶になった未来でよ……」
そう呆れながら修司は自分が使ってた埃塗れの机に手を添え据えて呟いた。
「なあ、何とか言ってくれよ……小田原修司よ」
そう修司は未来の自分に問い掛けるように、思いに耽るのだった。
すると、そんな修司の背後から三人組が歩み寄り、修司も後方の三人に気付いて振り返る。
振り返った修司の前に居たのは、二年前の聖龍隊の時からの恰好に着替え直したバーンズとジュニアとアプリコットだった。
私服姿のバーンズに、ロビンフッドの様な戦闘衣装のジュニア、そして水色の衣のアプリコットを目前にした修司に、バーンズ達は言った。
「言っておくが、お前を修司同様に相棒だとか仲間だとか、そういう風に見てもいなきゃ、認めてもいねえからな。オレ達」
「あくまでアッコさんを……そして奇髪病の元凶と言われているDrヴァルツを見付けるまでの結束だ」
「今は私達がいがみ合っている場合じゃないのは解ったわ。だから、あなたにも協力してもらうから! アッコさんを助ける手段を探す為に……!」
三人から言われた修司は不敵な笑みを浮かべて言い返した。
「にッ、解ってるよ。そもそも、俺が此処に来たのはその為でもあるんだ。まっ、お前たち聖龍隊の手助けがあれば楽に事が進むだろうけどよ」
修司が浮かべた自信満々の不敵な笑みに、バーンズ達三人も昔の様に微笑みながら修司と共に外へ出る。
そして四人が外へと出てみると、其処には既に聖龍隊と縁のある聖龍HEADの面々にスター・コマンドーとスコーピオン同盟の一同が揃ってた。
「ほう、お前さん達も手伝ってくれるってのかい?」
修司が不敵な笑みで問い掛けると、キング・エンディミオンと堂本海斗が修司に言う。
「何処の馬の骨とも解らない奴に従うのは癪だが……大方、あんたの言い分の方が正しいからな」
「昔の様に、聖龍隊として活動して……アッコさんを始めとする大勢を救い出すぜ!」
二人に続き、村田順一とガイア・スコーピオンも修司に言った。
「修司さんが居ない今だからこそ……皆で手に手を取って協力しなければ、アッコさんはもちろんアニメタウンすらも滅びてしまうのは目に見えている!」
「オレ様たちスコーピオン同盟も、癪だが手を貸すぜ! 修司の代わりに活躍して、ちせちゃんともっと一緒に居られる時間を増やすんだ!」
そんな昔からの仲間であるスター・コマンドーと腐れ縁であるスコーピオン同盟の面々の協力を目の当たりにし、内心静かに喜ぶ修司。
「電脳世界じゃ、もうヴァルツに関する情報も得られない以上、今度は足を使って地道に聞き込みするしか手立ては残されてない以上……!」
「現実世界で情報収集するお手伝いを私達もしないと!」
「病床のアッコちゃんの元気を取り戻すためにも……私達も協力するわ!」
電脳世界で活動してたコレクターズの結に春菜に愛の三人も駆け付けてきてくれた。
そんな皆を見渡して修司は拳を天に突き上げて吼えた。
「行くぞテメエら!!」『応ッ!!』
こうして修司達は、二年前に失踪した小田原修司と、奇髪病の元凶と疑われるDrヴァルツ、二人の捜索に乗り出した。
捜索の道中、修司はかつて大罪を犯したために世界中から命を狙われる羽目に至ったスコーピオン同盟のホワイト・ヘアーズの面々に問い掛けた。
「お前ら! なんで聖龍隊の為に此処までやってるんだ? ガイアを救い出した以上、もうお前らが聖龍隊に協力する理由はない筈だが……!」
するとこの修司の疑問に、ホワイト・ヘアーズリーダーの蛭川光彦が答える。
「確かに……! 小田原修司政権のせいで地球上のカーストで最も最下位にまで位置づけられた俺たちが、小田原修司が設立した聖龍隊に協力するなんて、ホントに反吐が出る気分で嫌になるけどよ……」
「………………」
「……それでも、小田原修司は俺たち外道よりも……何より、聖龍隊の連中以外からも慕われ、必要とされている以上……小田原修司を見付け出す為にも一緒に行動しなきゃならないだろうがッ!」
「……! お前……!」
リーダーである蛭川光彦の台詞に、修司が衝撃を受けていると、他のホワイト・ヘアーズの面々も自然と笑みを零して捜索の為に散り散りになる。
昔からの腐れ縁を感じながらも、修司本人もホワイト・ヘアーズの協力に多少ながら感謝するのだった。
[奪われた時間泥棒]
修司は、バーンズ達は、そしてスター・コマンドーにスコーピオン同盟さらに聖龍HEADの面々はDrヴァルツの探索に打って出る。
修司が以前、目撃した編み笠を被った包帯姿の謎の人物も似顔絵にして同時に探索を開始。
しかし修司達がいくら探し回っても、Drヴァルツはもちろん修司が目撃した謎の人物の情報は入って来なかった。
「ッ……!(ダメだ、まったく情報が掴めねえ。いや、それ以前に俺が目撃した編み笠野郎はヴァルツなのか、ヴァルツの関係者なのか? それすらも解らねえし……何より本当に奇髪病にあのヴァルツが関与しているという情報も不確定だし、何処をどう探し出せばいいんだ……!)」
と、修司が今自分達が探している謎の人物が本当にヴァルツや奇髪病に関与しているのかすら疑い始めていると。
「おいおい……お前、なに一人で考え込んでいるんだ?」
「っ!」
「一人で背負い込むなんて無粋な真似はしないでよ。それこそ僕達は何のために協力してるんだが……」
「一人で全部背負い込むなんて……其処も修司さんと似ちゃってますよ」
一人で黙々と考え込んでた修司に、バーンズとジュニアとアプリコットが気さくに話し掛ける。
「い、いや、すまねえ……あの日、俺が目撃した編み笠の奴がDrヴァルツなのか、それとも単にたまたま俺と目が合った奴なのか分からなくなってよ」
そう修司が語ると、バーンズが物申した。
「確かに、その編み笠の男とヴァルツが関係していると結び付けるのはちょっと無理があるな。でも、あの日たまたまオレ達の宴会を遠くから眺めていたってのが気になる。そいつも何らかの形でDrヴァルツや修司の居所を知っている可能性がある」
バーンズに続きジュニアも語り明かした。
「そうだね。今はとにかく情報が少なすぎる。少しでも有力な情報を得る為にも、今後も粘り強く聞き込みをするしかないよ」
ジュニアに続き、アプリコットも頷く。
「今は根気強く、情報収集しないと! 少しでも修司さんの事やヴァルツ、奇髪病の情報を得ないと……」
そんな情報収集に精を出す三人を前に、修司は思わず微笑んだ。
「ん? なんだ、お前。急に笑いやがって……」
いくら装置で修司を修司と認識できないとはいえ、彼が笑っているのは視認できるバーンズが問うと修司は笑顔で答えた。
「いや、なに……お前ら、やっと昔の様に一致団結する様になったなと思ってな」
この修司の言葉に、バーンズ達三人も思わず微笑んだ。
「フッ、おいおい。何を言い出すのかと思えば……」
「何だか懐かしいね……僕たちがこうして一緒に同じ目的の元、活動してるのって……」
