機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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戦争と書いてワンサイドゲーム


73.Sinking Cyclops

「アルフレッド・イズルハ、なぜ貴方がここに?」

 

「あ、えっと君がクリスの家から出ていくのが見えたから……じゃなくて! ここは危ないから早く戻ろうよ!! 怪我もしてるんだよ!?」

 

「貴方には関係ありません。私には行かないとならないのですから」

 

 話は終わりだと言わんばかりにアリアはガードレールを跨ごうとして不意に右腕が引っ張られる感覚がし、ジロリと彼女は下手人を睨みつける。

 アリア同様にパジャマ姿の上に上着を羽織ったアルはその冷たい視線にたじろぐが、視線をそらさずに口を開いた。

 

「アリアちゃんが何しに行くか、僕には分からないけど絶対危ないって分かるから! そんなところに女の子を行かせるなんて絶対できない!」

 

「無遠慮に触れるな」

 

「うわっ!?」

 

 アルの掴んでいた手は華奢な体格からは想像できないほどの力で振り払われ、アルは堪らず尻もちを着く。

 

「ここから先は命の保証はありません。死にたくないなら大人しく回れ右して耳を塞ぎ、目を閉ざし、ベッドでガタガタ震えてなさい」

 

 吐き捨て、アリアはガードレールを跨いで林の奥へと消えていった。

 呆然としたような顔で1人残されたアルはそれを見送ることしか出来ない。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……なかなか、キッついですね……」

 

 整備されていない林の中を歩き続けていたアリアは太い幹に手を添え、膝に手を着いて乱れた息を整える。

 枝葉のカーテンの隙間から見える光景は幾つもの爆炎による明かりが空を照らし、青い単眼の闘士たちがリボーコロニーの防衛軍を蹂躙していた。

 

「ったく、好き勝手ドンパチしやがって……本当なら、もう寝てる時間だってのに……」

 

 疲労感と苛立ち、及び眠気からか口調も荒くなりジオンに対して殺意の滲ませた言葉と共に睨みつける。そんな中で不意にケンプファーたちの動きが鈍ったことに気づく。

 

「……なんですか?」

 

 立ち止まり、ケンプファーたちの視線がある一点に向けられており一瞬だけ青白い光が瞬いたかと思えば────4機のうちの1機のケンプファーが胴体をぶち抜かれ、凄まじい破砕音を伴って全身がバラバラに砕け散った。

 

「キャッ!?」

 

 そして木々の間を駆け抜けるように突風と遠雷の音が吹き荒れ、堪らず悲鳴をあげる。

 

「何事ですかいったい!?」

 

 そんな悲鳴のような叫びが木霊するのだった。

 

 

 

 

『アンディー!!! 畜生、隊長! アンディが殺られた!!』

 

「わかっている!! クソッ、あんな遠方から当てる武器を持ってるとはな……!」

 

 微かに光が瞬いたかと思った次の瞬間にはサイクロプス隊の仲間の『アンディ・ストロース』少尉のケンプファーが砕け散っていた。

 原型すらとどめないほど破壊されており、先の一撃の射線上にあったのであろう建造物は軒並み薙ぎ倒され、当てられたらやばいと判断したハーディは即座に隊員たちに向けて遮蔽物を盾にするよう指示。

 

「撃ってこないだと……?」

 

 明らかに過剰威力だろうソレが飛んでこないことにハーディは訝しつつも其の理由を察する。

 恐らくは撃った側もこの威力は想定外だったのだろうと、モビルスーツのみを撃破するはずが余波だけで都市部に被害を出したのだ。

 

 でなければ頼りない建造物の陰に隠れている自分たちを撃つチャンスをみすみす逃すわけが無いと。

 

「だが、これでは我々も動けんぞ……?」

 

 相手は民間人へ被害が出ることを厭い、こちら側は先の一撃を警戒し奇妙な膠着状態へ陥る。だが、このまま手をこまねいていては別のコロニーにいる敵の母艦が救援に来てしまう。

 

「どうする……」

 

