作者はノンケですがなんかエロい男の娘は幾らいてもいいと思います(確信)
どこともしれない都市の交易所に停車する搬入中の輸送車に紛れ込んで、その場から離れる作戦が思いのほか上手くいった。
金属コンテナの隙間から覗く初めての外の世界は、何てことのない殺風景なものだった。
野生の動物が駆ける姿も、鳥の囀りも聞こえない。時たまに吹き抜けるジメっとした風が乗せる臭いは、腐った果実がもたらす酸味の様に感じ取れた。
大地を覆う草木の悉くが色褪せ、今にもしなびてしまいそうな程に生命が感じ取れなかった。
(何だか寂しい。外ってこんなものなのか?)
やっと手にした自由の先で迎えてくれる筈の景色は、ミリアリアの心を癒し満たしてくれるに至らない。
輸送車が徐々に動き出す。
それを牽引する2Mを超える4足歩行の獣『重馬』が騎手の合図に合わせて速度を上げていく。
揺れる輸送車の中で、身体もそれに合わせる様に左右に揺れる。
荷物を詰め込んだ木箱に身体を預け、経年劣化によって出来たコンテナの小さな隙間の先で流れる風景を見ながら、ミリアリアはこれまでの事を思い返していた。
それは彼がまだ奴隷だった頃の話だ。
どこにあるかも分からないが、此処がどんな国かも分からない。
しかし、各地にはこの奴隷鉱山と呼ばれる場所が無数にあることだけは知っている。
鉱山と岸壁に囲まれ、逃げ出す事も儘ならない奴隷が身体に鞭を打たれながら、文字通り命を使い切るまで酷使される監獄。
誰もが苦しむ事さえも放棄し、ただ無気力に、操られるだけの糸人形の様になった奴隷と、それを操る醜く肥え太った人間しかいない地獄。
そんな世界がミリアリアにとっての全てだった。
物心ついた時には、この灰色の世界にいた。
衛兵が手を出した奴隷の子供、それがミリアリアであり、彼を生んだ母はその後にどうなったのか分からない。
ただ、付けられた『ミリアリア』と言う名がかつて自身を生んだ母の物であったという話を衛兵の気まぐれで聞かされた時に何となくミリアリアは察していた。
母は身体が弱かったと聞く。
見た目だけは整っていたから、その身を差し出して衛兵達から対価を貰い生き永らえていたのだと。
しかしそれも、ミリアリアを産んでから出来なくなった。身体が一気に衰えて誰の相手も出来ない程に弱っていたらしい。
最早使えない道具に興味はない、きっとその程度の認識だろう。
立つ事も儘ならない道具を残しておく程に、情けがある人間なんてこの場にはいない。
つまりは、そういう事なのだ。
後には何も残ることはない。
そうして1人残ったミリアリアだが、奴隷の子供でありながら育てられていた。
男でありながら、その外見は見た目麗しかった母と瓜二つだったのだから、一部の物好きが彼を処分することなく生かす事を決めたのだ。
青みがかった白髪に琥珀色に輝く大きな瞳、そして少女と見紛う程の顔立ち、それを一目見た男は己が好みに染め上げる為に手を加える事とした。
ミリアリアはその可憐な外見に似合わず、下手な成人男性よりも高い身体能力を持っていた。
だからなのか、それとも誰かしらの介入があったのか、彼はその美貌を使う役目を担う事なく労働奴隷の1人として鉱山に送られていた。
ミリアリアは、他の奴隷達と比べて締め付けは緩いものであった。
労働の時間は変わらない。上手く出来なければ鞭で打たれるし、殴られもする。
だがその力加減は、身体に跡が残らない様な絶妙なものだった。
痛いには、痛い。だがしかし、周囲の皆が体中に裂傷や痣を増やしていく中で、彼だけはその白い肌が傷だらけになる事がなかった。
