機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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みんなピザカッター好きなんやなって


49.Overflowing with murderous intent

 物売りの少女こと『ミハル・ラトキエ』は両親が居ない。戦争の初めに父は仕事の関係でサイド2へ赴き、戦火に巻き込まれた。

 母はミハルたち子供を養うため出稼ぎに行くと言って赴いた土地がジオンの攻めてきたというラジオの情報で最後。

 

 多少の蓄えはあったが、そんなのは直ぐに底を尽き唯一の年長者たるミハルが金を稼ぐために働くのは自明の理とも言える。

 しかし、なんの元手も知識もない小娘のミハルが手に入れられる金などたかが知れていた。

 

 そんな彼女がまだ幼い弟と妹を養うために手を出したのがジオンの現地スパイとして住んでいる土地の連邦軍の基地をヤツらへ売り飛ばすことだった。

 

 ジオンは両親を奪い、自分たちの生活を奪った憎むべき敵だ。だが、それでもそんな奴らに尻尾を振らなければいけないほどミハルたちは追い詰められており、屈辱に耐えながら集めた情報をヤツらへ渡して貰った金で日々の飢えをしのぐ毎日。

 

「……あの軍艦に忍び込め?」

 

「そうだ。あくまで木馬の向かう先が判明すればいい。そうしたら前金の倍を渡そう」

 

「わかったよ……約束、破らないでくれよ?」

 

「勿論だ」

 

 連絡員から渡された包みを受け取り、ミハルはベルファスト基地を睨みつける。

 

「さっさと終わらせて、こんな所からおさらばしてやるさ」

 

 ミハルの呟きから少しして、基地に砲声の音が轟いた。彼女は包みに入っていた連邦の軍服に着替え、今なお轟く戦いの音に足が竦みそうになるが歯を食いしばり駆け出す。

 

(あの船の行先さえ調べれば、纏まった金が手に入るんだ。そしたら2人を連れて安全な場所に行ける……!)

 

 ここも何時まで無事かは分からない。しかし、纏まった金が手に入ればそれだけでより戦火のない地域へ移ることが出来る。

 恐怖はあるが、しかし両親に変わって弟と妹を守ることを誓ったミハルにはそれしか道がない。

 

(あのお嬢ちゃんの家族があの基地にいるかもしれないけど、背に腹はかえられないんだ。……ごめんね)

 

 基地の入口でであった兄妹らしき2人を思い出し、ミハルは唇を噛んで罪悪感を押し殺す。

 

 

 

『MSM-03 ゴッグ』それはジオン公国が運用する初の量産型水陸両用モビルスーツであり、膨大な水圧に耐えるためザク以上の分厚い装甲で覆われ、鉤爪状のマニュピレーターを先端に備えた蛇腹状の腕部と特徴的な外観が印象に残る重モビルスーツだ。

 

 そして、機動性は見た目通り鈍重で終わってはいるがあくまでもモビルスーツ中ではという但し書きつくだけで、普通に戦車程度には追いつくくらいには機敏に動ける。

 

 彼らはベルファストへ上陸して直ぐに周辺の防衛設備を破壊し始めたが、勿論ベルファストの連邦兵士たちもやられてばかりではない。

 

 連邦軍の主力戦車61式戦車やジープ等が砲弾、ミサイルをとばしゴッグへと命中させたがその分厚い装甲を見る限り有効打には程遠く逆に。

 

「そんな豆鉄砲、ゴッグに効くかよ!!」

 

 ゴッグの腹部から黄色いビームが放たれ、射線上にいた兵器は簡単に薙ぎ払われる。

 

「ハハハ、やっぱりモビルスーツで蹂躙するのは最高だぜぇ!」

 

 野卑た笑い声を上げ、ゴッグのパイロットはベルファストの設備を次々と破壊していく。その姿は一年戦争当初を思わせるもので、ベルファストの兵士は自分の基地が破壊されるのをなすがまま指を加えてみることしか出来ないことに歯噛みした。

 

 しかし、彼らは忘れていた。今ここに誰がいるかを。

 

 ゴッグの頭上に影が差す。

 

「なんだぁ?」

 

 ゴッグの頭部を向け、そちらを見遣れば蒼い影がこちらに銃口を向けている姿が映る。

 その影は引き金を引いた瞬間、マズルフラッシュと共に弾丸の雨がゴッグへ降り注いだ。

 

 ガガガガガガガガッ!! 

