機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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未だにジャブローつかないってマジかよ


50.Transactions

「それで、お金に困って仕方なくジオンのスパイになった……それでいいんだね?」

 

「……はい」

 

 アリアがいつかの時にぶちこまれた懲罰房のすぐ近くの取り調べ室、身綺麗になったミハルが椅子に座らされ机の上に持っていた鞄の中身を広げられテムに取り調べを受けている様子をすぐ隣の部屋からアリアやブライトの2人が眺めていた。

 

「前々から思ってましたけど、連邦って警備がザルなんですかね?」

 

「……今までの経験からすると否定できんな」

 

 サイド7やら捕虜の脱走やら、軍上層部が敵と繋がってるわの今回でズブの素人が簡単に連邦の機密たるホワイトベースに忍び込めた事実に思わず出たアリアの呟きにブライトが苦々しげに反応する。

 

 本来ならベルファストの警備部に突き出して終わりなのだが、ホワイトベースが色々と特殊な艦なのと状況が色々と込み入った結果、こうして艦のなかで取り調べをすることにしたのだ。

 艦の修復は終え、明日には出港を計画している為に後から海の上でベルファスト基地から致命的な情報がありました……などあってはたまらないのである。

 

「ちなみに、コレがどんなものか知っているかい?」

 

 テムは机の上に置かれた長方形の物体をミハルへと見せたが、それを僅かに首を横に振ってミハルは答えた。

 

「いえ……ただ、艦のセンサーを混乱させるものってしか……」

 

「使い方は……このメモか? ……酷いな、これは」

 

「あの……どういう意味、ですかソレは?」

 

「……爆弾だよこれは。場所によってはモビルスーツのルナチタニウムで出来た装甲ですら破壊する威力の高いヤツだよ」

 

「…………え?」

 

 テムは顔を顰めながら言った内容にミハルは顔を青く染める。

 

「恐らく連中は君にこれを船の底面付近に付けろと言われんだね。それで、これをつけた後に君はどうするつもりだったんだ?」

 

「えと、その混乱してる間に行き先を調べて無線で教えろって……」

 

「……調べた後、どうするんだい?」

 

「ど、どうするって……」

 

 問いかけにミハルは狼狽え、しどろもどろに言葉にならない声を漏らす。彼女には大金と家族のこと、そしてホワイトベースに忍び込んだことによる緊張と取り調べによる不安で思考が占領されていた為に後のことなど何も考えていなかったのだ。

 テムはその様子を見ながら追い打ちをかけるようにミハルへ言う。

 

「連中は君が忍び込めるように陽動をかけたみたいだが、この艦は軍艦だ。行き先はもちろん軍事施設なのは分かっているはずだろう? 

 なら、降りる時はどうするというんだね? 連中は我々の目的地の施設を破壊するために動いている……そんな中で本当に降りれるとでも?」

 

「あ、ぅ……で、でも約束……」

 

「50億」

 

 テムは唐突にそんな数を言うが、ミハルは上手く意味が飲み込めないのか目を瞬かせるだけだ。

 

「連中が1週間戦争と呼べる戦いで殺したスペースコロニーの人々の数だ」

 

「ッ……!」

 

「飲み込めたようだね。そうだ、連中はスペースノイドの代表面をしてる癖して虐殺した殆どが同胞であるはずのスペースノイドなんだよ。

 そんな奴らが君一人の約束なんてきちんと守るとも思うかい? 爆弾であることを伝えず、海上でこの艦を爆破させ沈めようとしている奴らが替えのきく現地協力者の1人を?」

 

 畳み掛けるようにテムは言い放つ。

 

「君には悪いが、奴らは君がどうなろうと知ったことでは無い。約束を守るつもりなどサラサラないのさ」

 

 そこでとうとうミハルは顔を机に伏して泣き出してしまった。その姿をテムは沈痛な面持ちで見つめ、別室で見ていたブライトは胸糞悪そうに顔を顰める。

 その横でアリアは徐に取り調べ室にあるマイクスピーカーの起動スイッチを押し、マイクへ語りかけた。

 

「ミハルさん、悔しいですか? ジオンに騙され、いいように利用され必要無くなれば捨てられた現状に。

 家族の為にと両親の仇であろうジオンに尻尾を振ったというのに、いらなくなれば捨て駒にされた事実に」

 

「……まえ、だろ」

 

 淡々と告げた内容にミハルは吠える。

 

「当たり前じゃないか!? こんなことしたくないけど、周りの人なんて助けてくれないんだったらやるしかなかったんだよ! 巫山戯んなッ!」

 

「でしょうね。なら、油断してるヤツらに一泡吹かせたいと思いませんか?」

 

「ッ……!」

 

 アリアはゾッとするような微笑みを湛え、ミハルの心に染み入るように優しく語りかけた。

 

「ここまでする程なのですから、貴方のあのゲートでの話は事実なのでしょう? 

