機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「まさか連邦上層部に内通者がいるとは思いませんでしたね」
「……ごめんなさいアリアちゃん、まさかこうなるなんて」
「ハモンさんが悪い訳ではないでしょう? 悪いのはあのワカメ頭と裏切り者ですよ」
申し訳なさげに頭を下げるハモンに対してアリアは目の前の電子錠を睨みつけながら気にした様子もなく答える。
それなりの広さのある空間、そこは上等なホテルのような一室ではあるのだが窓はなくそして出入口も厳重な分厚い鉄の扉で塞がれた場所に2人はいた。
『ようこそ、ハモン女史。そして初めまして
私こそがオデッサの責任者、マ・クベ大佐だ』
開口一番、いきなり身バレしてることを告げられたのを思い出しながらアリアはため息をこぼし、振り返るとハモンへ言った。
「流石に壺で顔面を殴ったのはダメでしたかね?」
「ふふっ、あの時の副官の顔は痛快だったわ。でもアリアちゃん、あまりあぁいうことをしてはダメよ?」
マ・クベによって名を言われた瞬間、アリアは机の上に置いてあった高そうな壺を掴み取ってマ・クベの顔面へフルスイング。
盛大にマ・クベの爬虫類みたいな顔をボコボコに殴り散らしたまでは良かったが、すぐに部屋の外に控えていた兵士たちに取り押さえられてしまったのだ。
まぁ、次いでとばかりに麻酔銃を撃たれて眠らされるまでに兵士数人のコムサイを叩き潰してやったわけだが。とにかく、意識を失ったアリアはハモンと共に同じ牢獄へぶち込まることとなる。
それからは特になにもなく、ひたすらに待たされハモンは麻酔銃によって眠っていたアリアを介抱しつつ時間が過ぎ、麻酔の効果が切れアリアが目覚めて場面は最初に戻ったわけだ。
そしてアリアは目覚めるまでに何が起こったかをハモンに聞き、自分たちは謀られたことを知る。
といっても、自分たちが先にやろうとしたことをやり返された訳だが、そこら辺についてはべつにアリア自身も気にしてない。
(はぁ、脱走しようにも見事に鍵が掛けられてますし恐らく監視もされてるでしょう……どうしたものですかね?)
(殺されは……しないでしょうね。私の存在は連邦にとって致命傷とはいかないまでも
(なんとか電子機器に接続させれば隠し持ってるコピーのデータを流し込めるのですがね)
アリアは顎に細い指を当て、思案する。なにも考え無しにアリアはあのマ・クベとかいう
わざと指揮官をぶん殴ることで部下たちを動揺させ、詳しいボディチェックをさせないようにしたのだ。
お陰で、どさくさに紛れて髪に紛れ込ませていたものを飲み込むことが出来ている。
「んべっ」
吐き出した唾液まみれの小指の第一関節ほどの大きさの小さな容器が手のひらに転がり、アリアはそれを弄びながらハモンへ問いかける。
「ハモンさん」
「なにかしらアリアちゃん?」
「この扉って開けることできます?」
「……どうして、そう思うのかしら?」
「そこまで貴女が深刻そうに見えませんでしたから。もしかしたら手段があるのでは? という希望的観測です」
「この状況でも何一つ怖がらないのね貴女は?」
「まぁ、多少の動揺はありますよ。ですが向こうは私を利用したいでしょうからそこまで手荒なことをしないという確信がありますからね」
アリアは指を立てた。
「まずひとつ、ジオンは国力に優る連邦との戦争なんてさっさと終わらせたい。ですが、レビル将軍が演説でぶちまけたので泥沼化しており落としどころが見つからない。
ふたつ、そんな中で私のような存在……未成年のジュニアスクールに通っているような子供を連邦が兵士として戦わせている事実。これは連邦にとってつつかれたくない不祥事でしょう。
みっつ、連邦というのは民主主義国家です。民衆というのは綺麗事を望みます。そして、その民衆から選ばれた政治家は自分の票を守るために、その民衆からの言葉に従わざるを得ない。
以上の事から私はジオンからすれば連邦を責めるに足る、格好の良い的ですから」
だから、基地の司令をぶん殴ってもこんな丁重な扱いをされているわけです、と言い終えたアリアを前にハモンは表情には出さないが内心で驚愕を隠せない。
事実、ジオンは既に疲労しきっていて本国の政治家やデギンですら厭戦ムードとなっており未だに徹底抗戦を言ってるのはろくに情勢の読めない愚かな民衆と兵士だけだ。
連邦なども言うべきもない。既に長期化してる戦争で連邦市民も嫌気がさしており、いつ自分にその火の粉がかかるか不安と不満でしょうがないだろう。
その中で不祥事とも呼べるようなアリアに日の目が当たればどうなるか? 答えは簡単。連邦の民衆は不満をぶちまけるはずだ。
そして、その民衆に圧された政治家はどうなる? 答えは簡単、終戦を叫ぶだろう。奴らは自分の利益になるのなら簡単に手の平を返す。人の生き死によりも自分の票が、議会の席が大事なのだから。
だからマ・クベはアリアを乱暴に扱えない。アリアという札は陰謀家でもある彼にとって切り方を見極めればとてつもないリターンを運んでくるジョーカー。
自分の立場を正しく理解する……というのはいいが、それをしてるのが11の子供なのだからハモンはこの少女はとてつもない存在なのだろうと記憶の奥にいるいつかの兄妹を思い出し、姿を重ねた。
