機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「さて、ここに呼び出された理由は分かっているかなクルスト・モーゼス博士」
幾人もの強面の将校が1人の白衣の男を睨みつけていた。無数の視線に晒された初老の男は狸のような恰幅の良い将校『ゴップ』大将からの問いかけに緊張した面持ちで口を開く。
「は、ハッ。皆目見当もつきません」
「ふむ、では質問を変えようか。君の作ったブルーディスティニー、だったかな? あれについてだ」
ゴップは書類を纏めたファイルをクルストのすぐ目の前の机の上へと投げた。
その書類の著者はテム・レイ技術大尉がしたためたもので、ブルーディスティニーの詳細なデータ及び幾つかのグラフや画像が添付されている。
そしてクルストはその中にある文は技術者だからわかる無数の皮肉や罵詈雑言、クレームの嵐だった。
「いやはや、君の制作した特殊システム『EXAM』を搭載した試作モビルスーツ『ブルーディスティニー』……あれは素晴らしい戦果を挙げたよ! ジオン地球方面軍司令官『ガルマ・ザビ』を討ち取り、単独で敵の戦力をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……とね」
ゴップの口からは絶賛の言葉が贈られるが、その目は笑っておらず周囲の将校の目の温度も絶対零度を思わせるほど冷えきっている。
「は、はい。有難うございます、ゴップ大将……」
「うんうん、これは大変喜ばしいことだ。なんと言っても敵の首魁の1人を討ち取れたのだ……それを成したのが勝手に暴走して中のパイロットをミンチにしようとした挙句、敵味方関係なく殺しにかかるような欠陥品___いや、それどころかそうなる事を意図した仕様のゴミでもなければ諸手を挙げて喜べたのだがねぇ?」
「ッ!!?」
クルストが敢えて誰にも告げずに隠していた仕様を言い当てられ、その顔は驚愕に染った。
「この機体の起動試験は巧妙に隠されているが、その時のテストパイロットを死亡させるような事故を隠蔽したままよくもいたいけな少女へ渡せたものだよ。
どうやら、彼女……この機体のシステムのせいで1度死にかけたらしいねぇ。加えて、確認のため搭乗したテム大尉も意識を乗っ取られガンダムのパイロットのご子息を殺しかけたとか……」
コツコツとその太い指先が机の表面を叩く。
たいして大きくもない音だが、今だけはそれは断頭台への足音かとクルストは錯覚するものだった。
「そういえば、君は亡命する前は確かジオンのフラナガン機関とかいう場所の出身だったかな?」
「……はい」
「人伝に聞いた話だが、アソコはジオンでもいい噂を聞いたことがないねぇ。確かいるかも分からないニュータイプなどというもののために身寄りのない子供たちを人体実験にして使い捨てにしているとか……」
不意に机を小突いていた音が止む。
ジトリとクルストの背に嫌な汗が流れ、心臓が早鐘を刻んだ。
「そのレポートの最後にはこう書いてあったよ『このシステムの製作者には然るべき処罰を』……とね?」
「ッ!」
「逃がすわけないだろう?」
クルストは即座にその場から逃げ出そうとしたが、即座に控えていた憲兵によって取り押さえられ床へと倒れ込む。
「なぜ分からない!! ニュータイプのような危険な存在は根絶させねばならんのだ!!