 

「うぉおおおおおぁ!!?」

 

 耳朶を打つ金属同士がぶつかり合う音に思わず悲鳴をあげるが、ゴッグはその装甲によって大したダメージはない。だが、パイロットの神経を苛立たせたようで声を荒らげる。

 

「この野郎!! くたばりやがれ!」

 

 倍返しと言わんばかりにゴッグの腹部メガ粒子砲が宙を薙ぎ払う。しかし、空中の機体は僅かなブーストを吹かすことによって宙を滑るように躱し、立て続けにマズルフラッシュが発生。

 

「へっ! そんなのゴッグにゃ通用しねぇんだよ!!」

 

 連続して散弾が装甲を叩くが、実弾兵器はゴッグにとってなんのダメージにはならない。腹部から魚雷やビームを放ち、上空の敵を撃ち落とそうと躍起になるがそのどれもが容易く回避される。

 

「ふわふわふわふわと綿毛かテメェ!!」

 

 背部のブースターを吹かし、ゴッグはその巨体でありながら上空へと跳躍。その鉤爪で蒼い機体を切り裂こうと振りかぶるが……

 

「うぉ!?」

 

 ゴッグの横っ面を勢いよく蹴り飛ばされ、逆に地上へと叩き落とされる。

 

「この、よくも────

 

 酷い揺れに顔を顰め、立上。吠えようとしたゴッグのパイロットだったが最後まで続かない。何故なら立ち上がったゴッグのすぐ目と鼻の先に降り立った青い影がいたからだ。

 思わず鉤爪で殴り掛かるが、蒼い影が両手に握った兵器から耳障りな悲鳴を伴いながら閃かせたかと思えば半ばからゴッグの蛇腹腕が断ち切られ、宙を舞う。

 

「なっ、ぁあ……!?」

 

 更に長い柄を持ち替え、振り下ろせばもう片方の腕も切り落とされた挙句横薙ぎによって腹部の砲門を切り裂かれた。

 

「こ、こいっ……!!」

 

 あっという間に武装全てを破壊され、パイロットは戦慄を隠せずに悲鳴混じりの悪態をついた瞬間、ガクリと何もしていないはずなのにゴックの膝が勝手に折れ、擱座する。

 

「な、なんだぁ!!?」

 

 慌ててサブモニターを見遣れば、そこには膝関節が破損したことを示していた。

 事実、既にゴックの膝は破壊されており最早ゴックに逃げる手段は残されていない。膝立ちとなったゴッグを蹴りつけ、背中から倒れたゴッグを踏みつけると蒼い影はその円盤をゴッグの胸部へ押し当てる。

 

 キュイイイィ…………ィイイイイイインッ!!!! 

 

 止まっていた円盤が次第に回転し始め、すぐに動きを目で追えないほどの高速回転する複数束ねた円盤の外縁に配された鋸状の刃は膨大な火花と金属同士の擦れる音を伴ってゴッグの分厚い装甲を削り、ゆっくりと内部へ押し込まれていく。

 

 内部の機構が食い破られ、火花が周囲を照らし鮮血のように吹き出たオイルが装甲を濡らす。

 

「ひ、ひぃぃいっ!? た、助け、助けてくれ!!! い、いやだ!! 母さん、お母さん!!! 怖いよ! 助けてぇ!!!!」

 

 コクピットにまで響く異音にパイロットは悲鳴をあげるが、蒼い影は躊躇いなく一気に回転ノコギリを押し込んだ。

 やられまいと必死に操縦桿を動かすが、四肢を破壊されロクな動作もとれないでゴックはジタバタともがくだけで意味が無い。

 

「ァァァァアァァアッ──────

 

 むしろ余計に強く回転刃がくい込んだことで逆にコクピットを勢い余って削り取り、やかましかった悲鳴と共に今度こそゴッグは四肢を投げ出し灯っていたモノアイの光が沈黙してしまった。

 

 沈黙したゴッグを前に蒼い装甲をオイルで濡らしたブルーディスティニーはくい込んだ刃を引き抜き、ゴッグから降りる姿を味方のはずだのに連邦兵たちは畏れを込めた目で見つめていた。

 蒼い装甲を返り血のようにオイルで濡らし、手には物騒な武器を握る姿はまさしく。

 

「蒼い、死神……」

 

 ジオンによって付けられた忌み名はその通りだと、その場にいた連邦兵たちは思うのであった。

 

「…………悪くないですけど相性が悪いですね」

 

 ピーンときた為持ってきたが、相手が重装甲のためにダメージを与えるのに手間取ったアリアはブルーが握る回転ノコギリ(ピザカッター)を見やる。

 すぐ近くには四肢をもがれ、コクピットを切り裂かれたゴッグがおり先に伝えられた情報では基地内に侵入した機影は2つ。

 

