機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
蒼い装甲の一部に褐色の混じったブルーディスティニーが砂漠に降り立ち、足裏が砂に接地する前に僅かに浮き上がった。
「……きちんと動作してますね」
『報告:ホバーエンジンの出力、許容範囲内』
「不具合が発生したら直ぐに停止させなさい」
『了解:命令を受諾』
高機動型ザク地上型のホバーエンジンは問題なく動作しており、アリアは一先ず第1関門は突破したことに安堵の息をこぼす。
そして次の問題は戦闘に耐えられるかどうか、だ。
「レーダーは……ミノフスキー粒子でほとんど使い物になりませんよね」
『肯定:ミノフスキー粒子下では有視界でしか確認のすべはない』
モニターに映るのは遠くに見える1つの機影のみ。アリアは遠望カメラから撮った画像を解析にかければ、該当する兵器がひとつ表示される。
「ギャロップ?」
『解説:ギャロップとはジオンが重力下において砂漠地帯で運用する陸上艦艇。装甲は薄いため、そこまで脅威ではない』
サザンクロス隊から鹵獲したザクから吸い出したデータが早速仕事をしてくれとようで、ホワイトベースに攻撃を仕掛けてきている兵器が何なのかを教えてくれた。
それと同時にブルーの後ろにカタパルトから射出されたガンダムが着地したのだが、何故か接地と同時に大袈裟にしゃがみこんだかと思えばそこから立ち上がるのも何処かぎこちない。
アリアは訝しみながらも今は目の前の敵を片付けるのが先決だと思い、無線通話の回線を開く。
「兄さん、私が先行しますので援護を頼みます」
『─────』
「兄さん? 聞こえてますか? 聞こえてるのなら返事をしてください」
『─────』
「?」
アリアは無線状況を確認するがきちんとガンダムとの回線はオンラインのアイコンが灯っており、こちらの入出力に問題は無い。
ではどういう訳だ? と思ったところでガンダムから発光信号が届いた。
「無線回路に異常あり、戦闘行動に問題なし……ですか。分かりました」
会話できないのは不便だが、戦闘に支障が無さそうなら問題ないとアリアは判断するとすぐに意識をギャロップへと向ける。
「行きます!」
アリアはペダルを踏み込み、一気にブルーを前進させる。ホバーの恩恵によってわざわざ地面を踏み込むことなく、一瞬で最高速度へ到達し砂漠を疾走するのだった。
「っ……うぷ、シミュレーションで何度も練習したはずなのにGがこんなに凄いなんて……おえっ」
本来ならアムロがいるはずのガンダムのコクピットにて、発進時のGによる負荷で顔を青く染めたセイラがそこに収まっていた。
「こんなものをアリアちゃんは出撃の度に味わっていたというの……?」
モニターに映るガンダムの前に立つブルーディスティニーの背を見つめ、畏れともとれるような感情を滲ませた呟きをセイラはこぼす。
「いいえ、今はとにかくジオンの兵と接触しないと……!」
セイラにはどうしても確かめたいことがあった。ジオンの赤い彗星シャア・アズナブルが過去に生き別れた自分の兄であるかを確かめるために。
『兄さん、聞こえてますか? 兄さん、聞こえているのなら返事をしてください』
するとブルーからの通信が聞こえてきたが、ここでガンダムにいるのが自分だと気付かれるわけにはいかないセイラはどうやって返答するか悩んだ。
悩んだ後、セイラは発光信号によるメッセージを送る。
『……わかりました。無線が使えないのなら兄さんは支援に徹してくださいね』
(ごめんなさいアリアちゃん)
一先ず納得してくれたらしいアリアにセイラは謝罪の言葉を念じると同時にブルーが凄まじい勢いを持って砂漠を駆け出すのを見送るのだった。
「ッ!」
EXAM起動中の最大稼働時よりも優しいがそれなりに強いGを受けながらもアリアは砂漠を猛然と突き進む、
「その程度の弾幕で……!」
飛んできた砲弾や機銃の弾幕を前進しながらも横方向へブーストを吹かすことで擬似的なクイックブーストを実行。瞬時に横方向へとかかるベクトルの凄まじいGによってモニターの景色がブレるが構わずに直進。
