機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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おっさん共の会話


52.Darkness and Encounters

「ホワイトベースがもう少しでジャブローに入港するらしいです」

 

「……わかった」

 

 そこはジャブロー内に複数ある会議室のひとつ、その円卓にはレビルを核とした彼の派閥の高官たちが集まっていた。

 

「政治家連中は何も分かっておりません! あのジオンのカスどもは既に2度も核兵器を使用しているというのに!! 

 それを『二度とも被害が出ていないから問題ない』だと? 馬鹿が、二度も使われている事実に気が付かないのか!?」

 

 ダンッ、上等な素材を使った天板を叩くのは禿頭と目元を隠すゴーグルが特徴の大男。

 この男の名前は『バスク・オム』連邦軍内でも広く知られるほど、常日頃からジオンに対して強硬な姿勢をとるべしと主張しているタカ派筆頭の佐官だ。

 

 それに同意を示すかのように、軍人たちが囃し立てる。

 

「彼の言うとおり、連中は既に南極条約など知ったことでは無い有様だ。だというのに、モグラ共は世論など気にして講和などと!」

 

「みすみす奴らの仕出かしたことを見逃すことになってしまう! 奴らをのさばらせてしまえば第二第三のジオンが湧くのだぞ!!」

 

 クルスト・モーゼスを初めとしてエルラン中将の内通を皮切りとした不祥事を起こしたレビルであったが、軍内の影響力は然程変わっていなかった。

 

 彼のもとにいた所謂中立やハト派の連中が去った代わりに、バスクを初めとした過激派たちが穴を埋めるように集結した為にむしろ一部においては以前よりも影響力が上がってると言えよう。

 

 先のジオンの狂行のコロニー落としによって大勢の人々が大切な人を失う被害にあったが、無論それは連邦軍人達も当てはまる。そんな彼らがもう二度とあんな惨事を引き起こさないために強硬的になるのも無理もなかった。

 

 加えて、先のオデッサ作戦の水爆やその少し前に起こった弾道ミサイル発射の件においてレビルは連邦も同じように大量破壊兵器の使用を政府に声高に要請したが、それをあえなく却下されたのも記憶に新しい。

 

「ホワイトベース隊の活躍も目覚しい。聞けばガンダムのパイロットは単独で奴等の採掘基地を複数壊滅させ、ブルーディスティニーのパイロットもそれに準じた活躍もしている。

 おまけにベルファスト基地でのジオンからの襲撃も正に鎧袖一触だったとか」

 

「うむ、加えてブルーディスティニーのパイロットの少女の制作した補助システム……COMだったか。あれのお陰で前線の損耗率は著しく減ったよ。実に喜ばしいことだ」

 

「そういえば、技術部の解析班がそのシステムの中に大量の兵器のデータがあることが判明したらしいぞ?」

 

「私も聞いたな。確か既に幾つかが開発され、ジャブローにも自立式の防衛装置として配備されているな」

 

「オデッサでもその少女に兵器のひとつを送ってみたら、凄まじい戦果を挙げたみたいだ。

 既に開発部門はその時の戦闘データによるフィードバックを行ったデチューン版を順次生産しているらしい」

 

「惜しむらくは……アリア・レイが幼いせいでプロパガンダにも使えんことか」

 

 1人の将校が呻くように呟けば、幾人も同じように顔を顰める。

 アリアは正に宇宙世紀のジャンヌ・ダルクと呼ばれるほど目覚しい活躍をしており連邦軍としては大々的にその士気高揚の為に活躍を広めたいところだが、彼女の年齢は11歳。

 そんな子供を戦場に出したなどと知れれば逆に世間体とやらを気にする政治家どもはこぞって軍を攻撃することは想像にかたくない。

 

 加えて民衆というのは綺麗事を好む愚かな存在だ。ジオンがコロニー落としという外道を行った過去を忘れて人道的だの倫理がどうのと叫べば同調して連邦政府の官僚や政治家どもは自分たちの首を切ってくるはずだ。

 

「もう少し歳をとっていれば纏めて徴兵できたというのに……」

 

「全くだ。父親とおなじ技術面にのみ才があれば後方へ引っ張れば良いだけなのに、下手なパイロットよりも有能なせいでそれもできん」

 

 故に、彼女の扱いは慎重にならざるを得ず。先のオデッサでアリアが攫われたなどと報告に上がった時は心臓に悪いなんてものではないほどであった。

 その後に脱走してジオンの機体を鹵獲した挙句単騎で黒い三連星を撃破したと報告が別に上がってきた時は何人かが椅子から転げ落ちたりもしたが、どうでもいいことだろう。

 