 ハーディは焦りを滲ませながら呟くと、不意に連邦の基地方面からナニかが飛んできていることに気が付いた。

 

『ハッ! 野郎、わざわざスナイピングポイントを捨ててきやがったぜ!』

 

『自分から来てくれるんだ、八つ裂きにしてやる!』

 

 モニターに映るのはコロニーの空を飛ぶ漆黒の機体。通常のモビルスーツよりもふたまわり以上も大きく、分厚い装甲の機体は真っ直ぐにこちら側へと吶喊してきているではないか。

 その姿を見て隊員の一人、『ミハイル・カインスキー』ことミーシャが嘲りを込めて嗤う。

 

 それに同意するように『ガブリエル・ラミレス・ガルシア』が漆黒の機体へと両手に装備したMMP-80マシンガンの引き金を引いた。

 

 バラララッ! と乾いた音を立てて薬莢が排出し、弾丸が撃ち出されれば漆黒の機体へ飛んでいく。しかし、その弾丸を前に漆黒の機体は真横へ姿がブレて弾丸は空を切って通過する。

 

「被害出るのを嫌がって自ら出向いたか……お優しいことだな!!」

 

 ハーディはペダルを蹴り飛ばし、ケンプファーを走らせた。

 

 

 

 

「くぅぅっ……! アレックス以上のじゃじゃ馬ねコイツ!!」

 

 レイヴンのコクピット中でクリスは全身を殴るようなGに歯を食いしばって耐えながら操縦桿を動かし、懸命にバランスをとってサイクロプス隊の攻撃を空中で躱す。

 

 何故彼女がアリアの機体であるレイヴンに乗っているかは単純明快で、正規パイロットのアリアが居ないため、唯一パイロットであるクリスが周囲の反対を押し切ってレイヴンに搭乗して出撃したのだ。

 

 しかし、クリスも優秀なパイロットではあるがガンダム7号機 レイヴンはテムやケイト達の手によって魔改造を施されたことによりその性能は最早一年戦争のモビルスーツとは隔絶したものとなっている。

 それ故に操縦性も劣悪の極みとなっており、それを見越してケイトがAMSを実装したのだが、そのせいでアリア以外操縦することの出来ない欠陥品だった。

 

 一応AMSを使用しないマニュアル操作も可能となっており、クリスはその状態で動かしている訳だがNT-1アレックスを超えるほどの過敏な反応速度は最早クリスでは扱えるものではなく、先の狙撃も苦肉の策でオプション装備で行ったものなのだが、余りの威力に絶句し仕方なく直接相手をすることを選択する。

 

『お粗末な動きだなァ!』

 

「くぅぅうっ!!」

 

 市街地に降り立ち、建物の影から飛び出てきたケンプファーのビームサーベルの一撃を前腕部から展開した青白いビーム刃が受け止め、がら空きの胴体へ右手に握ったサブマシンガンを撃とうとした。

 しかし、背後から現れた別のケンプファーを見て即座に中断。クイックブーストで射線から退避する。

 

「キャァアアァアッ!?」

 

 しかし、機体を制御しきれずに建物へと突っ込んでしまうのだった。

 元々クイックブーストは精密な操縦技術を要する回避方法であるのに加えて使用時にはとてつもない加速によるGが発生する。

 

 それ故にパイロットには類稀な技術と対G能力を要求するのだが、クリスはあくまでも常識的な範囲内でのエリートだ。

 アレックスですら彼女の手に余ったのに、それ以上のモンスターマシンに乗ったらどうなるかなど想像にかたくない。

 

 それでも手練のサイクロプス隊を相手に堕とされていないのはレイヴンの性能の高さとクリスの技量のお陰だろう。

 しかし、それも長くは続かないのはクリスとて理解していた。彼女の肉体強度や対G能力は常識の範囲内であり、ノーマルスーツも普通のものではレイヴンの機動力に体が耐えられない。

 

「はぁ、はぁ……アリアちゃん、こんなのをあんな涼しい顔で扱ってたのね……! 

