機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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57.Chaotic cave

 マルコシアス隊……その実態はジオン公国のキシリア・ザビ中将がエースパイロットの育成を目的に結成された特別競合部隊というものだ。

 社会的境遇により士気も能力もありながらエリートコースに乗れなかった若者を招集し、A〜Gの7つに分けられた各小隊で厳しい任務へ身を投じさせ、その中での戦果を競合させふるいにかけることで最終的にエリート部隊『キマイラ隊』へ編入させる……のが最終的な目標としていたのだが、蓋を開けてみれば戦果を得るために部隊内の仲間であっても横取りや蹴落としが横行し、命令違反や独断専行もザラで部隊内の空気も最悪。

 

 7つあった小隊も重力戦線の中でC小隊が壊滅し、オデッサ作戦においてA、E、D小隊が全滅し、残ったB、F、Gを統廃合した3小隊制と移行するが撤退戦でF小隊が全滅。

 

 辛くも生き残った2小隊は地球において最後の拠点、キャリフォルニアベースへ撤退を成功させる。

 

 そして、そこで補給と人員補充を済ませ即座に南米ジャブロー攻略戦へとアサインされた。

 

 休む暇もなく受領した新型モビルスーツ、ゲルググの機種転換訓練を突貫で行い、ガウへ積み込まれ連邦軍の本拠ジャブローへ速達便で運ばれ空の景色を楽しむ間もなくマルコシアス隊は南米の空へと到着する。

 

『そ、総隊長! これほんとに降りれるんすか!?』

 

 ガウの前面ハッチが解放され、そこから覗く景色を見てマルコシアス隊の隊員『ギー・ヘルムート』少尉が部隊の隊長である『ダグ・シュナイド』へ引きつった声を投げかけるが無理もない。

 

 ジャブローの密林に隠された迎撃兵器による弾幕が雨霰と放たれ、隣のガウから降りたグフが撃ち抜かれて爆散し他には別のガウが撃ち抜かれ中のモビルスーツたちが降りる間もなく爆炎の華を咲かす。

 

 ギー以外の隊員も言葉にはしないが、確かに怯えの感情があるのを感じ取り、シュナイドは逸る鼓動を抑えつつもマルコシアス隊の隊員たちへ叫んだ。

 

「臆するな貴様ら! 我々がジャブローを落とせばこの戦争は終わる!! 

 ここで臆せばジオンの独立など夢のまた夢だ! これまでの戦いで散っていった仲間たちの犠牲を無駄にしたくなければ俺に続け!!」

 

 そして、シュナイドは乗機のゲルググを走らせて一気に降下する。

 

『く、くそ! やってやる! やってやる!!』

 

『うぉおおおおっ!!』

 

『ジークジオン!!』

 

 自分たちの隊長が先陣を切ったことで覚悟が決まったのか、続々とマルコシアス隊の隊員たちは我先にとガウから飛び降りジャブローの空を舞う。そのなかで後ろで自分の番が来るのを補充人員の『アンネローゼ・ローゼンハイン』は恐怖を隠せなかった。

 

「い、行かないと……で、でも……」

 

 これが初陣ともいえる彼女にとって幾ら最新鋭の機体を任されようとも、死と隣り合わせの戦場でしかも敵地に直接降下など怖がるなと言うのが無理がある。

 

 実際、もう1人の補充人員の気弱な少年『アルバート・ベル』も同様に乗っているゲルググからは怯えの感情が見えた。

 

(怖い、怖い、怖いっ!! 色んな人が死んでいく……!!)

 

 ニュータイプの素養がある彼女には人が死んだ時に発生する思念が伝わり、抑えようと思っても手足の震えが止まらない。

 操縦桿を握る手もまるでコンクリートが固まったかのようにアンネローゼの意思に反して動かず、そしてもう少しで自分の降下する順番が迫ってきたところで、乗機のゲルググの肩へ別のゲルググが触れれば接触回線で語りかけてきた。

 

『アンネローゼ、そういう時は深呼吸をするんだ。訓練通りやれば、簡単さ』

 

「ヴィ、ヴィンセント小隊長……」

 

 機体をパーソナルカラーに塗ることを認められたマルコシアス隊のエースとも呼べる人物の『ヴィンセント・グライスナー』少尉からの言葉にアンネローゼは硬い声色で名を呼ぶ。

 

『そうだぜアンネローゼ、この通り我らがエースのヴィンセントが言ってるんだ。ぱぱっとこんな穴蔵を潰してコロニーに凱旋しようぜ』

 

「オンケ曹長も……」

 