「しかし、話に聞けば連中はゴップの派閥に取り込まれかけようとしているらしいな。ベルファストにおいてもアリア・レイと奴は個人的な面談をしたとか?」

 

「あの狸親父め……流石にないと思いたいがあんな幼い娘に手を出そうとしてるんじゃないだろうな?」

 

 口々に思ったことを漏らしているところで、不意にその場にいた1人の高官……グリーヴァが手を上げる。

 

「それならば話は簡単です。アリア・レイをホワイトベースから下ろせば宜しい」

 

「……それが出来たら苦労はないのだよグリーヴァ君」

 

 額に手を当ててレビルが言えば、グリーヴァはさらに笑みを深くして答えた。

 

「皆さんはお忘れですか? 彼女は書類上ではアリア・レイは外部協力者……軍属ではないのです。

 確かに徴兵はできません。ですが、軍の艦にいつまでも民間人を置いておく訳にはいかない……適当な理由をつけて育児センターへ放り込めばいい」

 

「しかし、テム大尉がいるだろう? あの施設は孤児限定のものだ」

 

「それこそテム大尉は軍人です。元々彼はモビルスーツに子供を乗せて戦わせるのを酷く厭っていた……それを利用すればよろこんで下船させるでしょうね」

 

「ふむ……確かにそれも手か。それで、何故そこまで君はアリア嬢を欲するのだね?」

 

 レビルの問いかけにグリーヴァ……否、グレイヴは言う。

 

「あの少女の才は素晴らしい。EXAMを掌握するのは勿論、殺人的なGを受けても顔色一つ変えずに機体を操り、現在の連邦軍において最高峰の性能を誇るペイルライダーをジオンの性能に劣る機体で難なく撃退した……今、私の手元にある駒ではペイルライダーを十全に動かすことが出来ません。

 故に、あの少女を新しいテストパイロットとして迎え入れたいのです。あの少女ならばペイルライダーどころか『アレックス』すら使いこなせるでしょう」

 

「アレックス……確か君の研究所で建造されたニュータイプ専用機だったね?」

 

「はい、そしてゴップ大将からの要請でテスト中だったプロトとアレックスの2機をホワイトベースへ届けるよう言われましてね。

 彼女を下ろすのならプロトのほうは必要なくなりますし、ジオンを滅ぼすというのなら連中にもアリア・レイのようなニュータイプ(存在)がいてもおかしくない……ならば彼女に協力してもらい『HADES』をより進化させてもらいたいのです」

 

「『HADES』……」

 

 過去に提出された報告書の中に記されていた性能を向上させるという機能が盛り込まれた特殊システム。

 当然、レビルはその裏に隠されている闇を察していたが彼の言うとおりジオンを滅ぼす上でアリアのニュータイプ(同族)が出てくるのは想像にかたくない。

 

 ニュータイプへ物量で攻めるという連邦の十八番が通じないのは既にホワイトベースが証明している。

 

 故に、その対策のために子供の命を犠牲にすることなど大事の前の些事に過ぎない。

 

「…………了解した。根回しはしておこう。アリア・レイの身柄が育児センターへ移れば期を見て確保するように」

 

「ハッ、感謝いたしますレビル閣下」

 

 頭を深々と下げたグレイヴの口角は大きく歪む。HADESより性能の低いEXAM(欠陥品)を用いてあれだけの戦果を挙げるニュータイプの少女にニュータイプ専用機(プロトNT-1)とHADESを合わせればどれだけの利益が己にもたらすかを想像するだけでグレイヴは笑いが止まらなかった。

 

 だが、彼は……彼らは今も現在進行形で室内に設置されている隠しカメラに乗って観られていることに気が付かない。

 

「さーて、ようやく尻尾見せてくれたわねグレイヴ……」

 

 そのカメラの奥で心底愉快そうに笑う一人の女に。

 

 

 

 そんな会議が裏で行われている中で。

 

「初めましてアリア・レイ、あの蒼い死神のパイロットに会えて光栄です。どうぞ、お見知り置きを」

 

「…………」

 

 白衣を纏い、胡散臭い笑みを浮かべる前髪に緑のメッシュを入れた黒髪の女を前にしてアリアは心底面倒くさそうに、それはそれはとても嫌そうな顔を浮かべるのであった。




一体誰なんだこいつは〜(棒読み)

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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