機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
ベルファスト基地から離れた海域、穏やかな波模様の海面が不意に黒く染まれば盛り上がる。
海を割り、海中から現れたのはジオンが運用する潜水艇であり僅かに海面から浮上させ部分が徐に開放されると、中から男が出てきた。
「……木馬はいるようだな」
覗き込んだ双眼鏡には修理ドッグに入れられ、修復作業中のホワイトベースの姿がありジオンの軍人『フラナガン・ブーン』は小さく頷く。
「シャア少佐が着任するにはまだ余裕がありますが、仕掛けるのでありますか?」
「あくまでスパイが潜り込む隙を作るだけだ。それに、少佐が来るまで待ってたら奴らを取り逃してしまう」
「……ですが」
「失敗したところで現地協力者の素人が1人消えるだけだ。大した損害じゃないさ」
ブーンは言うとハッチを閉ざし、潜航の合図を送りながら部下へ続けた。
「それよりさっさとゴッグの準備をしておけ。ゾックも出すぞ」
「ハッ!」
「ムス-」
狸親父との会合を終え、アリアはその整った顔を不満げにしながら基地の敷地内を歩いていると。待ってたらしいアムロが壁から背を離し、手を挙げた。
「アリア、お帰り。どんな話をしていたんだって……その顔を見れば余り楽しそうな話じゃなかったみたいだな」
「兄さん……えぁ、まぁ、これからのことを考えたら大事な話ではありましたね。ですが、ああいう人は好きになれません」
「お前は人の好き嫌いが激しいもんな」
苦笑し、アムロはアリアの頭を撫でれば共に歩き出す。
「でも、レビル将軍よりかは信用できる人だと僕は思うな」
「そういえば、オデッサではその時私はいませんでしたね」
「うん。ちょうどいい機会だしあの時のレビル将軍が僕らを見てた時のこと教えとこうかな」
アムロは一旦区切り、何かを思い出すようにしてアリアへと言った。
「あの人は酷い憎しみの感情を宿していたんだ。それこそ、どんな手を使ってでもその憎しみを晴らそうとするほどにね。
口では僕らのことを労っていたけど、目の奥では僕らを使い潰す算段を立てていたよ」
「……ろくでもないですねレビルという男は」
「心底同意するよ。その点、ゴップ大将は僕らを使い倒すつもりではあるけど、少なくとも使い潰すつもりは無さそうだね」
「……えぇ、まぁ、はい。あの人はそのつもりでしたね」
「ハハハ、珍しいくらいに顔を顰めてるな。お疲れ様アリア」
妹の様子にアムロは笑い、簡単なボディチェックを受けた後にフェンスを抜けると。
「軍人さん! 何か買ってくれないかい?」
そんな声をかけられ、そちらを見やるとそこには籠を片腕に下げたはすっぱな雰囲気を持つ、アムロと同年代か少し年上くらいの少女が媚びたような顔で立っていた。
「あー……アリア、お前はどうする?」
「品物を見ない限りには判断はつきませんね。まぁ、民間に下ろされてるものなどロクなのはないでしょうが」
「か、可愛い顔で随分な言い草だねお嬢ちゃん」
頬を引き攣らせる少女を横目にアリアは籠の中身を物色すれば、中の品揃えは支給品の酒や煙草等でアムロは勿論アリアも未成年のため必要のないものばかり。加えて、ホワイトベース内で支給されるよりも遥かに質が悪いといえる。
「駄目ですね、ロクなのがありません。せめてツマミくらい用意しておいてくれませんかね?」
「この子すっごい図々しい!?」
「あはは……すみません、僕ら未成年だからお酒や煙草は買えないんです」
「そんな事言わないで頼むよ〜、ウチにはお腹を空かせたチビが2人待ってるんだよ。お目こぼしってことでさ、ね? お願い!」
「…………だ、そうですよ?」
「……仕方ない、か」
少女の言葉が本当かは分からない。けれど、アムロとアリアには何故か少女の言葉は本当だと理解できた。
アリアの問いかけにアムロは肩をすくめると籠の中から酒のボトルを二本と煙草を3つ取り出し、値札に書かれた額より多めに紙幣を渡す。
