機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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はい、機体お披露目です。


63.The New Sword

『今回の作戦ご苦労だったなシャア少佐。まさか最新鋭のガンダムを鹵獲してくるとは思わなかったぞ? 

 流石は赤い彗星だな、見事な手際だ』

 

 目の前のモニターに映る顔の下半分をマスクで覆う痩けた頬の特徴的な紫の軍服を着た女、直属の上司であるキシリア・ザビにシャアは直立不動で返す。

 

「ハッ、しかしジャブロー侵攻自体は失敗してしまいました」

 

『それについては気にするな。どの道オデッサが陥落した後の戦場は宇宙へ移りゆくのは時間の問題だ。元々ジャブローもあの程度の戦力で落とすことなど不可能だとお前自身も理解していただろう?』

 

「それは……」

 

 キシリアからの質問にシャアは言葉に詰まる。しかし、既に重力戦線において勢力図は連邦に傾いており最大の鉱物資源採掘のヨーロッパが失陥しているのだ。

 

 加えて今回の作戦自体も北米へ移動中だった部隊が多い中でろくな足並みを揃えることが出来ずに決行した為に、幾ら最新鋭の機体であるゲルググや統合整備計画で開発された『ズゴックE』や『ハイゴッグ』を投入したとて、グタグダな有様では成功するはずもない。

 

 それでもジャブロー侵攻の許可を出したのは少しでも連邦の力を削げれば儲けものという意図があったからだ。それに加えて、地上用に改修した機体や水陸両用機などは宇宙に持っていくことなどできないが故にそれの処分の意味もある。

 

 つまり、ジオン上層部はそもそもハナから地上を捨てていたのだ。その聡明な戦略眼によれば自分たちのホームグラウンドである宇宙へ戦いの場を持ち込めば、連邦軍など容易く蹴散らせると考えているらしい。

 

『ふっ、意地の悪い質問だったな許せ少佐。お前は鹵獲したガンダムを持ってグラナダへ迅速に帰還しろ、連邦の最新鋭の機体だネジ1本すら貴重な情報源だ。

 まさに英雄に相応しい活躍だろう、ジオン十字勲章が下賜されるほどの功績だろうから楽しみにしておくといい』

 

「ハッ、了解いたしました」

 

『うむ』

 

 キシリアは鷹揚に頷けば通信が切られたことでモニターが暗転すれば自嘲するように呟く。

 

「友の仇を前にして尻尾を巻いて無様に逃げるしかできなかった私が英雄だと?」

 

 ガンダムには片手間に撃破され、強奪した機体に振り回され、乱入者がなければ蒼い死神の手によって一矢報いることすらなくジャブローでシミになっていた事実やこれまでのことでシャアのプライドは粉々に砕かれていた。

 

 ドツボにハマるようにシャアの胸の内にヘドロのようにドロっとした感情が生まれていけば、不意に電子音が響く。

 ハッと顔を上げて視線を向けるとモニターにはキシリアとは別の通信が来ていることに気がついた。

 

 シャアは応答ボタンを押すと、画面にはひとりと少女の姿が表示される。

 

「ララァか……」

 

 額にビンディーを付け、濃紺の髪をふたつの団子のお下げにしたハイライトのない緑の瞳の褐色肌のララァと呼ばれた少女は全てを見通すような微笑みを浮かべ、シャアへ語りかけた。

 

『はい、お久しぶりです少佐。職員の方からお仕事が終わったと聞いたので、お話をしたいと思ったのですが……ご迷惑でしたか?』

 

「いや、君のためならこの程度の疲れなど吹っ飛ぶさ。フラナガン機関はどうだね?」

 

『はい、職員の皆さんも良くしてくれています』

 

「それは良かった。ララァ、私も近いうちグラナダに戻る」

 

『まぁ、それは良かった。ケーキを焼かないと』

 

「それは楽しみだ」

 

 シャアのその言葉にララァはジッと彼を瞳で見つめた後に口を開く。

 

『少佐、酷く傷ついているご様子ですね』

 

「…………君には隠し事ができないな。ココ最近に色々あって少々自信がなくなってしまってね」

 

 ニヒルな笑み浮かべ、シャアは肩をすくめるとララァはおかしそうにクスクスと笑った。

 

「……笑わないでくれララァ」

 

『フフッ、少佐はお可愛い人ですから。大丈夫ですわ、今は確かに負けているでしょう。だけど貴方ならば新しい剣を使いこなせますもの』

 

「お世辞として受け取っておこう」

 

『いいえ、本心ですわ。少佐は純粋で強い人ですもの』

 

「……フッ、君にそう言われるなら頑張らなければならないな。すまないララァ、もっと話しをしたいところだが野暮用ができてしまった」

 

『はい、月でお待ちしております少佐』

 