 小さな弟か妹さんが2人いるという話。 このままいけば貴方はスパイとして投獄されてしまうでしょうね? 

 その場合、幼いお2人に生活はできるでしょうか? いいえ、出来ないでしょうね。でなければ貴方がここまでしないんですから。ええ、実に悲しいことです」

 

 スラスラと言葉がアリアの口から零れでる。

 

「悔しいでしょう、腹立たしいでしょう。そんな原因を生み出したジオンが。甘言で騙し、尖兵にしたてあげたジオンが」

 

 ミハルの目が泳ぎ、アリアは悲しげな顔で頭を振った。

 

「……オイ、アリア」

 

 ブライトが小声で言うが、アリアはその細い指を己の唇に当てて黙らせる。

 

「事実をいえば、貴方は精々終戦まで何処かで拘束される程度に済むでしょうが貴方だけが無事では納得できないでしょう? 

 取引です。貴方は素直に全てを洗いざらい話せば、現地協力者として貴方を庇うことができますよ?」

 

「……本当、なの? 協力すれば、あの子たちのところに帰れるの?」

 

 かかった、とアリアはミハルの心を絡め取ったことに嗤う。

 

「えぇ、勿論。加えていえば、貴方が終戦後も志願兵となればご兄弟をジャブローにいる託児施設へ預けることもできますよ? 

 あぁ、ジャブローというのは連邦軍の本拠地であり恐らく最も安全な場所でしょうね。そして、そこには個人的に懇意にしてもらっている将官の方がいましてね……口添えをすれば支援も受けれるでしょう」

 

「貴方にとって、悪い話ではないと思いますが?」

 

 ミハルの答えは─────

 

 

 

 

「おや、カイさん。まだ下りてなかったのですか?」

 

 部屋から出れば通路に背中を預けていたカイがいた事にアリアは意外そうな声を上げる。

 

「……お前、ミハルを騙して軍に入れるつもりか?」

 

「おや、酷い言い草ですね。私はあくまで双方に利のある話をしただけですよ? 彼女はそれにサインをしただけであり、騙すなどとてもとても」

 

「ッ!」

 

 カイはアリアの襟首を掴み、その小さな体を持ち上げて壁へと押し当てた。鈍い音が通路に響くがアリアの表情に変化は無い。

 

「お前ッ……!! そういうのは詐欺師が言うことなんだよ!」

 

「口を慎みなさいカイ・シデン。こうなったのは彼女を見逃した貴方が原因でしょう?」

 

「それ、は……」

 

 アリアからの言葉にカイは心当たりがあるのか僅かに手の力が緩む。

 

「どう言おうが、遠くない未来彼女が現地スパイになっていたことはベルファスト基地が調べあげるでしょう。

 その時、彼女はどうなると思いますか? 古今東西、敵に協力した存在をどう扱うかなど少し調べれば歴史が証明しています」

 

「私は私と大切な人を守るためなら何でも利用します。貴方にそれをとやかく言われる謂れはありません」

 

「だからって……!」

 

「では、どうしろと? 連邦は利にならない戦災孤児を助けるほど余裕があると思っているのですか? 

 貴方はそれがよく分かっているでしょう?」

 

 ズルズルとアリアは下ろされ、床に足がつくとカイの手を払って乱れた服を治して告げた。

 

「なら、貴方が彼女を守ってあげなさい。そして、彼女を家族に送り届けなさい」

 

「ッ!」

 

 傍を通り、膝をおった彼にアリアは言い放つ。

 

「連邦が負ければ、そんなことすら出来ないのですからね」

 

 

 

 

「ブライトさん……あの話、無しにしてくれるか?」

 

「どの話だ?」

 

 床に座り込んだカイの隣に立つブライトにカイは言えば、彼は持っていたファイルを開いて聞き返す。

 

「……艦を下りるって話だよ」

 

「……死ぬかもしれないぞ?」

 

「分かってるよそんくらい……でも、これが俺のケジメさ」

 

 徐に顔を上げたカイの目には強い意志が宿っていた。

 

「ジオンを叩いてこんなクソッタレな戦争を早く終わらせる。その為なら俺は銃をとってやるさ」

 

 拳を握りしめ、カイの誓いにブライトは何も言わず彼の署名がされていた書類を差し出せば通路に何かの破る音が響く。

後継機

  • 既存機体を魔改造
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