「修司さんが居なくなって以来じゃないかしら。こうしてみんな揃って活動するのは」
バーンズ達は不意に昔を思い返しながら微笑みを零す。
と、ここでアプリコットが思いもよらない事を言い出す。
「あ、そうだ! ねえ、あなた。今日まで一日も休まず聞き込みしてくれて疲れたでしょ? 何なら、昔私たちが使ってた市長宅の客室の一室使って休まない?」
これを聞いたジュニアとバーンズも修司に言う。
「ああ、それはいいね! 父さんが今まで不在で埃がかなり積もってはいるけど、掃除すれば少しは休める空間には戻ってる筈。あなたも泊まる場所がないなら、僕らと一緒に市長宅に泊まってかないかい?」
「おおっ、そいつはいいな! 修司がいなくなってから、市長宅は使ってなかったけど、これも何かの縁だ! おい、珍素公。一緒に泊まってけよ!」
三人からの申し出を聞いて、修司は唖然としながらも問い返した。
「い、いいのか? 俺が市長宅に泊まって……? それこそ、小田原修司に悪いんじゃないか?」
だがバーンズ達はこう返答した。
「大丈夫だって! テメェの様に気のいい奴に使ってもらえるなら、修司だって逆に喜ぶさ!」
「父さんの知り合いな上に、こうして僕達に協力してくれている客人を御持て成ししなきゃ、かえって悪いよ」
「それに……なんだろう。もう、あなたの事ただの他人とは思えないのよね。なんだか、そう……修司さんに近い何かを感じるから、放っておけないのよ」
「お、お前ら……!」修司は三人の気遣いに衝撃を受ける。
と、その時だった。
突如、修司がウッズより連絡用に持たされていた携帯が鳴り、慌てて修司は携帯に出る。
「修司様、修司様! 大変です!」「「「!?」」」
電話の向こうから聞こえるウッズの発言に、携帯から漏れた音声が聞こえたバーンズ達はウッズの「修司様」の発言に不思議がる。
そんな中、修司はウッズに訊ねる。
「ど、どうしたんだよ、ウッズ」
「それが……! 修理が終わったばかりの時間泥棒が盗まれたんです! それも修司様達が探している編み笠を被った存在に!」
「なに!?」「「「!!」」」
ウッズからの連絡を聞いて、修司もバーンズ達も驚愕する。
「そ、それで……時間泥棒は!? 盗んだ野郎は!?」
「はい、時間泥棒に内蔵されている発信機からのシグナルを辿ってみたところ……」
修司達はウッズからの報告を受けて、盗み出された時間泥棒が発信してる信号が最後に確認されたという、立体駐車場にやってきた。
修司たちは手分けして、階層ごとに編み笠の存在と盗まれた時間泥棒の探索を開始する。
すると此処で修司は既に廃墟と化して穴抜けになっている立体駐車場の真上から、謎の視線を察知して己の第六感を信じて上へ上へと駆け上がる。
そして修司が立体駐車場の上層階に辿り着くと、そこではまるで修司を待ち受けている様に編み笠の人物と、その傍らにはロープでぐるぐる巻きにされた拘束状態の時間泥棒の姿があった。
「テメェは……!」
修司が睨み付けると、前方の編み笠男は長刀を抜いて切っ先を修司に向けて戦意を露にする。
「長刀で闘うってのか……! いいぜ、さっさとケリを付けてやる!」
修司も帯刀してる聖龍剣を抜刀して編み笠男と決闘の意志を示す。
修司が過去と未来を往来する為に必要な時間泥棒を盗み出した謎の存在、編み笠の人物。
修司は遂に自分達が追ってた編み笠の人物を見つけ出すと同時に刀を向けられた事で敵意があると見做し、編み笠の人物と決闘する事態に発展。
しかし修司と編み笠男は互角の闘いを続け、決着が中々決まらなかった。
(チッ、これじゃ決着がつかねえ……! アイツ、俺の動きを先読みしてやがるみたいに動いてくる……!)
謎の編み笠男と闘い合う修司は、相手がまるで自分の動きを先読みして攻防している様な動きに動揺してしまう。
そして激しい闘いの中、修司と編み笠男は立体駐車場の石柱を挟んだ状態で一瞬ばかり膠着状態に陥ると。
(俺だったら……!)
修司も先読みが上手い編み笠男と対等に渡り合おうと、編み笠男の動きを予知しようとする。
すると編み笠男は石柱を貫通するほどの刺突を修司に向けて突撃するが、修司はそれを先読みして石柱を貫いて突撃してきた編み笠男の右腕を脇に挟んで捕らえ、そのまま編み笠男を振り回して別方向の石柱へと投げ飛ばし、叩き付ける。
「おりゃあああああああッ!!」
修司は石柱に激突した編み笠男に突撃するのだが、編み笠男は修司の突撃をかわして真横へと即座に移動すると修司に斬りかかる。
咄嗟に修司は聖龍剣で編み笠男の太刀筋を防ぐのだが、その衝撃で二人は立体駐車場の吹き抜けになっている空間へと吹き飛び、落下してしまう。
だが落下途中で編み笠男が修司を斬り殺そうとするのだが、修司は編み笠男を蹴りつけて距離を置くことで攻撃を防ぐ。
しかし同時に修司は落下途中の階層に不時着するのだが、編み笠男を逃がさないよう闇の引力で編み笠男を引き寄せて間合いに誘う。
すると編み笠男は修司が放った闇の引力を利用して、修司を刺殺しようと刺突の態勢を構えて突っ込んできた。
修司は編み笠男の突撃を受け止めつつ、下の階層に双方ともに落下。闘いの場を先ほどの階層より下の階層に移して闘いを再開する。
「はぁ、はぁ……!」「………………」
修司は思った以上に長期戦になった為に肩で呼吸するほど消耗しているのに対し、編み笠男は寡黙に目の前の修司を見据えるばかり。
「はぁ……これで、終いにするぞ」
そう修司は言うと、編み笠男に対して聖龍剣を正眼の構えを取り、編み笠男との一騎打ちに勝負に出る。
その修司に反応するように、編み笠男も正眼の構えで太刀打ちしようと身構える。
そして一時の膠着状態が続き、縛られている時間泥棒が暴れまわった為に落下した小石が地面へと落ちた瞬間。修司と編み笠男は一気に間合いを詰めて斬り合った。
「おおおおおおおおぉぉぉッ!!」
凄まじい修司の雄たけびが立体駐車場に木霊する中、修司と編み笠男は互いに立ち位置を入れ替える形で決着をつけた。
決着は……凄まじい出血が腹部の切り傷から噴き出した編み笠男の負け。すなわち修司の勝利に終わった。
「はぁ、はぁ……」
編み笠男と決着をつけた修司は、意気消沈して思わずその場の瓦礫に腰を下ろした。
すると「……やるな、流石は小田原修司だ……」と、今ままで一言も喋らなかった編み笠男が呟いたのだ。
「テメェは……一体……」
修司は消耗してる中、編み笠男に問い詰めると、修司に急所を斬られて虫の息である編み笠男が自ら顔の包帯を取り外して素顔を晒し出した。
「っ! お、お前は……!!」
編み笠男の素顔を目の当たりにした修司は絶句するが、そんな状況でも素顔を晒した編み笠男は語り出した。
何ゆえ、今の時代ここまで疫病が流行ったのか。そして今の時代の小田原修司がどうなったのかを。
[奇髪病の正体]
