機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「こうして話すのは初めてかなアリア・レイくん。改めて自己紹介といこうか、私は地球連邦軍参謀本部所属のゴップだよ」
「ご機嫌麗しゅうございますゴップ大将、私は地球連邦軍技術大尉テム・レイの娘、アリア・レイと申します。お会いできて光栄です」
「ハハハ、礼儀正しい子だね。どれどれ、チョコは好きかな?」
それなりの広さの空間、恰幅のいい男を前に朗らかに微笑むアリア。何故こうなったかは少し前へと遡る。
ホワイトベースはベルファスト基地へ到着し、直ぐに艦艇用ドックへと運ばれればクルーたちは全員会議室へ呼ばれることとなる。
本来なら礼服など用意出来ればいいのだが、着の身着のままでサイド7から脱出したアリアにそんなものはなかったのだが……
「あら、アリアちゃん綺麗なドレスね。よくそんなのを持ってたわね」
「ミアさんにジャブローへ向かう前に押し付けられたんです。こんな高価なもの貰えないと言ったのですが、彼女から強引に渡されまして」
「あぁ……なるほど」
庶民のフラウから見て明らかな高級品とわかるブランド物のワンピースドレスの裾を摘むアリアの言葉に乾いた笑みを浮かべて何処か納得したような顔を見せるフラウ。
彼女の様子にアリアは首を傾げつつも周囲を見渡せば、各々は軍人を除いて思い思いの格好をしている。
その中でセイラのすぐ側に控えていたラルやハモンはかっちりとしたスーツを纏い、その部下たちはカジュアルな私服である。
「兄さん」
「なんだいアリア?」
「ゴップ大将はどのような方なのですか?」
「えーと、確かレビル将軍と同じくらい偉い人で連邦軍の兵站部門を担うトップって父さんは言ってたかな」
これから来るであろう人物を待つ中でアリアがふと気になり、アムロへと尋ねるとテムから聞いていた事を大まかに思い出してアリアへ説明した。
「兵站部門のトップですか」
レビルのような武力とは違う部門の長が来る。その人物のおかげでホワイトベースの補給の量と質が増えたことやCOMの特許申請がスムーズに進んだことは感謝するが、それはそうとして余り信用すべきではないだろうとアリアは思考する。
(……警戒はしておくに超したことはないでしょう)
地球連邦という蠱毒の組織でかなりの地位に登り詰めるというのは真っ当な手段では決して出来ない。アリアは目を細めて胸の内で呟き、これから来るであろう人物へ警戒を強めた。
でかい組織の偉い存在が古今東西善人なわけが無いのは
程なくして。
「ゴップ大将入室! 総員、起立。敬礼!!」
会議室の入口から恰幅のいい初老の男が秘書官をともない入室してくれば、ブライトが号令とともに正規軍人等は敬礼を行い、一応民間人であるアリア等は軽く会釈するにとどめる。
「うん、楽にしてくれてかまわない」
鷹揚に頷きゴップが言えば、ブライトが再び号令を行う。
「ハッ! 直れ、着席!」
一糸乱れずその場にいた全員は椅子へ座った。
「さて、この場には民間人の人もいるだろうから自己紹介といかしてもらおうか。私は地球連邦軍の参謀本部所属のゴップ、レビル将軍と同じ大将を拝命させてもらっている者だ」
ゴップはそこで区切り立ち上がれば緩やかに頭を下げる。
「此度は我が軍の不手際によって貴方々に多大な苦労と迷惑をかけたことをここに謝罪する。
そして、その中でホワイトベースを守ってくれたことにクルーやパイロットの方々に多大な感謝を」
(……心にもないことをぬけぬけと)
冷めた目でゴップを見つめ、アリアは吐き捨てた。
「では、これからの話に移させてもらおう。……現在地球連邦軍は先のオデッサにおける反攻作戦においてジオンに勝利を収めた。
これを契機に我々連邦軍はジオンとの戦争も終盤へと移行するだろう。それはつまり、より激しい戦いへ赴くことを意味している」
そのゴップの言葉に数名が表情を険しくする。彼の言うとおり、オデッサにおいて連邦は勝利を収めたことにより、本格的にジオンという
そして、それが成功すれば奴らの本拠地……宇宙にあるジオン公国のあるコロニー群『サイド3』へ攻め込むことは想像にかたくない。
当然、ジオンは死に物狂いで抵抗することだろう。
「我々上層部としては諸君らに士官してもらった方が有難い……しかし、軍が定める規則では条件に当てはまらない者たちが多いのだ。そう、年齢という壁によってほとんどが弾かれてしまうだろうね」
ホワイトベースのメンバーでは大半が未成年だ。そして、テムがいつか言ったように地球連邦軍に入隊するのに18歳以上が最低ラインだ。
この中でそれを超えてるのはランバ・ラルとその部隊の仲間たちのみ。
「発言、よろしいでしょうかゴップ大将……?」
「うむ、許可しようブライト・ノア上級大尉」
「はっ、戦時特例……というものではダメでしょうか?」
「……確かに、その手はある。しかし、既に未成年である諸君が戦っている現状ですら世論が許せんと言うのに、前例を作ってしまえば人的資源の乏しいジオンはそれに倣ってアリア嬢のような子供ですら見込みがあると判断すれば前線へ投入してくるだろう。
