YAWARA!クロス・ソウル ~熱血武蔵巴、不屈の柔道一代記~   作:月影 流詩亜

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第5話:初陣! 暴走戦士と憧れの背中

 

中学柔道地区大会当日。 会場である市民体育館は、朝から独特の熱気に包まれていた。

 

各校のジャージを着た選手たちの緊張した面持ち、応援席からの威勢のいい声援、そして畳の匂い。俺の魂が、否応なく高ぶるのを感じる。

 

「いいか、お前ら! 相手が何処だろうと、自分たちの柔道を信じて、思いっきりぶつかってこい! 」

 

武蔵野第三中学校柔道部のゼッケンをつけた俺たち三人に、花園先生がいつもの穏やかな笑顔で、しかし力強い言葉をかけてくれる。

隣では、竜子が「押忍!」とばかりに拳を握りしめ、隼は静かに目を閉じて集中力を高めている。

 

(ふん、言われなくてもそのつもりだぜ。 相手が誰だろうと、俺のやることは一つだ)

 

団体戦のメンバー表を確認する。先鋒・流竜子、次鋒・神谷隼、そして大将・武蔵巴。

たった三人の弱小チームだが、不思議と負ける気はしなかった。 こいつらとなら、何かやらかせる。 そんな予感がしていた。

 

「よし、行くぞお前ら! 武蔵野三中、初陣だ!」

 

俺が檄を飛ばすと、竜子と隼が力強く頷いた。

 

目指すは、もちろん優勝だ。

 

 

団体戦一回戦。 相手は、そこそこの強豪校らしい。 先鋒の竜子が畳に上がる。

 

「うおおっしゃあ! いっくぜえええ!」

 

いつものように雄叫びを上げて相手に突っ込んでいく竜子。

その勢いは凄まじく、相手は完全に気圧されている。 組み合ったかと思うと、あっという間に豪快な大外刈りを叩き込み、一本勝ち。

 

「っしゃあ! まず一勝! 」

 

ベンチに戻ってきた竜子を、俺と隼が拳で迎える。幸先のいいスタートだ。

 

続く次鋒戦。 隼は竜子とは対照的に、冷静沈着な試合運びを見せる。

相手の動きをじっくりと観察し、巧みな足技で体勢を崩すと、すかさず寝技に持ち込む。

一度グラウンドに持ち込めば、隼の独壇場だ。 蛇のように絡みつき、鮮やかな腕ひしぎ十字固めで一本。

 

「……よし」

 

小さくガッツポーズをする隼。 クールな表情は崩さないが、その瞳には確かな闘志が宿っている。

 

そして、大将戦。 俺の出番だ。

畳に上がると、相手校の選手が明らかに警戒した目で俺を見てくる。 まあ、無理もねえ。 この可憐な(と自分では認めたくねえが)少女の姿で、さっきまでの竜子や隼とは明らかに違うオーラを放っている自覚はある。

 

「はじめ! 」

 

主審の声と共に試合開始。

相手は慎重に間合いを取ってくるが、そんなもの俺には通用しねえ。

一気に踏み込み、相手の腕を鷲掴みにする。

 

「なっ!? 」

 

相手が驚く間も与えず、そのまま強引に一本背負いを仕掛ける。

技の形なんぞ、まだメチャクチャだ。 だが、俺のパワーとスピードは、中学生レベルでは規格外らしい。

相手は抵抗する暇もなく宙を舞い、ドスンという鈍い音を立てて畳に叩きつけられた。

 

「い、一本!! 」

 

あっけない幕切れ。 相手はしばらく起き上がれず、俺は軽く一礼して畳を降りた。

会場が、一瞬シンと静まり返り、その後、ざわめきが広がる。

 

「な、なんだあの大将…強すぎるだろ…!?」

 

「あのパワー、本当に中学生女子かよ…」

 

他校の選手や監督たちが、驚愕の表情で俺を見ている。 ふん、これくらいで驚いてるようじゃ、先が思いやられるぜ。

 

その後も、武蔵野三中は快進撃を続けた。

竜子が勢いでポイントを稼ぎ、隼が堅実な試合運びでリードを守り、そして俺が圧倒的な力で試合を決める。

この勝ちパターンで、あれよあれよという間に決勝まで駒を進めちまった。

 

決勝の相手は、この地区の優勝候補筆頭と言われる強豪校。 さすがに今までの相手とは違い、先鋒の竜子も、次鋒の隼も苦戦を強いられた。

一勝一敗で迎えた大将戦。

勝負の行方は、俺の双肩にかかっている。

 

相手の大将は、俺よりも頭一つ大きく、見るからにパワーがありそうだ。

組み合った瞬間、ズシリとした重みを感じる。 こいつは、今までみたいに力任せではいかねえかもしれねえ。

 

だが、俺の辞書に「退く」という文字はねえ。

真っ向からぶつかり合い、互いに技を出し合う激しい攻防。 相手の得意技である内股を、粘り腰で必死に堪える。

 

(くそっ、こいつ、なかなかやるじゃねえか……! )

 

