機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
ホワイトベースへと戻り、防諜対策がきちんとしているだろうブライトの自室へ集まるホワイトベース上層部。
そこでアリアがベルファストにて渡された秘匿回線のコードを通信機へ入力すると僅かな間の後にモニターへいつかの
『うむ、もうそろ連絡が来る頃だと思っていたよ』
「ならこちらの事情は把握してますね?」
『うむ、概ねだがね。レビル将軍から民間人の徴用、そして子供たち含むアリア嬢を下船させ、アリア嬢の身柄の処遇についてのことだろう?』
「ゴップ閣下、いったいどういうことなのでしょうか? 閣下がベルファストで言ったことと現在起こっていることは余りに乖離しております。
連邦軍はどちらが正しいのでしょうか?」
テムが険しい顔で尋ねれば、画面の奥のゴップは背もたれを軋ませ憮然とした表情で答える。
『うむ、その質問だがどちらも正しいといえよう』
その曖昧な答えに面々は胡乱な目を向けるが、すぐに意図を読み取ったケイトが口を開いた。
「閣下が言いたいことは現在の連邦は一枚岩では無いということですね?
レビル閣下のタカ派とゴップ閣下が纏めておられるそれ以外の派閥によって現在軍は二分しておられるのでしょう」
『別に私が率いているわけではないのだがね。こほん、ともかくケイト中尉の言う通り現在連邦軍は面倒なことにそんなことになっていて、意見がふたつに割れているのだよ』
ゴップはそこから現在起こっている騒動の経緯を簡潔に説明し始める。
戦果目覚しいホワイトベース隊を自分たちの指揮下に置くため、レビル派閥が今回の事態を画策したのだと。
そして、現状ホワイトベースは補給の関係とアリアとゴップの会合で経緯はどうあれ事実的に彼の勢力に近い状態になっている。
これが普通の軍の指揮下にあれば命令として手元におけるのだが、ホワイトベースは半民半官の関係で普通の軍隊とちがって扱いがデリケートにならざるを得ない。
加えて、アムロはまだしもアリアのようなジュニアスクールに通う年齢の子供を前線で戦わせているなどとメディアや政府高官、民衆に知られれば今まで戦わせてきたレビル含むその派閥の高官たちは首を切られるだろう。
そうなってしまえば、ジオンを徹底的に叩くという目的の持つ彼らはそれを果たせなくなってしまう為に考えたのがアリアをホワイトベースから引き離してしまうとだった。
そうすれば本格的にホワイトベースを指揮下に入れることが出来る。
もし文句を言えば、そこは戦時特例などと言って強引に徴用して命令に従えさせてしまえばいい。
そして、その後のアリアを適当なでっち上げで手元に置けば何やらレビルの部下の高官が執心している機体のテストパイロットにさせるつもりのようだ。
「ゴップ大将、我々はその命令を蹴ることは出来ないのですか?」
ブライトが腹を撫でながら手を挙げて聞くと、ゴップは秘書官の入れた紅茶を飲みながら答える。
『今のままでは難しいね。真意はどうあれ、いつまでも危険な軍艦に民間人の子供を乗せる訳にはいかない……という彼らの主張は正しいのだよ。
加えて、アリア嬢をテストパイロットにする件も先のオデッサにおいて彼女は捉えた捕虜が脱走し、そして攫われた前科がある。
再び起きないという確証がない以上、身柄の安全の為に後方へ移動させるのも一理あるのだよ。
実際、アリア嬢は戦闘以外にも軍に貢献してくれているからね』
「有能過ぎて困っちゃいますね私」
「呑気に言ってどうするおバカ」
アホなことを言う妹に兄のチョップが炸裂。
『ハハハ、確かにアリア嬢の功績は素晴らしいね。軍において君がなんと言われてるか知っているかね? 『ジャンヌ・ダルクの再来』だ、そうだ』
「縁起悪いですね。その人最後は火炙りじゃないですか?」
頭をさすり、ゴップから言われたことに顔を顰めてアリアは言う。
『うむ、あながち間違いではないな。君をテストパイロットにしようとしている機体なのだが、これが曰く付きでね。ケイト中尉ならよく知っているのではないかな?』
ゴップに話題を振られ、その場にいた面々の視線が彼女に注がれれば肩をすくめて彼女は手元のタブレットを操作するとブライトと部屋の壁に埋め込まれたモニターにいくつかのデータが表示された。
「『RX-80PR ペイルライダー』これは私の所属しているオーガスタ研究所において極秘裏に推進されている『ペイルライダー計画』における中心機体です。
この機体にはアリア・レイの乗るブルーディスティニーに搭載されている『EXAMシステム』の発展もしくは改良型の特殊システム『HADES』を搭載しており、ブルーディスティニー同様にテストパイロットを多数消費している欠陥機ですね」
「この機体……」
「オデッサでアリアを襲った機体かっ……!!」
画面にはアリアが戦い、撃退したいつかの機体の全体図が表示されておりケイトも初耳だったのか驚いたように片眉を上げる。
「おや、そうなのですか? 私はただ実地試験という名目でオデッサ作戦に投入されたとしか聞かされていませんでしたが……その顔を見るにろくな目にあってないようですね」
「はい、名乗ったのに思い切り殺しに来ましたね。まぁ、イフリート・ナハトで片腕切り飛ばしてやりましたが」