「はぁ、恐らくはマ・クベもこのことはキシリアへ報告するでしょうし私たちはジオンに居場所は無いでしょうね。例え無事に済んでも、適当な最前線へ向かわせて使い潰されるのが関の山でしょうし」
「では連邦へ亡命します? 父さんはどうやら連邦の将軍にツテがあるみたいで場合によっては部隊の皆さんも助かりますよ」
「ふふっ、なら一蓮托生と言うやつかしらね?」
「頼りにしてますねハモンさん」
アリアとハモンは互いに悪い微笑み浮かべる。
「なぁ、知ってるか? この中にいる子、クベ大佐の顔面ぶん殴ったらしいぜ?」
「知ってる知ってる。お気に入りの壺で殴った挙句鼻をへし折ったらしいな。
オマケに鎮圧されるまでに何人もマゼラトップ砲の弾薬庫を潰されたらしい……」
「あんな可愛い顔しておっかねえ……初めて見た時はやんごとなき身分のお嬢様かとおもったんだけど、人は見かけによらねぇんだな」
「いや、実際やんごとなき身分っぽいだろうけどな。だってあの大佐が顔面をぶん殴られてお気に入りの壺を割られたってのに、お咎めなしどころかこの高級士官用の独房にいれて食事も俺たちが食うようなやつじゃない天然のフルコースってんだから。それだけ大物の関係者なんだろうよ」
「はー……」
「にしても、連邦の連中もそろそろ攻め込んでくるらしいな」
「らしいな。別の戦線のやつから聞いたけど、めちゃくちゃ集結してるらしい。噂によるとレビルが出張ってるらしい」
「マジ? じゃあここで今度こそレビルを始末すればジオンが勝てるな」
「かもな!」
独房を見張っている兵士の2人が会話を咲かしていると、不意に内側から扉が叩かれる。
『外の見張り! 聞こえてますか!? アリアちゃんが突然痙攣しだしたの!! 早く医務室に!!』
「うぇ!? ま、マジかよ!! どうする!?」
「どうするって……大佐に言った方がいいだろ! 俺らが勝手に判断出来るわけねぇし!」
「だ、だよなぁ……」
『早く開けなさい! 手遅れになってもいいの!? そしたら貴方たちなんて物理的に首が飛ぶわよ!?』
「……やべぇよな」
「……仕方ねぇ、お前見張っとけよ?」
「……わかった」
兵士の片方が小銃を構え、もう1人は手早く電子錠へ暗証番号を入力した。
すると、独房の中から金髪の女性が少女を抱えて出てくる。微かに除く少女の顔色は蒼白となっており口の端からは泡が出ているのが見えたことから明らかに急を要する状態であると見張りは理解する。
「医務室はどこ!?」
「こ、こっちです!」
金髪の美女、ハモンの剣幕に気圧されたように見張りの兵は駆け足で医務室への道を駆け始めるのだった。
「それで、あの女を逃したと?」
「は、ハッ! ですがアリア・レイは未だこちらの手にあります!」
「なら、いい。今度は厳重に虫一匹入れないほどに見張れ」
執務室にて鼻にガーゼと顔のあちこちに湿布や絆創膏を貼ったマクベはそれだけ言い、兵士を下がらせる。
「まったく、連中の反攻作戦が目前に迫っているのになんという体たらくだ」
ささくれだった精神を落ち着けようとお気に入りの壺を撫でようとして、既にその壺がただの白磁の残骸に変わっていることを思い出して余計に苛立たせた。
「くっ、あの小娘……連邦へのカウンターでなければさっさと殺すかフラナガン機関の実験体へ送り飛ばしていたところだ……! ッヅゥ……き、傷が……!」
顔全体に響く鈍い痛みに堪らず呻きをもらすマ・クベ。そして脳裏によぎるのは忌々しい記憶。
自分が自己紹介をした直後にあろうことかあの小娘は飾っていた白磁の壺を掴んだかと思えば自分の顔面に向けてぶん投げてきた挙句、ドロップキック。そして馬乗りになって顔面を殴り続けてきたのだ。
お陰でマ・クベは鼻の骨を折られ、顔にも酷いアザができておりつい最近視察に来ていた直属の上司たるキシリアにすら『お前、その顔……大丈夫か? 辛そうなら休んだ方がいいんじゃないか?』と心配される始末。
オマケに基地の兵士たちには『ガキ相手に手も足も出なかった間抜けなヤツ』という嘲笑とともに言われるという屈辱も味わっていた。
「ウラガン! 鎮痛剤を……クソッ、アイツは医務室送りされていたな。誰でもいい鎮痛剤をもってきてくれ!」
痛みに顔を顰めながらマ・クベは受話器を叩きつけるように戻し、特注の椅子へと座り込んで背もたれを軋ませる。
「はぁ、さっさとこんな所からおさらばしたいものだよ」
マ・クベのそんな愚痴は宙へ溶けて消えるのだった。
「────」
瞼を開き、アリアは上体を起こす。
「COM、状況は?」
『報告:監視カメラの映像の改竄及び、基地内のマップデータ、電子ロックの掌握完了』
「よろしい。ハモンさんは逃げ切れましたか??」
『肯定:クラウレ・ハモンはワッパを奪取後、サポートの下脱走を成功させた』
1人となった独房のベッドの上でアリアはハモンから渡された小型のインカムを耳に当てていた。
「ふむ、後は連邦軍が攻めてきたどさくさに紛れて逃げればいいですかね。
COM、その時は合図を頼みます」
『承諾:了解』
「さて、内側から食い破られる感覚を味わわせてあげますよジオン」
皮肉げにアリアは微笑み、妖しげに深紅の瞳が輝く。
アリアが吐き出したのはオリジナルCOMのコピーデータの入ったUSBメモリだったりします(補足説明)
大人しくしてるわけねぇーだろ!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体