そして何故か、与えられる食事も周囲よりも多かった。
空腹である事に変わりないが、地面にぶちまけられた残飯の様な残りかすと違って、水でふやかしたパン丸々1つと衛兵達の残り物のスープを皿で貰える事も多々あった。
どうして自分だけ?という疑問は当然あったが、しかし理由に関しては深く考えていなかった。
仲の良い奴隷に食事をこっそりと分けつつ、この時の彼には己が生きようが死のうがどうでもよかったのだ。
だからこそ己がどの様な目で見られていたのかも、一切認知していなかった。
ある日のことだ。
何時もの様に働こうとしていたミリアリアは突然、1人の衛兵に連れて行かれる。
行き先は奴隷鉱山内の中である意味場違いな、石造りの屋敷。
塀に囲まれた門を抜け、そのまま屋敷内へミリアリアを連れ込む、そして向かう先は寝室だった。
品質の良いテーブルと椅子が置かれ、壁際には箪笥や姿見などの一通りの家具と、幾つかの絵画が掛けられていた。
寝室にて、ミリアリアは1人の男と対面させられる。
金の装飾を過剰に身に着け、まるで豚の様に丸く肥え太った身体、如何にも金に汚さそうな性格と雰囲気を隠さない典型的なまでの醜い男だった。
ネットリと絡んでくる視線は、ボロ布1枚の彼の身体に向けられる。
思わず後ずさるミリアリアの動きを妨げる様に、衛兵は扉の前に移動していた。
知識や経験がなくとも流石に察せる。この状況、その視線の意味を本能で理解してしまう。
ミリアリアの中で膨れ上がった最悪の想像がそのまま現実へと移り変わるかの如く、彼の身体をまるで押しつぶさんとする勢いで、目の前の太った巨体に覆い被さられた。
押し倒された身体に肥えに滾った男の指先が伸びる。
自身の顔に、首筋に、腹に、足に舌を這わせる男はその身が昂るままに言っていた。
元々目をつけられていた事、この奴隷鉱山の投資者かつ奴隷商人であるこの男の指示によって、ミリアリアを連れてくるタイミングを見計らっていた事。
この男の情欲を満たす為に、少し多めの食事で最低限の肉を付けさせ、その身を汗で汚させていたこと。やり過ぎて見た目が崩れてしまう事を危惧して衛兵達からの暴力が周囲より抑えられていたのもそれが理由。
そうして見た目麗しい子供が、みすぼらしく、ボロボロである事を強いられている姿を味わうのが、その男の趣向であると言う。
何日も清めていない身体にその欲望を擦り付けてくる様を見せ付けられ、ぶつけられる。
ミリアリアはこれまでにない程の危機感を抱くが、それも当然だ。
彼は見た目こそ少女の様だが性は男だ。同性に抱かれる事を悦ぶ性格ではない。
故に抵抗した、必死になって何度かその身体を引き剝がすが、ひもじさに飢えた身で自身よりも体格の良い男をいつまでも拒絶出来る筈がない。
最終的には衛兵までもが一緒になって身体を抑え付けてくる。その身を寝室のベッドに押し込まれる。
このまま好き勝手にされる?
奴隷だからと、多少食事の量を増やした程度の事で感謝をしろだと?喜んで身を差し出せと?
目の前に近づく男の顔、擦り付けてくる身体。
唯一の衣であった襤褸切れの1枚も脱がされる、その手が自身の下腹部まで伸びようとしていた。
最早何の疑い様もない、もうこのまま―――。
―――本当に、このままでいいのか?
……いいや、いい訳がない。
理不尽ではないか、救われないではないか。
たかが生まれだけで人生が決まるのか?やりたい事を何一つ出来ずに死ぬのか?
奴隷ならば奴隷らしく、主人に弄ばれるだけが全てなのか?
