YAWARA!クロス・ソウル ~熱血武蔵巴、不屈の柔道一代記~   作:月影 流詩亜

3 / 24
すみません。

後から知りましたが、巴武蔵の一人称は『オイラ』だったみたいです。
でも、さすがに女の子に『オイラ』は可哀想なので『俺』のままでお話を進めます。

よろしくお願いします。


第3話:道場入門! ゲッター流鍛錬と二人の予感

 

母さんの許可をもらってから数日、俺は道場探しに奔走(ほんそう)していた。ネットで調べた近所の道場をいくつか見学してみたんだが、どうにもピンとこねえ。

小綺麗で、子供たちが楽しそうに練習しているような道場は、なんだか俺の求めるものとは違う気がした。

 

(もっとこう…道場全体から気迫が滲み出てるような、そんな場所はねえのか…!)

 

昔、親父殿(流竜馬の親父さん)がやっていた道場は、まさにそんな場所だった。

古くて、薄暗くて、でもそこには確かに「武」の魂が息づいていた。

 

半ば諦めかけていたある日の夕暮れ時、自転車で住宅街を走っていると、ふと、一本脇道に入ったところに古びた木造の建物が目に入った。

門構えは立派だが、看板は年季が入っていて、所々ペンキが剥げている。そこに書かれた力強い墨文字。

 

『山嵐柔道クラブ』

 

その文字を見た瞬間、俺の心臓がドクンと高鳴った。理由はわからねえ。

だが、この看板の文字には、他の道場には感じなかった「何か」が宿っている気がした。

自転車を止め、吸い寄せられるように門の前に立つ。中からは、気合の入った声や、畳を打つ音が微かに聞こえてくる。

 

(ここかもしれねえ…俺の魂が震える場所は…!)

 

唾を飲み込み、意を決して道場の引き戸に手をかけた。ギィィ…という重々しい音を立てて、戸が開く。

薄暗い土間を抜けると、そこには思ったよりも広い道場があった。

正面には神棚が祀られ、「精力善用(せいりょくぜんよう)」「自他共栄(じたきょうえい)」と書かれた額が掲げられている。

畳は使い込まれて飴色に変色し、道場の隅にはサンドバッグや打ち込み用のタイヤなんかも置いてある。そして、道場全体に満ちている、むせ返るような汗の匂いと、張り詰めた空気。

 

(…いいじゃねえか…この雰囲気、悪くねえ…!)

 

道場では、小学生から高校生くらいまでの門下生たちが、真剣な表情で稽古に打ち込んでいた。

その中心で、鋭い眼光を光らせながら指導している一人の老人がいた。

 

「…何の用だ、小娘」

 

俺が入り口で立ち尽くしていると、その老人が低い声で話しかけてきた。

年は六十代後半くらいだろうか。 筋骨隆々とした体つきで、道着の上からでも鍛え上げられた肉体なのが分かる。

顔には深いシワが刻まれ、いかにも頑固一徹といった風貌(ふうぼう)だ。

こいつが、この道場の主、山嵐巌先生に違いねえ。

 

「あの…道場を見学させて頂きたくて…」

 

出来るだけ丁寧な言葉遣いを心がける。

だが、無意識のうちに背筋が伸び、相手を真っ直ぐに見据えてしまうのは、ゲッターパイロットとしての(さが)かもしれねえ。

 

山嵐先生は、俺の頭のてっぺんからつま先までを、品定めするような目でじろりと見た。

その視線は、まるでレントゲンみてえに俺の内側まで見透かそうとしているようだ。

 

「ふん。見学なら好きにしろ。

だが、うちはお嬢ちゃんの遊び場じゃねえぞ」

 

吐き捨てるような言い方。俺のこの可憐な(と自分では思いたくねえが)見た目が、先生の気に障ったのかもしれねえ。

 

「遊びじゃありません! 私は…本気で柔道をやりたいんです!」

 

思わず、声が大きくなる。ここで引くわけにはいかねえ。

 

「ほう…本気ねえ……」

先生は鼻で笑った。

 

