機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「これより作戦概要を説明する」
ホワイトベースのブリーフィングルーム、そこに集まったクルーたちを前に壇上に立つブライトのその言葉から始まる。
手元の端末を操作し、照明が落ちると室内が暗く染った瞬間に壁に埋め込まれているモニターに光が灯ることで青白い光が部屋を照らした。
「本日未明にジオン特殊部隊の隊員が投降した。彼が齎した情報によると今夜マルフタマルマル時に別のジオンの部隊がサイド6へ侵攻してくることが判明した」
ザワザワとクルー達がざわめき、ブライトが右手を上げて静粛にと口を開く。
「お前たちも知っていることだろうが、先日のジオンの特殊部隊ことサイクロプス隊がリボーコロニーへ襲撃をしかけてきた。その目的はどうやら調整段階のガンダム7号機レイヴンの破壊であったらしい。
しかし、それはクリスチーナ・マッケンジー中尉とアリア・レイの尽力により未然に防がれたわけだが……連中はどうやらこの部隊を捨て石にし我々を足止めさせるのが目的だったようだ」
モニターには4機のケンプファーの残骸及びバーニィが齎した命令書の画像が添付され、その上に画質は荒いがサイド6の領海ギリギリに鎮座しているジオンの軍艦らしき望遠写真が表示された。
「奴らの目論見は成功し、事実我々はサイド6政府からの要請で人道支援を行うこととなり現在リボーコロニー内で瓦礫撤去や野戦病院を設置。
そして、奴らはそれに乗じてコロニー内にキシリア・ザビ麾下の特殊部隊の屍喰鬼隊という部隊を投入するらしい。この部隊については恐らくランバ・ラル大尉が詳しいはずだ。
解説を頼めるか、大尉?」
ブライトが投げかけると、ホワイトベース外人部隊隊長を務める連邦の軍服に身を包んだラルが頷いた。
「うむ、と言っても私自身も詳しいことは説明できんがね」
壇上に立ち、ラルは端末を操作する。
「屍喰鬼隊は前述したとおりキシリア・ザビ麾下の特殊部隊なのだが……その評判は最悪の極みだ。
連中は戦場で連邦のみならず友軍のはずのジオンにすら牙を向き、残虐的な行為を繰り返している。
そして、キシリアの権威を傘に物資の略奪行為をするような正に屍喰鬼と言うべき外道共で我々は幸いにも戦場で鉢合わせるようなことはなかったが、それほどまでに評判は最悪というわけだな」
恐らく部隊のパーソナルカラーなのであろうグレーに塗装されたモビルスーツたちの画像が表示された。
「奴らがコロニー内に投入されれば先の被害以上の惨劇がもたらされることは想像にかたくないと私は言わせてもらう」
「うむ、ありがとう大尉。彼の説明は聞いたな? そして、さらに悪い報告がある。
どうやら連中、こいつらを捨て駒にして我々を足止めさせることで身動きを取れなくなったところでサイド6に核攻撃を計画していることが判明した」
ブライトと言葉にブリーフィングルーム内の空気が張り詰める。
「奴らはスペースノイドを同胞と言っておきながら、自分たちの利にならないと判断した瞬間に虐殺を行うことは先のコロニー落としで判明している!
我々は断固としてその蛮行を許すわけにはいかない。よって、ホワイトベース及びグレイファントムはその凶行を阻止しなければならない!」
力強く拳を振り上げブライトは声を上げるのだった。
「ふむ、予定時刻より早いが屍喰鬼隊を出せ。連絡が来ない時点で察してはいたがな」
「……おい待て、中佐。包囲するならわかるがモビルスーツ隊を……しかもあの連中を出すのは不味いだろう。
加えて奴らはまだコロニーの中だぞ。コロニーを戦場にするつもりか?」
「フッ、何をいまさら。既に別の部隊が襲撃をしかけてますよ」
ジオン軍の運用するチべ級重巡洋艦の艦橋にて艦長席に座る小太りのちょび髭が特徴の男『コンスコン』は目を見開いて叫ぶ。
「聞いていないぞ『キリング』中佐!? どういう事だ!!」
「おや、事前に説明したはずですが? コマンドが破壊工作をしていると」
「モビルスーツを用いての破壊工作などあるわけが無いだろう!? 詭弁というのだそういのは!!」
コンスコンの言葉に煩わしげに眼鏡をかけ金髪を撫で付けるようにオールバックにした神経質そうな男が振り返り、皮肉げな笑みを向けた。
