YAWARA!クロス・ソウル ~熱血武蔵巴、不屈の柔道一代記~   作:月影 流詩亜

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第12話:再戦、日本武道館! 柔VS巴、魂の激突

 

全日本女子柔道選手権大会、無差別級。

体重なんて関係ねえ、この国の女子柔道家の真の女王を決める、年に一度の大舞台だ。そして、その決勝の舞台は、あの日本武道館。インターハイ予選で、俺が初めて猪熊柔と相見え、そして屈辱的な敗北を喫した、因縁の場所でもある。

 

あれから数ヶ月。俺は、あの日の悔しさをバネに、死に物狂いで稽古に打ち込んできた。新しい武器、「武蔵流・大雪山おろし」も手に入れた。今の俺は、あの頃の俺とは違う。

 

トーナメントを勝ち進む中で、俺の名前は否が応でも注目を集めた。特に「大雪山おろし」の衝撃は凄まじく、対戦相手は皆、警戒心を剥き出しにしてきた。だが、そんなものは関係ねえ。

俺は、ただ目の前の敵を一人ずつ叩き潰し、そして、再びあの女の前に立つことだけを考えていた。

 

一方、猪熊柔もまた、その天才的な強さで危なげなく決勝まで駒を進めてきていた。

その戦いぶりは、相変わらず洗練されていて、美しいとさえ思った。だが、今の俺には、あいつの美しさに気圧されるような弱さはねえ。

 

(猪熊柔…いや、柔。今度こそ、お前から一本取ってやるぜ…! この日本武道館で、あの日の借りを、利子をたっぷりつけて返してやる!)

 

決勝戦を前に、俺の魂は最高潮に燃え上がっていた。

 

 

 

ついに、その時が来た。

 

日本武道館の、眩いばかりの照明に照らされた決勝の畳。 数えきれないほどの観客の視線が、俺と柔の二人に突き刺さる。 アナウンサーの興奮した声が、会場に響き渡る。

 

「さあ、ついにこの時がやってまいりました!

全日本女子柔道選手権大会、無差別級決勝!

インターハイ予選の再現なるか!

天才・猪熊柔か!

それとも、嵐を呼ぶニューヒロイン・武蔵巴か! 女子柔道界の未来を占う、まさに世紀の一戦であります!」

 

畳の中央に向かい合う。柔は、いつもと変わらぬ静かな闘気を漂わせ、王者としての風格すら感じさせる。だが、その瞳の奥には、俺という未知の強敵に対する、確かな警戒の色が見て取れた。

観客席には、見慣れた顔ぶれが揃っている。

 

「ふぉっふぉっふぉ! これぞ宿命の対決じゃわい! どっちが勝っても、女子柔道の未来は明るいのう!」

 

滋悟郎の爺さんは、いつものようにご満悦だ。その隣では、日刊エヴリーの松田が、カメラを何台もぶら下げて、鼻息荒くシャッターチャンスを狙っている。

 

「世紀の一戦! 歴史的瞬間! レンズが足りん! フィルムも足りん! 明日の一面は、見開きカラーで決まりだぁーっ!」

 

聖プレジデント学園の制服を着た本阿弥さやかも、腕を組んで厳しい表情で俺たちを見下ろしている。

 

「…ふん、あんな野蛮な柔道をする娘に、あなたが負けるなんて許さないわよ、猪熊柔!」

 

その言葉とは裏腹に、その瞳には、俺に対する興味と、ほんの少しの期待みてえなものが混じっているように見えた。

そして、竜子、隼、みちる、花園先生、山嵐先生…俺を支えてくれた仲間たちが、固唾を飲んで俺に声援を送ってくれている。その視線が、俺に力をくれる。

 

「礼!」

 

主審の号令で、深々と頭を下げる。そして、顔を上げた瞬間、俺と柔の視線が、火花を散らすように激しくぶつかり合った。

 

「はじめっ!!」

 

運命のゴングが、今、鳴り響いた。

 

 

 