 シャアは微笑み、通信を終える。

 軍服の裾を翻し、歩き出した彼の目は力強い光が宿っており目的地は格納庫へと向かっていた。

 

 

 

 

 

「プロトNT-1の代わりにこの機体を私にですか……」

 

 ジャブローの内の工廠施設、その中に運び込まれた1機のモビルスーツをキャットウォークから見下ろしアリアは呟いた。

 その傍にはテム、クリス、ケイト、ブライトの4人がおりテムがタブレットに目を通しながら彼女へ説明を行う。

 

「ゴップ閣下からの贈り物だそうだ。元々ガンダムは1号機から8号機まで建造されていた訳だが、1から3号機をファーストロット。4号機から8号機までをジムの開発のためのテストベッドにした後にそれぞれ独自に改修と再設計を施したのをセカンドロットと呼ぶらしい」

 

「この機体はジャブローに運び込まれた後にセカンドロット最後の機体として、これまでに運用されてきた1号機から6号機とブルーディスティニーの運用データ反映。

 NT-1とプロトNT-1と同じくマグネットコーティングと全天周囲モニターを採用し、それ以外にも多数の先進的な仕様を投入して建造していた訳だ」

 

 そう言って一同はもう一度その機体……『ガンダム7号機』を見た。

 

「…………完成してませんけど?」

 

 白い装甲に青い胴体、頭部にはガンダムの象徴ともいえるアンテナとツインアイがあるわけだが大部分の装甲は取り外されており内部の機構が丸見えで、一部の部位なんて着いてすらいない。

 

 まさしく未完成と評すに相応しい姿のガンダムがいた。

 

「うむ、前述した通り色々と先進的な仕様を目指した弊害か完成度は凡そ40パーセント弱といった有様だ。

 ゴップ閣下が言うにはプロトNT-1はジオンに強奪された為に同等の機体を用意するには時間が足りないからと、ジャブローで建造途中だったこのガンダムをアリア専用に好きに仕立て直していいとのことだ」

 

「私専用……」

 

 ほー、と気の抜けたアリアな声が漏れるがその深紅の瞳は新しい玩具を与えられたような輝きを内包していた。

 

「予算も青天井で好きにしていいですか……ゴップ閣下も豪快なことをする」

 

 ブライトが呻くように呟く。幾らアリアがパイロットとして優秀とはいえ、実質的な彼女専用のワンオフ機の建造許可を下ろしたようなものはカスタム機を除いて連邦では異例ともいえよう。

 

「質問宜しいですか?」

 

「許可するケイト中尉」

 

 ブライトが言うとケイトは僅かに喜色を滲ませた声で言った。

 

「好きにしていいということは、そのままの意味で好きにしていいということですか?」

 

「…………まぁ、うん。この書類を要約すればホワイトベースが出航するまでには間に合わせられればという条件付きだが」

 

「OKわかりました。ちょっと必要なものを取り寄せなければならないので失礼いたします」

 

 言うが否やケイトなスタスタとどこかへ去っていってしまう。

 

「すみません、うちのケイト(バカ)が……」

 

 クリスが申し訳なさそうに謝れば、ブライトがなんとも言えない顔で口を噤んだ。

 

「ふむ、アリア。お前はなにか要望があるか?」

 

 テムに聞かれ、アリアは少し黙考したのちに口を開く。

 

「とにかく私の操縦で壊れないことですね。あとはとにかく継戦能力です」

 

「ふむ、なるほどな……前から構想していていた機構を採用するとするか。幸いにもこの機体にはそれに最適な機構があるしな」

 

「何をするのですか?」

 

 アリアが聞けば、テムは技術屋らしい笑みを浮かべて彼女へ語りかけた。

 

「うむ、アリア。連邦のモビルスーツはどんな構造が知っているか?」

 

「えーと、確かセミ・モノコック構造でしたよね? モノコック構造とちがって、装甲の内側に内張りのフレームを貼り付けて強度を上げた構造だったはずです」

 

「その通りだ。よく勉強しているな」

 

「ムフー」

 

 テムは胸を張るアリアの頭を撫でれば、自慢げに頬を僅かにゆるめる。

 

「今から私がやろうとしてる事はガンダム7号機がもつ換装機構を用いて、この機体自体を骨格(インナーフレーム)に見立てることでその上から装甲と内装品、武装を外付けにするのだ。

 名付けるのなら『Over.Full.Armored.Core.(オーバーフルアーマードコア)システム』と言ったところかな?」

 

「……アーマードコア」

 

 その名を聞いて噛み締めるように呟いた。異なる世界で、まさかその名を聞くとは思わなかった彼女は変な縁もあるものだと微かに笑う。

 

 そして、アリアの新しい剣が今ここに産まれんとしていた。




てなわけでアリアの新機体はガンダム7号機です。

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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