機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「なっ、アリア・レイが攫われた……!?」
レビルは開口一番に告げられな報告に目を見開いて叫ぶ。まさに寝耳に水とも言えるその情報はこの大事な時に聞きたくないものだった。
既にオデッサ攻略戦の準備は佳境となっており、ホワイトベース隊を背面から強襲させる命令を中断させる。
(不味いぞ、どうする……? ジオンに確保されればプロパガンダに利用されてしまう……しかし、作戦を中止する訳にはいかん……ぬぅぅ)
顔を歪ませ、レビルは思案していると。
「将軍、何やらお困りのようですな」
「……何用かな『グリーヴァ』くん?」
壮年の人相の悪い将校がそんなレビルへと声をかけてきた。顔を上げ、レビルが問えばその男ことグリーヴァという男はレビルへと耳打ちした。
「ちょうどいいでしょう、ここで始末するというのは?」
「……君は、何を言っているのかな?」
「考えてみてもください。どうしようが恐らくジオンはアリア・レイを利用して我々連邦を大々的に非難するでしょう。ですが、それはあくまでも少女が生きていてこそ使える手です。
ここで不幸な事故があってしまっても、それをジオンに擦り付ければ良いのではないでしょうか?」
「……」
一理ある、とレビルは思う。ここを切り抜けようが、どの道アリア・レイという少女を兵士として戦わせたことは連邦にとって汚点ともいえよう。
戦後にはゆくゆく政界へ進出しようとしているレビルにとって不都合な事実は闇に葬りたいからだ。
「…………そういうからには、何か策があるのだな?」
「ええ、はい。とある試験機を持ってきていましてね。それを用いてやればいいでしょう」
「……わかった。では極秘裏にやるように」
「ハッ、仰せのままに」
「あぁ、私だ。いい機会だから例の機体の試験をここで行うぞ」
ビッグトレーの通路をグリーヴァ……否、グレイヴというコードネームを冠する男は通信機を片手に歩く。
「そうだ。どうせならあの少女を実験台に使えるだろうからな。生きてさえいればいい。
そうだ、『ペイルライダー』と『クロエ』は問題ないのだな? ……わかった。進軍が開始したらすぐに起動させろ」
それを最後にグレイヴは通信を終え、懐へ通信機をしまった。
「さて、わざわざ先のないジジィを拾い上げてやったんだ。せいぜい役に立てよクルストの妄執よ」
嗤い、男は愉快げに通路を進む。
微かに独房の中が揺れ、アリアはその微細な振動を感じ取り瞼を開けた。
「大体3日くらいですか。さて、やりますか」
枕の下に入れていたインカムを取り出し、耳を当てる。
「外の監視は?」
『報告:偽装した命令に従い、現在は別の持ち場に向かっている最中。戻ってくる迄およそ3分弱』
「わかりました。誘導願います」
『了解:ナビゲートを開始。電子錠のロックを解錠』
ガコン、重い音を立てて本来なら開くことの無い分厚い鉄の扉が独りでに開いた。
手早くベッドから下りて足音を最小限に扉の隙間から外へ出ると素早くクリアリング。
『誘導:右の通路を道なりに』
「ん」
素早くアリアはCOMの誘導に従い走り出す。
既にCOMがオデッサ基地のマップ情報を取得しており、逐次進路上にいる兵士をアリアへ報告し迂回できそうなら迂回し、どうしても迂回できない場合はCOMが遠隔操作で兵士の注意を引くことで進んだ。
『なぁ、知ってるか? この基地って水爆があるらしいぜ?』
『マジ? いや、でも南極条約で核とかは使っちゃだめだろ?』
『ばーかー、ここの司令が誰か知ってるだろ? あの人ならヤバくなったら絶対使うね』
通気口のダクトを進んでいると、不意に気になる会話を拾ったアリアはインカムを小突く。
「この話は本当ですか?」
『肯定:当基地の最深部には核弾頭が用意されており、マ・クベの一存で何時でも発射可能』
「ふむ……ハッキングでどうにかできますか?」
『否定:弾頭の管理システムは物理的に独立されており、当システムの能力では掌握不能。
補足:但し、外部から侵入出来れば掌握は可能』
「……ルート変更、目標地点更新」
『審議:……アリア・レイの安全は保証しかねる。
推奨:直ちに退避を』
「私が作ったからなかなかに強情ですね。ですが考えてもみなさい、ここで核兵器なんて使われても逃げ場なんてありませんよ? なら、危険を犯してでも止めに動くべきです」
『…………報告:協力者が必要、ブロックPWには連邦軍の捕虜が収容されている。
推奨:彼らを解放し、注意を引くように仕向ければ安全性が向上する』
「それで行きましょう。では頼みます」
『承諾:命令を受諾
更新:新たな目的地へナビゲートを開始』
オデッサ内にある捕虜収容所、その牢屋の電子錠が独りでに開錠された。
「……なんだ?」
独房のひとつ、捕虜となっていた連邦の士官が伏せていた顔を上げて怪訝な表情で見遣れば開かないはずの格子の扉が開いてるのが見える。
『推奨:現在連邦軍はオデッサ作戦を開始。内部から暴れ、ジオンの注意を引くことが可能』
「……つまり自由ってことか?」
聞こえてきたやけに渋い声にそう言って士官は牢屋から顔を出せば、同じように怪訝な顔を浮かべて扉から顔を出している他の仲間達があった。
「やるか?」
「やるべ」
頷き合い、そして雪辱を晴らすために腹の中から捕虜たちは雄叫びをあげるのだった。
『報告:捕虜たちが反乱を開始』
「それは上々ですね。では、私たちもやりますか」
COMからの報告に満足気に頷き、アリアは乗り込んだ機体を起動させる。
「さて、ジオンの機体に乗るのは初めてですが……まぁ、やれるでしょう」
暗かったコクピット内に無数の計器類が瞬き、各種システムの起動音と共にモニターに光が灯ればその機体のモノアイがグポンと音を立てて光を放った。
全身を暗い紫に染め上げ、闇夜に紛れるかのごとく精霊の名を冠する巨人がここに現れる。
「アリア・レイはイフリート・ナハトで出ます!!」
暴れるわよ〜
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体