「お前、いや俺が……アメリカの0エリアで精神改造の一環である殺戮陽動プログラムを受け入れて、完璧な対二次元人用の兵器
「………………!!」
目の前で今に至るまでの二年間の事実を赤裸々に修司に語り明かした編み笠男、いや二年後の小田原修司の言葉に、過去からやってきた修司は驚愕するばかりだった。
二年後の全ての元凶たる自分が完全に死んだのを見届けた修司は、最初に対峙した上層階に戻って縛り上げられてた時間泥棒を解放してから天井が崩落して夕日が差し込む広間で遠くを見据える。
「………………」「……あの、修司様」
遠くを見据える修司に時間泥棒が話し掛ける。
「私に残された時間移動のエネルギーは、往復分しか残されていません。しかも二人同時に移動できるのは片道一本のみ。帰りは私しか戻れません」
「………………」
「……あなたはこれからどうするのですか? 元居た自分の時代に帰っても、結局はナノマシンによって自身の制御を奪われ、この時代のあなたと同様にウィルスを拡散させるだけの病原になってしまうのは目に見えています」
「………………」
時間泥棒に問われた修司は、ふっと笑顔になると余裕ある顔で振り向いて時間泥棒に言った。
「なあに、大丈夫。考えはあるさ。要するに、俺がナノマシンに支配される前に、全部片付けておけば良いだけだろ?」
「! 修司様、それでは、あなた……!」
驚愕する時間泥棒に、修司は躊躇いもなく答えた。
「ああ、そうだ。俺を殺れるのは………………俺しかいないだろ」
「……!」
修司の発言に驚愕する時間泥棒だったが、彼は修司の意をくみ取り、修司に歩み寄って時間移動を起動しようとした。
「覚悟はおありのようで……! ならば、私も最後の時まで御供致します……!」
「ああ、早くしてくれ。でないと、あいつらが……」
と、修司が時間泥棒を急かそうとした、その時。
「ま、待てよ!」
その声に修司も時間泥棒も動きを止め、声のした方へと振り向く。
そこには声を発したバーンズに、ジュニアとアプリコットが肩から呼吸しながら立っていた。三人は先ほどの修司同士の決闘の騒ぎを聞き付け、慌てて駆け付けたのだった。
「お、お前は……お前は……!」
震える口調でバーンズは指さしながら正面の修司に問いかける。
「どうした? 俺みたいな何処の馬の骨のこと気にしないんじゃないのか?」
相棒や兄弟分達の様子を察した修司は、何気ない感じで背中で語る。
「い、一緒に……ずっと一緒だって、昔言ってたじゃないか!」
「あ、あなた……貴方は……っ!」
ジュニアもアプリコットも涙目で背を向ける修司に声をかける。
そんな涙目の三人を背中越しからでも感じた修司は、やれやれと言った感じで言った。
「ふう、まったく……この首輪、こんな時に効かなくなっちまって。ウッズの奴、不良品渡したのか?」
そう言うと修司は首に装着している首輪型の装置を力尽くで引きちぎり、外した。その瞬間、バーンズ達の目に映ってた輪郭が一変し、猥褻物に酷似した顔から昔懐かしい顔へと変わった
「し、修……!」「に、義兄……!」「っ……!」
三人は、今まで一緒にいた珍素公の正体を知って言葉を失くす。
そして正体を明かした修司は、三人へと振り返って自分の顔を向けて昔の様な何処か寂しそうな笑顔を浮かべた。
「しゅ! 修司……!!」
バーンズ達は目の前の修司に感激するが、修司は仲間達の言葉を遮る様に告げた。
「悪ィ、どうやら俺……もう戻ってこれないみたいだ。いいや、戻ってきちゃいけないみたいなんだ」
「な、何を言って……」
バーンズが問いかけるのを遮った修司は、そのまま話を続ける。
「なあ、お前ら……俺が居なくなった後も、元気でいてくれよ。俺からの約束だ」
「「「!!」」」
驚愕する三人を前に、修司は時間泥棒に言う。
「さあ、もう行こうぜ」
「宜しいのですか?」
「ああ。俺を殺れるのは、全てを終わらせられるのは……俺しかいないからな」
この時間泥棒との会話を聞いた三人は叫んだ。
「修司ッ!!」「義兄さん!!」「修司さん!!」
バーンズ・ジュニア・アプリコットが叫ぶと同時に修司へと駆け寄ろうとした、その瞬間。
凄まじい光が時間泥棒から放たれ、修司はその光の中へと消えてしまった。
[全てを終わらすもの]
「……もしもし……もしもし……」
光の中に修司が消え、それと同時に意識が途切れたバーンズ達が目を覚ましたのは、謎の声だった。
三人が目を覚ますと、そこは普通に利用されている廃墟ではない立体駐車場。そして三人を呼び起こしたのは、そこの警備員だった。
三人が辺りを見渡すと、そこは荒廃したアニメタウンではなく、極々普通の時間が流れるアニメタウン。
アニメタウンが荒廃する前まで戻っているのに気付いた三人は、急ぎ街中を駆け巡って修司の姿を探し回る。
するとその道中、三人は街中でデートしている村田順一と深澤マイの二人を見かけて声をかける。
「じゅ、ジュン! 良かった、知り合いに会えて……」
バーンズは慌てて順一に問い掛ける。
「ジュン! 修司が今どこにいるのか知ってるか!? オレ達もさっきまで一緒だったし、いやそれ以前にあの珍素公が……」
と、バーンズ達が慌てた様子で順一達に問い掛けるが、順一とマイの二人はきょとんとした顔で返答した。
「い、いや……知らないですね。いや、それ以前に……」
「「「!?」」」
「……あなた達、誰ですか?」
この順一の返答に、バーンズ達は絶句した。
一方の修司は、自分が元居た時代よりも遥か昔。
自身がDrヴァルツの指示で殺戮陽動プログラムという催眠暗示を受け入れ、ただ催眠で与えられた指示を実行するだけの人間兵器として生きていた10代前半の時代まで遡っていた。
「………………………………」
修司は10代前半の自分がいた時代まで時間を遡り、全てに印籠を渡す為に、ケジメを付けるためにこの時代まで来ていた。
「……修司様……」
と、修司をこの時代まで連れてきた時間泥棒が問い掛ける。
「本当に宜しいのですか? この時代の貴方を消す事は、完全に今の貴方自身を……未来に小田原修司という逸材を残さないという現実に繋がります。他に方法があるのでは……?」
だが、この時間泥棒の質問に修司は微笑で返答した。
「フッ、なぁに……俺は元々、力に渇望してヴァルツから殺戮陽動プログラムという危険極まりない催眠暗示を受け入れちまった危険人物。それが未来で、奇髪病の病原にまで成り下がっているのなら……全てを丸く収める為にも、俺自身を消しちまうのが一番手っ取り早い」
そう、修司は過去の自分を殺める事でしか、未来を救えないと悟った上で、この時代に来たのだ。
「修司様、貴方の決心はいつも固く、揺らぎらないものなんですね。良いでしょう、貴方は貴方の思うが侭にケジメを付けてください。私も私の責務を全うするの……」