 恐らくアムロがもう1機のほうと戦っているのだろうと判断し、援護に向かおうとした所で放たれた海面を突き破りナニかが現れた。

 

「ッ!」

 

 ソレは水飛沫をたてながらアリアにむけてビームを放てば、即座にその場からバックステップで距離を取り何もいない地面を穿ち、融解させる。

 

「はぁ、また新型ですか。まったく、ジオンが国力に劣るという話はどこにいったのですかね?」

 

 こうもポンポンと新型が目の前に現れれば流石にアリアも辟易せざるを得ない。

 しかし、そうは言っても野放しには出来ないために回転ノコギリの穂先を構えてアリアは真っ直ぐに見据える。

 

「ッ!」

 

 開戦の狼煙として、緑の巨体の肩口にある4つの砲門から太いビームが放たれた。

 ブルーはホバー走行による踏み込みの必要のない加速と前傾姿勢によって背面の真上をビームが通過し、通り道にあった建物を破壊するが構わずに前進。

 

 緑の大型モビルスーツはその速度に面食らったのか、僅かに射線に迷いが見れるが近づかれては不味いと判断。4条のビームを再び放つ。

 

「その程度の狙いで当たるわけないでしょう?」

 

 アムロほどのえげつない精度を知ってる当人からすれば、目の前の機体から放たれるビームなど目を閉じていても避けられるほどぬるいものであった。

 リンク上を滑るスケート選手のような滑らかな動きで地面を滑走し、一気に敵モビルスーツへ肉薄。

 

『ッ!!』

 

 苦し紛れのクローの付いた腕部で殴りかかってくるが、身を翻して躱し逆にその腕を足場にしてに跳躍。頭上をとって大きく回転ノコギリを掲げた。

 

「この位置なら射角が取れないでしょうデカブツ!」

 

 円盤を高速回転させ、落下の勢いとブースターによる加速で破壊力をました一撃をお見舞いしようとした瞬間、アリアの背筋に悪寒がはう。

 

「っ! 不味ッ……!」

 

 モビルスーツの頭頂部の突起が淡く光った次の瞬間、ビームが発射された。

 不意打ちの一撃をアリアは反射的にクイックブーストを行使。間一髪直撃のコースから外れ、がら空きの背後に着地すると勢いよく回転ノコギリを振りかぶる。

 

 しかし、

 

「なっ!?」

 

 がら空きだった背中だと思ったそれはモノアイが灯り、鉤爪の着いた腕が火花を散らす円盤部を受け止めたのだ。

 まさかの事態に一瞬だけ目を奪われるが、すぐに回転ノコギリから手を離して距離をとる。

 

「チッ、ビックリドッキリメカはRaDで十分なんですがね!」

 

 思わずついた悪態の返答は熨斗つけたビームであった。

 

「バカスカビーム撃ってきてビームライフルを使えないこちら側への当てつけですかこの野郎」

 

 難なく交わし、マウントしていたショットガンを抜き放ち連射。しかし先程のゴッグ同様にその分厚い装甲に阻まれてしまう。

 

「チッ、やっぱり実弾は相性悪いですかね」

 

 奪い取った回転ノコギリを投げ捨て、緑の大型モビルスーツ……『ゾック』はガチガチと両腕の鉤爪型の兵装『アイアンネイル』を鳴らす威嚇めいた事を行えばブルーに向けてビームの弾幕を形成。

 

「鬱陶しいですね!」

 

 実弾なら多少の被弾は無視できるが、ビームではかすっただけでも致命傷となりかねない。ビーム同士の隙間を器用に縫いながらアリアはゾックへ迫る。

 ゾックは確かにその火力は脅威ではあるが、そのデカイ図体の通り動きは鈍い。加えて、肩口のビーム砲は多少の狙いや軌道を逸らすことは出来るだろうが殆ど射線は砲門の向いた方向であることは数度撃ってきた軌跡から予想できる。

 

 先程の頭のビームも初見殺しのようなもので、既に1度見たアリアはもう引っ掛からないと判断し地面に突き刺さっていた回転ノコギリを回収。

 

 滑走しながらアリアは進路上にあった瓦礫を蹴り上げ、回転ノコギリをバットのようにしてゾック目掛けてフルスイング。勢いよく放たれた瓦礫はゾックの顔面目掛けて飛んでいくが、脆弱なカメラ部にぶつかるのを防ぐためにアイアンネイルで殴り砕いた。

