YAWARA!クロス・ソウル ~熱血武蔵巴、不屈の柔道一代記~   作:月影 流詩亜

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第7話:インターハイの熱風! 全国に轟く武蔵巴の名

 

インターハイ本戦。 俺たち武蔵野第三高校柔道部は東京都代表として、その灼熱の戦いの地に足を踏み入れた。

 

開催地は九州。 東京とは違う、むせ返るような熱気と全国から集まった強豪たちの殺気にも似たオーラが、俺の闘争本能を刺激する。

 

「すっげー! さすが全国大会だな! なんか、空気からして違うぜ! 」

 

竜子が目をキラキラさせながら、興奮気味に辺りを見回している。隼も、いつもより心なしか表情が引き締まっているようだ。

 

「巴、あんまり気負いすぎるなよ。お前なら大丈夫だ」

 

花園先生が、俺の肩をポンと叩いてくれる。

東京都予選での、あの猪熊柔との死闘。 あれ以来、俺こと武蔵巴の名前は、柔道界の一部で密かに注目されるようになっていた。

無名の新星、型破りなパワーファイター。

そんなレッテルが、俺の意思とは関係なく貼られ始めている。

 

(全国の舞台…不足はねえな。 猪熊柔も、必ずこのどこかにいるはずだ。 今度こそ、あいつを倒す!)

 

プレッシャーなんざ感じねえ。

むしろ、強敵がうじゃうじゃいるこの状況は、俺にとって最高の餌場みてえなもんだ。

 

 

まずは団体戦。 俺たち武蔵野三高は、ノーシードからの出場だ。

だが、都予選の勢いは伊達じゃねえ。

 

先鋒・流竜子。 こいつの猪突猛進な柔道は、全国の舞台でも臆することなく炸裂した。

持ち前のパワーとスピードで相手を翻弄し、貴重な先制点を次々と叩き出す。

 

「うおおおおお! どうだ見たか、これが武蔵野の切り込み隊長だ!」

 

次鋒・神谷隼。 冷静沈着な試合運びは健在。

竜子が勢いで取った流れを、隼が確実に繋いでいく。 相手の動きを的確に読み、寝技に持ち込んでは、芸術的な関節技で一本を奪う。

 

「…よし。次、頼んだわよ、巴」

 

そして大将・武蔵巴。俺だ。

 

竜子と隼が作ってくれた最高の流れに乗って、畳に上がる。

相手が誰だろうと関係ねえ。 俺のやることは一つ、全力で相手を叩き潰すだけだ。

 

都予選の時よりも、さらにパワーが増した俺の体は、もはや中戦車みてえなもんだ。

組み合った相手は、その圧力に顔を歪め面白いように吹っ飛んでいく。

 

「な、なんだあの武蔵野の大将…! 都予選の時より、さらに強くなってやがる…! 」

 

「まさに怪物…いや、暴走戦士だ! 」

 

俺たち一年トリオの快進撃は、「武蔵野旋風」なんて呼ばれ始めていた。

一回戦、二回戦、三回戦と、格上のシード校を次々と撃破していく。

俺たち三人なら、どこまでだって行ける。 本気でそう思えた。

 

だが、全国の壁はやはり厚かった。

準々決勝、相手は優勝候補の一角に数えられる九州の超強豪校。

先鋒の竜子が粘りを見せるも惜敗。

次鋒の隼が執念で一本を取り返し、勝負は大将戦の俺に託された。

 

相手の大将は、俺と同じくらいの体格だが、その眼光は鋭く、尋常じゃねえ修羅場を潜り抜けてきた者のオーラを放っていた。

組み合った瞬間、その実力を肌で感じる。こいつは強い !