と、時間泥棒が修司に語っている中、戦場から飛来してきた砲撃が時間泥棒に直撃して、時間泥棒は吹っ飛ばされてしまう。
「!!」
砲撃に驚く修司だが、彼はすぐに目の前に広がる戦場を見渡して納得する。
目の前の戦場では、遠い遠い崖の上からDrヴァルツと軍隊が、洗脳実験によって殺し合う兵士を用いた模擬戦争を行っていた。無論、その戦争の中には催眠暗示で自我のない10代前半の修司の姿もあった。
一方、未来では。
聖龍隊としての記憶が全くない村田順一と深澤マイの返答を受けて、バーンズ達は急ぎ郊外に在る聖龍隊の前線基地へと駆け付けた。そこは聖龍隊が結成してから最初に建てたプレハブ小屋だった。
だが、郊外の丘の上に在る筈のプレハブ小屋は消えており、総本部である筈の隣接してる山を丸ごと改造して造られた聖龍隊の本部までも消えてた。
「どういう事だよ、これは……!」
「義兄さんが、小田原修司が未来から消えた事で……聖龍隊そのものも消滅したというのか……!」
「そんな、ウソでしょ……!」
バーンズ達は思い出の詰まったプレハブ小屋に、聖龍隊の本部までも消滅してる事で、やっと今自分たちがいる未来から完全に小田原修司の痕跡が消滅している現実と直面する。
そして過去の小田原修司は、聖龍剣を抜刀して一目散に走り出す。
「聖龍隊、小田原修司……参るーーーーッ!!」
全ての宿業を壊し、未来を護るため修司は全速力で戦場を駆け抜ける。
「こんなのってッ!」
「こんなの、あんまりだわ!」
「また……また、一人で全てを片付けちまうつもりかよ……! 修司ッ!!」
未来ではジュニア・アプリコット・バーンズが涙ながらに、過去に全てを終わらせようと単身突っ込んでいく修司を嘆く。
「うおおおおおおおおおおおおォォォッ!!」
戦場を、時を駆ける修司が斬るべきもの。それは催眠暗示を受けて戦場で殺戮を繰り広げる10代前半の修司本人。
「修司ッ!!」「義兄さん!!」「修司さん!!」
未来で泣き叫ぶ三人の声など届かず、修司は一直線に戦場を駆け抜け、暴れ回る自分の背後へと迫る。
そして修司は、過去の自分を背後から一突きにして自らを殺めた。
「これで……」
過去の自分を刺した瞬間、修司はぽつりと呟いた。
[変わらない居場所]
過去で修司が自分自身を殺めた瞬間、未来では涙を流していたバーンズたち三人が突然流していた涙を止めた。
「あ、あれ……僕達、なんで泣いてるんだろう……?」
ジュニアもアプリコットも、そしてバーンズも、三人とも過去に修司が死んだ事で記憶が無くなり、なんで今自分たちが泣いているのかすら記憶が消えて呆然とする。
すると、そんな三人の許に、よろよろの足取りで歩み寄ってくるボロボロのスーツ姿の人物が一人。
「……大、丈夫……」
「「「?」」」
「わ、私が……いいえ、みんなで一緒に……今度こそ、一緒に行けばいいだけよ……」
「「「………………」」」
「私が持って帰ってきた……データで……」
そうボロボロのスーツ姿で未来へと帰還した時間泥棒、いや、ちせは微笑んで言った。
一方その頃、過去に戻ってナノマシンに支配される前の自分を片付けた修司は。
「これで……ようやく……」
過去の自分を殺めた事で、未来で起きるであろう厄災が無くなるだろうと踏んだ修司。
だが、そんな修司の耳に信じ難い声が。
「あーーあ、まったく……危なかったよ、マジで」
「……へっ?」
修司は自分が突き刺して刺殺した過去の自分から聞こえる聞き覚えのある声に唖然とし、思わず突き刺してた聖龍剣を引き抜くと、刺されてた当人が振り返って修司と話す。
「まったく。いつもながら容赦ないな。しかも過去の自分に対してもよォ……上手い具合に脇の間に入ったから良かったけど、下手したら心臓貫通してたぞ、おい」
そう脇と腕の間に入った聖龍剣に対して文句を言うのは、なぜかウェルズだった。
「う……ウェルズ!? なんで!? なんでお前が此処に……!?」
「いやあ、この実験に参加されてる兵士の軍服を上手い具合に見つけてな、それで着込んでから俺も戦場に出た訳だけど……」
「で、出た訳って……ま、まさか……!」
ウェルズの台詞に修司は恐る恐る戦場を見渡してみると。
(おーーーーいッ!! まだヴァルツに催眠かけられて殺人鬼同然に変化した兵士がウジャウジャ居るじゃねえか!! しかも当然の事ながら、殺戮陽動プログラムが発動して完全に殺戮モードに突入してる俺も存命してるじゃねえかーー!!)
変わってない戦況を前に、修司は心の奥で愕然とする。
「おい、どうすんだよッ! せっかく俺が未来から過去に飛んできて、全部まるっと解決しようとしたのに、全部お前のせいで台無しじゃねえか!!」
そう修司はウェルズに文句を怒鳴り散らすが、ウェルズは修司に首根っこを掴まれながらも平然と真顔で言った。
「そうやってお前は、また一人で全部を片付けようとしやがって。後に残される俺たちの事は何も考えてねえ………………だからこそ、俺たちは此処に来たんだ」
「!?」
ウェルズの台詞に修司が一驚すると、そこに修司とウェルズの存在に気付いた軍隊が襲い掛かろうと距離を詰めていたのだが。
その軍隊を遠くから爆撃して一掃してしまう者たちの姿も修司は気付かされる。
そんな修司にウェルズは真顔で言ってやった。
「ここはもう、過去でもなけりゃ未来でもねェ………………ただの、聖龍隊さ」
そうして修司たちの目の前に現れたのは、バーンズやジュニアそしてアプリコットの三人に、聖龍HEAD、そしてスター・コマンドーとスコーピオン同盟の面々が集っていた。
「お、お前ら……!!」
目の前に現れた聖龍隊とスコーピオン同盟の面々に、修司はただただ目を丸くするしかできなかった。
「そうよ、修司。あなたが生み出してしまった呪いも、あなたが抗ってきた未来も、全て貴方ごと救う為に私たちが来たんだからね」
「ちせ! ッ、それ……まさか、お前が……?」
修司は話し掛けてきたちせが抱えるカメラの頭部を見て、彼女が時間泥棒だと察する。
するとちせは携帯カメラを取り出して、修司に映像を見せつける。
「修司様、聞こえますか! あなた達はもう、呪われた過去も未来も、全てを乗り越えられたんです! 今のあなた達ならできます! 今度こそみんなで、一緒に……帰る事が!!」
そう修司に向って叫ぶ画面越しのウッズの言葉を聞いて、修司は皆を護るために皆の記憶を消去しようとしたが、それより前に修司は皆に救われに来てた事実に衝撃を受ける。
「たく、やってくれたな……お前らのせいで、明日も未来も過去も、前も後ろも、全部塗り変わっちまった。だけど、テメェらのおかげで一つだけ見える……!」
そう言って修司は再び聖龍剣を抜刀すると前を向いた。
「この俺も、この大馬鹿どもも、帰れる場所がな!」
「「さあ、行こう!!」」
修司に続き、バーンズとジュニアも最戦前に出て、群がってくる洗脳兵士を前に怯む事無く前進する。