そんな事はない、そんなものは認めない。
否定する権利はある、抗う権利はある。
―――いいさ。差し出してやるよ身体の1つや2つ、けどさあ。
全てではない、終わらせる訳にはいかない。
どうしても欲しいのなら、この身を味わいたいのなら相応のリスクを背負うべきだ。
ミリアリアは顔を近付ける。
頬を紅潮させ、薄く笑みを浮かべた彼の様子を見て、やっと観念したのだと思い込んだ奴隷商人は、色欲に塗れた表情を浮かべていた。
それが何とも滑稽な顔だった。
何も疑っていない、ただの間抜け面だ。
ミリアリアは男を受け入れる様に腕を首に回し、その首筋に顔を寄せ、男の真似をする様に舌を這わせる。
男は、ミリアリアからの愛撫に身を震わせている。
最早、無防備だった。
ミリアリアは目を細めた。
その喉笛の位置を見据えて。
―――そんなんじゃあ、嚙み殺されたって文句ないよな?
無防備な豚の急所がすぐ目の前にあった。
ならば、やる事は1つだった。迷いなど、ある筈もない。
そこからは考える暇もなかった。
あっという間に奴隷商人の男の喉笛を噛み千切った。
突然のことで身体を離し、口から血を逆流させ、のたうち回る姿に動転した衛兵の隙を突いて剣を奪い、押し倒す。
近場のテーブルと椅子が巻き込まれひっくり返り、衛兵がひっくり返ったテーブルに頭をぶつけ目を回していた所を、ミリアリアは奪った長剣を思いっきり頭に叩き付けたのだ。
荒れ果てた寝室には血の匂いが漂い、床一面にも2つの死体から流れる血が広がっていた。
ミリアリアの口内には吐き気を催す感触と、鉄臭い血の味が一杯に広がる。
その場に立ち尽くすミリアリアは、口に含んでいた全てを吐き捨てた。
赤黒く染まった小さな肉塊と、幾らかの飲み込みかけた唾液交じりの血が、ミリアリアの足元に広がる。
―――はぁ、はぁ、はぁ……。
そしてもう一つ、息を荒らげたまま、動かなくなったソレへと視線を下ろす。
苦悶に歪んだ表情を浮かべ、仰向けに倒れる奴隷商人であった男。
確認の必要もない、とっくに息絶えているのが分かる。
死んだ、いや、殺したのだ。
初めての経験だった。しかしクレアは何も感じなかった。
あるのはそう、やっと不快感から解放されたという安心感。
身を縮める様に自身の肩を抱いたままへたり込んだ。
―――気持ち悪い。
未だ残る感覚がクレアの表情を強張らせる。
殺す間際に湧き上がった激情も、今や鳴りを潜めてしまっていた。
全身を這う男の舌の感触も、好き勝手に触られた全身のあちこちを、すぐにでも水で洗い落したい。
舌に馴染ませた男の汗も、その血の味も、何もかもを消し去りたい。必要だったからと、あんな男娼の様な真似をした己を恥じた。
その身を貫かれる事はなかったが、それでもやはり汚されたという思いを拭い切る事は出来なかった。
だがそれでも、時間を掛けて徐々に落ち着きつつある中で、次に湧き上がって来たのはやはり、怒りだった。
一度収まっていた炎が再び再燃するかの様だった。
それは、とっくに死んだ奴隷商人達に対しての怒り。
顔も知らぬ自身の母をも恨んだ。こんな男か女かも分からない姿で産み落とした母を、ただの八つ当たりである事を分かった上で言わざるを得なかった。己の生まれを呪いたくなる程に。
男が言っていた。
元から目を付けていたと、興奮した様子で言っていた。
その顔はどんな女よりも美しいのだと、故に痛めつけ、汚したいと。
身勝手な言葉であり、同時にそこまで言わしめる己の姿はそれほどのものなのかと言う疑問もあった。
荒れ狂う感情の中にほんの小さな興味があった。
ミリアリアは自分の姿をちゃんと見た事がなかった。
鏡なんて上等なものに触れる機会なんて一度もなかったからだ。
強いて言うなら雨が降った日に出来た水溜りに映った姿が時々目に入る程度のものだが、労働中によそ見をする余裕なんてない。
切羽詰まっていた時に自分の身体に興味を持つなんてある筈がなかった。
それはきっと、今を生きるのに必死だった他の奴隷達だって変わらなかっただろう。
だが今は、ほんの少しの好奇心がミリアリアの視線に姿見を写り込ませた。
寝室なのだから身嗜みに必要なこれがあるのは不自然な事ではない。
まあ、こんな醜男に身を嗜む必要があったのか、ミリアリアには首を傾げるものであったが。
ミリアリアは破かれて使い物にならなくなったボロに代わって、箪笥から一枚の紺色のマントを取り出し、身体を隠す様に羽織った。
そして、姿見の前に立つ。
長く伸び切った青みがかった白髪、琥珀色の瞳、そして美女と形容出来る女の様な顔立ちもを彼はやっと認知した。
その結果、ミリアリアは何を思っただろうか?