 

一進一退の攻防。俺のパワーも、相手の巧みな技と老獪な試合運びの前に、なかなか決定打を与えられねえ。 最後は、僅差の判定で俺が敗れた。

 

「…くそっ!」

 

団体戦ベスト8。 全国の舞台で、無名の俺たちがここまでやれたんだ。 胸を張っていい結果かもしれねえ。

だが、負けは負けだ。 この悔しさは、個人戦で晴らすしかねえ。

 

「巴、気にするな! お前はよくやったぜ!」

 

「そうよ。この悔しさを、個人戦にぶつけなさい」

 

竜子と隼が、肩を落とす俺を励ましてくれる。

ああ、分かってる。 俺たちの夏は、まだ終わっちゃいねえ。

 

 

 

団体戦での活躍もあって、個人戦が始まる頃には、俺の名前はさらに注目を集めるようになっていた。

 

「都予選銀メダリスト、武蔵巴! 天才・猪熊柔を最も追い詰めた女!」

 

「驚異のパワーファイター、武蔵野の赤い閃光!」

 

そんな大袈裟なキャッチフレーズが、スポーツ新聞の見出しに躍る。正直、気色悪ぃことこの上ねえ。

特に厄介なのが、日刊エヴリーの松田耕作だ。 あいつ、いつの間にか俺の「専属広報担当(自称)」みてえな顔をして、俺の行く先々に現れるようになった。

 

「武蔵選手! 今日のコンディションはいかがですか!? 読者の皆さんに、勝利への熱い意気込みを! 」

 

「おい松田! うろちょろしてると稽古の邪魔だぞ! 大体、お前は俺のマネージャーかなんかか!?」

 

「い、いやあ、これは武蔵選手の輝かしい戦績を、後世に正しく伝えるための記録活動でして……! ささ、こちらに今日のラッキーカラー占いでも…」

 

「そんなもんいるか!」

 

まったく、鬱陶(うっとう)しいことこの上ねえ。 だが、こいつの書く記事が、良くも悪くも俺の名前を全国に広めているのも事実だった。

まあ、利用できるうちは利用してやるか。

 

 

 

個人戦が始まると、俺は改めて全国のレベルの高さを思い知らされた。

都予選とは比べモンにならねえ。

一回戦から、油断すれば足元を掬われかねねえ相手ばかりだ。

特に、俺のパワー柔道は研究され尽くされているようだった。

力でねじ伏せようとしても、巧みな体捌きでいなされたり、カウンターを狙われたりする。

組み手を徹底的に嫌い、俺にまともな技を出させねえようにしてくる、老獪な選手もいた。

 

(ちくしょう…こいつら、ただ強いだけじゃねえ…頭も使ってやがる…!)

 

ゲッターロボの戦場では、パワーだけじゃ生き残れねえ。 敵の特性を分析し、状況に応じて戦術を変え、時には虚を突くような奇策も必要だった。 その経験が、こんなところで役に立つとはな。

 

ある試合では、小柄だが異常なまでに粘り強い寝技師に苦しめられた。 一度グラウンドに引きずり込まれると、まるで蟻地獄みてえに抜け出せねえ。

 

(くそっ、このままじゃジリ貧だ…! 思い出せ、ゲッター3のあの粘りを…!)

 

俺は、ゲッター3が敵に組み付かれた時の、あの絶望的な状況から逆転した戦いをイメージした。 相手の関節技をギリギリで耐え抜き、一瞬の隙を突いて強引に体を起こし、パワーで抑え込みを引っくり返してやった。

 

また別の試合では、異常なまでにスピードのある選手に翻弄された。まるでゲッター2の分身殺法みてえに、どこから攻撃が来るか分からねえ。

 

(目で追うんじゃねえ…気配で感じろ…! ゲッター1の空中殺法のように、三次元で相手の動きを捉えるんだ!)

 

俺は集中力を極限まで高め、相手の動きの「癖」を読み切り、カウンターの出鼻を挫いてやった。

一戦一戦が、まさに死闘。 ゲッターロボのパイロットとして培ってきた戦闘経験、土壇場での機転、そして何よりも諦めねえという不屈の魂。

それらが、俺をギリギリのところで勝利へと導いていく。

 

(上等だぜ、全国の強者ども…お前らがどんな手で来ようと、この武蔵巴は倒れねえ! 俺の戦場は、畳の上だけじゃなかったんでな! )

 

 

 