すぐ側の砂地に砲弾が直撃し、盛大に砂の柱が空へと登るがアリアの方に恐怖はない。
狙いを絞らせないようにジグザグにクイックブーストを交えつつ、有効射程まで近づいたブルーは肩部に増設されたミサイルコンテナからミサイルを吐き出した。
空を進んで行ったミサイルはギャロップの上方に位置するとその側面のカバーが外れ、内部からマイクロミサイルが解き放たれる。
大量のマイクロミサイルを見てギャロップは慌てたように機銃による斉射で迎撃を開始するが、その数と大きさから全てを撃ち落とすことは出来ずギャロップへと降り注いだ。
『くぅ……!? 損害状況は!』
『損傷軽微! 問題ありません!』
『わかりました。とにかくあの人たちが出るまで回避運動を続けつつ木馬と蒼い死神の注意を引きなさい!』
『了解しました!』
見た限りギャロップの船体にはそこまでの損傷はなく、アリアはあくまで牽制程度の攻撃だったのでこれで落とせるとは思ってもいない。
アリアはブルーの両手に装備した大型ショットガンとロングバレル仕様のブルパップマシンガンを構え、引き金を引いた。
ギャロップの周囲を回るようにして移動しつつ、散弾と弾丸がギャロップの側面から飛び出たジェットエンジンとホバー部分へと突き刺さる。
「ビームライフルを使えればすぐにでも終わるのですがね……!」
『くっ、先に足を止めさせるつもり!?』
ブルーディスティニーに移植したホバー機構は元々規格が違うのに加えて突貫で仕上げたためにエネルギーの伝達系をまだ最適化出来ておらず、それによってエネルギーロスが多くジェネレーターの出力の多くを食われる事態に陥った。
従って、ブルーはビーム兵器を使用できなくなってしまったために、それによって減った火力を過去に乗っていたガンキャノン重装型高機動カスタムのように全身に実弾兵装を増設させることで補う。
それによってブルーの機体重量は増加したが、ホバー機構とバックパックをガンダムが使用している同様のものへと変更したことによって、むしろ改修前よりも機動性は上昇したとも言えた。
お陰でブルーはギャロップを翻弄しており、そう時間も掛からずに落とせるだろう。そう、何も無ければ。
そして、案の定言うべきか問題は発生する。
『きゃあぁあっ!!?』
「ッ! 何事ですか!」
『報告:ガンダムにダメージを確認。救援を推奨する』
「は? 何故!? 兄さんが遅れをとったのですか!?」
『否定:ガンダムのパイロットはアムロ・レイではなくセイラ・マスの模様』
「どういうことですか……! ああ、もう……もう少しで落とせそうだと言うのに……!」
COMからの報告にアリアは叫び、モニターには至る所から煙を吐き出すギャロップの姿が映っており、サブモニターには傷ついたガンダムの姿が。
アリアは口惜しげにもう片方のジェットエンジンへ散弾を叩き込んだ後にガンダムへ救援に駆け出す。
「あぁ、クソ! ガンキャノンってこんなに鈍かったか!?」
ガンダムではなくガンキャノンのコクピットで機体のレスポンスの悪さに叫びながらアムロはグフ・カスタムへビームライフルを放った。
しかしそのビームをグフ・カスタムは危うげなく回避し、逆にシールドのヒートロッドを振りかぶる。
「チッ!!」
アムロはガンキャノンに装備させていたガンダムハンマーを振るうことでヒートロッドへ鎖を絡ませた。
『ぬぅ、赤いやつも中々やるな!』
グフ・カスタムとガンキャノンの綱引きの様相となり、コクピットの中でランバ・ラルは賞賛の言葉を向ける。
ブルーディスティニーとセイラ駆るガンダム、ホワイトベースがギャロップへ注意を向けている間に部下たちと共に背後から強襲しガンダムへダメージを与えたはいいがアムロがガンキャノンに乗り込んで襲撃したことで何とかガンダムが鹵獲されるのを防いだ。
だが、足手まといのセイラを守ってラル達を相手するにはガンキャノンでは些か力不足といえ、事実アムロはガンキャノンの反応の鈍さに叫び散らかしていた。
それでも人数不利でも戦えてるのは一重にアムロの技量の高さとも言えよう。
しかし、このままではジリ貧と思っていた所に。
