機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「アリアのやつ何してるかな」
パルダコロニーにて寄港中のホワイトベースの艦内、その展望デッキで今アリア達がいるであろうリボーコロニーへ視線を向けながらアムロは呟く。
「アイツ、人嫌いだからなぁ。大人より子供の方がマシとはいえ大丈夫かな?」
「なんでぇアムロ、やけに過保護じゃねぇか。そんなにアリアが心配かい?」
「カイさん? いやぁ、杞憂だとは思うんですけどアリアって人の視線とか感情ってやつに酷く鋭敏ですから、相手側が何かやらかしてブチギレないか心配なんですよね……ほら、子供って良くも悪くも遠慮ないじゃないですか?」
「あー……前までは何言ってるかわかんなかったが宇宙でてからやけに感覚が広がるって言うのかね?
お前さんの言いたいことが何となく理解できたわ。やれやれ、いよいよ俺もそっち側かねぇ〜」
「そっち側ってなんですか……別に僕とアリアはニュータイプってやつじゃないですよ?」
胡乱な目でカイを見やれば、腕を組んだカイがなんとも言えない顔で口を開く。
「前から思ってたんだがよ、お前さんとアリアってやけにニュータイプを否定するよな。なんでなんだ?」
「んー……なんていうか、みんなの言うニュータイプってジオン・ズム・ダイクンがでっち上げたものにたまたま当てはまるのがあったら言ってるだけじゃないですか。
実際、皆はニュータイプってわかってないと思うんですよ、僕含めてね」
アムロは手に持っていた栄養バーを齧り、速攻ゴミ箱へ投げ捨てた。カイの目にはその表面に『くさや味』の文字が見えた。
「言われてみればそうだな」
「はい、あくまで僕の持論ですけどアリアや僕のこの第六感って言うべきものは元々人間が持っていた機能が戦場っていう極限の環境で強引に叩き起こされたものなんじゃないかって。
だって、僕とアリアは地球出身ですよ? それならジオン・ズム・ダイクンの提唱したニュータイプ論に当てはまらないじゃないですか」
「ふむ、なるほどな」
「あとはまぁ、宇宙は怖いですからね。とてもじゃないですけど安心感なんてこれっぽっちもありませんよ」
「そりゃ、なんでまた?」
「小さい頃、アリアがスペースシャトル事故に遇ったんですよ。デブリとシャトルがぶつかって乗組員のほとんどが死んじゃって生き残りがアリア含めた数人の大事故です」
「そういや、アリアのやつ小さい頃事故にあったって言ってたな……」
「ええ、はい。それ以降僕は宇宙っていうのはどうしようもないくらい怖い世界って印象づけられちゃって……
こんなのがニュータイプっておかしいでしょう? だから、僕はニュータイプじゃないし、アリアも色目で見られるから否定するんです。
言わば個性みたいなやつですよ、こんなのは。十人十色程度のものって感じで」
口直しのチューブ飲料を取り出し、きちんとフレーバーを確認したアムロは中身を吸いながら言う。
「ふーん……個性、ねぇ」
カイはアムロの言葉を反芻した。ニュータイプ、人の確信。宇宙へ適応した新人類……目の前のアムロが機械いじりに熱中して良くアリアに食事をねじ込まれてる様を目撃してる身からすれば新人類なんてとても言えない。
微笑んでカイは肩を竦めてアムロに同意を示すように小さく頷く。
「確かにニュータイプなんていねぇわな」
「でしょう? それに」
飲み終えたチューブ容器をゴミ箱に向けて投げれば無重力の中を緩やかに進んで行く。
「相手のことを尊重して、認めて、互いに少しの我慢をして争いが無くなれば……その時の人たちをニュータイプって言ってもいいと僕は思うんです」
言い終えると共にゴミ箱へ空容器は収まるのだった。
「まぁまぁ、貴方がアリアちゃんね? ようこそマッケンジー家へ!」
住宅の玄関、朗らかに微笑む初老の女性は歓迎の声を上げて迎え入れればその言葉を掛けられたアリアは頭を下げる。
「はい、短い間ですがお世話になりますマッケンジー婦人、これ、つまらないものですが受け取ってください」
テムに持たされた足元の紙袋を両手で持ち上げて見せればクリスの母は手を振って笑った。
「ふふっ、そんな別にいいのに! ささ、上がって上がって!
クリスとケイトちゃんも久しぶりの里帰りなんだからぼさっとしないで上がりなさいな! あら、アルも一緒なの? なら貴方も一緒にご飯を食べましょうか!