試合開始と同時に、俺は猛然と前に出た。だが、柔は慌てねえ。 インターハイ予選の時よりも、さらに動きに磨きがかかっている。

俺のパワーを巧みな体捌きでいなし、鋭い足技で俺の体勢を崩しにかかってくる。

 

(こいつ…! あの時よりも、さらに速く、そして強くなってる…! )

 

だが、俺だって、あの時のままじゃねえ。柔の動きを読み、ゲッター仕込みの反射神経で対応する。 柔の得意技である一本背負いを、紙一重でかわし、逆に強引な払い腰を仕掛ける。 それを、柔がまた絶妙なタイミングで捌く。

 

序盤は、互いに相手の出方を探り合う、息詰まるような展開が続いた。 柔は、俺の「大雪山おろし」を極度に警戒しているのが分かる。 簡単には、懐に飛び込ませてくれねえ。

 

(武蔵さん…あなたも、あの時とは比べ物にならないくらい成長しているのね…! その眼、本物の勝負師の眼だわ…! )

 

柔の心の声が聞こえてくるようだ。 ああ、そうだ。 俺は、お前を倒すためだけに、ここまで来たんだ。

 

試合が動いたのは、開始から2分が過ぎた頃だった。 柔が一瞬の隙を突いて、電光石火の体落としを仕掛けてきた。 完璧なタイミング、完璧な角度。 並の選手なら、間違いなく一本を取られていただろう。

 

だが、俺は咄嗟に体を捻り、ゲッター3の粘り腰を発揮して、畳に背中がつくのをギリギリで回避した。

 

「わ、技あり!」

 

主審の声が響く。くそっ、先手を取られたか…!

 

 

ポイントをリードされ、俺は焦るどころか、逆に闘志が燃え上がった。

 

(面白いじゃねえか、柔…! これでこそ、お前を倒す価値があるってもんだ!)

 

俺は、一気に勝負をかけることにした。 「大雪山おろし」だ !

 

会場が、ゴクリと息を呑むのが分かった。 俺は、これまでの試合とは違う、変則的なステップで柔の懐に潜り込もうとする。

だが、柔はやはり天才だった。 俺の動きを、まるで未来でも見ていたかのように完璧に読み切り、俺が技を仕掛けるまさにその瞬間、カウンターの巴投を合わせてきやがった!

 

「しまっ…! 」

 

体が宙に浮き、視界が反転する。 まずい、このままじゃ畳に叩きつけられる…!

 

その刹那、俺は無意識のうちに空中で体勢を立て直し、ゲッター1の空中殺法みてえに、強引に巴投の勢いを殺した。

ドスン、という鈍い音と共に畳に落ちたが、一本は免れた。

 

(危ねえ…! さすがは猪熊柔、一筋縄じゃいかねえぜ…! だが、俺の「大雪山おろし」は、まだ終わっちゃいねえ! )

 

俺はすぐに立ち上がり、再び柔に襲いかかる。

今度は、フェイントを織り交ぜ、相手の虚を突くタイミングで、再び「大雪山おろし」の体勢に入った!

 

「今度こそ…もらったァァァッ!! 」

 

俺の雄叫びと共に、柔の体が宙を舞う。今度こそ完璧に捉えたはずだ!

 

会場が、今日一番のどよめきに包まれる。

だが、次の瞬間、俺は信じられねえ光景を目にした。

 

天高く持ち上げられた柔の体が、空中でまるで猫みてえにしなやかに身を翻し、俺の技の威力を殺しながら、受け身の取れる体勢へと移行していく。 そして、畳に叩きつけられる寸前に、最小限のダメージで着地しやがった!

 

「…有効! 」

 

主審の声。 一本じゃねえ…有効だと…!?

 

俺の渾身の「大雪山おろし」が、あの猪熊柔には通じねえというのか…!?

