機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
面倒だなぁ……アリアの胸中を占める言葉はその一言であり、自分の周囲を囲む子供たちへ外面の仮面を被り、心のこもってない上っ面だけの言葉で応対する。
「ねぇねぇアリアちゃんってリボーに来る前はどこにいたの?」
「はい、今までは父と兄の3人でサイド7にいました」
「サイド7ってジオンが攻めてきたって親が言ってたけど大丈夫だったの?」
「ええ、シェルターに直ぐに潜ったので被害にはあいませんでしたね」
「じゃあ、その後はどこにいたの?」
「親戚の伝手を頼って2ヶ月ほど地球に身を寄せてました」
「地球!? わー、アリアちゃんのお家ってばひょっとしてエリート?」
「裕福な方だとは思います」
授業と授業の間の小休止の時間に当然と言うべきか編入生のアリアの周りにはクラスメイトの子供たちが集まっており、教室の外には別のクラスの子供たちが覗いていた。
それも仕方ないだろう。現在サイド6には連邦の最新鋭の軍艦のホワイトベースとグレイファントムが寄港しており、加えてつい最近には深夜の時間帯にリボーコロニーの幹線道路を大型トレーラーが走っていたという明らかに目立つ話の種があり、季節外れの編入生……それも途轍もないくらいの美少女というどんな馬鹿でも点と点を結び付けられる怪しすぎる関係性に話題にならないわけが無い。
まぁ、流石に子供なのでそんなことを聞き出すよりも話題の方向があっちこっちにとっちらかっておりアリアとしては助かってはいる。助かってはいるが、人間嫌いの彼女にとってこうした質問攻めを表には出さないが辟易としており内心ウンザリしていた。
子供というのは純粋だ。胸の内にある感情の色は悪意であっても大人よりは複雑で混ざりあった色ではなく、比較的視やすいからアリアのストレスは少ない。
けれど、少なくとも数が多ければ疲れるのも事実で何故こうなったのかと内心ため息を吐く。
「ね、ねぇアリア……ちゃん。少しいい?」
「はい、何でしょうかアルフレッドさん」
「えっと、君……空港で連邦の人たちと一緒にいたよね?」
「────気のせいでしょう」
隣の席の少年、アルフレッドからの問いかけに反射的に言ってしまいアリアは内心舌を打った。
食い気味に否定してはそんなの肯定してると同じではないか、少しだけ強い声色だったのか周囲のクラスメイトも含めて目を丸くしている。
アリアはどう言い繕うか思考をめぐらせていると……
「はい、授業の時間よ〜。皆席に着いて!」
「─────皆さん、授業が始まるので準備をした方がよろしいかと」
教師が入室と共にアリアが言えば、周囲の子供たちも慌てたように席へ戻り始めた。
その中にもアルフレッド・イズルハの姿があり、アリアは彼に気づかれないように睨みつける。
(チッ、平和ボケしたガキ共が……)
子供は嫌いではない。けれど、この平和ボケした環境は好きになれなかった。
「すげー、あの子ビリッケツから全員ごぼう抜きだよ……」
「クラスで1番足の早いやつがめちゃくちゃ離されてるな〜」
「……」
体育の授業、リレー競争でいつもつるんでいる悪友が話しているのを横目に、アルは校庭のトラックを駆けるアリアを見つめている。
息一つ切らさず、綺麗なフォームで走り前を走っていたクラスメイト達を風のように抜き去っていく姿はまるで絵画のようだった。
そのまま見つめていると、不意に悪友ふたりの問い掛けが聞こえる。
「にしても、アル。あの時聞いてた内容ホントかよ? アイツが連邦の軍人と一緒にいたなんてさ」
「あ、そうだった。ホントなのアル?」
「え? あぁ〜……どう、だったかなぁ? 見間違いだったかも!」
「えー、なにそれ? んー……でも、確かに連邦の軍人が僕らと同じ子供と一緒にいるなんておかしな話だもんね」
「なんでぇ、つまんねーの。てっきり『蒼い死神』と『白い隼』の話を聞けると思ったのにさぁ!」
「蒼い死神? 白い隼? なに、それ」
アルが聞けば、悪友の1人『チェイ』がニヤリと笑って懐から2枚の写真を取り出して見せた。
それを取ろうとすれば、チェイは写真を上げてアルが見やすいように少し手前の距離でその画を見せる。
その額の中には蒼と白の特徴的なモビルスーツが写っており、戦闘の後なのか足元にはジオンのモビルスーツらしき残骸が転がっていた。
「兄ちゃんが言ってたんだ、この2人は連邦が誇るホワイトベースの最強のエースたちさ。知ってるか? どっちもジオンのエース達をちぎっては投げ、ちぎっては投げの大活躍なんだぜ!!」
「すっげー……なんて名前なの?」
「蒼い奴が『ブルーディスティニー』、白い奴が『ガンダム』さ」
太っちょの方『テルコット』が聞けば、チェキがテンション高めにその名を告げる。
「ブルーディスティニー……ガンダム……」
「変な名前だな〜」
「最高にイカすって言えよ! 兄ちゃんにこっそり戦闘ログのデータ送って貰ったけどアドレナリンドバドバだったぜ!!