そんな三人を先頭に、後ろから他の一同も続け様に進撃する。
先攻に修司が群がる兵士の頭を鷲掴みにし、口に聖龍剣を銜えた修司が軍勢の中を突っ込んで、鷲掴みにしてた二人の兵士を振り投げて応戦。それから修司は聖龍剣で次々に兵士を斬り倒して押し進んでいく。
その後ろをメタルバードに変身したバーンズが、両手を刃に変形させて群がる兵士を次々に斬り進んで、修司の後を着いていく。
さらにその後ろをジュピターキッドに変身したジュニアが武器である荊の鞭で周辺の兵士を蹂躙しながら軍勢の中を突き進む。
突き進んでいく三人の後方では、村田順一率いるスター・コマンドーが群がる兵士を斬り捨てていき、セーラー戦士たちもここぞとばかりに攻め込んでいく。
キューティーハニーも剣で襲ってくる兵士を斬り倒しながら前進し、木之本桜はカードを召喚して戦場を鎮圧。東京ミュウミュウの6人は、各々果敢に兵士達を攻撃して倒していく。
アクアレジーナである七海るちあ達マーメイドプリンセス達は、大水を発生させて戦場を津波で吞み込んで兵士達を一掃してしまう。
魔法騎士の三人と、コレクターズの三人は共闘して、次々に周辺の兵士達を片付ける。
最終兵器であるちせは、恋人であるシュウジとあのウェルズと共に牽制しながら兵士達をなぎ倒していく。
と、ここで兵士を一人斬り倒した修司の背後から襲い掛かる二人の兵士を、修司の間に入って反撃して倒した乙女が。
修司が振り返ると、その女性は他でもないアッコことミラーガールだった。
修司とミラーガールは互いに背を合わせながら話し出す。
「アッコ、病み上がりが此処まで来ていいのかよ」
「思い出したのよ……返さなきゃならない借りって奴をね」
「借りなんて作った覚えないんだけどな……こりゃ、二次元人でもトンデモない化物を蘇らせちまったかな!」
「それはお互い様でしょ! 世界を滅ぼそうとした鬼神様」
そう修司とミラーガールが言い合いながら周囲の敵を蹴散らしていると、上方から襲い掛かってくる兵士達に気付いてキューティーハニーが跳びかかって一気に片付ける。
「二人とも! 今は言い合ってる場合じゃないでしょ!」
キューティーハニーがそう叫びながら二人の許まで駆け付けると、彼女は修司に訴えながら周りの敵兵と立ち回る。
「修司くん! またアッコちゃんをあんな目に遭わせてみなさい……! またアッコちゃんを一人にさせないで……! でないと……いくら私でも許さないわよ」
「ハニー……!」
修司がキューティーハニーの言葉に愕然としてると、そこに無数に兵士達が一斉に群がってきて、修司達に襲い掛かる。
すると、そんな兵士達の真上から、スター・コマンドーのパワード・バターカップと音無小夜が襲撃して群がる兵士達を一掃する。
そして兵士達を一掃したバターカップと小夜の二人は、修司の目の前に着地。
「世界を滅ぼした破滅の権化も、世界を救った救世主も……!」
「どっちもどっちで、トラブルメーカーなのは変わりないけど……!」
「「今度は、転ぶ時も起き上がる時も……あなたと一緒!」」
「かおる!」「小夜!」
修司の目の前で語る二人を視認し、修司の許にメタルバードとジュピターキッドも駆け付ける。
「なんで……なんで、あんたはいつもいつも……!」
「いつも、自分勝手で……他人の為に自分を犠牲にし続けて……!」
「あ、あれ……お前ら……まさか、泣いてる……?」
涙声で修司に背を向けて語るバターカップと小夜の二人に、修司が戸惑いながら声をかけると。
「「ウルサイ!!」」
二人は同時に修司へ怒鳴った。
「良いから……修司さんは修司さんのやるべき事をやれよ……!」
「ここは、私達が引き受けます。後は任せてください……!」
「お前ら……!」
修司は二人からの言葉を受け入れ、メタルバードとジュピターキッドの三人でDrヴァルツが観望している崖まで駆け抜けようとした。
そんな修司にミラーガールが声をかける。
「修司」
「……!」
「今度はちゃんと、帰って来るわよね?」
その問い掛けに、修司は真顔で振り返って返答した。
「もう……帰って来れたよ」
そうミラーガール達に言い残すと、修司はメタルバードとジュピターキッドを引き連れてヴァルツの許へと駆け抜けるのだった。
一方、その場に残ったバターカップと小夜は遂に堪えてた感情が爆発してしまう。
「……バカだな、オレって……昔みたいに、笑って修司さんを出迎えようと思ってたのに……!」
「うん、こんな顔じゃ……迎える事も、送り出す事も、できやしないわ……」
そうバターカップと小夜は泣きじゃくる顔から涙を拭うのだった。
そんな二人を見て、キューティーハニーとミラーガールは笑顔で呟いた。
「どうやら……帰ってきたのは、修司くんだけじゃなかったみたいね」
「みんな………………お帰りなさい」
[対決 若かりし頃の自分とDrヴァルツ]
一方の修司とメタルバードとジュピターキッドは、一心不乱にDrヴァルツが戦場を観望してる崖を目指して駆け抜けていた。
「なんと……! まさか、ワシが作り出した最強の兵士軍団を打ち倒せる精鋭が存在してるとは……! じゃが、ワシにはまだメシアが……破滅の化身である小田原修司が残っている! ワシが手塩にかけて改造した殺戮人間兵器を前に、如何様な輩であろうとも小田原修司を倒す事はできん……!!」
そう崖の上の呟くDrヴァルツ。その足元の崖下には、ヴァルツによって精神を改造された10代前半の小田原修司が待機していた。
そんな不敵な笑みを浮かべるヴァルツの許に急ぎ駆け付ける修司たちは、全力で群がってくる兵士たち相手に奮闘する。
すると劣勢なのを見兼ねた軍隊が、最戦前を駆け抜ける修司達目掛けて、ヴァルツが開発したナノマシンを射出した。
「ナノマシン……!」
修司が愕然としてると、飛来してくるナノマシンを修司たちの後方から爆撃で打ち消した面々が。
「その手は食わねえぜ」
修司達が振り返ると、そこにいたのはガイア率いるスコーピオン同盟の面々だった。
「オレ様たちはバカじゃねえ……! 二度も同じ手を、喰らってたまるか!」
そう宣言するガイアの横では、同じく駆け付けた聖龍HEADの面々も駆け付けていた。
「やれやれ……聖龍隊も地に落ちちゃったもんですよ。また悪党共と徒党を組んで、一緒に戦っちゃうとはね」
そう愚痴を零す堂本海斗に続き、その場に駆け付けたキング・エンディミオンと蒼の騎士も愚痴を零す。
「まあ、それもこれも全部このお騒がせバカの修司が原因だがな」
「まあ、良いじゃないですか! これが終わったら、スコーピオン同盟全員……まとめてとっ捕まえればOKなだけですし!」
そう修司の背後で語るエンディミオンと蒼の騎士の愚痴を聞いた修司は、そんな面々に呆れながらも喋り出した。