「近頃の若いモンは、すぐに『本気』だの『真剣』だの口にするが、その実、ちょっと辛くなるとすぐに音を上げる。お前さんも、どうせそんなクチだろう」

 

「違います!」

俺は一歩前に出た。

 

「俺は…いえ、私は、絶対に途中で投げ出したりしません! どんな厳しい稽古でも、必ずついていってみせます!」

 

つい「俺」が出そうになり、慌てて言い直す。だが、そんなことはどうでもよかった。この人に、俺の覚悟を伝えなければ。

 

「私は、強くなりたいんです! あの…テレビで見た、猪熊柔選手のように…!」

 

その名前を出した瞬間、山嵐先生の目の色が変わったのが分かった。今まで俺を小馬鹿にしたように見ていた目が、カッと見開かれ、鋭い光を宿した。

 

「…猪熊…柔、だと…?」

 

先生は低い声で呟き、再び俺の顔を凝視した。その視線は、さっきよりもずっと鋭く、俺の魂の奥底まで探ろうとしているかのようだ。

しばらくの沈黙の後、先生は重々しく口を開いた。

 

「…いいだろう。そこまで言うなら、一度稽古に参加してみるがいい。 だが、言っておくが、うちの稽古は生半可な覚悟でついてこれるような甘いモンじゃねえぞ。三日も持たずに泣き言を言うようなら、即刻叩き出すからな」

 

渋々といった感じだったが、その言葉には、確かに「許可」の響きがあった。

 

「! ありがとうございます!」

俺は深々と頭を下げた。やった。これで、やっとスタートラインに立てる。

 

「名前は?」

 

 

「武蔵巴です!」

 

「そうか。巴、か…まあ、せいぜい気張るんだな」

 

先生はそれだけ言うと、再び門下生たちの指導に戻っていった。その背中は、まるで古木のようにどっしりとしていて、揺るがない強さを感じさせた。

 

(山嵐巌先生…か。一筋縄ではいかねえ相手だが、面白えじゃねえか…!)

 

俺の心は、久しぶりに高揚していた。

 

 

 

貸し出された、少し大きめの道着に着替える。女子に転生して初めて袖を通す道着の感触は、ゴワゴワしていて、でもどこか身が引き締まるような感じがした。帯を締めると、自然と背筋が伸びる。

 

(よし…!)

 

気合を入れ、道場へ戻る。まずは準備運動からだ。先生の号令に合わせて、全員で柔軟体操や体幹トレーニングを行う。俺は、ゲッターロボのパイロットとして叩き込まれたストレッチや呼吸法を取り入れながら、体の隅々まで意識を巡らせる。

 

この少女の体は、確かに非力だ。だが、柔軟性に関しては、かつての俺のゴツい体よりも遥かに優れている。股関節も肩関節も、驚くほどスムーズに動く。

 

(なるほどな…この体の特性を活かせば、あるいは…)

 

受け身の練習が始まった。前回り受け身、後ろ受け身、横受け身。 他の初心者たちがドタバタと音を立てて畳に体を打ち付けている中、俺はゲッターロボでの戦闘シミュレーションで培った身体操作の感覚を呼び覚ました。衝撃を分散させ、流れるように体捌きを行う。

 

トンッ…

 

俺が受け身を取ると、他の連中とは明らかに違う、軽い音しかしない。しかも、動きに無駄がなく、まるで熟練者のようだ。

 

「…おい、今の見たか?」

 

「あの新しい子…なんか、すげえぞ…」

 

門下生たちがヒソヒソと噂し合っているのが聞こえる。 山嵐先生も、眉間にシワを寄せながら俺の動きを注視していた。

 

(ふっ…これくらい、できて当然だぜ)

 

内心でほくそ笑む。ゲッター線の影響なのか、それとも元々この体に備わっていた才能なのかは分からねえが、俺の運動センスは、この世界でも十分に通用するらしい。

 

次に、打ち込みの練習。俺は、自分より少し体の大きい男子中学生と組むことになった。相手は俺をナメているのか、ニヤニヤしながら「よろしくな、おチビちゃん」なんて言ってくる。