だが、俺の闘志は衰えねえ。一瞬の隙を突き、俺は渾身の力で相手の体を持ち上げにかかった。ゲッターロボの操縦で鍛えた、全身のバネを使って。

 

「な、なんだこの力は!? 」

 

相手が驚愕の声を上げる。 そのまま、俺は相手を脳天から叩きつけるような、無茶苦茶な大腰で投げ飛ばした。

山嵐先生が見たら、「あれは柔道じゃねえ!」と怒鳴りそうな、荒っぽすぎる技だ。

だが、結果は一本。

 

「それまで! 一本! 勝者、武蔵野第三中学校! 」

 

主審の声が、会場に響き渡った。 俺たちは、勝ったんだ。

竜子と隼が、泣きながら俺に抱きついてくる。

 

「やったー! 巴、やったぞー! 」

 

「…本当に、勝っちゃったわね…私たち……」

 

俺も、思わず目頭が熱くなるのを感じた。ゲッターチームで勝利を掴んだ時とは違う、なんだか温かくて、くすぐったいような感動。

これが、仲間と掴む勝利の味か……悪くねえな。

 

 

 

団体戦の興奮も冷めやらぬまま、午後は個人戦が始まった。

俺は、団体戦の勢いそのままに、個人戦でも破竹の勢いで勝ち進んだ。

対戦相手は、俺のパワーを警戒して、なかなか組み合おうとしてこねえ。

だが、そんな消極的な相手には、容赦なくプレッシャーをかけ、強引に技を仕掛ける。

 

(逃げてんじゃねえよ、もっとかかってこい!)

 

巴投、大外刈り、一本背負い。

まだ形は不格好だが、一つ一つの技に込めるパワーは、中学生の女子が出せるレベルを遥かに超えていた。

試合時間は、ほとんどが数十秒。相手は俺の力に為す術もなく吹っ飛ばされていく。

 

「あの子、本当に中学生なのか…? まるで、小さな重戦車だな…」

 

「技は荒削りだが、あの身体能力と勝負勘は本物だ…末恐ろしい新人が現れたもんだ……」

 

観客席からは、そんな声が聞こえてくる。

山嵐先生も、腕を組んで厳しい表情で俺の試合を見つめていたが、時折、小さく唸るような声を漏らしているのが分かった。

あのジジイも、少しは俺の実力を認めてくれたかね。

 

決勝戦の相手は、団体戦決勝で俺と戦った、あの強豪校の大将だった。

 

「またお前か。 今度は、あんな無茶苦茶な投げ方はさせんぞ」

 

相手は、リベンジに燃えているようだった。

だが、悪いが俺に二度同じ手が通用すると思うなよ。

 

試合は、予想通り激しいものになった。

相手は俺のパワーを警戒しつつも、巧みな技で攻めてくる。

俺も、ただ力任せに攻めるだけじゃなく、ゲッター2のようなスピードと、ゲッター1のようなトリッキーな動きを意識して戦う。

 

最後は、相手が仕掛けてきた大技を、紙一重でかわし、カウンターの体落とし。

これもまた、教本には載ってねえような、我流の技だ。だが、見事に一本。

 

個人戦も、優勝。 まあ、当然の結果だ。

 

 

試合の合間、控室で休んでいると、竜子が興奮した様子で柔道雑誌を手に駆け寄ってきた。

 

「なあ、巴! 見ろよコレ! 猪熊柔だって! やっぱりすげえなあいつ! 」

 

竜子が指差したページには、カラー写真付きで猪熊柔の特集記事が組まれていた。

 

『天才柔道少女、猪熊柔!

全国中学校柔道大会、衝撃の二連覇へ!』

なんていう、デカデカとした見出しが躍っている。

 

記事には、柔が全国大会で並み居る強豪を次々と破り、圧倒的な強さで勝ち進んでいる様子が詳細に書かれていた。

そして、トレードマークの一本背負いを鮮やかに決めている、躍動感あふれる写真。

 

(猪熊柔…やっぱり、俺とは住む世界が違うぜ…)

 

俺が今戦っているのは、たかが地区大会。一方、あいつは全国の頂点を目指して戦っている。その差は、あまりにも大きい。

 

だが、不思議と劣等感は感じなかった。むしろ、胸の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じる。

 

「…全国、か」

 

俺は、雑誌の柔の写真を睨みつけるように見つめた。その瞳は力強く、一点の曇りもない。

美しいだけじゃねえ、本物の「強さ」を持った者の目だ。

 

「俺も、いつか必ずあの舞台に立ってやる。 そして、あいつと…あいつと戦って、必ず勝つ!」

 

無意識のうちに、そんな言葉が口をついて出ていた。隣にいた竜子と隼が、驚いたように俺の顔を見る。

 

「巴…本気なんだな」

 

「…あなたなら、本当にやり遂げるかもしれないわね」

 

二人の言葉に、俺は力強く頷いた。

今の俺の実力じゃ、あいつの足元にも及ばねえだろう。 だが、目標は高く持たねえと意味がねえ。

 

この武蔵巴、やると言ったら必ずやる男…いや、女だ。

 

 

 