―――よく分からん。
基準を知らぬ彼は自身がどれだけのものなのかを理解出来なかった。
理解が出来ない、分からない、それはつまり彼にとって『忌々しい』以外の何物でもなかった。
こんな理解出来ない物を、彼の周りの男が躍起になっていた事実。その為に、ここまでの苦痛を味あわされた理不尽。
―――このままじゃ、気が済まない。
自身を襲った奴隷商人は死んだ、この手で殺してやった。
しかし、それでなお足りなかった。
ミリアリアは死してなお、この男の全てを破壊してやりたい衝動を孕んでいた。
ミリアリアは周囲を見渡した。
そして何となく、マントを取り出した場所とは別の箪笥を開く。
中身は女物のドレス、中には中々に際どいデザインの物も含まれていた。
あの肥え太った奴隷商人にこれらを着る趣味はないだろう。
これらの用途があるとしたら、それを想像するだけで反吐が出る。
だが、使わせて貰おう。
―――俺達を虐げる衛兵も殺す。この屋敷も最後は燃やして、それから、それから……っ!
自分自身では理解が及ばない強みが、他者にとっては恐ろしく魅力的に見えるとしたら、下衆がなお食いつくものであるなら尚更だ。
少なくとも、それだけのものである事をミリアリアは理解していた。
つい直前まで、それを嫌と言う程に分からせられたのだから。
故に、これから行うのは憂さ晴らし。自身の願望に忠実なだけの破壊衝動。
この感情の全てを発散出来るのなら、何だってやるだろう。
再び男娼紛いの媚びへつらう己を演じる事とて、幾らでもやってやる。
それがミリアリアの決意であった。
一際強い揺れが、いつの間にか眠り落ちていたミリアリアの瞼を開けさせた。
整備の行き届かない街道を走る際の振動がミリアリアにとっては良い揺り籠となってくれていた様だった。
(こんな揺れでも俺って眠れたんだ。ま、困るもんでもないかな)
木箱に当たらぬ様に小さく背伸びをした。
物音を立てて業者の騎手に勘付かれ様ものなら面倒このうえない。
ミリアリアはコンテナの隙間から外を見る。
どれだけ寝ていたか分からないが、日はまだ明るかった。
そして外の景色は一切の変わり映えがなかった。
小さく溜め息を吐き出す。
やはり、何もときめかない。
もしくはここから遠く離れた場所、自身の手配が及ばない所まで行く事が出来れば、人々の営みがある街々を見て回る事が出来るのだろうか?
その中で、感動や関心を得られるものを見つける事が出来るのだろうか?
期待はしている。
今はまだ身を潜み逃げなければならない身。
本当の意味で安息を得る事が出来れば、もっと周囲に気を回す余裕だって出来る筈なのだから。
それが何時になるかは分からないが、少なくともこれは今のミリアリアが進む指標となるのだ。
(……あれ、そういえば何か揺れなくなってる?)
