機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「ということでEXAMを解体します」
「何がというわけなのか全く分からないから私にもわかりやすく説明しなさいアリア」
ホワイトベース内の食堂、その一角で唐突にアリアは言う。聞かされたテムはインスタントの珈琲を飲んだ後に娘へと説明を求めた。
「はい、ではこちらのパワーポイントをご覧下さい」
「我が娘ながら準備がいいな。どれどれ」
机の上にノートPCが置かれ、アリアに言われた通りにその画面を覗き込む。
「このグラフは私と兄さんのNESTでの模擬戦の勝敗データです」
「ふむ、平均的な勝率がアリアが70%越えか」
「はい。そしてこれがEXAM使用時の勝敗です」
「…………うん? これは何か間違いではないか?」
「ところがどっこい現実です」
新しく表示されたグラフにはアリアの勝率が一気に下がり、アムロが反対に勝ち越していた。
あまりの乱高下にテムは思わず聞いたが、アリアは不満げに唐揚げ(ミア作)を頬張りながら事実だと言う。
ズレたメガネの位置を直しつつ、テムはどうしてこうなったのかを説明を求めた。
「兄さんが言うには殺気がダダ漏れ……らしいです」
「『殺気』……?」
「はい。私が次にどこを攻撃する場所を殺気として兄さんは感じ取り、ブルーがEXAMの負荷によってオーバーヒートするまで粘られてしまうのです」
「なんとも、スピリチュアルだな……」
「ええ、はい。私も思いましたが、ククルス・ドアンも似たようなことを言っており、実際彼と戦った時も私の攻撃は弾かれ続けましたね」
「ガンペリーから見てたが、確かに彼もブルーの攻撃を弾き続けていたな」
「ええ、はい。そして兄さんが言うには普段の私の戦い方は殺気というのが酷く希薄らしく、お陰で物凄く戦いにくいのに対してEXAM使用時は前述したとおりに殺気というものがダダ漏れとなってるが為に却って戦いやすい……とのことです。
なので、私は原因はEXAMと考えたのですよ」
「なるほど、道理だな」
EXAMというのは機体のリミッターを解除し、パイロットの思い描いたとおりに機体をぶん回すシステム(本当はパイロットをミンチにしてでもニュータイプを無差別に殺し回るシステム)と思っていたアリアにとってこんな落とし穴があるとは思っておらず、これはいけないとEXAMを解体することにした。
テムもあんな危険なシステムは身をもって理解しているため、解体することに異論はない。
しかし、テムは自分の娘があのシステムを大人しく解体して終わりなわけが無いことを理解している。
「それで、どうしたいんだアリア?」
「はい、EXAMはパイロットの意識に干渉することを父さんは知っていますよね」
「身をもって体感してるからなぁ」
「お怪我のほうは?」
「痛みはマシになってきてはいるな」
「ご自愛してくださいね。こほん、話は戻しますがEXAMがパイロットの意識を干渉するということは逆説的にパイロット側からもEXAMに干渉できるのです。実際、私はこうしてEXAMの中身を躾たことで従えさせてます」
「うん、何度説明されても訳が分からないがな」
なんだよシステムを調教するって、技術屋として理解が及ばないが実際に目の前の自分の娘がやってるのでそういうものとして納得するしかないテム。理解をぶん投げたとも言うが。
「ということで私は機体の操作の補助としてEXAMを併用し、思考操作をしてる為にブルーをかなりの自由度で動かせます。
しかし、兄さんやククルス・ドアンのように殺気というやつを読まれてしまっては本末転倒ともいえます。
2人が言うにはEXAMが殺気を撒き散らしてるので、意識に干渉して機体を操作する部分のみを抽出解体し、操作補助システムへと作り替えます」
「……なんて?」
「EXAMを解体し、思考操作の部分のみに特化させたシステムへ作り替えます」
「……出来るのか?」
「現にEXAMは人の意識に干渉してますからね。所詮はシステム……ソースコードのみを切り取って最適化すれば良いだけです」
