機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
その日、オデッサは阿鼻叫喚となっていた。
ある者は僚機が物陰に引き込まれたと思えば、コクピットを潰され。
またある者は唐突に機体が宙へ上がったと思えば撃墜され。
またまたある者は物音がしたこと思えば何者かによって背面から串刺しにされたと言う。
そして、暗闇に浮かぶ人魂を見た瞬間に黒いナニかが飛び出しザクを一刀両断されたと言う。
ジオンの兵は言う、亡霊だ。亡霊がでたのだ、と。通信も使えず、レーダーは何も映さない。気がつけば墜とされるのだから怪異でしかない。
連邦軍の大攻勢に晒されている中で、そんな事態へ陥ることとなったオデッサ基地は収容していた捕虜たちが反乱を起こしたことも合わせて機能不全になるのは当然とも言えよう。
そして、その原因を作り出したと思わしき亡霊はというと……
SHINOBI 忍殺 EXECUTION
「……なんか変な電波受信しましたね」
唐突に頭に浮かんだ変な単語を振り払いつつ、背面から強襲しコクピットを貫いたザクからコールドブレードを引き抜いてアリアは息を吐き出した。
黒い三連星とかいう木っ端を仕留めてから1時間弱、オデッサ内の戦力を減らしたり破壊工作をしつつアリアは脱出のためにホワイトベースがいるであろう方向へ進んでいたのだが、問題が発生する。
イフリート・ナハトがそろそろ
イフリートという機体は確かに高性能ではある。しかし、反面にその稼働時間は短く、イフリート・ナハトもその欠点を引き継いでいる。
逃げるだけならば問題はなかったのだが、黒い三連星で思ったよりもクイックブーストにより推進剤などを消費してしまい、そのお陰でこうしてチマチマと隠れ潜み奇襲したりして敵を排除しながら進んでいるのだ。
一重にステルス性能とジャミングのお陰でジオンの連中に気づかれずにいるが、何度も繰り返しているからいい加減学習したのか安易に隙を晒さない動きを見せており、そろそろ一撃で仕留めるのが厳しくなってきた。
「…………もう少しで予測地点にたどり着けそうなのですがねぇ」
『報告:残り推進剤残量30%及び機体コンディション
「頑張ってくださいねイフリート・ナハト。根性の見せどころですよ」
鹵獲したものとはいえ、ここまで酷使した機体にはそれなりに愛着が湧いたのかアリアはそう声をなげかける。
「休息は終わりです。最後のひと踏ん張り、行きましょうか」
家族の元まであと少し、アリアは逸る気持ちを落ち着かせながら歩き出そうとして不意にコールドブレードへ手を添えた。
ピンと張り詰めた空気、僅かに目線を険しくさせアリアは警戒を崩さずに待つ。
そして、暗闇から滲み出すかのようにソレは現れた。
全身を薄い青に染められ、頭頂部にはバイザーを取り付け、ガンダムを思わせる顏に細身なシルエットへ様々な武装を取り付けた何処と無くアリアの乗機に似たモビルスーツ。
曲面を多用したジオンの意匠とは違い、角張った連邦特有の外観にアリアは僅かに肩の力を抜くと回線を開く。
「……そこのモビルスーツ、聞こえてますか? 私はホワイトベース所属のアリア・レイです。
訳あって捕虜となっていましたが、ジオンの機体を鹵獲して脱出しました。
申し訳ないのですが、ホワイトベースまで護衛をして貰っても宜しいですか?」
『──────』
反応は無い。眉をひそめ、アリアがもう一度語りかけようとした瞬間。
『警告:ロックオンを確認』
「ッ!!」
フットペダルを蹴り飛ばし、真横へイフリート・ナハトを跳ばした瞬間に先程までいた場所に幾つもの弾痕が刻まれた。
「そこのモビルスーツ! 私は敵ではありません!! 聞こえてないのですか!?」
『─────』
「こいつっ……!」