そうしてしまえば泥沼の地獄になってしまうのだよ」
「は、ハッ……軽率な発言、申し訳ありません」
ゴップのその言葉にブライトは顔を青くして引き下がり、テムは顔を険しくさせた。
「だが、これまでの活躍や戦果を見てしまえばこのまま市井に戻してしまうのは余りに惜しい。
諸君らの戦闘データのお陰で軍はようやく立て直すことが出来たのでね。特に、アリア嬢の制作した補助システム『COM』のお陰で前線の兵たちの損耗率はぐんと下がった……」
実に喜ばしい、そうゴップは微笑めばその視線がアリアへと向けられる。
彼の言うとおり、COMの戦闘補助とNESTという戦闘シミュレーションシステムのお陰で連邦軍の前線での損耗率は導入前と導入後とで目まぐるしいほど変わっていた。
加えて、定期的に届けられるホワイトベースの凄まじい密度の戦闘データは正に宝の山と評せるほど。
「テム・レイ大尉」
「ハッ」
「以前、君がパオロ中佐にお子さんは外部協力者と言っていたね?」
「……はい、その通りです。息子と娘はガンダムのモーションデータ作成の手伝いをさせていました」
(……そういえばそんな話してましたね)
(……忘れてたけど、そんな設定だったな)
最早記憶の彼方に追いやられかけていたいつかのでっち上げがここで出てくるとはと、妙に感慨深くアリアとアムロの2人は遠い目をする。
「うんうん。そういうわけで、2人のように軍の外部協力者として諸君らには引き続きホワイトベースの運用に力を貸してほしい。
勿論、正規軍人のように待遇を約束するのに加えて終戦後は報酬も用意させてもらう。どうだろうか?」
ゴップはそう言うと、ゆっくりと会議室にいるメンバーを見つめて問いかけた。
少しの間静寂が訪れたが、それを破るように1人が居心地悪そうに手を上げる。
「あー……すんません、降りることって出来ますかねゴップの大将さん?」
その人物、カイ・シデンの言葉にゴップは背もたれを軋ませ指を入れ組んで答えた。
「勿論、構わないとも。軍事機密に触れたといっても、それは全面的に軍の不手際が原因であるからね。
といっても、吹聴されてしまっては困るから誓約書を書いてもらうが……構わないかね?」
「それくらいでいいなら2枚でも3枚でも書かせてもらうね。あー、それはそうと退職金的なのって貰えんの?」
「当然だとも。これまでの労いも兼ねて暫くは生活に困らない程度の支援も約束しよう」
「そりゃ有難い。んじゃ、一抜けさせてもらうぜ」
「ッ、カイさん……!」
「止めてくれんなよアムロ。ただのゴロツキが連邦のエース部隊だなんて荷が重すぎるのさ。
そもそも、生きるために戦ったんであって必要が無いのなら降りるに決まってるだろ?」
カイは席を立ち、出口に向かおうとすればアムロが声を上げたがそれに対してカイは微塵も未練が無い様子で答える。
実際、生き残るためにその時は戦うしか無かっただけのカイにとって選択肢が生まれれば当然そちらを選ぶだろう。これを卑怯といえるほどアムロは人でなしでは無かった。
そんな様子にカイは僅かに鼻を鳴らしアリアを見たが、彼女はカイに視線を向けず言葉を投げかける。
「お疲れ様でした。機会があればまた会えるでしょうね」
「……おう、オチビも気ぃつけろよ」
それを最後にカイは会議室を出ていった。
「……私もよろしいだろうか、ゴップ大将」
「ふむ、なにかねランバ・ラル大尉」
「……我々は連邦軍へ亡命する訳だがその場合……所属はどうなるのだろうか?」
ラルがゴップへ問えば、感情の見えない笑みでゴップはセイラ……アルテイシアをチラリと見た。
「君の心配は無用だとも。そのままホワイトベースでお姫様を守るといい」
「……了解した。それと、戦争を終えれば私含む部隊皆の連邦の戸籍を用意して欲しい」
「その程度造作もないとも。変な気を起こして名を上げず、ただの連邦市民として過ごすのなら何もしないさ。……さて、他に言いたい者はいるかな? いないならば、当初の予定通りホワイトベースの修理を終え次第、南米ジャブロー基地へ向かって欲しい」
「閣下、その事なのですが宜しいでしょうか?」
「ふむ、なにかなテム大尉」
「はっ、実は────
テムは立ち上がり、シミュレーションでの出来事を伝えた。
「……ふむ、2人の動きに機体が追いつかない……か」
「はい。そのため、モスク・ハン博士を派遣してもらいたいのですが宜しいでしょうか?」
「勿論構わないとも。ホワイトベースの修理はどれくらいかかるかな?」
「早くて4日、遅くても6日程度には終わる見積です」
「うむ、モスク・ハン博士は今どこにいるかな?」
ゴップは傍に控えていた秘書官へ尋ねれば、秘書官は持っていた挟んでいたタブレットへ視線を落とした後顔を上げる。
「現在モスク・ハン博士はオデッサにて鹵獲した機体の見聞をしているようです。手配すれば2日ほどで着くかと」
「では、頼む」
「了解しました」
「あぁ、それと2人に新しい機体を手配しておきなさい。確かオーガスタ研究所にお誂え向きのやつがあっただろう?