アイツらはいずれ我々のような旧人類を殲滅するのだぞ!?」
「はぁ……それでやることが制御不能のポンコツシステムを作ることかね? オマケに確定形とは随分な暴論だ。とんでもない被害妄想だよこれは」
冷え冷えとした視線をクルストに向けるゴップ。目の前の男の言ったことなど信じるに値しない妄言でしかないからだ。
「やれやれ、これだからインテリというのは発想が過激でいかんな。連れていきたまえ」
「ハッ!」
「離せ!! お前たちもいつか理解するだろう! ニュータイプは我々オールドタイプの敵になると!! EXAMの必要性を!」
憲兵により両の手を捕まれ引きずられるように会議室から連行されていくクルストを見送り、ゴップは心底呆れたように肩をすくめる。
「さて、一応彼の作った物は全て処分しておいてくれるかな。では次の議題へ行くとしようか。内容は……ふーむ、アリア嬢の組んだ補助システムについてか」
「それについては私から」
控えていた技術部門の士官が立ち上がると端末を操作すると室内の明かりが消え、代わりに中央のホログラムスクリーンが起動して室内を薄暗く照らした。
「アリア・レイが組んだ戦闘補助システム『COM』ですが、凄まじいの一言ですね。コストが嵩んだとしても全てのモビルスーツに実装すべき発明であるというのが技術部の総意です」
「そんなにかね? たかだか11くらいの女の子が組んだシステムだぞ?」
将校の一人が言うと、それに同意するかのごとくほかの将校達も頷くが技術士官は覚えがあるのか苦々しい表情で受け答える。
「ええ、はい。我々も最初は同じように思っていました。しかし、それが変わったのは物は試しとパイロット候補生のジムとテストパイロットのジムと模擬戦をした結果を目にしてからです」
そして映し出されるのは訓練場で互いに睨み合う2機の連邦の正式量産型モビルスーツ『ジム』。
片方は候補生の乗るイエローのカラーリングのジム、もう片方はテストパイロットのグレーのカラーリングのジムだ。
「どちらに補助システムを積んだのだね? まぁ、予想はできるが」
「はい、ご存知の通り候補生のジム……黄色い方ですね。では、模擬戦の記録映像を再生します」
技術士官はそう言い、再生ボタンを押す。
『ではこれより模擬戦を開始する。両者、準備はいいか?』
『『はい!』』
上擦った声とよく通る声が同時にひびき、開始を知らせるブザーが鳴り響いた。
ほぼ同時にビームスプレーガンとシールドを構え、バックステップで距離を取りながら引き金を引く。
本来ならビームが出るが、今回は模擬戦のためにビームではなくレーザーポインターでダメージはない。しかし被弾すればその箇所の動作を停止するため、きちんと被弾を考えなければならない。
それなりの広さのある訓練場を2機のジムが駆けながら互いに
「ふむ、ただ撃ち合ってるだけじゃないかね?」
数分ほど経ってから将校の一人がそう零し、同意を示すように隣の将校が続こうとしてなにかに気づいたらしく技術士官へ問い質す。
「これのどこが……いや、ちょっと待て。
「お気づきになりましたね。そうです、戦いになる方がおかしいのですよ」
真底可笑しそうに技術士官はおどけながら説明をした。
「今回模擬戦をしているパイロットの片方は搭乗時間が20時間未満の本当にペーペーなのにたいして相手は100時間越えのテスターです。
確かに2機のジムはホワイトベースでの戦闘データを学習コンピュータで最適化させていますが、本来なら動かすだけでも精一杯の候補生ですよ?」
グレーのジムが射撃戦に焦れたのかビームサーベルを引き抜き、接近戦を仕掛ける。しかし、対してイエローのジムは決してビームサーベルの間合いを取らせずひたすら引き撃ちに徹していた。
程なくして模擬戦はビームスプレーガンのエネルギーが切れ、仕方なくイエローのジムもビームサーベルを装備して近接戦へ移行する。
「アリア・レイの制作したCOMは今まで戦闘中にパイロットが一人で行っていた機体のステータス管理、残弾、推進剤の逐次確認という雑事を全てこなしてくれます。
……そうです、今まではパイロットに依存しすぎていたモビルスーツの情報処理の大部分をしない分、操縦だけに専念できるのです」
確かに動かすのでも精一杯な候補生ではあるが、それは今までは機体の情報を逐次目を通しながら……という但し書きがつくのだ。
だが、そのマルチタスクを無くし一つのことに専念できたなら?
