機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「オデッサデイ?」
ホワイトベースのブリッジにて補給部隊から告げられた次の指令をブライトから聞かされ、アリアは小首を傾げる。
「あの、ホワイトベースは軍隊ではないはずでは?」
戸惑いを隠せない様子でミライが言うが、それに答えるのは父のテムだ。
「上はどうやらそうとは思ってないみたいだな」
「父さん、それってどういうことなの……?」
険しい表情のテムに尋ねるのはアムロで、不機嫌そうにテムはタブレットの裏面を指先で叩きながら答える。
「前回の補給でマチルダ中尉から聞いた話だが、レビル閣下はこの艦やクルーに大層期待しているらしい。ニュータイプ部隊などと呼んでな……全く馬鹿馬鹿しい。
半民半官でなんとか回してるのに加えて未だに避難民も全員引き取らず、子供が戦っているのだぞ? 司令部の連中はさぞかし酸素が足りてないらしいな」
「テム大尉、言葉には気をつけてください。上官侮辱罪になってしまいます」
「ブライト君、君も実際不満を感じているだろう? 任官して1年も経たずに三階級も昇進して上級大尉という大任をろくな教育もなしに任命されているのだからな。戦時下だからといって正式に任官していない士官生が、だぞ?」
「それは……そう、ですが…………」
テムから言われ、ブライト中尉……ではなく二階級特進して上級大尉となったブライトは顔を歪めて腹をさすった。
実は先のミサイルサイロで弾道ミサイルによる未曾有の大災害を防いだことと、サザンクロス隊を倒したことからホワイトベースの艦長代理であるブライトは功績を認められ、戦時特例として二階級特進を今回の補給によって言い渡された。
何故ブライトがテムを差し置いて中尉から上級大尉へ上がったかは簡単で、いつまでもテムのような技術屋の階級が上であっては外聞が悪いとの事らしい。
その話を補給部隊から聞いた時、テムは今更外聞もクソもないだろと言ったとか。
とにかく、突然の任命にブライトはプレッシャーが胃腸へ鋭いパンチとなってキリキリと傷んでたりする。
「あのー、ニュータイプって……なんすか?」
そうしていると、カイが徐に手を挙げて尋ねる。それに答えるのはアリアだった。
「ニュータイプというのは、宇宙生活に適応することで時空を超えた非言語的コミュニケーション能力を獲得し、超人的な直感力と洞察力を持ち、より高度に、より深く、より慈愛に満ちた精神を持った人類……とジオン・ズム・ダイクンが提唱したものですね。
まぁ、これを言ったのが地球出身のアースノイドでしかも連邦政府の弱小政治家……っていうのがお笑い草ですがね。所詮は弱小政治家が自分の票集めに言ったでっちあげですよ。
詳しく知りたいのなら後でコピーした書籍データを送りますよ?」
EXAMがニュータイプ、ニュータイプと喧しかった為にどんなものか調べてたらアリアが持っていた電子書籍の中にそれに関する書籍が入っていたのでアリアはこれ幸いと読んでいたのだが、その内容はただの思想書というかなんというか、児童書の方がまだためになると言うのがアリアの所感である。
心底くだらないと言ったようにアリアが肩をすくめれば不意に視線を感じ顔を上げると何故かブリッジ内の視線が自分に注目していた。
ぐるりと周囲を見渡し、何故か強ばった表情のセイラが見えた後に試しに後ろを見るが誰もいない。首を傾げてアリアが問う。
「なにか?」
「いや、おチビのこれまでの様子を思い出すとな……」
「超人的な直感力と洞察力……か」
「11歳でモビルスーツをあれだけ動かせるのは普通じゃないよなぁ」
「あのえげつない予測精度を目の前で見せられたら、ね?」
各々が好き勝手にいってきた為にアリアは不満げにほんの少しだけ眉根を寄せた。
アリアにとって今までやってきたことは出来るからやっただけであって、何処ぞの思想家が勝手に言い出したものに当てはめられるのは酷く不快に感じてしまう。
それを察したのか、テムは咳払いをしてブライトへ確認した。
「ブライト君、話はこれで終わりかね?」
「あ、ええ、はい。以上で会議は終わりです。皆も含むものはあるだろうが、司令部からの命令である以上は従うしかない。以上、解散!」
「てわけですよ。皆さん失礼ですよね」
「うーん……でも、アリアちゃんって時々凄く勘がいい時あるからそう思われても仕方ないんじゃないかな?」
ブルーのコクピットにて追加装備のシステムチェックをするアリアとコクピット付近の移動用デッキに座って彼女の愚痴を聞くミア。
