機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「そんな……! アリアを探しに行くのを禁止するってどういうことですかブライトさん!」
『何度も言わせるなアムロ准尉。アリア・レイの捜索をする暇などないと言っているんだ』
「暇!? アリアが攫われたんだぞ!!?」
『そうだ。だからどうした? ホワイトベースは現在オデッサ作戦の作戦予定地に1秒でも早く向かう必要がある。
それをわざわざ足止めしてまで民間人をどこにいるかも分からないジオンの部隊を探しにいけと? そんな余裕も暇も我々にはないんだ』
「ふさげるなよ!? あの子は今、ジオンの連中に乱暴されてるかもしれないんだぞ!」
『2度も言わせるな。軍人として階級があるのならお前は上官からの命令に従う義務があるんだ』
話は終わりだ、とモニターに映るブライトが言い捨てると通話を切ってしまった。
「クソッ、畜生……!」
アムロは悔しげにうめき、手に持った受話器を叩きつけるように戻す。
「妹すら救い出せないのに、なにが軍隊だ……!」
その目には怒りと後悔が滲み、そしてその目が己の乗機……ガンダムに止まるのだった。
「──────ッ!!!」
ロッカールームでブライトは声にならない怒声と共にロッカーの1つへ爪先を叩き込む。
何度も、何度も、何度も。
アリアが捕虜として捉えていたジオンの兵に人質として囚われ攫われた。
その原因がよりにもよって自分が命令したクルーがボディチェックを怠ったことが遠因という。
「クソが! 何のための階級だ! なにが、なにが!!」
原型を留めぬほどロッカーの扉が歪み、あらん限りに叫んだ。今はただ、己の無力が憎い。
ひとしきり鬱屈とした思いをロッカーへ吐き出したブライトは荒い息を整え、ロッカールームから出た瞬間にブライトは驚愕の声を叫んだ。
「一体誰がガンダムに乗っている!? 出撃の命令は無いはずだ!」
視線の先にあるモニターに映っていたはガンダムがカタパルトへ接続している姿があり、作業員たちも動揺している様から明らかに想定外らしい。
『軍人が家族を1人救いに行けないのならやめてやる!!』
「っ、辞めろアムロ! 馬鹿な真似はよせ!」
『アリアを見つけるまで戻ってきませんから!』
そして、ガンダムはカタパルトによって射出され空中へその機体を投げ出した。
「……馬鹿野郎ッ」
伸ばした手は下ろされ、ブライトの言葉は虚空へ解けて消えていく。
ホワイトベースがてんやわんやしてる中で当の本人はどうしてるかと言うと…………
「…………(すごく嫌な顔)」
「ふふっ、愛らしい顔が台無しよ?」
化粧台の前に座らされ、肌触りの良いドレスを着させられた挙句軽いメイクもさせられていた。
「一応、捕虜という扱いでは?」
「ええ、そうね。でもこんな原石を磨かないなんて勿体ないわ」
「???」
てっきり尋問されるかと思っていたのに、何故かラルの妻らしき女性から可愛がられてる現状に流石のアリアと困惑を隠せない様子。
「……あの」
「なにかしら?」
髪を梳かれる途中、アリアが警戒を隠さないで問う。
「貴女とあのランバ・ラルという人は私が貴方たちの言う蒼い死神、ブルーのパイロットであると知ってるのでは?」
「えぇ、そうね」
「では、何故このようなことを? ……私はジオンではお尋ね者のはずでは?」
「…………私とあの人は愛し合っているわ。でも、あの人はあぁいう生き方で籍をいれてないし、子も成していない」
「……仰る、意味がよくわかりません。私を使って慰めてるのですか?」
女、ハモンはアリアの言葉に微笑んだ。
「ふふっ、違うわよ。私たちにも分別はあるということを言いたいの……まぁ、連邦からすればコロニー落としをした分際で何を言ってるんだと思うのでしょうけど」
やりにくい、アリアの感じた思いはそれだった。ハモンからは伝わるのは敵意ではない、何処かむず痒いナニかを感じ取りイマイチ警戒心を抱けない。
「訳がわかりません。貴女方が言うには私のためらしいですが何をする気ですか?」
「そういえば説明をしてなかったわね。貴女の乗っているモビルスーツが指名手配をされている事は知っているわね?」
「ええ、はい」
「これからすることは貴女を守る意味もあるのよ。幸いにも貴女の顔は割れていない……上手くいけば貴方のご家族とも無事に再会できるわ」
「…………ッ!」
ハモンのその言葉にアリアは僅かに反応を示し、そしてそれが迂闊だったと悟る。鏡に映るハモンの顔には微笑みが浮かび、バツが悪そうにアリアは睨みつけた。
「本当なら貴女を木馬に帰してあげたいところだけど、蒼い死神を討ち取ることを任務にしてる手前帰す訳には行かない。