 

 

俺は、一瞬呆然とした。 だが、すぐに気を取り直す。

 

(まだだ…まだ終わっちゃいねえ…! この程度で諦めてたまるか! )

 

ポイントでは、まだ俺がリードしている。

だが、柔の反撃はここからが本番だ。 息を吹き返した柔が、怒涛の勢いで俺に襲いかかってくる。

一本背負い、大内刈り、内股…多彩な技のオンパレードだ。

 

俺は、満身創痍になりながらも、必死にそれを凌ぐ。

ゲッターロボの装甲みてえに、俺の体は頑丈なんだ。 これくらいの攻撃、耐えられなくてどうする!

 

残り時間、あとわずか。 互いに体力も気力も限界に近い。 まさに、魂と魂のぶつかり合いだ。

柔が最後の力を振り絞り、捨て身の一本背負いを仕掛けてきた。

俺は、それを読んでいた。 だが、体が反応しねえ…!

 

(くそっ…ここまでか…! )

 

畳に叩きつけられるのを覚悟した、その瞬間。

ブザーが鳴り響いた。試合終了の合図だ。

 

 

 

結果は、俺の「有効」による優勢勝ち。

 

俺は…勝ったのか…? あの猪熊柔に、この俺が…?

 

しばらくの間、何が起こったのか理解できず、畳の上にへたり込んでしまった。

日本武道館が、割れんばかりの歓声と拍手に包まれているのが、まるで遠い世界の出来事のように感じられる。

 

「…武蔵さん」

 

ふと、声がして顔を上げると、そこには汗だくの柔が立っていた。

その顔には、悔しさが滲んでいたが、それ以上に、どこか清々しい表情をしていた。

 

「…強かったわ、武蔵さん。今のあなたの力、そしてあの技…完敗よ」

 

柔は、そう言って俺に手を差し伸べてきた。

俺は、その手を取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

「…猪熊…いや、柔。 お前がいたから、俺はここまで強くなれたんだ。 ありがとうよ。

お前との戦いは、いつだって最高に面白いぜ」

 

俺がそう言うと、柔は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにふわりと微笑んだ。

 

「ええ。 私も、あなたというライバルがいてくれて、本当に良かったと思っているわ」

 

俺たちは、固い握手を交わした。その目には、ライバルとしての激しい闘志と、それ以上に、互いを認め合う者同士の、温かい何かが確かに通い合っていた。

 

「やったな、巴! でかしたぞ! これでこそ、わしの見込んだ娘じゃ! 」

 

滋悟郎の爺さんが、いつの間にか畳のそばまで来て、俺の肩をバンバン叩いている。…なんでこのジジイは、俺を応援してんだか。

 

「歴史的瞬間だ!

武蔵巴、ついに天才・猪熊柔を破る!

これは日本柔道界の夜明けだ!

うおおお、記事が! 記事が書きたくてたまらん!」

 

松田は、興奮のあまりその場で踊り出しそうな勢いだ。

 

 

 

表彰台の一番高い場所。 俺の首には、金色のメダルがかけられていた。

隣には、銀メダルの柔。 俺たちは、言葉少なに見つめ合い、そして小さく笑い合った。

 

この一勝は、俺にとって、とてつもなく大きな意味を持つ。 それは、単なる勝利じゃねえ。俺が、この世界で自分の力で掴み取った、最初の「頂点」だ。

 

そして、猪熊柔という最高のライバルがいてくれたからこそ、辿り着けた場所。

 

俺たちのライバル関係は、今日、新たなステージへと進んだ。 そして、その関係の中には、確かに「友情」という名の温かい光が芽生え始めていた。

 

「これからも、ガンガンやり合おうぜ、柔。お互い、もっともっと強くなるためにな」

 

「ええ、望むところよ、巴さん。 次こそは、私が勝つわ」

 

日本武道館の熱気の中で、俺たちの未来は、どこまでも明るく照らし出されているような気がした。

 

武蔵巴の伝説は、まだ始まったばかりだ。

 

この勝利を糧に俺はさらに高みを目指す。

 

ゲッターの魂を持つこの俺が、女子柔道界に、とんでもねえ嵐を巻き起こしてやるぜ!

 

 

 

 

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