「後で父さんたちにあげればいいかな」
「ですかね」
ボトルを上着のポケットにねじ込み、煙草の箱を持ちながらアムロが呟く横で少女が紙幣の多さに驚きの顔を見せながらも感謝の言葉を送った。
「……ありがとう、アンタらいい人だね。お兄さんは軍人さんだろうけど、お嬢ちゃんはこの基地の軍人さんの身内の子かい?」
「…………そんなところです」
実はあの白い軍艦のモビルスーツのパイロットです、なんてバカ真面目にいうほどアリアはおめでたくないのではぐらかせば、少女はそれを信じたようで手を振って去っていくのを2人は手を小さく振って返す。
「……あの人、頑張ってるみたいだね」
「ですね」
アムロは自分と同じくらいの少女がハイスクールにも行けず、こうして軍人相手に押し売りまがいのことをして日銭を稼いでる事になんとも言えない顔をする横でアリアは少女が去っていった方角を少しの間見つめ、鼻を鳴らすと視線を切りホワイトベースへ足を向けた。
そして、ホワイトベースの中へ入ると丁度支度を終えて艦から降りようとしていたカイを見つける。
「ッ、カイさん!」
「ん、おぉアムロか。……お前、俺と違って真面目くんだったくせに煙草なんてもってるのか?」
「あぁ、これは女の人から買ったやつです。一人で下の子を2人、養ってるって言ってたから」
「あぁ、あの子ね。ったく、お人好しだねぇお前さんも」
アムロの説明に呆れたようにカイは言う。
「……本当に船から降りるんですね」
「まぁ、な。軍人なんてお堅いのは性に合わねぇんだから」
自嘲するようにカイは言うが、アムロはそんなことはないと首を横に振った。
「……僕はカイさんの全部が好きじゃありません。けど、貴方と戦ってきたこれまでの期間はかけがえのないものだったしカイさんのことは戦友だと思っています」
「お前のそういうところ、俺は嫌いじゃないぜ。……じゃ、達者でやれよ」
カイはそう言い、2人の横を通ってホワイトベースの出口へと向かう。
「…………アリア、ちょっと待っててくれるかい?」
「はぁ、カイさんの言うことに同意するわけではありませんが兄さんは人が良すぎますね。……まぁ、そういう所が尊敬できるのですが」
アムロがしようとしている事に呆れたように肩をすくめ、自室へと向かう兄を見送りアリアも少なからずカイには世話になったことを思い出せば、自分も部屋へ向かうために歩き出す。
「……時間にしてみりゃ短いし、いつも早く逃げたいって思ってたのにいざその時がきたら名残惜しいって思うもんなんだなぁ」
ホワイトベースに接舷されたタラップを歩いていあカイは自分がホワイトベースに少なからずの愛着を抱いていた事実に感慨深く思いながら呟く。
カイにとって軟弱者という他者からの評価は正しいと思っており実際、彼は責任なんてものは持ちたくもない。
今も戦うことなんて怖く、あの時ゴップがホワイトベースから降りるのも構わないとも言ったのに降りる選択をしなかった連中はおかしいと思っていた。
「はぁ、やれやれ。こんな似合わねぇのさ俺には」
白亜の天馬から視線を外し、カイは歩き出そうとすると。
「カイさん!」
「……なんでぇ、アムロ。そんなに息を切らして」
ホワイトベースから息を切らしながら走ってきたアムロがカイを呼び止め、彼のそんな様子にカイは目を丸くした。
アムロは何度か深呼吸をして息を整えれば持っていたソレをカイへと渡す。
「これを持っていってください。結構高い工具が入ってるので、きちんとしたところに売れば纏まったお金になると思いますから」
「……そりゃ、お前の大事な工作用具だろ?」
「どこに行くにでもお金はいるでしょう? ゴップ大将が支援するって言ってもそんなすぐにはお金は振り込まれないでしょうし」
「……ほんと、お前はお人好しだな」
カイは少しだけ考えた後にその工具箱を受け取り、苦笑しながら続けた。
「俺もお前の全部は好きってわけじゃねぇけどよ。他人を思いやれるところは嫌いじゃないぜ?