「まったく、どの時代に行ってもクズなスコーピオン同盟と一緒とは確かに泣けてくるね……上等だ。全部終わって、また未来が変わって、それでもクソスコーピオン同盟との腐れ縁を忘れてなきゃ……またいくらでもケンカ買ってやるよ」
この修司の台詞を聞いて、ガイアは修司に言った。
「忘れるんじゃねえぞ。全ての混沌の元凶……オレ様たちを苦しめ続けるテメェを、地獄の底だろうと時空の果てだろうと…………必ず! ブッ倒しに行ってやるからよ!!」
ガイアの雄たけびと共に、スコーピオン同盟は一斉に群がる兵士達に攻撃して片付けていく。
スコーピオン同盟に続き、キング・エンディミオンや堂本海斗そして蒼の騎士も戦前を駆け抜ける。
『うおおおおおおおおおおおおおッ!!』
次々に群がってくる兵士達を薙ぎ倒し、修司・メタルバード・ジュピターキッド・ガイア・クリスタル・メガロ・エンディミオン・堂本海斗・蒼の騎士は最戦前を駆け上がる。
時には代わりに敵を倒し、時には助け合いながらも絶妙なチームワークで敵兵を次々に倒していく一行。
そんな最戦前を駆け上がる修司達に軍隊はナノマシンを射出しようとするが、そんな砲撃手にスコーピオン同盟が先手で砲撃して射出を阻害する。
「ナノマシンを撃たせるな!!」
ホワイト・ヘアーズのリーダー蛭川光彦の号令の下、彼らはナノマシンを射出しようとする兵士達を砲撃で攻撃する。
と、修司たち最戦前の面々が崖下まで辿り着こうとしてた矢先。そこに配置されていた、とある少年兵が待ち受けていた。
「うおッ!」
ガイア達スコーピオン兄弟がその少年兵の攻撃を受けて吹き飛ばされ、修司たち他の最戦前の面子は思わず立ち止まる。
舞い上がる砂煙の中から現れたその少年兵の顔を見て、修司以外の面々は絶句した。
それはDrヴァルツに殺戮陽動プログラムという催眠暗示を施されて、完全に自我を失い戦闘マシーンと化した、当時から力に渇望している若かりし小田原修司の姿だった。
「行くのだ、メシア!」
崖上からヴァルツが催眠状態の少年修司に命令を出し、戦場にいる全ての命を刈り取らせようとさせる。
そして命令を受けた少年修司は、おぞましい形相で最戦前の面々に接近して殺しにかかろうとした。
が、その時。
物凄い轟音と共に、未来の修司が少年修司の脳天を拳でド突いて一発で気絶させてしまう。
誰もがあっという間の展開に驚くものの、少年修司を倒した修司は真顔で言った。
「俺が過去の俺に………………負けると思うか」
この修司の言動に、メタルバードもジュピターキッドも力強く頷くと、再びDrヴァルツへと前進する。
そして崖下に残った兵士達を、ガイア・スコーピオンが炎の砲撃で攻撃して一掃すると。
「修司ィ!! お前らの道はオレ様達が切り開く!! だからお前らは!! 過去でもない、未来でもない……オレ様達が生きられる今を、護りやがれーーーーッ!!」
そのガイア・スコーピオンの雄叫びに戦場で戦う仲間たち全員が反応してると、崖下に辿り着いたエンディミオン・堂本海斗・蒼の騎士が立ち止まって駆け付ける修司たち三人に正面を向けて体制を構える。
そして堂本海斗はメタルバードを、蒼の騎士はジュピターキッドを、そしてエンディミオンは修司の片足を両手に乗せて一気に力を入れる。
「「「ぬおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」
一気に力を入れて、修司たちを崖上まで跳び上がらせようと渾身の力で持ち上げる三人。
そして修司たちは三人に持ち上げられると同時に跳び上がり、一気に崖上へと上昇するのだが。
「……って、両肩脱臼したァ!!」「「………………」」
重量級の修司を持ち上げた為に両肩を脱臼してしまったエンディミオンに、堂本海斗と蒼の騎士は呆然としてしまう。
一方の修司達は、三人が持ち上げてくれた勢いのまま崖を上り、一気に崖上へと到達する。
崖上まで登り切った修司達に、ヴァルツの護衛を務めている軍人達が襲い掛かるが、その軍人達をメタルバードとジュピターキッドが一掃する。
そして修司は最後に崖上に残っているヴァルツ目掛けて聖龍剣を振り下ろした。
「うおおおおおおおおッ!!」
修司が振り下ろした聖龍剣は見事、ヴァルツの脳天へと直撃。そして修司は岩壁までヴァルツを吹っ飛ばした。
すると岩壁まで吹っ飛ばされたヴァルツは、自分を攻撃した修司を見て唱えた。
「血塗られた、その姿……まさしく鬼……!」
修司の姿を見て、ヴァルツは不思議そうな口ぶりで語った。
「まさか……メシア? いや、違うな……メシアは先ほどお前に倒された筈じゃからの。じゃが、仲間を護る為に修羅の道を進むその姿はメシアたる小田原修司と同じ……!」
ヴァルツと修司は互いに面と向き合って対峙する。
「じゃが、お前のその禍々しき手は、いづれその腕に抱いた尊き者たちまで粉々に握り潰すじゃろう。それが、鬼の背負いし業よ。愛する者も憎む者も全てを喰らい尽くし、世界でただ一人、生き続けるがいい……!」
そう語るとヴァルツは、自身の体内から無数のナノマシンを射出し、周囲に展開。そしてナノマシンはヴァルツの意思と連動して一斉に修司へと放たれた。
周囲に展開したナノマシンが全て修司に直撃したのを見届けたヴァルツは不敵な笑みを浮かべる。が。
ナノマシンを浴びても修司は一歩ずつヴァルツへと前進してた。
「お前の言うとおりだ……こいつは俺の業だ」
「!? 何故じゃ? 何故、ナノマシンを浴びても動ける?」
驚愕するヴァルツが更にナノマシンを発射しても、修司はナノマシンを浴びながら前進する。
「俺の背負うべき業なら、俺がなんだって背負ってやる。お前のくだらない呪いなら、何度だってこの身に受けてやるさ」
「貴様、なぜナノマシンに対する耐性を……!? まさか、既にその身にナノマシンを宿しているとでも……!」
ヴァルツの問いかけに、修司は不敵に微笑を浮かべて応える。
「貴様ァ! 何者じゃッ!!」
そう叫ぶとヴァルツは改造されている自身の体から武器を出して修司に襲い掛かる。
「何度! テメェに俺が改造されようとも……! 何度、俺たちの未来を握り潰そうとも……!」
修司はヴァルツが振るう武器を左手で掴んで、ヴァルツの動きを封じた直後。
「テメェの呪いなんぞ、俺の業なんぞ……こいつらが容易く、へし折ってくれるんじゃあァッ!!」
対決する二人の真上から、メタルバードとジュピターキッドが飛び掛かって二人同時にヴァルツへ攻撃。
二人の攻撃を浴びたヴァルツは完全に機能停止した。
が、次の瞬間。停止したヴァルツは再び起動しては目の前のメタルバードとジュピターキッドを触手で捕えてしまう。
「うおッ!」「うわ!」「!」
捕まってしまうメタルバードとジュピターキッド、そして二人を見て愕然とする修司。
そしてヴァルツからは夥しいほど大量のナノマシンが放出され、そのナノマシンを制御する二つの紅い玉まで外に飛び出た。
(こいつは、ナノマシンの制御装置!?)