俺が泥臭く、必死に勝ち上がっていく一方で、もう一つのトーナメントブロックでは、あの猪熊柔が順当に勝ち進んでいた。その戦いぶりは、俺とはあまりにも対照的だった。

時間を見つけては、俺も柔の試合を観戦しに行った。 そこには、力でねじ伏せるような荒々しさは微塵もねえ。全ての動きが洗練され、まるで芸術作品を見ているかのようだ。

相手の力を利用し、最小限の動きで最大限の効果を生み出す。技のキレ、体捌きの美しさ、そして何よりも、畳の上でのあの凛とした立ち居振る舞い。

 

(…やっぱり、あいつはすげえや…今の俺が、力だけで勝てる相手じゃねえことは分かってる。だが、それでも……)

 

見ているうちに、俺の心の中に、奇妙な感情が芽生え始めていることに気づいた。

それは、単なるライバルへの対抗心や、強者への憧れだけじゃねえ。

猪熊柔の柔道が見せる「美しさ」に対して、武蔵としての魂とは別の、何か胸の奥がキュンとするような…そんな感覚。

 

(…な、なんだ、この感じは…? 別に、あいつのファンになったわけじゃねえぞ…? ただ、あの柔道は…その…き、綺麗だとは思うが…それだけだ…!)

 

顔が熱くなるのを感じ、俺は慌てて首を振る。 何を考えてるんだ、俺は。あいつは倒すべき敵だ。それ以上でも、それ以下でもねえはずだ。

 

猪熊柔もまた、時折、俺の試合を観客席から見ているのに気づいた。 その表情は読み取れねえが、俺の型破りな戦いぶりを、あいつはどう見ているんだろうか。 俺たちの間には、言葉はなくとも、互いを強烈に意識する空気が確かに流れていた。

 

 

 

苦しい戦いの連続だったが、俺はなんとか準々決勝を突破し、ついにベスト4、準決勝まで駒を進めることができた。

ゲッターの魂と、山嵐先生や花園先生、そして竜子や隼から学んだことを総動員して掴み取った勝利だ。

 

「やったな、巴! すげえぜ、お前! 」

 

「本当に、あなたの底力には驚かされるわ…あと二つよ!」

 

竜子と隼が、自分のことのように喜んでくれる。花園先生も、目に涙を浮かべて俺の健闘を称えてくれた。

観客席の隅には、いつの間にか山嵐先生の姿もあった。 相変わらず厳しい顔をしているが、その目が少しだけ和んでいるように見えたのは、俺の気のせいか?

 

準決勝の相手は、優勝候補の一角に挙げられている、地元九州の強豪選手。

パワーも技も、そして何よりも地元の大声援というアドバンテージも持っている。 間違いなく、今までの相手の中で最強クラスだ。

 

(ここまで来たら、もう何も恐れるものなんてねえ。全力でぶつかって、この手で勝利を掴み取るだけだ!)

 

一方、猪熊柔も順当に準決勝へと勝ち進んでいた。 もし、俺とあいつが共に準決勝を突破すれば、決勝であの都予選の再現となる。

 

 

準決勝を翌日に控え、俺はホテルの部屋で一人、静かに闘志を燃やしていた。 窓の外には、九州の夜景が広がっている。

 

猪熊柔との再戦。 そのことばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡る。 都予選での敗北の悔しさが、昨日のことのように蘇ってくる。

 

(今度こそ…今度こそ、あいつから一本取ってやる…!)

 

だが、まずは明日の準決勝だ。目の前の敵に集中しねえと、足元を掬われる。

俺は、ゲッターロボの出撃前に行っていた精神統一の呼吸法を始めた。 雑念を払い、意識を一点に集中させる。

インターハイ本戦の熱気の中で、俺の魂は最高潮に燃え上がっていた。

 

武蔵巴の、そしてゲッターの魂の全てを賭けて、明日、俺は畳の上に立つ。

 

(待ってろよ、猪熊柔…! そして、全国の頂点よ! この俺が、お前たちの度肝を抜いてやるぜ!)

 

九州の夜空に、ひときわ強く輝く一番星を見つけ、俺は静かに拳を握りしめた。

 

 

 

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