 大尉もケイトもこんなの作って……!!」

 

 本来のパイロットであるアリアには畏怖のような思いを向け、こんな化け物を生み出した上官と幼なじみには呆れにも似たような感情を向けてクリスは頬から汗をこぼした。

 そんな中でクリスは飛んできたバズーカの弾頭をロングジャンプで躱し、コロニーの空を舞っていたところで不意に郊外の林で光が瞬くのを捉える。

 

「な、なに……?」

 

 そちらへと視線を向けた瞬間、不意にコクピット内にCOMの音声が響いた。

 

『報告:マスターアリアの命令を光信号で受諾、正規パイロットの搭乗のため自動操縦モードを起動』

 

「は!? アリアちゃん!? どういうことよ!! ッ、操縦を受け付けない!?」

 

 唐突すぎる内容にクリスは目を見開いて操縦桿を動かし、ペダルを踏むがレイヴンは彼女の指示を受け付けない。

 

『どこ向いてんだテメェ!』

 

『とっとと落ちろよ!』

 

『警告:臨時パイロットは衝撃に備えることを推奨』

 

「はッ? 、一体何をする気なの!?」

 

『回答:迎撃を開始』

 

 ブーストによる上昇で前後を挟み込んできた2機のケンプファーがビームサーベルを装備し、斬りかかる。

 それを操作権限を奪い取ったCOMが瞬時にクイックブーストを行使。ミーシャのケンプファーの背後に回り込んだ。

 

『なっ……!?』

 

『にぃ……!?』

 

 そのがら空きの背中へ蹴りをぶち込めばガルシアのケンプファーと玉突き事故を引き起こし、2機は地面へと叩き落とされる。

 

『『ぐぁっ!?』』

 

『ミーシャ! ガルシア!!』

 

 絡み合って墜落した2機へ視線を向けず、レイヴンはアリアのもとへと向かう為にコロニーの空を飛ぶのだった。

 

 

 

「よし、いい子ですね」

 

 手に持ったライトを瞬かせ、レイヴンに向けて命令を出したことで真っ直ぐに飛んでくる己の機体へ満足そうに頷くと懐から取り出したインターフェスを頭に嵌めた。

 それから程なくして空中を高速で飛んできた漆黒の機体がアリアのすぐ真上で停止し、ブースターを停止させ降下すると凄まじい地響きを立てて着地する。

 

 土煙が上がる中でアリアは素早く駆け出せば、膝を地面に着いた体勢のレイヴンが胸部装甲を展開させ、アリアにむけて右掌を差し出した。

 

 マニュピレーターに飛び乗った彼女を落とさないように運ぶとアリアが飛び移り、球型のコクピットの前に立ちハッチを解放させる。

 

「はぁ、はぁ……アリア、ちゃん?」

 

「レイヴンに乗ってたのはクリスさんでしたか……無茶をしますね。さ、手を」

 

「ごめん、なさい……できると思ったんだけど……」

 

 そこにはぐったりとしたクリスがおり、腰のアームが彼女を支えていなければすぐに崩れ落ちそうなほど疲労している様子であった。

 そんな彼女へ手を向けると、クリスは申し訳なさそうに謝りながらその手を取った。

 アリアはクリスへ肩を貸してレイヴンのマニュピレーターへと運び、彼女を地面へと下ろすの近くの木陰へと寝かす。

 

 そのままレイヴンへ戻ろうとした所で。

 

「ま、待って!!」

 

「……はぁ、なぜ来たのですかアルフレッド・イズルハ?」

 

 そこにはあちこちを汚したアルが木の幹に手を当てて荒い息を零しており、大量の汗を流している姿がそこにはあった。

 アリアは辟易とした態度を隠さず、視線を向けない。

 

「アリアちゃん……それに、このモビルスーツって……」

 

「貴方には関係の無いことです」

 

 問答する時間も惜しいと言わんばかりにアリアはレイヴンのマニュピレーターの上に立つ。

 

「貴方は戦争で戦いたいと言いましたね。なら、見せてあげますよ。戦争がどんなものかを」

 