修司が気付くものの、既に制御装置は空高く舞い上がり戦場を覆い尽くし始める。
戦場で戦ってる多くの仲間達が上空を覆い尽くす大量のナノマシンに唖然とする中、そのナノマシンによって死に絶えていく多くの洗脳兵が倒れていく中、状況は悪化していく。
「き、貴様らへの呪いは消えはせん……! 貴様らは何も護れはせん……! 貴様の体を引き摺って、尊き者らが喪われていくのを見届けるがいい……!! この世界が朽ち果てるまでな……!!」
群集のナノマシンに押し返されそうになる修司に、メタルバードとジュピターキッドが叫びかける。
「修司ッ!!」「義兄さん!!」
そして戦場で今まさにナノマシンに襲われそうになる仲間達の中から、ミラーガールも修司の名を叫ぶ。
「修司っ!」
[駆け付けた旧友たち]
皆がナノマシンの群集に襲われそうになる、その直前。
緑色の衣装を着込んだ少年が、荊の鞭を振るってナノマシンを制御する紅い玉を破壊した。
「え……!?(じゅ、ジュニア……?)」
一瞬視界に映ったその少年を垣間見て、ウォーターフェアリーは愕然とした。
更に最後のナノマシン制御装置を、銀翼の翼が一刀両断して破壊するのを垣間見た一同が騒然とする。
「い、今のは……!?」
ガイア達スコーピオン同盟は我が目を疑った。
そして最後の制御装置、Drヴァルツのコアを貫いて破壊した二つの刃。
触手に捕らわれているメタルバードとジュピターキッドは、その刃を突き刺す二人の勇姿に唖然としてた。
「しゅ、修司……!?」「アッコ、さん……?」
ヴァルツのコアを貫いた聖龍剣とミラーソード、その武器を握る大人修司と少女ミラーガール。
「何も護れない?」
「いいえ、どんなに汚れていようと、その気高き魂が在り続ける以上……」
「「護れるものなら、まだある「わ!!」」
そして大人修司と少女ミラーガールは一気に刃を振り下ろしてヴァルツを一刀両断に切り裂いた。
物凄い轟音と凄まじい量の黒煙で視界が遮られる中、触手から解放されたメタルバードとジュピターキッドが呆然と見据えると、二人の目の前には修司しか居なかった。
「修司、今のは……?」
メタルバードが修司に問い掛け、戦場の誰もが突然現れたこの時代の英雄達の姿に呆然とする。
「気のせいだろうよ」
しかし修司は今のは気のせいだと、メタルバードに返答した。
「……そうだな」
修司の返答を聞いて、メタルバードはそう言ってジュピターキッド共々変身を解除した。
修司たち三人が崖の上から下を見下ろしてみると、そこには笑顔で三人を見上げる仲間達の姿があった。
すると崖下で気絶してたこの時代の少年修司が意識を取り戻し、起き上がる。
「あ、あれ? どうなってんの……?」
目覚めた少年修司に驚き、戦場で戦ってた一同は一斉に少年修司へと注目する。
「あれ? あんたら、見ない顔だが……ひょっとして、これもなんかのテストなの? おーーい、ヴァルツの爺さーーん。何がどうなってんだ!?」
目の前にいる少年修司がまだ出会ってもいないキャラ達に、少年修司はヴァルツに呼びかける。
「あ、あの野郎……自分が殺戮陽動プログラムっていう危険な催眠暗示を受け入れて、対二次元人用の兵器にされてるのに気付いてねえ……」
そんな少年修司を見て、ガイアが呆れながら呟いていると、そんなガイア達スコーピオン同盟に気付いた少年修司が彼らに声をかける。
「っ! ふむふむ……」「な、なんだよ……」
興味津々にガイア達を観察する少年修司に、ガイアが戸惑いながら返事すると少年修司は思い切った事を言い出した。
「お前ら、面白いな! サソリの獣人が三人に、白髪のライダー、そしてその他諸々……よし、気に入った! お前ら、俺が創った聖龍隊に加盟しないか!?」
『えッ!?』
未来の修司からは嫌われているスコーピオン同盟に、少年修司は見た目だけで聖龍隊に加盟しないかと勧めたのだ。
これには流石のガイアも驚愕してしまうのだが、そんなスコーピオン同盟に少年修司は更に続ける。
「お前ら、その容姿や能力で迫害されてないか? だったら聖龍隊に来い! 聖龍隊は気のいい奴らなら誰でも加盟できる、最高のチームなんだ! きっと気に入ってくれると思うぜ」
「お、お前……」
少年修司からの提案に、未来の修司から毛嫌いされているガイア達スコーピオン同盟の一同は唖然としてしまう。
すると更に少年修司は未来から駆け付けた聖龍HEADの面々にも気付く。
「ん? ……おい、なんでお前らが此処にいるんだ? セーラームーン、キューティーハニー、さくら、ナースエンジェル、魔法騎士、コレクターズ、ちせ、それにアッコ。……というか、なんだかお前ら、久しぶりとはいえ少し……成長してねえか?」
少年修司はまさか今自分の目の前にいる聖龍HEADが未来から来た面々だとは知らずに話し掛け続ける。
「あれ? でも……アッコの胸は成長してないから普通、か……?」
と、少年修司が口走った瞬間、ミラーガールが怒りのあまり反射的に修司の顔面に蹴りを入れた。
「ぐほッ!?」
顔面に蹴りを入れられた少年修司は、朦朧とする中、まだ喋ろうとする。
「い、一体、なにがどうなってる……」
と、今度は少年修司の脳天に未来の修司が踏みつける勢いで蹴りを脳天に打ち込んだ事で、完全に少年修司は再び気絶してしまった。
「お前はもう喋るな! ……余計、話がややこしくなる」
そう愚痴を零しながら、修司は過去の自分を黙らせた。
そんな修司の言動に皆が呆れながらも、全てが終わった事を皆は噛み締める。
「終わったんだね」「ああ、終わったんだ」
ジュニアの問い掛けに修司が答えると、バーンズも口を開く。
「これで未来がどう変わるか、見当もつかないが……」
「とりあえず、義兄さんがナノマシンに支配される未来だけは阻止できたんだよね」
「何が起こるか分からない。当たり前の話だが本来、未来ってのは、そんなもんだ」
バーンズやジュニアの心配に、修司は真顔で唱えるのだった。
そんな修司たちの会話を聞いて、時間泥棒として活躍してたちせが皆に言った。
「例え、どんな未来が待ち受けていようと、みんなが一緒なら何があっても大丈夫。そんな勇気を貰えるのも、修司と出会って運命が変わって生きていられる私だから言えること」
そう、ちせが言うと彼女が次にとった行動が。
「だから、私達にはもうタイムマシンなんて……要らないわよね!」
なんとちせはこの時代まで大事に持ってきたタイムマシンとしての部品、時間泥棒の頭部を空へと投げ飛ばすと同時に機械化した自身の腕からレーザーを撃って時間泥棒の頭部を破壊してしまった。
「「………………」」
これを目の当たりにした恋人のシュウジと、ちせに恋煩いしているガイアが呆然としながらも叫んだ。
「「えええぇぇぇッ!?」」
「おい、ちせ! それ無かったら俺達どうやって元の時代に戻ればいいんだよ!?」
「ちせちゃぁぁん!? なに急にトンデモないことやっちゃってくれちゃうの!?」
突然のちせの行動にシュウジもガイアも騒然と混乱してしまうと。
「おい、シュウジ。お前、今まで目立ってなかった癖にここぞとばかりに出しゃばるなよ、目立ってなかった癖に」
「二回も言うな! そういう問題じゃないだろッ!」
と、バーンズの台詞にシュウジがツッコむのだが。
「そういう問題だろ? ほら、目立ちなさ過ぎて半透明になってるぞ、お前の体」
「な、何を言って……、!?」
バーンズに言い返されたシュウジが自分の体を見てみると、なんと本当にシュウジの体が透明化していた。
「な、なんじゃこりゃあッ!?」
シュウジが混乱する中、同じく透明化しているちせが真顔で説明する。
「過去を改変した事でタイムスリップする理由もなくなり、タイムマシンも無くなったから、私達は自然と消滅する事でタイムマシン無しでも帰れるようになったのよ。まっ、省エネって事よシュウちゃん」