『どきなさい木っ端風情が!』
『ら、ラル大尉────
『アコース!!?』
ラルのグフ・カスタムとは別の通常型のグフを上半身と下半身を切り裂き、爆炎を引き裂いて両手にヒートダガーを握るブルーディスティニーが現れた。
「アリア!」
『兄さん、セイラさんは!?』
「何とか無事だ! 悪いけど前衛を頼めるか!?」
『承知しました!』
アムロの頼みをアリアは即座に承諾。ラルのグフ・カスタムへと斬りかかる。
『クソッ、蒼い死神めよくもアコースを……!』
「ハッ! お仲間を殺られてお怒りですか!?」
シールドを投棄したグフ・カスタムはヒートサーベルを引き抜き、斬りかかってきたブルーの斬撃を受止めた。
火花が飛び散り、鍔迫り合いを行う中で至近距離によるオープン回線で聞こえてきた怒りの声にアリアは嘲笑を送る。
『この声、子供だと!?』
「毎度毎度思いますけど、コロニー落としなんてしておいて今さら寒い事言わないでくれますかね!」
『ぐぁ!?』
アリアの声を聞き、動揺したグフ・カスタムの横っ面を殴り飛ばし堪らずグフ・カスタムはたたらを踏んだ。
「起きなさいブルーディスティニー!」
『設定:タイマーをセット』
ブルーディスティニーのセンサーが深紅の光へと変わり、アリアの思考がEXAMを介してブルーと繋がる。
『なにっ!?』
閃光が走り、グフ・カスタムの左腕が宙を舞って地面へ落ちた。
目で負えない程の速度でヒートダガーを振るい、次々にグフ・カスタムの装甲の表面に斬撃の傷が刻まれる。
「チッ! 実体剣って使いにくいですね!!」
ビームサーベルよりも遥かに重い近接兵装の扱いにアリアは眉間に皺を寄せて叫ぶ。
『ぐぅぅう!?』
EXAMによって遥かに機体の操縦性に自由度のあるアリアと違い、ラルはあくまでも操縦桿を用いたもののために反応速度の差で翻弄されていく。
加えてクイックブーストとホバーの併用で最早ラルが落とされるのも時間の問題と言えた。
「これで、最後……!」
『不味ッ……!』
一際大きくグフ・カスタムの攻撃が弾かれ、大きく上体を逸らす。
アリアはコクピットへヒートダガーの切っ先で貫こうと───した瞬間。
『警告:ホバーユニットの出力に異常を確認。強制停止を実行』
「え、こんな時に……きゃ!?」
脚部のユニットがオーバーヒートを起こし、黒煙を上げてブルーの姿勢が崩れたためにヒートダガーの切っ先がズレたことによりグフ・カスタムの装甲の表面をかするに留めた。
『ッ、ハモン撤退だ!!』
「待ちなさい!」
なんとか姿勢を安定させ、アリアは追撃を行おうとするが見事な手際で徹底していくグフ・カスタムとギャロップを見送ることしか出来ず、すぐにアリアは追うのは無駄だと察する。
「……はぁ、動作テストもせずに最大出力でぶん回しすぎましたね」
サブモニターに表示されたホバーユニットのコンディションを見てアリアは顔を顰めた後、振り返るとそこにはボロボロなガンダムと頭部を掴んでグフを引きずるガンキャノンの姿が見えた。
『アリア、助かったよありがとう』
「いえ、この程度問題ありません。兄さんはどうですか?」
『僕の方はなんとも。問題は……』
「セイラさんですか」
ブルーディスティニーとガンキャノンの頭部が同時にガンダムへ向く。そこには傷だらけのガンダムがおり、アリアの目もどこか冷ややかだ。
「とりあえず色々と言いたいことはありますがホワイベースに戻りましょう」
『そうだね。一応捕虜もいることだし』
「はぁ、全く面倒なことをしてくれましたね……」
アリアは胡乱な目をガンダムの中にいるセイラへ向けながらブルーディスティニーをホワイトベースの元へ向かわせようと操縦桿を動かそうと────して違和感に気づく。
「あれ?」
『アリアどうしたんだ?』
「兄さん」
『うん?』
「…………ブルーが動きません」
『…………そっか』
やはり突貫で仕上げたものをぶっつけ本番で酷使するのはダメらしい。
強化ブルー沈黙!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体