 

 そのせいで一瞬だけ視界が阻まれ、ブルーの姿を見失ったゾックはすぐにモノアイを周囲へめぐらせた後に上方向へ顔を動かす。

 

 そうすれば再び頭上に飛び上がったブルーの姿が見え、上半身を逸らし砲門を向けた。

 

「やっぱり、頭頂部のビーム砲も射角に自由度が少ないみたいですね!」

 

 放たれた4本のビームを最小限の動きで宙を舞い、ビーム同士の隙間を縫うようにゾックへ肉薄。

 苦し紛れのアイアンネイルに対して高速回転させた回転ノコギリの刃を叩きつける。

 

 拮抗は一瞬、弾かれたようにブルーは空中で1回転しゾックの頭部を陣取り回転の勢いを乗せてゾックの顔面目掛けて回収ノコギリを再び叩きつけた。

 ルナチタニウムで製錬された刃はゾックの厚い装甲を食いちぎり、残骸を撒き散らして振り下ろされる。

 

「はァァァっ……!!」

 

 耳障りな悲鳴のような破砕音を響かせゾックを斜めに切り裂き、進路上にあったコクピットを抉ればパイロットを失ったゾックはゆっくりと仰向けに倒れ、それきり動くことはなかった。

 

 

 

 

「…………ぬぅ」

 

 ゴッグ2機と虎の子のゾックをあっという間に制圧された事実にフラナガン・ブーン大尉は苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。

 

 いくら陽動のためとはいえ、大した戦果もなく撃破されるという連絡員からの報告で流石に予想外といった様子だ。

 

「地上でやり合うのは自殺行為だな」

 

「……では予定通りに?」

 

「あぁ、幸いにもスパイは潜り込めたみたいだしな。少佐と合流した後に再び仕掛けるぞ」

 

「ハッ!」

 

 3機も機体を失った為、補給のためにフラナガン・ブーンはこれから着任する上司のシャア・アズナブルとの合流を選ぶ。

 

「確かゲルググは水中でも使えたはずだったしズゴッグも追加で配備される。……ついでだ、失ったゾックの補充のためにマンタレイに合流してもらおう」

 

 彼が着任すると同時に配備されるジオンの虎の子の機体のスペックを思い出しながらフラナガン・ブーンは考えた。

 

「よし、少佐に前衛をしてもらいゾックの火力支援で木馬を海に落としたらグラブロを出すぞ」

 

 マッドアングラー隊の由来となった潜水艇の格納庫の半分を占領するMAを戦力に組み込む。

 

「……スパイも役に立ってくれれば良いがな」

 

 忍び込ませた現地協力者のスパイも欲を言えば働ければ儲けものだが、彼は大した期待を向けていない。

 事実、副官も似たような反応であった。

 

「あんな小娘が役に立ちますかね?」

 

「さてな。役に立たなくとも現地協力者が1人消えるだけだ。それと、余計な感傷は捨てとけ」

 

 

 

 

「こんにちはお姉さん、少しぶりですね」

 

 そして、ホワイトベースの艦内で机の上に腰かけるアリアは固まった表情で見つめる少女、ミハル・ラトキエに気軽に話しかける。

 

「ふふっ、そんなモノを着てまで物売りに来るなんて商売熱心なのですね」

 

「あ、アリア……」

 

 彼女の後ろでは冷や汗を垂らすカイがおり、その視線はアリアの手元……正確に言えば机の上に置かれた拳銃へ注がれていた。

 

「あぁ、あまり手荒なことはさせないでくださいね。ホワイトベースを降りたとはいえ、貴方のことは憎からず思っていたんですからね、カイさん」

 

 まったく、とアリアは肩を竦めて続ける。

 

「せっかくマ・クベの金庫からぶんどった金塊をあげたのに余計なことに首を突っ込まないで欲しいのですが……」

 

 ねぇ、ジオンのスパイさん? 

 

 深紅の瞳がミハルを射抜き、明確な殺気を叩きつけられたミハルはその場でへたりこめば股から液体が染み出し、泣き出してしまったではないか。

 

「………………カイさん、これって私が悪いんですかね?」

 

「………………俺に言うなよ」

 

 その返答に心底面倒くさそうな顔で溜息をこぼし、アリアは懐から通信機を取り出すとチャンネルを合わせて語りかける。

 

「こちらアリア、申し訳ありませんが人を寄越して貰っていいでしょうか? ええ、はい。ジオンのスパイを見つけました」




御神体沈黙!!

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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