貴方のお母さんには私から言っておくわよ!」
「もー、ママはしゃぎすぎよ。ケイトも荷物少し運んだくらいでへばらないでよね」
「ぜぇ、ぜぇ……なぜ私が、このような、肉体労働を……!」
「ケイトって相変わらず僕よりクソザコなんだね……えっと、お邪魔します」
「黙りなさいはなたれ小僧……久しぶりにおばさんのご飯を食べますね。少々胸が踊ります」
その後ろには呆れたようなクリスと膝が震えてるケイト、その背を押してるアルがおり、皆慣れたように靴を室内用のものへ履き替えてリビングへと向かえばアリアも倣って後ろへ続く。
「それにしても驚いたわ、いきなり帰ってきた連絡を入れたとおもったら職場の上司の娘さんをホームステイさせてだなんて」
「仕方ないでしょ〜? アリアちゃんをあんな硬っ苦しいところに寝泊まりさせるなんて出来なかったんだもの。
それに、学校に通う距離の問題もあったしね。街中のホテルにこんな小さな子一人で過ごさせるわけにもいかなかったから私が立候補したのよ?
ケイトの家も案にはあったんだけど……」
「私の家には誰も住んでませんからね。掃除だけで時間が潰れるくらいならクリスに押し付けた方が合理的と判断しました」
「と、まぁ、コイツはこんな感じで役に立たないからね」
「私は別に通う必要はないと言ったのですが、クリスさんの上司でもある私の父からも言われてお邪魔することになったんです」
「あらあら、こんな小さい子なのに大変だったのねぇ……短い間だけど我が家のように寛いでちょうだい!」
「そうだとも。ゆっくりして行くといいさアリアちゃん」
「はい、ご迷惑をおかけしますお二人共」
マッケンジー夫妻の温かな歓迎にアリアは僅かばかりに微笑む。
「驚いたなぁ、アリアちゃんってクリスとケイトと知り合いだったんだ」
「ええ、そうよ。それにしてもまさかアリアちゃんの編入したクラスにアルもいたのね。
どうだったアリアちゃんは?」
「え? あー……皆から質問攻めされてたね。あとリレーでビリッケツだった順位から走る番になったらごぼう抜きして1位でゴールしてたよ」
クリスから学校の様子を聞かれたアルはアリアの横顔を見て、僅かに頬を赤く染めながら教える。
アリアは余計な事を言わないか監視の意を込めてアルをじっと見つめていた。
「へー! アリアちゃん足速いのね!」
「ええ、はい。運動神経には自信がありますから。サイド7にいた時は地区対抗のスポーツ大会では良く表彰台に乗ってました」
「それは凄いじゃないか」
「ただの子供同士のお遊びですから、このくらい誰でもできますよ。これ、とても美味しいです」
「まぁ、ふふっお気に召してくれて良かったわ!」
和やかに会話を広げながら各々が食卓に並んだ食事を食べ進めていた。
戦時中で物資が限られる中で出された料理はどれも美味しく、これがおふくろの味なのだとアリアは感じ取る。
素朴なのだが優しくて、何故か郷愁を覚える不思議な味わいだ。
「そういえば、アリアちゃんってクリスのお仕事の上司の娘さんらしいけど……どんな仕事してるの?」
「あら、教えてなかったのクリス?」
アルが不意に気になったことを口にすれば、アリアは僅かに表情を硬くする。しかし、その質問にクリスはさして気にした様子もなく答えるのだった。
「色々あるのよママ。でも、いい機会だし教えておこうかしら? ケイトも構わないわよね」
「お好きにどうぞ。ですが、機密事項は喋らないでくださいよクリス?
アリア・レイ、貴方も心配も杞憂ですので大丈夫かと」
「……わかりました」
ケイトから言われ、アリアは表情を戻してスープを口へ運ぶ。
「アル、実は私とケイトって連邦軍に入ってるのよ」
「ええ、2人とも軍人だったの!? しかもケイトがあんな貧弱ぶりで!!?」
「私はクリスと違ってスカウトなのですが? クリスなどよりもよっぽど才媛溢れる天才ですからね?」
「……えっとつまりクリスが軍人ってことはその上司の娘さんのアリアちゃんって…………」
「そうね、一応アリアちゃんも軍関係者になるわね〜。といっても私たちは技術者だから戦ってなんかないわよ?」
「じゃ、じゃあじゃあブルーディスティニーとガンダムって知ってる?」
「どこでその名前を知ったのよ貴方……」
「友達のチェイの兄ちゃんが連邦の軍人らしくって、写真を見せて貰ったんだ。学校終わったあとはテルコットと一緒に戦闘記録の録画を見たんだよ!