 

(…カチンときたぜ、このガキ…)

 

組み合った瞬間、俺は相手の重心を的確に捉え、体全体を使って崩しにかかる。 そして、テレビで見た猪熊柔の動きを思い出しながら、鋭く踏み込み、一本背負いを仕掛けた。

 

「うおっ!?」

 

相手は完全に虚を突かれ、綺麗な放物線を描いて畳に叩きつけられた。ドシン!という派手な音が道場に響く。

 

「「「…………ええええっ!?」」」

 

道場内が、一瞬にして静まり返った。そして次の瞬間、どよめきが起こる。

 

「い、今のは…なんだ!?」

 

「あの子、本当に初心者かよ…!?」

 

投げ飛ばされた男子生徒は、何が起こったのか分からないといった顔で、呆然と畳に座り込んでいる。

俺自身も、少し驚いていた。

 

(…思ったより、パワーがあるな、この体…それに、技のキレも悪くねえ…)

 

もちろん、ゲッター3の怪力には遠く及ばねえが、それでも、普通の女子中学生が出せるような力じゃねえ。それに、体の使い方が、以前よりもずっと精密になっている気がする。

 

(案外、悪くねえかもしれねえな、この体も…柔道ってやつは底が知れねえ…!)

 

初めて、この少女の体に可能性を感じた瞬間だった。

 

 

 

 

その後、女子部の練習に合流することになった。山嵐柔道クラブの女子部は、まだ人数が少なく、俺を含めても数人しかいねえ。その中で、ひときわ目立つ二人の少女がいた。

 

一人は、俺と同じくらいの背格好で、肩までの髪をポニーテールにしている、快活そうな少女。目鼻立ちがハッキリしていて、どこか男勝りな雰囲気を漂わせている。

 

「へえ、アンタが噂の新入り? 武蔵巴だっけ? 私は流竜子(ながれ りょうこ)! よろしくな! 」

 

ニカッと笑いながら、力強く手を差し出してくる。 その名前に、俺は内心ギョッとした。流…竜子だと…? ()()()と何か関係があるのか…?

いや、偶然だろう。だが、その快活な笑顔は、どこか竜馬を彷彿とさせた。

 

「…ああ、よろしく」

 

俺は少し戸惑いながらも、その手を握り返した。思ったよりも力強い握力だ。

もう一人は、俺より少し背が高く、ショートカットがよく似合う、クールな印象の少女。切れ長の目で、じっと俺を観察するように見ている。

 

「…神谷隼(かみや じゅん)……。 よろしく」

 

ボソリと、低い声で自己紹介する。こっちはこっちで、()()()を思い出させる名前と雰囲気だ。…まさか、この世界にも、竜馬や隼人に似た魂を持つ奴らがいるってのか…?

 

(偶然にしちゃあ、出来すぎじゃねえか…?)

 

だが、今はそんなことを考えている場合じゃねえ。この二人、見た目だけじゃなく、実力も相当なものらしい。道着の着こなしや立ち姿から、それが伝わってくる。

 

「巴ちゃん、だっけ? あんた、本当に初心者? さっきの打ち込み、凄かったじゃない」

竜子が興味津々といった顔で聞いてくる。

 

「…まあ、体力には少し自信があるだけだ」

俺は適当にはぐらかす。

 

「ふーん? ま、いっか。とりあえず、一本やろうぜ! アンタの実力、見せてもらおうじゃん!」

竜子はそう言うと、早速俺に組みかかってきた。

 

軽い乱取りの始まりだ。竜子の組み手は荒々しいが、パワーがある。不用意に受けると、簡単に持っていかれそうだ。俺は持ち前の勘と、ゲッター3で培った粘り腰で、竜子の攻めを凌ぐ。

 

(こいつ…なかなかやるじゃねえか…!)

 

一方、隼は俺たちの乱取りを冷静に観察していたが、やがて「私も混ぜてもらおうかしら」と言って加わってきた。

 

隼の柔道は、竜子とは対照的で、非常にクレバーだ。巧みな足技で俺の体勢を崩し、寝技に引き込もうとしてくる。

 

(こいつの寝技…相当鍛えてやがるな…!)