答えは目の前の映像だ。コクピットを貫かれ撃墜判定を貰ったイエローのジムだったが、グレーのジムも頭部をビームサーベルで貫かれており判定的には大破でありほぼ相打ちに近い。
ただの候補生程度がテストパイロットと引き分けた……その結果に会議室は無言の沈黙が支配するが空気は熱を帯びていた。
「凄まじい……」
ポツリと将校から零れたその言葉には確かな称賛の意が込められ、確信を帯びたように技術士官は口を開く。
「皆さんもこれを見ればこの補助システムがどれほども素晴らしいか理解できたでしょう。しかし、まだお伝えすべきものがあるのです」
「まだあるというのか!?」
「はい。まだあるのですよ」
悪戯が成功したように笑い、技術士官は端末を操作する。一時停止した映像が消えた代わりに今度は別の画像が現れた。
「それはCOM同士のネットワーク場での模擬戦機能『NEST』」
「『NEST』…………『巣』か」
「そうです。『NEST』、『巣』……面白い例えをつけたものですよアリアという女の子は。
これはネット上で自由に戦うことが出来るのです。それも、学習型コンピューターを併用してです!」
『!』
学習型コンピューターはパイロットの機体の動作情報を蓄積し、最適化されるものだ。モビルスーツを動かすだけでも少しずつ蓄積するがそれは微々たるもので動きも余り変わりがない。
しかし、実戦ならば話が違う。実際に戦闘すればそれだけ密度の高い動作情報を収集可能となるのだ。
ならば実機を使っての模擬戦で良いでは無いか? という話になるが、実機では多少動かすだけでも機体のパーツは消耗してしまうし、メンテで使えるパーツも減ってしまうし運が悪ければパイロットにも命の危険がある。
しかし、ネット上では? データ上ならば機体は消耗せず好きに戦うことが出来るしパイロットも死ぬことは無い。加えて、COMは究極的にいえばシミュレーターにインストールすれば『NEST』を使えるのだ。
スペースを取らず、大量のシミュレーターでパイロット達が『NEST』を使えばねずみ算式に学習型コンピューターが情報を蓄積する。
その膨大なデータをフィードバックすれば加速度的に連邦のモビルスーツは洗練されていくだろう。
1のエースの動きを模倣した100の凡百のパイロットたちが完成し、ジオンの国力に勝る連邦にとってそれは福音でもあった。
「では、もう一度提言します。既に特許申請は受理されていますが、パテント料でどれだけコストがかかろうと、戦争に勝つためにこの補助システムを実装すべきというのが技術部門の総意であります」
ざわめく会議室で技術士官のその言葉はよく響き、それを聞いたゴップは徐にレビルへと視線を向ける。
その視線を受け、レビルは頷くと口を開いた。
「では、アリア・レイの制作した補助システム『COM』をこれから生産されるモビルスーツ及びこれまでに生産されたモビルスーツへ実装することを決定する。異論あるものは? いないのならば即座に実行せよ」
当然、それに異を唱えるものはいない。
「はてさて、ただスペシャルな少女だと思ったが飛んだ金の卵を産むガチョウだったなアリア嬢は」
ジャブローの通路を部下たちを引連れ、愉快そうにゴップは笑う。元々、テムはレビル派閥の人物だがルナツーでの嘆願を握りつぶされたのを境にレビルのことは疑問視していた。
それが完全に見限ったことになったのはブルーの暴走を実際に体験してからだ。
故に、テムは一縷の望みを掛けてレビル以外にゴップへとレポートを送る。
そして、そのレポートは確りと彼に届くことでレビルによって握りつぶされることなくEXAMの開発者クルストを更迭させ、アリアが組んだCOMの特許申請をスムーズに受理させることができた。
将来、ゴップは政界への進出を計画しており彼はアリアがそれの手助けになると見抜き、骨を折る選択をとる。
「飼い犬に手を噛まれてはいけないからね。彼らの支援を惜しまず飢えないようにしなければ」
それが利になるならばゴップは苦労を惜しまない。将来楽になるために苦労を摂る、それをしてきたからゴップは今があるのだ。
程なくして全ての連邦軍にCOMは行き渡り、即座にその有用性に気づいたパイロットたちはこぞってNESTでしのぎを削りあう。
加えて、NESTにはもう1つ隠された機能があった。それはアリアが何となくCOMを組む中で再現させた、ルビコンでの強敵たちとの戦闘シミュレーション。
C兵器は流石に再現しなかったが、それ以外の……惑星封鎖機構の特務機体やRADのビックリドッキリメカやそれ以外の大型兵器を再現していたのだ。これは普通にNESTを使用していても開放されることはなく、システム面に明るい者がCOMを解析すれば見つけ出すことのできる、ソースコードの中に巧妙に隠された断片を集めて組むことで実装されるおまけコンテンツだ。
それに気づくものは、今はいない。
バルテウスとカタフラクトがアップを始めました。もちろん、みんな大好きルビコプターも
後継機
-
既存機体を魔改造
-
オリジナル機体