 彼らはヴリティッシュ作戦から今日まで戦い抜いてきた生え抜きの精鋭だ。そんな彼らの声に不安の色はなく、アンネローゼもようやく落ち着いてきたのか僅かに顔色が和らいだ。

 

『んじゃ、お先に行ってくるぜ! 新入りは先輩のあとをついて来いよ!』

 

 そう言うと『リベリオ・オンケ』伍長のゲルググは駆け出し、ガウから飛び降りる。

 そしていよいよ自分の番となった時、ヴィンセントから再び通信が届いた。

 

『さっきはあぁいったけど、実はめちゃくちゃ怖いんだよね』

 

「え……?」

 

 その内容にアンネローゼは呆気にとられたような声が漏れる。彼女が知ってるヴィンセント・グライスナーは正に戦場で華々しく活躍するエースそのものだから。

 そんな彼がまさかこのようなことをいうなんて、と。そんな彼女の内心を察したのか苦笑したようにヴィンセントが続ける。

 

『周りからはエースだなんだと持て囃されるけど、いつもギリギリの戦いだった。ただ、僕がここにいるのなんてほとんど運が良かっただけさ。君も知ってるだろ? 『オデッサの戦車の怪物』を』

 

「は、はい……報告書を読んだ程度ですが……」

 

 オデッサにおいて多数のジオン兵たちを単騎で殲滅し、核兵器発射を阻止した連邦軍のモビルアーマーらしき大型兵器。

 マルコシアス隊のE小隊を殲滅したのもこいつと言われており、記録された映像では正しく怪物というのも納得の化け物ぶりだった。

 

『アイツが僕の配置された場所に現れなかったことをあとから知った時、僕は心底安堵したんだ。……幻滅したかい?』

 

「い、いえ……私だってあんなのと戦うのは御免です」

 

『うん、だろうね。……アンネローゼ、恐怖を覚えることは悪くない。それはつまり自分の実力を過信していないってことだ。

 今まで僕の前で功を焦って逸った奴らは死んで行った……僕が生き残れたのは臆病だったからだ』

 

『だからアンネローゼ、君のような新兵は僕らの後を着いてくるんだ。君らを守るのも僕らの役目だからね』

 

 じゃ、行くから。ヴィンセントは最後に言うと、勢いよく走り出す。

 彼の言葉はアンネローゼにゆっくりと染み渡り、彼の後を追うように乗機を走らせた。その目には怯えや恐れもある。しかし、力強い意思も内包していた。

 

 

 しかし、そんなものはアレを見た瞬間、無意味だとアンネローゼは知る。

 事前のブリーフィングで伝えられたスペースポートのゲートを潜り、地下空間に侵入したまでは良かった。

 

 その先のブロックでは友軍のはずだろう連邦の蒼いモビルスーツ同士が戦っており……いや、戦いと言うよりもそれはリンチとしか言えない有様だった。

 

 片方が狂乱したように斬りかかるが、もう片方はそれを簡単にあしらえば逆に倍以上の密度で痛めつける。

 

『やだ、やだやだやだ!! やめてよ!』

 

『殺す気でやってるくせして反撃されたらやめろとか舐めてるのかお前? ほら、無様に逃げてみろ。でなけりゃ死ぬぞ?』

 

『きゃぁあっっ!!?』

 

 オープン回線から聞こえたのは驚いたことにどちらも幼い少女の声であり、痛めつけられている方は悲痛な叫びを上げるのに対してもう片方は明らかに目の前の声よりも幼いとわかるのに、その声色はゾッとするほど冷たいものだった。

 

 あまりにも予想外の展開にその場にいた部隊の面々は硬直し、アンネローゼも思考が停止する。

 

『い、痛い痛い痛いっ!! やだ、やだやだやだ!! やめて! 虐めないで!! 痛いのは嫌なの!!』

 

『うっさ……お前、黙れよ。殺すぞ?』

 

 攻撃の手はいっそう強まり、青ざめた機体の右腕をもぎ取った蒼い機体はその頭部を掴んで振り回し、岩壁をおろし金のようにして引きずり回した。

 

 そして、とどめを刺すためなのかビーム兵器を展開したところで部隊の総隊長であるシュナイドがその蒼い機体へビームを撃ち込む。

 

 しかし不意を突いたはずの攻撃は容易く避けられ、蒼い機体がこちらを見やる姿を見てアンネローゼはまるで自分が狼に睨まれた子羊のような感覚に陥り、そして漸くこの機体の正体が分かった。

 

「……蒼い、死神」

 