……あと、オチビには済まなかったって言っといてくれや」
「…………わかりました。アリアには僕の方から「おや、間に合いましたか」……言おうと思いましたけど、来ちゃいましたね」
「……はぁ、空気読めよなまったく」
「……なにか分かりませんが、少々腹たちますね」
「ハハハ、悪い悪い」
見送りに来てやったというのにこの言い草にアリアは少しだけムッとしたように眉根を寄せれば、カイは謝りながら彼女の色が抜け落ちた艶のない白髪の頭をポンポンと軽く叩く。
「地球におりたばっかのとき、お前のことを気味悪いと思っちまったがお前さんは家族が凄く大切なんだってあの島の時に分かってな。
…………家族のこと大事にしろよ?」
「言われなくてもそうします。あと、人とズレてるの自覚がありますからカイさんが気にするほどのことではないですよ」
「そーかい。んじゃ、今度こそお別れだな。テムの旦那にも今までガンキャノンのことありがとって伝えといてくれ」
「……はい」
「カイさん、これあげますよ」
「お前もか? 兄妹揃ってお人好しだねぇ……うぉ、結構重いな」
アリアは懐から布に包んだ平べったい物体をカイへ渡せば、受け取ったカイはその重さに少しだけ驚いたように言う。
「ここで開けないでくださいね。開けるのなら周りに人がいないことを確認してからにしてください……ちょっと目立つので」
「? へいへい、せっかくの餞別だし有難く受け取っとくよおチビ……じゃなくてアリア。
それと、ミアの嬢ちゃん泣かすんじゃねぇぞ?」
「? もちろん、ミアさんを泣かすような人はぶちのめすので安心してください」
「……そういう訳じゃねえんだがなぁ。まぁ、とにかく今度こそ本当にお別れだ。あばよお前ら、死ぬんじゃねぇぞ?」
「はい、カイさんもお元気で」
「さようならカイさん。お身体に気をつけてください」
カイからの返答はこちらに背を向け、手を振るというものだった。
「……寂しくなるな」
「なんだかんだであの人の援護は有難かったですからね」
どことなく湿っぽい空気の中でアムロは言い、アリアは視線をあげれば薄暗い曇天の空模様が見え、その天気に何処と無く自分の今の胸中を重ね合わせてカイのことを憎からず思っていたことに気づく。
そのまま無言で佇んでいれば、ドック内に甲高いサイレンの音が響きわたりランプが激しく点滅したではないか。
それはつまり、敵が攻めてきたということを示しており空気を読まない敵に2人は顔を見合せた後に心底ウンザリしたように溜息をこぼせば足早に格納庫へと走り出す。
「来たか2人とも!! 出せるのはガンダムとブルー、タンクだけだ! ほかの機体は整備中で出せない!」
「わかった!」
「私、ワンピースなんですがね」
「済まないが着替える時間はないからこのまま乗ってくれ2人とも! それと、ガンダムとブルーはマグネットコーティングの為にオーバーホール予定だったからサブアームを外してしまったし、ブルーはミサイルを装填してないし、ビームライフルは使えないからな!」
「ビームライフルが? 仕方ない、バズーカを持ってくか」
「私はショットガンにしますか」
作業員からの説明に手早く2人は武器を選択し、機体へと乗り込むと慣れた動きで起動させた。
そして、2機は武装を装備し出撃しようとしたところでアリアはふと、壁に見たことの無い近接武装があることに気がつく。
「……これは」
アリアは暫しの間、それを見つめた後なにか琴線に触れたのか小さく頷くとソレをブルーへと装備させた。
『アムロ、アリア! 至急出撃しろ!! 敵モビルスーツの迎撃を急げ!!』
ブライトからも催促され、アリアは少しだけ瞳を輝かせながらブルーをカタパルトへ接続させれば。
「アリア・レイはブルーディスティニーで出ます!」
ブルーの左手に握られたソレは全長はブルーに迫る棒状のものであったが、その先端が異様の一言に尽きる。
辺縁にギザギザとした鋸状の刃を配した円盤を、複数に重ねた殺意溢れる物騒過ぎるそれはまさに
見るからに殺意の高いソレをテンション高めに握りしめ、アリアはジオンのモビルスーツへとブルーを吶喊させるのであった。
意外!それはピザカッター!!!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体