加えて、貴女はとても強いわ。それこそあの人が運に救われなければ何度も落とされていたほどにね」
「ホワイトベースの戦力を戻す訳には行かない。けれど、私を傷つけることはしたくない……だからジオンの基地へ送るということですか?」
「その通り。オデッサの司令、マ・クベ大佐はいけ好かない男だけど、民間人として保護をしたという経緯で貴女を送ればあの男も貴女のような女の子を無下にもしないはずよ。
木馬の方は……最悪、蒼い死神の機体だけを破壊出来ればドズル閣下からの命令をこなした形になるもの。その後に貴女の身柄を連邦へ保護させればいいってところね」
「穴だらけですね」
「……かもしれないわ。コズン中尉が言うには木馬のクルーの大半は民間人上がりのようだし話しさえ通れば、貴女の身柄と引き換えに蒼い死神を交換できるわね」
「交渉が上手くいかなかった場合は?」
「……出来れば上手くいって欲しいけれど、そうなった場合は敏い貴女なら分かるでしょう?」
ハモンからの問いかけにアリアは答えることはなかった。
「一応私も着いていくから、貴女は心配しないでいいわ。さっ、行きましょうアリアちゃん」
「…………異論はありませんが、わざわざ身嗜みを整える必要があったのですか?」
鏡の前には簡素ではあるが、それなりに上質な布を使われた白のワンピースドレスに
「ふふっ、男所帯でやってきたところにやってきた可愛い子なんだもの。着飾りたいって思うのは女として当たり前のことよ?」
「……いつかのフラウさんやミアさんみたいなことを言ってます」
茶目っ気を滲ませて言うハモンにアリアはすっかりとゲンナリした様子で呟くのだった。
ハモンに連れられ部屋からギャロップの外に出ると、そこにはラルと副官のクランプという男と見知らぬ眉毛が太い男が何かを話しているのが見える。
「あなた、連れてきましたよ」
「うん? おぉ、そうか。……初めて見た時から愛らしかったが、めかしこんでみれば更に美しくなったかアリア嬢よ」
「……(ムスッ)」
「ハハハ、すっかり嫌われたものだ。オホン、ウラガン少尉。この少女が保護した民間人の子だ」
「ええ、はい。確かに確認しました。マ・クベ大佐もオデッサでハモン女史と共に民間人の身柄の保護を引き受けるのは異論ないようです」
「それは良かった。これから我々は死地へ赴く故、戦えぬ2人を連れて行くわけにはいかないからな」
「あなた、どうか無事に帰ってきてくださいね?」
「もちろんだハモンよ。アリア嬢、多少不便な目にあうだろうが暫しの辛抱だぞ?」
「…………(ベ-)」
「ハハハ、随分と嫌われたものだな。では少尉、2人を頼む」
「ええ、はい。この身に代えてでも2人を送り届けます」
離れた場所に河豚の両ヒレをフローターに変えたような形の不格好な輸送機、ファットアンクルが止まっており丁度前面のハッチが開かれ内部から見慣れぬモビルスーツたちが現れた。
「ドズル閣下より回されたこの『ドム』ならば何とかなるやもしれないな」
「……ドム」
重厚な装甲とこれまでのジオンのモビルスーツと違った頭部デザインを見てアリアは今は会えぬ家族と、親友、ホワイトベースへ意識を向ける。
そして、ファットアンクルはゆっくりと上昇すると直ぐに飛び去るのをラルを見送るのだった。
「…………木馬の戦士たちよ、どうかお前たちが理解ある者であることを祈るぞ」
その呟きと共にラルは踵を返し、部下たちへと号令を送る。
「ふむ、民間人を保護……ね。突撃しか能のない武人気取りの猪かと思えば小癪な真似をするものだ」
ジオンが地球で保有する最大の鉱物資源採掘基地『オデッサ』にてその爬虫類めいた人相をもつ男は口角を皮肉げに歪めていた。
彼が執務に使う机の上には上等な白磁の壺が置かれている横に、とある書類が広がっている。
それにはアリアの写真といくつかの文が記載され、その内容は本来なら連邦軍において最高機密であるはずのことが書かれていた。
「エルラン中将からあの蒼い死神の正体を聞かされた時は驚きはしたが、まさかその本人がこうして手元に転がり込んでくるとは思わなんだ」
クツクツと愉快げに笑う男はそう言って徐に壺へ近づけば、その表面を小突く。
澄んだ音が部屋にひびき、その音色を聞いて気分を良くした男は益々口元を歪めた。
「精々利用させてもらうとしよう」
オデッサ基地司令『マ・クベ』大佐は己の元に来るであろう存在を待ち遠しそうにして呟く。
あのエルランがアリアのことマ・クベに知らせないわけないじゃんね。だって核兵器の場所すらバラすようなカスだぜ?
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体