ホントマジでやべーのなんの! 学校終わったら俺の家こいよ! 見せてやるからさ!!」
「マジ!? 行くいく! アルも行こうよ!」
「え、あ、う、うん!」
「じゃ、決まりだ! 放課後荷物を家に置いたら公園に集合だ!」
「はぁ……」
「どうしたのアリアちゃん、ため息なんてついちゃって。学校楽しくなかった?」
「楽しいと言うより疲れました……平和ボケと言うんですかね。対岸の火事みたいな空気の中でノンキに過ごすのは当事者としては変な神経を使います」
学校を終え、迎えの車に乗って秘密基地へ赴きレイヴンの調整作業の中で溜息を吐けばクリスが問いかける。
それに対してアリアは表情は変わらないが、心底ウンザリした空気をまとって答えた。
「まぁ、仕方ないわよ。サイド6は中立だもの……私たちが寄港する前に領海でジオンがドンパチやってたみたいだけど」
「そうなのですか?」
「ええ。なんでもリボーにもジオンのモビルスーツたちが侵入したみたいよ?
まぁ、駐留していた部隊が全機撃墜したみたいだけど」
「…………それ、大丈夫なんですか?」
「なんとも言えないな。一応、サイド6の政府は声明を出しているが、効果は無さそうだな。
そこ! 取り付け位置間違ってるぞ!! ネジの嵌め間違えで大事故になるんだ! 最低でも10回再確認をしろ!!」
答えるのはツナギ姿のテムで、彼の後ろにはレイヴンのオプションの各種アーマーが吊るされており作業員たちが兵装の取り付け作業をしている。
そうしていると、奥からケイトが現れアリアが尋ねた。
「システムの不具合は直せましたかね?」
「一通りは消せました。あとは実際に動かしてみないことにはなんとも……それにしても態々彼女をジュニアスクールにわざわざ編入させる必要があったのですか大尉?」
「もちろんだともケイト君。サイド7を襲撃されてからアリアの勉強は止まっているからね、学習課題を貰っておかないといけないのだよ。それに、アリアには戦場だけに意識を向けて欲しくないというエゴもあるがね……」
「…………」
「ケイト、余計なこと言ったら分かってるわね?」
「まだ何も言ってませんけど?」
笑顔だが、目が笑ってないクリスにケイトは言う。そんな様子を見てアリアはゲンナリとした様子を見せるのだった。
「別にあの基地で寝泊まりしても良かったんですけどねクリスさん」
「ダメよアリアちゃん。機密もあるけど、あんな所にいたら息が詰まっちゃうもの。
テム大尉も言ってたでしょう? 戦いにだけに意識を向けて欲しくないってね」
「私からすれば大尉は理想論が過ぎますがね」
「はぁ……ケイト、それ大尉の前で言ってたらアームロックしてたわよ?」
街中をエレカが走る。運転席にクリスが座り、助手席にはケイト、後部座席にはアリアが。
現在三人はクリスの実家に向かっており、アリアはレイヴンの調整を終えるまではクリスの家に下宿することになっていた。
「別にジュニアスクールの学習過程は問題ないんですがね」
「勉強以外にも大事なことがあるのよアリアちゃん。はい、到着〜2人とも、荷物運ぶの手伝ってくれる?」
「クリスは人使いが荒いですね」
「はい、わかりました」
エレカが止まり、荷台に積まれた書類などが入ったダンボールや他の荷物を分担して運び出す。
「……お、重い」
「…………前から思ってましたけど、ケイトさんって貧弱ですよね?」
「私は科学者であってこのような肉体労働は専門外なのですよアリア・レイ……」
「クリスさん、この人どうやって軍人になれたのですか?」
「あはは……コイツ、正規の試験受けてないのよ。大学で研究してた時にスカウトされたからね。
じゃなかったら精神鑑定で落とされてるもの」
「あぁ、なるほど……」
「本人がいる前で失礼なこと言わないでくれます?」
そんな会話をしつつ、アリアがクリスの家に荷物を置いて別の荷物を回収するために戻ると。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
前を歩いていたクリスが何かにぶつかり、ふたつの声が響く。
「いたた……んもぉ、誰よ一体! って、アル?」
「いてて……ん? クリス? 帰ってきてたの? って……げぇ!! ケイト!!?」
「人様の顔を見てなにがげぇですか失礼ですねアルフレッド・イズルハ少年。いつかのように実験に付き合わせて差し上げましょうか? ……あ、ちょっと重すぎて無理です。助けて……」
なにやら喧しい声が聞こえ、そちらへ顔を出すと尻もちを着いているクリスとその前に眼をかっぴらいて大口を開けているアルフレッド、そして腕と足がぷるぷる震えているケイトの姿が。
「……なんですか、これ?」
「あ、アリアちゃん!?」
「…………アルフレッドさん」
アリアが呟けば、アルフレッドは顔を赤く染めて己を見つめて名を呼ぶ。
会いたくなかった存在を見て、アリアは眉を寄せてアルフレッドの名を言うのだった。
後継機
-
既存機体を魔改造
-
オリジナル機体