 振り返り、アリアはその赤い瞳でアルを射抜いて告げた。

 

「な、何を言って……」

 

「察しが悪いですね。貴方の望む戦争とやらを貴方の故郷でしてあげると言ったのです」

 

「ッ!!? ま、待って!!」

 

 ようやく自体を呑み込めたのかアルは慌ててアリアの元へ行こうとしたが、レイヴンのマニュピレーターは動き出して彼女を運ぶ。

 アルの伸ばした手は空を切り、地面へと落ちた。

 

 コクピットの前に立ったアリアは服を脱ぎ捨て、肌着のみになるとシートへ座る。

 腰をアームが固定し、金属特有の冷たい感触が肌を刺すと同時にアリアは呟いた。

 

「接続開始」

 

『───Authentication check.

 Neural connection start - no problem

 Brain wave check start - no problem

 Vital check start - no problem

 Mental load check start - within acceptable limits

 Various system check start - system all green

 

 Gundam Unit 7, codename “Raven” startup sequence complete.

 

 Allegory-Manipulate-System connection start』

 

 

 素肌へとアームの先のデバイスが勢いよく接続する。

 

「がっ……あっぎぃ……!!?」

 

 専用のスーツ無しでAMSを接続したことにより、途轍も無い激痛で視界がスパークし引きつった悲鳴が零れた。

 

「いっつぅ……さすがに、キッついですね……」

 

 暗転していた全天周囲モニターが周囲の景色を映し出し、市街地からこちらへと向かってくる2機のケンプファーを発見するとすぐに機体のコンディション状態を表示させる。

 

「今のレイヴンのアーマーは……タイプHですか。なら……」

 

 アリアが念じると、レイヴンの腰部へ接続されていたユニットが変形。格納されていた機構が展開されれば、2本だった足が4脚へと変わった。

 

「さて、重装型(タイプH)アーマーの性能を見せてもらいましょうか」

 

 不敵に微笑み、アリアは勢いよくペダルを蹴飛ばす。

 その重厚な見た目からは想像できないほどの加速をもってレイヴンはケンプファーへ突撃した、

 

『姿が変わったところでなぁ!』

 

『意味がねぇのさ!』

 

「生憎、その程度の機体でコイツの相手になるとでも?」

 

 4脚となったことで安定感が増し、肩部に増設されたアーマーのブースターと背部のメインブースターによる高速移動。

 ミーシャのケンプファーがショットガンを撃ち、ガルシアはシュツルムファウストを放つ。

 

「ッ!」

 

 AMSによる精密さで遥かに細かい出力調整を可能としたことでクイックブーストを連続行使。

 残像を伴うほどの高速移動で散弾を交わし、シュツルムファウストを切り裂きケンプファー2機へと肉薄。

 

「はい、さようなら」

 

 両手に装備したサブマシンガンが火を噴き、瞬時にケンプファーへ無数の風穴を作りだす。

 気がつくまもなくコクピットごとミンチにされた2機のケンプファーは停止した。

 

「もう1機は……基地の方ですね」

 

 視線を向けず、残ったケンプファーは基地へ向かっているのを発見。上空へと飛び上がったアリアはサブマシンガンを格納すると一丁のライフルを取り出す。

 

 折りたたまれていた銃身が展開され、狙いを定めたアリアは即座に引き金を引いた。

 

 

 ガシュンッッ!! 

 

 

 青白い火花が飛び散り、レイヴンの圧倒的なジェネレーター出力から生み出された電力によって加速した弾丸が音を置き去りにして突き進む。

 レールガンによって放たれたソレはソニックウェーブを形成し、ケンプファーへ1秒と経たずに到達するとその全身を粉々に粉砕。

 

 そしてコロニー中に響くように遠雷のような音が轟き、サイクロプス隊は呆気なく全滅した。




タイプHは重量4脚で射撃形態というイメージです。尚、射撃が強い代わりに近接も強くて硬い模様。
多分、ケンプファーのショットガン受けても余裕で耐えられます

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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