 記録されている外観データとは差異があるが、特徴とも言えるその蒼い装甲は確かにあの蒼い死神だった。

 蒼い死神……北米でガルマ・ザビを討ち取る鮮烈な活躍で姿を現し、片割れの白い悪魔とともに戦場を荒らしてきた正にジオンの怨敵。

 

 それが今、自分たちの前にいる。

 

『う、嘘だろ……まさか初陣でこんなのと遭遇するなんて……』

 

『おいおい、勘弁してくれよ……』

 

『クソッ、最悪だ』

 

 攻め込んだ先での予想だにしない強敵との遭遇に部隊の面々はたじろぐ。

 しかし、それに喝を入れる者がいた。そう、マルコシアス隊の総隊長であるダグ・シュナイドだ。

 

『臆するな!! 敵は1機! 数の上では俺たちが上だ!! ここでやつを討てば我々は本国で英雄と呼ばれるぞ!』

 

 シュナイドは叫び、ヒートランサーを展開して蒼い死神へ肉薄する。

 大振りな一撃は避けられ、地面を割るが刃を起点にして跳ね上がり大上段で振り下ろした。

 

『戦え! お前たちはこの程度の敵に臆する程度の存在だったか!?』

 

 鼓舞する叫びにマルコシアス隊は熱意を帯び、アンネローゼもその声に呼応して戦意を滾らせ操縦桿を握りしめる。

 

『そうだ、やってやる! 相手は1機なんだ!』

 

『ジオン十字勲章は俺のものだ!!』

 

 シュナイドに続くように、ゲルググが突撃しアンネローゼも援護のためにビームライフルを構え、引き金を引くのだった。

 

 

 

 

「なんだコイツら……無駄にテンション高いですね」

 

 自分に叩きつけられる敵意を感じ取ったアリアは冷ややかに呟きつつ、飛んできたビームを腕を振るう瞬間にビームサーベルを起動させて切り払う。

 今のブルーには手持ちの射撃武器はないため、胸部バルカンで他のゲルググに牽制を行いつつ大型のヒート武器で切りかかってくる紫のゲルググの攻撃を跳躍し、背中を蹴りつけて足場替わりに再び跳躍。

 

 適当なゲルググに飛びかかり、展開したビームサーベルの切っ先を頭頂部へ突き刺した。

 股間から真下に突き出たビームサーベルはゲルググの内部を焼き付くし、サーベルを消すと別のゲルググに向けて左の手首を向ける。

 

 そこからワイヤーが伸び、片口に先端のフックが突き刺さり固定すると再び跳躍。

 そのワイヤーを起点にしてジャブローの地下の空を弧を描くように動き、背中を取ったところで腕を引く。

 

『うわっ!!?』

 

 ワイヤーにより引き寄せられたゲルググの背に隠れるようにして飛んできたビームの盾にし、盾にされたゲルググは咄嗟にシールドを構える。

 

『やめろ! 当たる!!』

 

『クソッ、射線が被って撃てない!』

 

「返してあげますよ」

 

『ぐあっ!?』

 

 盾にしたゲルググを蹴り飛ばし、近くにいた別のゲルググに激突するとその背中へビームサーベルを叩き込みぶつかったゲルググと共にコクピットか消し飛ばされた。

 

『おおっ!!』

 

「よっと」

 

『うわぁあっっ!?』

 

 背中から斬りかかってきたが、ホバーとクイックブーストの併用で即座に回り込み脚を払う。

 姿勢の崩れたゲルググの頭部を掴み、膂力に任せて投げ飛ばしソイツに向けて胸部ミサイルを発射。

 

 脆弱な背部へミサイルが突き刺さり、内部から爆発。そこでアリアはあっと声を漏らした。

 

「しまった……鹵獲するつもりなのに爆散させてはダメでしょう」

 

『お前ェ!!』

 

「今まで殺してきたんですから順番が来たくらいで怒らないでくださいよ」

 

 仲間をやられて激昂したゲルググのパイロットの叫びにそう返しつつ、柄の両端からビーム刃が飛び出た珍兵器の攻撃を受止め、胴体を蹴りつけたところで指先を地面に向ける。

 マニュピレーターの先端からナニかが射出され、それは地面にぶつかると勢いよく白い煙が吹き出した。

 

『煙幕!?』

 

 あっという間に周囲は煙に覆われ、モニターには何も映さない。

 

『ぐぁ!?』

 

『い、いったいどこから!?』

 

『蒼い死神も見えないはずなのに!!』

 

 そんな中で聞こえるゲルググのパイロットたちの悲鳴。煙幕の中をアリアは感じ取った気配と無警戒に展開した近接兵器の光を頼りに乱戦の中で闇討ちを繰り返す。

 