個人戦の決勝が終わり、表彰式までの間、俺は一人で体育館の隅にある自販機でスポーツドリンクを買って飲んでいた。

団体戦と個人戦、立て続けに試合をしたせいで、さすがに少し疲労を感じる。

 

「あ、あのっ…!」

 

不意に、後ろから遠慮がちな声が聞こえた。振り返ると、そこには俺より少し背の低い、中学生くらいの少年が立っていた。

黒縁のメガネをかけた、どこか気弱そうな印象の少年だ。手には、スケッチブックのようなものを抱えている。

 

「…なんだ、お前。なんか用か?」

 

俺がぶっきらぼうに尋ねると、少年はビクッと肩を震わせ、顔を真っ赤にしながら言った。

 

「む、武蔵…巴さん、ですよね…!? 今日の試合、全部見てました! すっごく、すっごく、かっこよかったです! 」

 

……かっこいい? 俺が?

 

今まで、そんなことを言われた経験はねえ。

ゲッターチームの連中からは「無鉄砲」だの「猪武者」だの言われたことはあるが。

 

「あの、僕、早乙女みちるって言います!

武蔵さんの大ファンになっちゃいました!」

 

早乙女…みちる、ねえ。なんだか、女の子みてえな名前だな。

 

少年……みちるは、キラキラとした、憧れの眼差しで俺を見つめてくる。その純粋で真っ直ぐな視線に、俺はなんだか調子が狂っちまう。

 

「ふ、ふぁん…? なんだそりゃ…気色悪ぃな…」

 

「えっ!? あ、ご、ごめんなさい! でも、本当に、今日の武蔵さんの戦いぶり、感動したんです! あの、力強くて、でも、時々すごく可憐で…! 」

 

……可憐? 俺が? おいおい、こいつ、どこ見てんだ。

 

みちるの言葉に、俺はますますどう反応していいか分からなくなる。年下の、しかも男のガキから、こんなふうに褒められたことなんざ、一度もねえ。

 

「お、おう…そうかよ…まあ、ありがとよ…」

 

俺は、頭を掻きながら、ぎこちなく礼を言った。なんだか、顔が熱い気がする。

 

すると、みちるは恐る恐る、抱えていたスケッチブックを俺の前に差し出した。

 

「あ、あの! もしよかったら、サイン、頂けませんか…?」

 

「さ、サイン…? 俺のかよ…?」

 

「はい! お願いします!」

 

必死な形相で頭を下げるみちるに、俺はため息をついた。

 

「…チッ、しょうがねえな。ペン、あるのか?」

 

「は、はい! これ、使ってください!」

 

みちるが差し出したペンを受け取り、スケッチブックの真っ白なページに、デカデカと「武蔵巴」と書き殴る。我ながら、女の字とは思えねえ、力強い筆跡だ。

 

「わ、わああ! ありがとうございます! 一生の宝物にします! 」

 

みちるは、俺のサインをうっとりと眺め、顔を真っ赤にして喜んでいる。

そのあまりの純粋さに、俺はなんだか毒気を抜かれちまった。

 

 

 

「じゃあ、僕、これで…! また、応援に来ます! 必ず! 」

 

みちるは、深々と頭を下げると、嬉しそうにスキップでもしそうな勢いで去っていった。

俺は、その後ろ姿を呆然と見送りながら、ポツリと呟いた。

 

「…なんだか、変な奴に懐かれちまったな…」

 

だが、その表情は、自分でも意外なほど穏やかだったかもしれねえ。

結局、地区大会は、団体戦も個人戦も、俺たち武蔵野三中が優勝を掻っ攫っちまった。

表彰台の一番高い場所に立ち、金メダルを首にかけてもらう。ゲッターロボで勲章をもらった時とは違う、くすぐったいような誇らしさがあった。

 

花園先生は泣いて喜んでくれ、竜子と隼も、最高の笑顔を見せていた。

山嵐先生は、相変わらず厳しい顔をしていたが、

 

「まあ、今日のところは及第点だ。 だが、都大会ではこうはいかんぞ」と、少しだけ認めてくれたような気がする。

 

次の目標は、都大会。

そして、その先には全国大会、そして猪熊柔が待っている。

 

道はまだまだ遠く、険しいだろう。

だが、俺の闘志は、ますます燃え上がっていた。

竜子と隼という頼れる仲間、そして、早乙女みちるという奇妙な(だが、悪い気はしねえ)ファン。

 

俺の世界は、この世界で、少しずつだが確実に広がり始めている。

 

(ま、どんな相手が来ようと、俺のやることは一つだ。 ぶっ飛ばして、頂点まで駆け上がってやるだけだぜ!)

 

体育館の窓から差し込む夕陽が、俺の金メダルをキラリと照らした。

 

武蔵巴の戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 




中学生の柔道大会で優勝した場合には、通常は金メダルが授与されることが一般的です。トロフィーや盾(タテ)も副賞や表彰として贈られることがあります。

ただし、大会の規模や主催者によって異なる場合もあります。一般的な例としては、金メダルが最も主要な賞です。


chatGPTより調べました。
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