返答は折り畳まれていたのを展開したキャノンによる砲撃。アリア即座に目の前のモビルスーツは敵と認定した。
『検索:敵モビルスーツの情報を照合……該当機不明』
「でしょうね……! 便宜上、あのモビルスーツを『UNKNOWN』と呼称!!」
『了解:当該機をUNKNOWNとマーキング』
道中回収していたザクマシンガンを乱射しつつ、ホバーを起動させたアリアはCOMからの報告へ返す。
弾丸は真っ直ぐに連邦のモビルスーツ『UNKNOWN』へ飛んでいき、直撃コースかと思われたが。
「まぁ、当たりませんよね」
簡単に避けられたことに対して気にした様子もなくアリアは呟き、ザクマシンガンとは別に回収していたクラッカーをUNKNOWNへ投擲。
放物線を描いて飛んで行ったそれはUNKNOWNのすぐ真上で起爆すれば、眩いほどの閃光を放った。
「馬鹿正直に相手する訳ないでしょ間抜け」
即座にブーストを吹かし、全力で戦線離脱を選択するアリア。ただでさえ敵陣ど真ん中で味方陣営に襲われるなどたまったものではない。
そもそも乗ってからほんの少ししか経ってない機体で明らかに面倒くさそうな奴の相手をするなどバカのすることである。
幸いにもイフリート・ナハトはステルスとジャミングを併せ持つ機体。逃げに徹すれば早々見つかることは無い……と思ったのがいけなかったのか背筋を這い回る悪寒に従い、アリアは反射的にコールドブレードを引き抜いて反転。
瞬間、凄まじい衝突音と共に膨大な火花が飛び散った。
「ぐぅぅっ……!?」
『警告:駆動部に想定以上のダメージを確認』
「っつぁぁっ!!」
まともに受けるのは不味いと判断、手首を動かし力のベクトルをずらすようにホバーによる重心移動で位置を入れ替えるかのごとくイフリート・ナハトを半回転させる。
そして、すぐ側をナニかが通り過ぎていけば乱雑に地面に二本の轍を作り砂埃とともに停止した。
「それは……!」
煙が晴れ、映し出された姿を見てアリアは目を僅かに見開く。
装甲表面に立ち上る妖しいオーラに全身のセンサーが鮮血の如く赤く染め、バイザーの奥にある双眸を輝かせ片腕にビームサーベルを展開したUNKNOWNの姿を。
「チッ、そりゃブルー以外にもそのシステムを使ってるやつくらいいますよね」
よりにもよってこんな時に出てこなくてもいいだろうに、アリアは胸の内で愚痴りつつもコールドブレードの切っ先をUNKNOWNへ向けた。
「はぁ、来なさいポンコツ。躾てあげます」
『─────ッ!!』
アリアのそんな言葉と侮蔑を感じ取ったのか、身に纏わりつくような粘液めいた殺意が放たれる。
「図星突かれたくらいで怒らないでくださいよ。更年期ですか?」
返答は先程と同じようにキャノンの砲弾だ。
「真正面からぶっぱなす馬鹿がいますか」
真っ直ぐ飛んできた砲弾の側面にコールドブレードの刀身を沿わすように当て、僅かに力を込めればあらぬ方向へ逸れていった砲弾は地面を砕く。
「それで、次はどんな芸を見せてくれるのですか?」
今度はミサイルポッドのミサイルが。
「ふむ」
右腕を掲げ、横へ投げるように振るえばどこからとも無く飛んできた岩がいくつかのミサイルを巻き込んで爆発。
「爆炎に紛れて突撃でしょ?」
『────ッ!?』
視界を塞ぐようにして発生した爆炎の中を突っ切って切りかかってきたUNKNOWNの斬撃にコールドブレードを構え、接触した瞬間に力を込めて一気に押し込む。
近接機体特有の膂力の強さを活かした
「シッ!」
そしてクイックブーストによる前進からの刺突。
空気を引き裂いて漆黒の刃がUNKNOWNのコクピットを貫こうと────した刀身に叩きつけるように神速の速さで抜刀したビームサーベルを叩きつけられ、堪らず軌道がズレたことで肩部装甲を切り裂くに留める。
「チッ、なかなかやる」