「第一に、ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプというのが仮に出てきたとして、私がそれに該当するなんて誰が証明できるのかという話です」
「…………アリアちゃんは違うの?」
「これっぽっちも違いますね。そもそもなんですか宇宙に適応した新人類って。括りが大雑把すぎですし定義には穴だらけすぎますよ全く。
それなら声が大きい人が『スペースノイドはコロニーによって宇宙で暮らしてるから全員ニュータイプ!』と言ってしまえば否定できないのですよ?」
カタカタとキーボードの叩く音が木霊する。その音はそこまで大きなものではないが、断続的な音はアリアの心情を表すようで、何処か荒っぽい。
「そもそも人類が宇宙に暮らしだしてからの時間なんてたったの半世紀と少しですよ? それくらいで人間が進化してたまりますか。
人間が猿人から現生人類……ホモ・サピエンスに進化するのにかかった時間は分かりますかミアさん?」
「えぇ!? えっと、えっとぉ…………1億年?」
「その頃はまだ地球上には哺乳類や霊長類は生息してませんね。正解は約700万年前から200万年のあいだの期間にアフリカ大陸に始まりたるアウストラロピテクスなどの猿人が生まれ、それからホモ・エレクトスなどの原人、ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・ネアンデルターレンシスなどの旧人、そしてホモ・サピエンスたる現生人類の順番で現代まで続いています」
「わ〜……そんな沢山の時間がかかってるんだね」
「えぇ、この膨大な時間の中で
その中で本格的に人類が宇宙へ生活圏を広げたのなんて本当に少しなのです。それで人類が進化しただなんて言えますか?
所詮は確りとした人類学の知識のないニワカ野郎の
「えーと、つまり…………?」
「私のような存在が新人類であるのなら既に世界は戦争のない理想郷となっているということです」
そう言ってアリアは自嘲するように吐き捨てた。
どこまで行っても人間は欲深く、浅ましく、そしてどうしようもないくらいに闘争を望む存在だ。
人の歴史は闘争と欲望の集大成であり、ジオン・ズム・ダイクンが言うような存在など絶対に現れるわけが無い。
何故なら人間という種族の業を一身に受けたのが
故にアリアは認めることなど絶対にない。ニュータイプなど所詮はジオンのプロパガンダであり、ジオン・ズム・ダイクンの妄言であると切り捨てる。
慈愛の精神? 生憎だが私は博愛主義者ではない。私は私の大切な存在しか慈しむことしか出来ない。私は救う命を理不尽に選ぶ。それ以外など切り捨てる存在をどうしてニュータイプといえるだろうか?
それでもニュータイプと断ずるのなら何処ぞの陰険オールバッククソメガネもニュータイプである。
「ふぅ、こんなところですかね」
「あ、終わった?」
「ええ、はい。元々ジオンのモビルスーツに使われていた装備ですので連邦のものとは規格が違いますし、付けてからシミュレーションでしか動かせてないのと本来の機体の稼働データを参考にしましたが、殆ど大まかなセッティングしか出来ませんでした。
細かい調整は結局実機でテストしない限りにはなんとも」
ブルーはたしかに高性能だが、サザンクロス隊と戦ったことで重力下においてはホバー機構は脅威だとアリアは痛感する。
故にアリアはテムに無理を言って鹵獲した3機のザクと爆散したが使えそうなパーツでニコイチし、ガンダムとブルーディスティニーの予備パーツと切った貼ったをして試験的にブルーへ採用。
そして先程までアリアが行っていたのがホバー機構を移植するにあたって生じた操作系の不具合の調整だ。
「操作感は大幅に変わるでしょうが、そこはまぁおいおい慣れていけば……と言った感じですかね」
コクピットシートから立ち上がり、コクピットハッチの縁からデッキへ飛び移ると凝った背筋を伸ばすように両手を上げてストレッチを行う。
パキパキと凝った関節から音がなり、アリアは軽い柔軟を行いつつ何となくデッキに座っていたミアを見ると彼女は近くになにかの紙を広げ、虚空をリズミカルに叩いているのが見えた。
「ピアノの練習ですかミアさん?」
「うん、といっても鍵盤を打てないからイメージ練習だけどね……」
「コンクールが迫っていましたけど、ジオンが攻めてきたせいで出れなくなりましたからね。残念です、折角ステージでミアさんの演奏を聞けると思ったのに」
「アリアちゃん、私のお家でよく聞いてたでしょ? それにあれくらいのコンクールなんて何度も受賞してるし、今回行けなくても特になんとも思わないかな〜」