あくまでこの場所で乗機に施すのは応急処置だからね。どうせならきちんとしたのを用意させてもらおうか」
「……感謝します閣下。しかし、なぜそこまで?」
「この戦争の勝敗を分けるのはモビルスーツとエースパイロットだ。肝心な時にパイロットの腕が発揮できないとあればたまったものではないからね。
アムロ君とアリア嬢の力を存分に発揮できる機体を用意するのも兵站屋の仕事だとも。では、失礼するよ」
「ハッ、起立、敬礼!」
「うむ、あぁ……その前にアリア嬢、君が良ければだが個人的な話をしたいのだがいいかね?」
部屋を出る直前、ゴップはアリアへ声をかけてきた。
「……アリア、お前はどうしたい?」
「私は構いませんよ」
テムの問いかけにアリアは抑揚もなく答えれば、テムは少しだけ深呼吸を行いゴップへ向き直る。
「謹んでお受けいたします」
「それは良かった。ではついてきてくれたまえ」
朗らかに笑い、ゴップは楽しげにしながら秘書官を連れて歩き出すとテムとアリアはお互いに視線を交わした後、歩き出そうとすればアムロが不安げに声をかけた。
「……アリア」
「アムロ、お前は待っていなさい。なに、そんなに悪いようにならないはずだ」
「……わかった。アリア、変なことをされたら叫ぶんだぞ?」
「大丈夫ですよ兄さん、変なことをしてきたら潰すので」
「……ナニがとは聞かないでおくよ」
普段と変わらない妹の様子にアムロは苦笑し、アリアを見送るのだった。
そして、時は戻る。
基地の中で一際上等な応接間に通され、そこにゴップとアリアの分のカップが用意され嗅ぐだけで高級品とわかる香りを漂わせた紅茶が注がれていた。
その近くには同じように高級品のお茶菓子が皿の上に並べられ、どれも美味しそうと言える。
(……ミアさんのお家で飲んだのと同じやつですね)
ティーカップの取ってを摘み、ゆっくりと紅茶を口に含んで嚥下したアリアは知ってる味に僅かに頬を緩ませる。
「気に入ってくれたようで良かった。なにぶん、独り身なので年頃の娘の好みは分からないのでね」
「はい、とても美味しいですゴップ閣下」
「うんうん、取り寄せた甲斐があった。さて、アリア嬢……君のことだから何故このような場を設けたか敏い君ならわかっているだろう?」
ニコリと微笑むゴップにアリアは再び紅茶を飲み、ゆっくりとカップをソーサラーへ置けば真っ直ぐに見つめ返した。
「ある程度は。ですが、閣下の口からお教え願いたいですね」
「確かにきちんと要件を伝えるのは大切だね。では、言わせてもらおうかな」
「アリア・レイくん、私は将来ゆくゆくは政界の進出を目論んでいてね。
そのためには色々と伝手を作る必要があるのだよ」
「……私にそれの協力をしろと?」
「簡潔にいえばそうなるね。もちろん、悪いようにはしないとも。それに、君もわかっているのではないかね?
君含む、お兄さんのアムロ君はこの戦争中余りに活躍しすぎてしまった。戦時中はいいかもしれないが終戦後はどうだろうね」
「……組織において大きすぎる個は不要ということですか」
「うん、そうなるね。君たちがただ力のみであれば、連邦へ忠誠心があればやりようはあるがルナツーでのテム大尉の発言と君の功績は余りに大きすぎるからね。
そして、君を確保しようとあらゆる派閥が手を伸ばすだろう……それこそどんな手を使ってもね。ああ、そういえば君はミア嬢と仲が良かったね?」
「…………」
愉快げに言うゴップをアリアは僅かに殺意を滲ませた目で睨みつけるが、連邦軍という万魔殿で権力闘争をしてきたゴップからすれば愛らしいとしか思わなかった。
アリア自身、やりすぎたと思っている。ルビコンにおいても
「チッ……家族やミアさんをきちんと守ってくれんでしょうね?」
「勿論。私は約束は守る男だよ?」
「……わかりました。そのかわり、不履行は決して許しませんから」
「おぉ、怖い怖い。では、話は以上だ。御父上も心配してるだろうから安心させてあげなさい」
「…………失礼しました。どうか夜道に気をつけやがれくださいこの狸親父」
「ふふっ、忠告痛み入るよ子猫さん」
「……フン」
不快げに鼻を鳴らし、アリアは紅茶を飲む。腹は立つが、紅茶はやはり美味しかった。
ララァ「(台パンする音)」
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体