バックステップで距離を取り、コールドブレードをイフリート・ナハトの口元あたりで水平に構え霞の構えでアリアは出方を伺った。
UNKNOWNはブーストを吹かし、姿勢を整え着地すると二刀流のサーベルを構えて突撃。
「確かに早い……ですがそれだけですね」
交差させた切り降ろしは僅かに後ろへ下がることで躱す。
逆手に持ち替えたサーベルによる右斜め切り上げをコールドブレードで受け止め、運動エネルギーを利用し左足を軸に回転。勢いを乗せた回転斬りを放った。
それを真正面からUNKNOWNが受け止め、空いている方の手をこちらに向けたこと思えば前腕からビームが飛んできたがその瞬間にワザとブレードの握る力を緩めたことで、UNKNOWNが前のめりとなったことで頭部のすぐ真横をビームが通過。
「フッ!」
『アアッ───!?』
「……女?」
UNKNOWNの顔面を殴り飛ばした瞬間に接触回線で聞こえてきた悲鳴は女特有の高い声で、まさかの相手にアリアは僅かに眉を上げた。
「まぁ、別にいいですね。殺せば終わりです」
ついでに鹵獲出来れば万々歳、ネコ科の猛獣のように空中で1回転して着地したUNKNOWNを前にアリアは事も無げに言い放つ。
『ッッッ!!!』
舐められてると理解し、UNKNOWNのオーラが更に濃くなるがアリアは徐に右腕をUNKNOWNへ向ければ、ナニかを引き寄せるように勢いよく動かした。
瞬間、UNKNOWNがイフリート・ナハトへと引き寄せられる。
『!!?』
「シッ!!」
近づきてきたUNKNOWNへコールドブレードによる一閃。
咄嗟にUNKNOWNはブーストを吹かすことで逃れようとしたが、避けきれず右腕が半ばから切り飛ばされ宙を舞い離れた場所へと転がる。
「EXAMは確かに強力でしょう。ですが、見た限り貴方は御し切れて無いみたいですね。だからワイヤーを食らっても気づかない」
イフリート・ナハトの右腕にはワイヤーフックが内臓されており、アリアは何度もそれを用いて遠距離から岩や機体を引き寄せたり、ぶつけるのに使用していた。
注意深く観察してれば分かるだろうに、UNKNOWNは気づかない様子からEXAMに使われているのは明白。ならば、アリアからすれば負ける道理はない。
「例え時間をかけても貴方は敵いませんよ。だって、私は貴方より強いですから」
傲岸不遜に告げ、アリアは冷笑を浮かべる。
『ッ…………』
暫くの間UNKNOWNはビームサーベルを構えていたが、不利と悟ったのかビームを霧散させて柄をサイドアーマーへマウントし、バックブーストを行使。闇夜に消えていった。
アリアはコールドブレードを構え、油断なく警戒をしていたが数分経っても仕掛けてこないことを察すると、ゆっくりと鞘へ戻せばコクピットの中で息を吐く。
「はぁぁぁ…………助かった」
『警告:機体コンディション
報告:残り推進剤10%』
余裕ありげに語っていたが、実は割とカツカツだったアリアはUNKNOWNが撤退してくれたことに安堵しており、引き際を弁えない位にシステムに呑まれていたらちょっとヤバかったかもしれないと思っていた。
「……それにしても、何だったんですかね」
UNKNOWN、ブルーディスティニーに似た青い機体。ブルー同様にEXAMを搭載していたらしき機体は何故自分を狙ってきた?
「……考えても仕方ありませんね。早くホワイトベースへ合流しましょう」
面倒なことは後回しにして、とにかく今は帰るのが先決であるとアリアは考え、ホバーを起動させるとイフリート・ナハトを走り出させる。
てなわけでペイルライダーと顔合わせ回。
クイックブーストを乱用したせいでイフリート・ナハトの関節はガッタガタよ!!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体