実はミアはピアノが得意だったりする。コンクールでも何度か賞を受賞しており、近々地球での大きなコンクールの出場予定だったのだ。
「あくまでも練習という形で、ですよ? どうせなら親友の晴れ姿を見たいではありませんか」
「えー、私はアリアちゃんと
「ミアさんの前で素人の私がヴァイオリンを演奏するのは自分の下手さが際立って嫌なんですが……」
「アリアちゃんが下手だったらヴァイオリン習ってる同年代の子達はみんなド下手になっちゃうよ?」
サイド7で何度かアリアは彼女の家に招待されており、その中でミアに根負けする形で彼女の指導の元アリアがヴァイオリンを演奏しミアと二重奏をしてたりする。
何事もそつなくこなすアリアだが、音楽に関してミアは天才的というのがアリアの嘘偽りない思いだ。
「お世辞として受け取っておきますよ」
「本心なんだけどな〜……」
ミアは唇を尖らして言い、アリアはその様子を見て淡く口角を上げる。
「では戦争が終わったら共に何処か適当な二重奏のコンクールに出ますか?」
「! うん、そうしようよアリアちゃん! 私とアリアちゃんならコンクールなんて総なめだもん!」
アリアからの提案にミアは面白いくらいに食いつき、尻尾があるなら残像が見えるほど揺れているだろう。
その様子に今度こそアリアは吹き出してしまった。
そうしてると───
『未確認の機影を確認! 繰り返す、未確認の機影を確認! パイロットは機体に搭乗後、待機されたし! 繰り返す、パイロットは機体に搭乗後、待機されたし!』
不躾なサイレンと共に放送が鳴り響く。
「…………はぁ、本当に空気を読めない連中ですね」
せっかくの楽しい空気をぶち壊され、アリアは露骨に機嫌を悪くした。
取り敢えず移動し、更衣室でアリアがパイロットスーツへ着替えるとミアは徐にアリアの腰へ腕を回し、胸元へ顔を埋める。
「あの、ミアさん?」
「おまじない! アリアちゃんが無事に帰って来れるように!」
「……では、私も」
「えへへ」
アリアもまたミアの細い腰へ手を回し、優しく抱き締め返すとミアは頬を緩ませた。
しばしの間、2人だけの時間が流れていると。
「あー、お二人さん? すまないが時間を押してるのだがね?」
「わひゃ!?」
「おや、父さんですか……すぐに準備をしますね」
更衣室の外からそんな声が聞こえ、ミアは思わず声を上げてアリアから距離をとる。扉の方へ覗けばそこにはなんとも言えない顔をするテムの顔が見えた。
「お、お義父さん!? わ、わー、ごめんなさいすぐに降りますね!!」
「ミアさん、足元にお気を付けてくださいね」
「アリア、なんというかお前は人たらしだな」
「? ただのスキンシップですよ。父さんは変なことを言いますね」
慌ててテムの傍を通り過ぎていくミアを見送るアリアへテムは言うが、アリアはその真意がよく分からず答える。
そんな様子にテムは娘の未来を思い、曖昧な笑みを浮かべるしか出来なかった。
「最近の子はなんというか、進んでいるなぁ……」
『アリア・レイはブルーディスティニーで出ます!』
カタパルトから射出された蒼い背中を見送り、テムは呟く。アリアがミアと仲がいいのは知っているが、先の光景はなんというかもう親友とかそう言うものには見えずミアの表情も完全にアリアにホの字とかいうやつだ。
「うーむ、親として健全な付き合いをして欲しいが……そういう時代と許容すべきか……」
地球ってお堅いのね?
「……なんか変な電波が聞こえたな」
「ガンダム出るぞ!! 背中に立つなよ!」
白い背中が射出される。
「えぇ!? 誰がガンダムに乗ってるんですか!?」
「え? セイラさんがブライトさんの特命っていってたけど、違うのかい?」
「いや、しかしなぁ……」
「父さん! セイラさんが勝手にガンダムに乗っちゃったけど!?」
「ん!? どうしたアムロ?」
思考の渦に沈んでいたテムを引き戻したのはアムロの声で、テムが聞き返すとアムロは指先を外へ向けて叫ぶ。
「だから! セイラさんがガンダムに勝手に乗って出撃したんだよ!」
「…………ワッザファック!!?」
寝耳に水とはこういうことを言うのだろうと、のちにテムは語るのであった。
宇宙世紀より遥かに宇宙開拓が進んでる世界の記憶があるアリアにとってニュータイプ論なんざ欺瞞もいいところですよねー。
実際、宇宙世紀の後の時代を知ってると・・・・・ね?(宇宙戦国時代とかクンタラとかetc.etc.)
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体