 

結局、その日の乱取りでは、竜子にも隼にも一本取られることはなかったが、俺もまた、二人から技を決めることはできなかった。

だが、久々に感じた、本気でぶつかり合える相手との手合わせ。それは、俺の魂を確実に震わせていた。

 

(面白い…こいつらとなら、もっと強くなれるかもしれねえ…!)

 

竜子と隼。この二人との出会いは、俺にとって大きな意味を持つことになる。そんな予感がした。

 

 

 

 

一通りの稽古が終わり、自主練習の時間になった。他の門下生たちは、それぞれ打ち込みをしたり、乱取りをしたりしている。 俺は道場の隅に行き、一人で独自のトレーニングを始めた。

 

まずは呼吸法。ゲッター線のエネルギーを全身に行き渡らせるイメージで、深く、ゆっくりとした呼吸を繰り返す。これは、ゲッターロボの操縦時に精神を集中させるために行っていたものだ。

 

次に、体幹トレーニング。 ゲッター3の、あの圧倒的な重量を支え、大地を踏みしめる感覚を思い出しながら、四股立ちやすり足を行う。普通の人間が見たら、奇妙な動きにしか見えねえだろう。

 

「…巴ちゃん、何やってんの? それ、柔道の練習?」

 

竜子が不思議そうな顔で声をかけてきた。隼も、少し離れたところから興味深げに俺を見ている。

 

「…まあ、俺流の鍛え方だ。気にすんな」

俺は短く答える。ゲッターロボのことなど、説明できるはずもねえ。

 

だが、この鍛錬法は、俺にとっては理に適ったものなんだ。ゲッター線の流れを意識することで、体内のエネルギー効率を高める。ゲッターロボの各形態の特性をイメージすることで、それぞれの状況に応じた体の使い方を体に叩き込む。

これは、単なる筋力トレーニングとは違う、もっと根源的な「力」を引き出すためのもんだ。

 

その様子を、山嵐先生が道場の隅から厳しい目で見ていた。俺のやっていることが、常識的な柔道の鍛錬からかけ離れていることは、先生にも分かっているはずだ。だが、同時に、俺の動きの中に何か尋常ではないものを感じ取っているのかもしれねえ。

 

(あの小娘…一体、何者なんだ…? 見た目はただの少女だが、あの動き、あの集中力…まるで歴戦の武芸者のようだ…)

 

先生の口元が、微かに引き結ばれる。

 

(ただの才能だけじゃねえ…何か、得体の知れねえモンを感じる…あるいは、とんでもない逸材を拾っちまったのかもしれんな…)

 

先生の視線に気づいていたが、俺は構わずに自分の鍛錬を続けた。この道場で、俺は俺のやり方で強くなる。それだけだ。

 

 

 

 

初日の稽古が終わり、道場を出る頃には、空はすっかり暗くなっていた。体は心地よい疲労感に包まれ、汗をかいた道着が少し重い。だが、気分は最高だった。

 

(ここなら…ここなら、俺の魂を燃やせそうだ…!)

 

山嵐柔道クラブ。 古風で厳格な道場だが、そこには確かに本物の「武」がある。そして、山嵐巌先生という、一筋縄ではいかねえが、信頼できる指導者もいる。

 

「よう、巴! 今日はお疲れさん! また明日な!」

 

後ろから、竜子の元気な声が飛んできた。隣には、隼もいる。

 

「おう。お前らもな」

 

俺がぶっきらぼうに返すと、竜子はニカッと笑い、隼は小さく頷いた。

こいつらとは、いいライバルになれそうだ。いや、あるいは、かつての竜馬や隼人のように、背中を預けられる「ダチ」になれるのかもしれねえ。

 

(悪くねえな…こういうのも…)

 

初めて、この世界で「仲間」と呼べるかもしれねえ存在ができたことに、俺は少しだけ戸惑いながらも、どこか温かいものを感じていた。

 

 

山嵐柔道クラブでの、武蔵巴の本当の戦いが、今、幕を開けた。

 

猪熊柔、そしてまだ見ぬ強敵たち。待ってやがれ。この俺が、ゲッターの魂を柔の道で輝かせてやるぜ。

 

夜空には、ゲッター線みてえに赤い星が瞬いていた。

 

 

 

 




とある日のニュース


【夕刊デイリー スポーツ&ニュース】奈良公園発・鹿たちの「技あり!」な珍事二本立て!