 十数機いたゲルググの数は煙幕が晴れる頃には6機にまで減っており、残っているゲルググも損傷の見える箇所があった。

 

『くっ……こんな短時間で……』

 

 隊長機らしき紫のゲルググはヒートランサーを構え、その隣には青いゲルググも近接兵器を構える。

 

「…………ちょうどひとつに纏まってますね」

 

 アリアは現在の自分とゲルググたちの位置を確認すると残った胸部ミサイルを発射。

 それはゲルググたちの少し離れた距離で爆発すると内部から無数のニードルがゲルググたちへ降り注いだ。

 

『こんなもので!!』

 

 しかし、それらはゲルググの装甲の表面に僅かに刺さるのみでダメージは無い。

 ゲルググの1機がアリアへ切りかかろうとしたが、それにアリアは動くことはなかった。

 

 何故なら。

 

『う、動かない……!?』

 

『な、なんだ!?』

 

『駆動系に不具合……!?』

 

『くそ、動け! 動けよ!!』

 

 ビームナギナタを振り下ろそうとした姿勢でゲルググは不自然に停止しており、中のパイロットは動かそうと懸命に操縦桿を動かすがゲルググは僅かに痙攣するだけで動かない。

 そして、詳しく見ればゲルググの各部に突き刺さったニードルを起点に赤いゲル状の物体が零れており、そのゲルが内部で瞬時に膨張硬化しゲルググの駆動系を押しつぶすか阻害することで行動を停止させているのだ。

 

「はい、終わり」

 

『うぉ!?』

 

 四肢を切り飛ばし、アリアは残りの動けないゲルググも手早く解体する。

 今ここにマルコシアス隊はアリアとブルーディスティニーの手によって壊滅したのだった。

 

「さて、あの粗製を連れて帰りま……あれ?」

 

 彼らに一瞥もくれず、アリアを投げ捨てたペイルライダーを回収しようと振り返っところで首を傾げる。

 いない、先程まで転がっていたはずのあの機体が。レーダーで周囲を探っても反応はなく、アリアは逃げられたと察するのに時間はかからなかった。

 

 とりあえず探しに行こうとして、不意に通信が来たことに気がつく。

 

「はい、こちらアリア。どうしました?」

 

『アリアくん、不味いことになった』

 

「……ゴップ閣下?」

 

 サブモニターには珍しく渋面のゴップが映し出されており、アリアは僅かに嫌な予感が背筋を伝う。

 

「どうなさいました?」

 

『……君に渡すはずだった新型のガンダム。プロトNT-1が赤い彗星に強奪されてしまったようだ』

 

「…………なんて?」

 

 

 

 

「う、うぅっ……」

 

 クロエはペイルライダーのコクピットで嗚咽をこぼす。手も足も出ず、ボコボコにされたことで彼女はなけなしのプライドを粉々に砕かれ心をへし折られたのだ。

 

 ペイルライダーも全身の装甲が凹んで傷ついており、頭部もセンサーの大半が死んでモニターに映る景色も砂嵐が混じっている。

 

「どうしよう、どうしよう……ドクに怒られる……」

 

 彼女のうちにあるのはこのまま逃げ帰ればペイルライダーから下ろされる恐怖だ。といっても、既にペイルライダーの関係者は拘束されており彼女の心配も無意味なのだが冷静ではない彼女にはそれに気づかない。

 

「アイツを倒さないと……そうしないと、ペイルライダーも私も……」

 

 しかし、満身創痍のペイルライダーでは勝つことなど夢のまた夢だとクロエとて分かる。

 ジャブローのなかを進み、そしてクロエは適当なハンガーに潜り込めば辛うじて生きていたセンサーが何かを捉えたことに気がついた。

 

「…………これって」

 

 暗い空間の中央に安置されたソレを見てクロエは呟く。

 

 その巨大な物体はクロエの役目を果たさない記憶の引き出しに辛うじて残ってた姿と酷似していたのだ。

 

 モビルスーツをコアにして扱う特殊兵装だと。

 

「これさえあれば…………アイツに……ペイルライダーも私も勝てる……!」

 

 クロエはソレを選択するのに躊躇いも恐怖も無い。あるのはただひとつ、あのブルーディスティニー(憎き敵)を倒すことのみ。

 

 ペイルライダーをソレと接続させればエラーも発生することなく、モニターにその兵器の名前が表示された。

 

 

『RX-COM-SW 004 BALTEUS[P(プロト)]』

 

 

 




やっぱコイツは敵として出ねぇとな!!
あと大人しくアレックス渡すわけねぇだろバーカ!!

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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