めちゃくちゃド派手で凄かったんだ!」
「えぇ……」
「……情報漏洩してるじゃねーか」
「……あとで大尉に報告しておいた方がいいですね」
アルからまさかのカミングアウトに三人は呆れたように肩をすくめるが、幸いにもブルーディスティニーのパイロットがアリアだということはバレてないらしく一先ずはセーフと判断。
「ほんと、凄かったな〜。僕も軍に入ってモビルスーツに乗って敵を倒してみたい!! 戦争をしてみたいんだ!」
「─────戦争はゲームと違いますよ」
気がつけば平坦な声でアルの発言を被せるように言っていた。冷水を浴びたようにアルは戸惑いの色を瞳に浮かべており、アリアは冷めた視線を向けて続けた。
「モビルスーツに乗り、敵のモビルスーツを堕とす……それはいいでしょう。それで? 貴方はその敵のモビルスーツに同じ人間が乗っているということを理解しているので?」
「あ、えっと、その……」
「アリアちゃん」
「中立コロニーにいるから戦争は対岸の火事? そんなわけが無いでしょう。
日常というのは簡単に崩れることを理解できていないのですか? 理解できてないでしょうね。でなければ先程の言葉が出てきませんものね」
「それは……」
「アリア・レイ、落ち着きなさい」
「私は落ち着いています。冷静に、聞いているのですよ。
引き金を握り、相手に向けようとした瞬間には殺そうと思っていなかろうがその時点で既に敵となるのです。
いいですかアルフレッド・イズルハ、戦争というのはゲームと同じように撃墜されたらコンテニューなどありません。堕とされたら死しかありません、それでも貴方は戦争をしたいと、殺し合いをしたいと言うのですか?
向こうには同じように家族がいて、大切な誰かが、友人がいる誰かを殺したいと?」
「ち、ちが……僕はそんなつもりじゃ…………」
「そんなつもり? 舐めるのも大概に────
「アリアちゃん!」
「ッ……!」
クリスの怒鳴り声が響き、ようやくアリアは状況を把握するとバツが悪そうに目線を逸らして小さく口を開く。
「…………申し訳ありません、少し頭に血が上っていました。ご飯、美味しかったです。部屋で休ませてもらいますね」
「あ、え、ええ。お粗末さまでした」
食器を片付け、シンクは運べばその場から逃げるようにアリアは2階へと上がってしまう。
「……アリアちゃんのいたサイド7がジオンに攻められて来たのは知ってるでしょうけど、その後も機密になるから詳しいことは言えないけど脱出の為に乗り込んだ連邦の軍艦でもジオンから何度も襲撃されてきたの。
その度に危ない目にあってきて、アリアちゃんは戦争がどんなものか理解してるのよ」
「ほ、僕……」
「人間というのは己が関わらなければ他人事なのですから、無理もありません。
アリア・レイもそれは理解してるでしょうし、アルフレッド少年。貴方が気にするほどのことではありません」
「…………ごめんなさい」
クリスとケイトからの言葉にアルはそれだけしか言えなかった。
「…………戦争、か」
微妙な空気の中でアルは自分の家へ戻り、ベッドに寝そべって天井を見つめながら呟く。
住んでいるコロニーの中にジオンのモビルスーツが入ってきても、あの時のアルは非日常に胸がときめいて恐怖などなかった。パイロットの青年と出会ってもワクワクが勝り、カメラの記録と階級章を交換した時なんて嬉しくて小躍りもしていた。
アルは戦争というものをゲームの延長として捉えており、アリアから詰められても上手く答えることが出来ずにいた。
「…………バーニィなら戦争って分かるのかな?」
あのザクのパイロットの青年の名を呟いてアルはベッドから立ち上がる。
「……うん、聞いてみよう。バーニィなら分かるかもしれない」
幸いにも母親は寝静まっており、気をつければまバレないだろう。加えて明日の学校は休みだし、と子供特有の無鉄砲さを発揮してアルはとある場所へ向かうために家を抜け出す準備をしたところで不意に窓を覗き込むとクリスの家から小柄な影が出てくるのが見えた。
「……アリアちゃん?」
パジャマの上に学校で着ていたライダースジャケットを羽織ったアリアの姿をみつけたアルは急いで窓辺に隠れて観察する。
窓から見えるアリアは自転車に跨っており、ペダルを漕ぐとタイヤが周り初めてどこかへと行ってしまった。
「こんな時間にどこ行くんだろ……」
少しだけ考え、アルはあとを追いかけることに決める。
「時間だな。お前たち、始めるぞ」
『応!』
「ワイズマン伍長!」
『は、はい!』
「俺たちが失敗したらお前はすぐに脱出して報告しろ、分かったな?」
『りょ、了解しました!』
そして、リボーの街中に4機の『
「目標、連邦の秘密基地の新型ガンダムだ! 行くぞ!!」
とっちらかってますね!!
後継機
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オリジナル機体