「性能に劣る機体で無駄に性能だけは高いコレをよく撃退できましたね。
コホン、とにかく。この機体は性能だけは高いうえにシステム起動時はパイロットをただのモビルスーツを操縦するための部品にしか考えていないためその負荷に耐えきれず、何人ものテストパイロットを死亡もしくは廃人化させています。
そして、現在この機体に乗っているパイロットは機体に耐えるために戦災孤児の少女を投薬や外科手術で強化したのを乗せているらしいです」
「なっ、君のところはそんなことをしているのか!?」
「私のグループは関わっていませんし、私ならもっと検体を上手に扱えますが? 話は戻しますが当然、ゴップ閣下はこのことはご存知なのでしょう?」
『無論だとも。そして、これが奴らの隙となる。ケイト中尉、オーガスタの本当の責任者については知っているかい?』
「話程度くらいには。『グレイヴ』と呼ばれる高官でありましょう?」
『そうだ。この計画の責任者はグレイヴと名乗るレビル派閥の高官で戦争犯罪者に恩赦を餌にして都合のいい私兵にし、軍内に暗躍し戦場のどさくさに紛れてその私兵部隊をけしかけることで、反レビル勢力を排除しているロクデナシだ』
「あの、そこまで分かってるのなら逮捕すればいいのでは?」
アムロがおずおずと切り出すと、ゴップは首を小さく横に振って答える。
『そうしたいのは山々だが、そうすればアリア嬢をホワイトベースに留めておくことが出来ないのだよ。
奴らの人道的な命令を阻止するには、その企みを日の目に晒す必要があるのだ』
「あ、なんかこの後の展開予測できました」
「おや、ニュータイプ的な未来予知ですか?」
ケイトの茶々を無視してアリア、こちらを見やるゴップへ心底嫌そうな顔をしたが無慈悲にこの狸親父は言い放った。
『アリア嬢、君にはグレイヴを捕えるための囮になってもらいたい』
ダイ・ハード再び、アリアは僅かに宙を仰ぐ。
そしてにわかに室内が騒がしくなった。
「閣下! 流石にこれは危険すぎます!!」
「そ、そうです! 相手は危険な人物なのでしょう!?」
「妹にそんなことをさせたくないですよ!」
『では、どうすると言うのだね? 真意はどうあれ奴らの言っていることに正当性があるのは君たちも理解できているであろう?
ここでそれに異を唱えれば、逆に我々が非人道的と非難され、みすみす下ろしてしまえば奴らの思う壺だ』
ゴップの言葉に面々は黙らされ、その様子を見てアリアはため息を零せばゴップを見る。
「分かりました。当然、サポートは期待しても宜しいのでしょう?」
「アリア!」
「何を言ってるんだ!?」
父と兄の悲鳴混じりの叫びが響くが、アリアは冷静に返す。
「どう言葉を尽くそうともこのまま手をこまねいでしまえば手遅れになってしまいます。
ならば、こちから虎穴に入り後顧の憂いを断つ方がいいのは明白です」
加えて、アリアはチラリとゴップを見やった。この狸は自分の利にならないならば切り捨てることに躊躇がないだろう。
戦後の自分たちの安全を得るためには彼に協力するしか道がないのだ。
『安心してくれたまえテム大尉とアムロ准尉。既にグレイヴの私兵部隊のひとつに手を回していてね、彼女には傷1つつけないことを約束しよう』
ゴップは鷹揚に頷いて言えば、アリアは肩をすくめる。
「……だ、そうです。あぁ、私からも頼みがあるのですが宜しいですか?」
『うむ、なんだね?』
「貴方のことですからグレイヴの研究所がどこにあるか看破しているでしょう? なら─────
アリアはゴップへ要求すれば、彼は愉快げに口角を上げて頷いた。
『了解した。手配しておこう』
「ありがとうございます。万が一ということもありますし手を打つに限りますものね」
そして、それを最後にいくつか打ち合わせを済ましその日の秘密の会合を終える。
それから凡そ数日たち、何も事情を知らない育児センターの士官がホワイトベースを訪れた。
「こんにちは育児センターの者です。アリア・レイちゃんほか5名の子供たちを引取りに来たのですが?」
「はい、私がアリア・レイです。他の子達はどうやらジャブローの施設の探検に行ってしまったみたいなので、しばらくは帰ってこないかもしれません」
「あら、そうなの? んー……じゃあ私と先に行きましょうか」
「はい、では行く前に家族と別れの挨拶をしても宜しいでしょうか?」
「もちろん」
士官に許可を貰い、アリアは控えていたテムとアムロへ駆け寄ると抱擁を交わす。
「行ってきます父さん、兄さん」
「……行ってらっしゃいアリア」
「……気をつけるんだぞ?」
「はい」
短い抱擁を終え、アリアは2人に向けて僅かに微笑めば士官の手を取ってエレカへ乗り込む。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか……内側から食い破ってやりますがね)
アリアはエレカの後部座席で懐に忍ばせたハンドガンの冷たい感触を確かめながら鋭い目線を道の先へ向け、胸の内でつぶやくのだった。
そして、アリアは対面する。黙示録の騎士の名を冠するその機体と。
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体