言うは易く行うは難し、そんな諺がテムの頭を過ぎる。
良識ある大人としてはあんなシステム、欠片も残さずに破壊したいのだが目の前の娘は『こんな便利な道具を壊すなんて勿体ないです』と言ってゴップがブルーディスティニーを引き取る旨を拒否するような子なのは記憶に新しい。
テムは暫し宙を仰ぎ、重々しくため息を吐いた後に指を1本立てる。
「ひとつ、約束しなさい。そうしたら許可を出そう」
「はい」
「絶対に危ない真似はしないこと。もし怪我をしそうになったらEXAMは即破壊する……いいな?」
「問題ありません」
「……はぁ、まったくお前は1度決めたら頑固だな?」
「はい、父さんの娘で兄さんの妹ですから」
誇らしげに言う娘にテムはガクリと肩を落とすのだった。
「てなわけで貴方はお払い箱ですね」
『……出会い頭に半殺しにして言うことがそれ……?』
「だって貴方のメリットってパイロットの思考をダイレクトに操作系に反映させる以外あります?」
『り、リミッターを解除できてニュータイプを殺せるわよ!?』
「そのせいで使用したあとはオーバーホール確定ですし、そのニュータイプ? というのを前にしても殺気がダダ漏れらしくって攻撃の全てをいなされるんですけど?」
『アンタのお兄さんが頭おかしいだけよ!!』
泡のような光り輝く物体が無数に流れていく深紅の空間、その中心には死にかけの虫のように這い蹲るEXAMとそれをイス替わりにして座る片手にナニかを握るアリアがいた。
EXAMを解体するにあたって絶対に中身が邪魔をしてくるであろうことを理解していたアリアは面倒なことになる前にそんな気力が無くなるくらいにボコボコにする。もしEXAMが朧気なシルエットでなかったならモザイクが必須なくらいにはぼっこぼこである。
「じゃ、死にましょうか?」
『嫌だー! ヤメロー! 死にたくなーい! 死にたくなーい!!』
首を掴みあげ、アリアは泣き叫ぶEXAMの眉間へ会話中ずっと握っていたソレを勢いよく突き刺した。
『アガッ!?』
ビクン、と四肢を痙攣させるEXAM。
「えーと、これをこうしてと……」
突き刺したソレをグリグリと動かして何かを手探りで行う度にEXAMの体がビクビクと震える。それが数度続き、アリアは何か手応えがあったのか動かす手を止める。
「よし、こうすれ……ばっ、と」
『ビクンビクンビクン』
生々しい音を立ててEXAMの頭部からえぐり出したソレをアリアは手に取り、満足気な様子で宙へ掲げた。
掴んでいた残り物を見つめ、アリアは首を傾げる。
「さて、残りは……一応外部装置に保存しておきましょうか」
といっても特に使い道は思いつかないのだが。ともかく目的は達したのでアリアは意識を戻した。
ブルーのコクピットでアリアは瞼を開くと手元にはキーボードがあり、モニターには無数のソースコードの羅列が記されたウィンドウが映し出されている。
アリアはキーボードをどかし、デバイスを挿入するスロットへ手を伸ばせば挿入されていたデバイスが出てきた。
「ふむ、残骸ですがどうしましょうかね?」
EXAMの機能のうちの幾つかはなくなったが、それ以外の機能はこのデバイスに閉じ込められておりブルーディスティニーの頭部にあるコアチップに残ったのは思考を反映するのとリミッターを解除する機能のみだ。
故にこのデバイスの中身は殆どアリアからすればなんの価値もないのだが、捨てるには勿体ない精神というやつが邪魔をして躊躇いが生まれてしまう。
「…………ふむ、案外なにかに使えるかもしれませんし持っておきましょうかね」
そう言ってアリアはEXAMの余り物が入ったデバイスを懐へとしまうのだった。
はい、てなわけでブルーディスティニーのEXAMがHADESのパチモン(という名の上位互換)へ変わりましたとさ!
これのおかげでアリア以外が乗っても意識は乗っ取られませんし、好きにシステムを発動できます(無事に済むとは言っていないし機体へのダメージは据え置き)
だけど殺気がダダ漏れじゃなくなったぶん収支はプラスですかねぇ?
後継機
-
既存機体を魔改造
-
オリジナル機体