気がつけば、輸送車の揺れが止まっていた。
隙間の外で流れいた景色が止まりそのままとなっている、恐らくは停車しているのだろう。
(次の街に着いた?いや、けれど外を見た感じは……)
街が近い様には見えない、そう内心で言葉を漏らした時だった。
輸送車全体を揺らす様な衝撃が、ミリアリアと周囲の荷物を宙へと跳ねさせた。
「っ!?」
思わず声が漏れかけた。
咄嗟に懐に忍ばせている短剣を手に握る。
何の揺れか、それは理解するより早く再び衝撃がコンテナを大きく揺らす。
更に今度は、音が響く。
ギシギシと金属を削る様な耳障りな音が。
(これは……地震じゃない。コンテナが……まるで、掴まれてる……!)
コンテナを掴む。
まるで小さな積み木を片手で握る様な、だがそんな事が出来る存在はなんだ。
答え合わせはすぐだった。
コンテナが軋む音はより大きくなり、そして。
コンテナの上半分が引っ張り上げられるように千切られたのだ。
その瞬間、大きな影を荷物とミリアリアを覆った。
「おー!何だあこの輸送車はぁ?こいつは食いもんだけじゃなく人も運んでんのかぁ?」
品のない声が拡張器によってエコーを伴い地面を揺らす。
これはミリアリアを見下ろす巨影から発せられたものだ。
その全身は濃緑色に塗装された装甲で覆われている。
巨大な胴体に対してアンバランスに短い四肢を付けた全長8m、四等身の機械巨人。
「最悪だ……まさか、バンディットの機人に襲われるとはね」
これにはミリアリアも笑うしかなかった。
たまたま身を潜めた輸送車が、よりによってバンディットに襲われる?
生身のバンディットのみならまだ立ち回り方があっただろう。
だが眼の前で見上げるそれは間違いなく機人、バンディットが好んで使うとされる『マイルドソルジャー』と呼ばれる簡易量産機に属する人型兵器である。
「―――おぉ?まさかこいつ、女か!?いいねえ、思わぬ掘り出しもんだあ!おい、てめえら!今夜はお楽しみだぜえ、ひゃっはっはっはあ」
「…………」
品性の欠片もない物言い、脳みそが下半身に直結したかの様な言動にどうしたものかと頭を悩ませる。
(いっそ俺は男だ、と言ってみるか?)
それで信じるか否か、恐らくは信じまい。
何なら服を全てひん剥かれるまで気づかれないかもしれない。
だったらその時にネタバラシ、とミリアリアは一瞬思考するが、そのまま関係ねえと襲われ蹂躙される未来しか見えなかった。
ここまでにそういう経験が多過ぎて困るものだ。
それだけ、まるで男に見えない容姿である事に助けられる事もあれば、身の危険を招く事も多かった。
と言うより、危険に陥る事の方が良い。つまりはミリアリア自身そのものが厄物であるという訳である。
世はなんて無情なのだろう、とミリアリアは天を仰ぎたくなった。
「―――い!おい!女!何時までも無視してんのはおめえの為になんねえぞ?そのフードを、早く取れやっ!」
「……ちっ」
どこかで逃げおおせるタイミングがあるかもしれない。
ならば今は言う通りにするしかないか。
ミリアリアは立ち上がると、深く被っていたフードを取った。
そして、そのまま睨みつける様に琥珀色の瞳をマイルドソルジャーへと向けた。
「……ほう、ほうほうほう?その白髪、金色の目、そのやべえ位に綺麗な顔ォ………もしや、もしやあ?」
ミリアリアの顔を見たバンディットのマイルドソルジャーの反応が一変した。
「てめえ『淫婦』か!鉱山1つまるごと、たった1人で潰した魔女!」
その蔑称が知られている時点で、街からあまり離れていない所で捕まったという事である。
「……勘弁してくれ」
「やべえくらいの上物だ。こいつぁいい、こいつあは最高だあ!ひゃっはっはっは!」
マイルドソルジャーから響き渡る高笑い。
そして同じくして、バタバタと近付いてくる複数の足音は恐らくはバンディットの一味だろう。
最早囲まれたのかもしれない。
これは本格的に逃げおおせるタイミングを失ったのかもしれない、とミリアリアは顔を歪めた。
流石に今回はやばいかもしれない。
あらゆる意味で覚悟を決めなければいけない状況かもしれない。