そう説明し終わった途端、ちせが誰よりも真っ先に消えて帰還する。
「ちせちゃーーん!?」
「おい、ちせ! どんだけ乱暴な帰り方だよ、そりゃ……」
と、ガイアが叫ぶ中、シュウジもちせに続いて姿を消し、未来へと帰還。
「おい、聞いてねーーぞ! 消える事になるなんて! せっかく過去を改変して、小田原修司との接点を無くして人権剝奪を阻止する計画が……ッ!」
「オイィィィッ! 最後にトンデモないこと暴露して消えていきやがったぞ、あいつら! やっぱ気に食わねえッ!!」
消える寸前に吐いた蛭川光彦たちホワイト・ヘアーズの真意を知って修司は怒鳴り散らす。
「やれやれ、まったく。こんな所まで来たというのに……こうなったらガイア、お前らスコーピオン兄弟だけでも逮捕する!」
エンディミオンや堂本海斗達がガイア兄弟を捕まえようとするが、当のガイアは。
「はっはっは! 残念だったな! オレ様たちは一足先に行くぜ、アディオス! また会おう!」
だが、ガイア達が消える手前で、スコーピオン兄弟はエンディミオン達によって手かせや首枷など鎖で拘束されてしまう。
「? すいませーーん! 途中で消えるの止まっちゃったんだけど!? 早く未来に帰してーーッ」
ガイア達兄弟が騒ぐ中、エンディミオンは呆れながら三人に言った。
「それじゃお前ら三人は此処で大人しくしてろ。また未来で……迎えに来てやるからよ」
そう下種顔で言うエンディミオンに顔が引きつるスコーピオン兄弟。
「そ、それじゃ……私達も……」
「また未来で会おうっか。それまでは……」
「どうかみんなも無事に帰ってきてね。ははは……」
そう苦笑しながら皆に言い残すセーラームーンに七海るちあ、そしてミュウイチゴたちも全員消えていった。
「ふぅ、こんな茶番に付き合わされて、結局最後はカオスな帰り方で帰るとはね……」
「お互い、上司には頭を悩まされるわね」
「ええ、ホントにそうよ……」
そう呆れ返りながらも水銀燈も真紅も雪華綺晶たちローゼンメイデン達も未来へと帰還。
「それじゃ俺達もそろそろ帰りますね」
「修司さん達、未来で待ってますからね!」
スター・コマンドーのユウとニナミも帰還した。
「僕たちも帰るか。ここに長居する必要ないし」
「ああ! そうだな」
「あーー! せっかく未来改変して、昔の様にアニメタウンで何不自由なく柊様や潤様とラブラブに過ごせると思ったのに!」
「お、オラの出番ここだけかモシ……?」
そう言い残して、恵一と潤の柊兄弟とクロミとバクの四人は消えた。
「じゃっ、修司さーーん、私達も一足先に帰るから! ジューシィ!」
「ニャーもガイアさん達の元に帰るニャ!」
赤ずきん達おとぎ銃士の三人とランダージョも未来へと帰還して消える。
「じゃあ、私達もそろそろ……」「ああ、そうだな」
「この茶番も長かった長かった」「早く未来に帰って休みましょう」
ルイズに平賀才人そしてワルドにフーケ達も帰還。
「そんじゃ! 俺らも帰りますね!」
「修司、あんたと未来でまたやり合うと思うと憂鬱だけど……またね」
大門大やアルケニモンたちデジモンメンバーも帰還の為に消失。
「僕も未来に帰ってお仕事しないと!」
「また未来でごちゃごちゃと騒がしく付き合う事になるが……そん時はそん時で!」
スター・コマンドーのセレブナイトにスコーピオン同名のピエールも消失。
「アタシ達も帰りましょうか、兵部さん」
「そうだね、また未来で会おう。クイーンたち」
互いに笑顔で未来での再会を約束する明石薫たちチルドレンと兵部京介も消えた。
「俺も帰ってパティシエの修行続けないとな!」
「疲れたから甘いもの食べたいよ」
「確かに疲れた……」
「まあ、帰ったら帰ったで、またガイアさんに手を焼く日々が続くだろうけど」
スター・コマンドーの墨村良守に雪村時音、スコーピオン同盟の毛利玲生と雄大寺挑も未来へと帰った。
「また未来でみんなで修業し合える日々が戻るといいですね!」
「ええ! そんな未来が一番です!」
「何気ない日常が一番……今ならよく分かるよ」
白浜兼一と風林寺美羽そしてシルクァッド・ジュナザードも消える。
「うーーん……やっと元の時代に戻れるのね」
「いつの時代でも、聖龍隊は賑やかで楽しいですね」
「まったく……まっ、これが聖龍隊なのかもな」
「ウン、ウン」「ウゴウゴ」
ハイパー・ブロッサム、ローリング・バブルス、パワード・バターカップの三人組そしてザ・インキとブロッドンのインクコンビも無事?に消えていった。
「みんな一緒にいられる未来、それが何より大事ですね!」
「そうですね、小夜さん!」
音無小夜と日向ひまわり達くノ一組も未来へと帰還。
「修司さんが居なくなったアニメタウンなんて、面白くもなんともないからな!」
「それ分かるっぺ! オラもガイアさんが居なくなったら寂しく思うだよ」
ハンター・スティール達スパイダーライダーズも、グラスホップも帰っていく。
「じゃあジュン、マイ。僕は先に帰るからね」
そう言ってスター・コマンドーのハルも消えてしまう。
「それじゃあ修司くん、アッコちゃん! 私達も先に帰ってるから!」
「修司くん、今度は変なウィルス持ち込まないでよ」
そう言い残して獅堂光たち魔法騎士の三人も、春日結たちコレクターズの三人もパッと消える。
「りりかちゃん、私達も……」「うん、一緒に帰ろうか、さくらちゃん!」
木之本桜とナースエンジェルの二人も未来へと帰還。
そして村田順一と深澤マイの二人は抱き合いながら。
「それじゃ修司さん! また未来で! 僕たちはこのまま帰りまーーす!」
「あたしもあたしも! ジュンと一緒に帰りまーーす」
「さっさと帰れ! この惚気リア充バカップル!!」
順一とマイの二人は、バーンズに怒鳴られながら消えていった。
そして最後に残された修司、バーンズ、ジュニア、そしてアプリコットとアッコ。
「修司、みんな……お願い、帰る前に顔を良く見せて」
アッコに言われ、五人はそれぞれ陣形を組むように互いの顔を見せ合った。
「……これが見たかった。みんなの、修司達みんなの笑顔……未来でも、こんな素敵な景色見られるか分からないけど、それでも……!」
アッコは満面の笑みで四人に言った。
「また遠くに離れ離れになったとしても……また探して見付けだせる為にも……みんなの笑顔、よぉく見せて!」
このアッコの台詞に、修司も笑顔で言うのだった。
「じゃあよぉく見とけ。もう一度、俺達が出会える為にも……どんなに離れ離れになっても探し出せる様に、この面よぉく見とけ!」
「修司……!」
修司の台詞にアッコ達が感激する中、修司は話し続ける。
「なに、また会えるさ。俺は、いつでも、いつまでも……お前達に会えるのを、心待ちにしている。お前らは………………俺の、希望なんだからな」
この修司の台詞に感激した四人は、一旦距離を離れて皆々に告げた。
「きっと……きっとだからね、修司!」
「僕も、こんな素敵な仲間を、離れ離れになっても必ず見つけ出す!」
「修司さんやみんなとの出会いを、未来にも繋げていきたい!」
「絶対……絶対! また会おうな……!!」
アッコ・ジュニア・アプリコット・バーンズの言葉に修司は満面の笑顔で答えた。
「約束だ」
そう修司は右手を前に差し出して、その修司の右手に四人は自分達の手を置いて互いに未来でも再会しようと約束するのだった。
そして五人は静かに消えていった。
と、崖上の情景を遠くから観望している三人がいた。
誰よりも前に出て、修司達の様子を眺めてた女の子に、後ろにいた銀翼の翼が声をかける。
「さあ、行くぞ」
そう銀翼の翼が言うと、彼に続いて緑の衣装を着た少年も去っていった。
そして最後に残った女の子は去り際に、その鏡の様に美しい瞳を輝かせて、戦場を見据えながら優しく微笑むのだった。