キャスター(落ち着いたトーンだが、どこか興味深そうな口調で)


「こんばんは。スポーツニュースの時間……の前に、今日は奈良公園から、思わず『一本!』と唸りたくなるような、少し変わったニュースが二つ入ってきました。

古都のアイドル、奈良の鹿たちに、何やら新しい動きがあったようです。

まずはこちら。本日午後、奈良公園で、昼寝をしていた小鹿に心ない観光客が油性マジックで落書きをしようとしたところ、群れのリーダー格と見られる立派な角を持つ鹿が、まるで計算されたかのような動きで割って入りました。」

(映像)

鹿が低い姿勢から鋭い踏み込みで観光客に接近し、角を巧みに使って観光客の体勢を崩し、油性マジックを取り落とさせる様子が映し出された。

派手な衝突というより、相手のバランスを崩すような動き。その後、前足で地面をトン、トンと二度打ち、静かに観光客を見据えている。


キャスター:

「ご覧ください、この見事な“体捌き”とでも言いましょうか。
観光客は尻餅をつき、あっけにとられていたそうです。
手に持っていた油性マジックを拾うことも忘れ、

『鹿せんべいをあげていれば……こんなことには……』と呆然としていたとのことです。

専門家によりますと、『近年の鹿と観光客の距離感の変化から、一部の鹿が自己防衛の手段として、より効率的な威嚇や撃退の方法を学習した可能性が考えられます。

特にこの個体の動きは、まるで相手の力を利用するかのような、非常に洗練されたものに見えますね。偶然かもしれませんが、興味深い事例です』と話しています。

公園管理事務所では、改めて観光客へのマナー啓発を強化するとしています。


続いては、同じく奈良公園から、今度は心が温まる、しかしこちらもまた少し首をかしげたくなるようなニュースです。

以前から『お辞儀をする鹿』として知られていますが、最近、そのお辞儀の後に、何かを“お返し”するような行動が見られると話題になっています。」


(映像)

観光客から鹿せんべいを受け取った鹿が、丁寧にお辞儀をした後、少し離れた場所からドングリを一つ咥えてきて、観光客の足元にそっと置く。そして、もう一度軽く頭を下げる。

キャスター:

「せんべいのお礼に、ドングリを『進呈』です。映像を提供してくださった方によりますと、『まるで“ありがとうございました、これは気持ちです”と言っているようでした。

他の鹿も、木の葉や小枝、時には綺麗な小石などをそっと置いていくことがあると聞きました。何を基準に選んでいるのかは謎ですが、とても律儀な印象を受けます』とのことです。

先ほどの専門家も、『動物が人間の行動を模倣し、独自のコミュニケーションを発展させることはありますが、この“お返し”の選定基準や、ここまでの律儀さを示す例は非常に珍しい。まるで何か、強い“義理堅さ”のようなものを感じます。何が彼女たちをそうさせているのか、今後の研究が待たれますね』とコメントしています。

奈良公園では、鹿が誤って危険なものを口にしないよう注意を促しつつ、この微笑ましい行動の背景について、引き続き観察を続けるとのことです。」

キャスターは少し微笑みながら、


「以上、奈良公園からの珍しいニュースでした。さて、続いてはスポーツニュースです。先日行われた女子柔道・無差別級トーナメントで、驚異的な強さで優勝した期待の新人選手の話題からお伝えします……」



どこかの道場の片隅で、テレビのニュースをぼんやりと見ていた、小柄ながらも鋭い目つきの少女が、鹿のニュース、特にその鋭い動きと律儀な行動に、ふと何かを感じたように眉を微かに動かす。そして、再び自分の厳しい稽古に意識を戻すのだった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。