「立場を弁えてもらおうコンスコン少将、元々本作戦はわれわれ突撃機動軍の管轄であったのを貴官の上官たるドズル中将がキシリア少将に無理を言ってねじ込んだに過ぎないのですよ。
従えないのなら抗命罪として拘束できることをお忘れなきように」
それに、と彼は大仰に肩を竦めて続ける。
「どうやらサイド6は中立と嘯いておきながら連邦の基地を要していたらしいではありませんか。既に奴らはジオンと袂を分かったのですよ。ならば、報いを受けさせねばなりません!」
「ッッ……!!」
その言葉にコンスコンは歯を食いしばって押し黙る。彼の言うとおり、サイド6は連邦の秘密基地をリボーコロニーへ建設していた。
それはつまり連邦へ着くという意味であり、中立と宣言するにはあまりにも無理がある。
だが、コンスコンはスペースノイドの故郷であるコロニーを戦場にするということに苦悩した。
そんな彼を苦悩を嘲笑うようにキリングはオペレーターへ指示を送る。
「そら、さっさと屍喰鬼隊を出せ! 腹を空かせたケダモノどもに餌を与えろ!」
オペレーターは先の2人の会話に戸惑いを見せながらも淀みのない手つきでモビルスーツ隊の発進命令を出した。
「出撃! 出撃だ!!」
「ひひっ、沢山殺せるぜ!!」
「獲物は全部私のよ! グチャグチャにして素敵な風穴を開けて上げるのよ!」
カタパルトハッチが開き、格納庫にいた
自分たちの嗜虐心を満足させ、好き放題暴れられる機会がすぐ目の前だという様相は正に部隊の名を表すに相応しい。
「いひっ、イヒヒヒヒっ!! いくぜぇ!!!」
そして、屍喰鬼の1匹が今まさに宇宙空間へ投げ出されようとした瞬間にサイド6方面からひときわ強く青白い稲光が瞬く。
「─────はぇ?」
間の抜けた声が漏れた瞬間、コンスコンの乗艦のチべ級とは別のチべ級ティベ型『グラーフ・ツェッペリン』の胴体後方がぶち抜かれ、勢いよく火を吹いた。
「な、何事だ!?」
「ぐ、グラーフ・ツェッペリン被弾! モビルスーツデッキ大破しました!!」
「敵からの発砲の光は無かったはずだぞ!?」
「わ、わかりません!!」
立て続けに今度はムサイ級最終生産型のエンジンが爆発、炎上する。
「『ジークフリート』被弾! メインエンジン損傷!! あぁ! 沈みます!?」
「ッ! 早くモビルスーツを出せ! このままでは母艦ごと全滅してしまうだろう!?」
キリングは慌てて指示を送れば、全ての艦から蜂の巣をつついたようにモビルスーツ達がカタパルトで宇宙空間へと投げ出され展開した。
「クッ、どんな手品を! さっさと木馬もどき共のいるコロニーへ攻め込め!!」
唾を飛ばしながらキリングのそんな怒鳴り声が艦橋へと響きわたる。
「ふむ、モビルスーツ部隊が展開されましたね。狙撃もここまででしょうか?」
『ここからよく当てるよお前は。さて、行こうか』
シャトルの背に乗るタイプHアーマーを装着したレイヴンは展開していた曲線が特徴の大型レールガン『テュポン』のバレルを折り畳み込んで格納。
そのすぐそばに居たアムロの搭乗するアレックスの手を交差するように互いに繋げばメインブースターの出力を一気にはね上げる。
『作戦は覚えているよな?』
「はい、私たちが敵艦隊へ強襲し、足並みが乱れたところを後続の部隊が一気に叩く……ですよね?」
『うん、その通りだ。だけど───
「別に、アレらを倒しても構わないですよね?」
モニターに映るアムロに向けてアリアは不敵に微笑んだ。
『やり過ぎないようにしておけよ?』
「善処します。スリーファイブで散開しますね」
『了解』
サイド6領海ギリギリに布陣するジオンの艦隊は自分たちへ急速に接近するレイヴンとアレックスの姿を視認。慌てて艦砲射撃やモビルスーツたちで迎撃を開始した。
「スリー」
『ツー』
「ワン」
「『今ッ!!』」
弾幕をくぐり抜け、艦隊のど真ん中へ突っ込んだ瞬間に2人は手を離す。
レイヴンは両手の独特な形状の大型ライフルを構え、アレックスはビームライフルの引き金を引いた。
レイヴンの装備していたライフルの下部バレルの銃口が光り、通常のビームではなく散弾のように拡散した青白いビームが放たれ複数のリックドムやゲルググに無数の風穴が作り出された瞬間に爆散。
アレックスは精密すぎる狙いで連射し、コクピットのみを撃ち抜きあっという間に敵モビルスーツ達を無力化。
「ッ!」
『は、速いっ!?』
クイックブーストでゲルググの懐へ飛び込めば、咄嗟にゲルググはビームナギナタを振りかぶる。
しかし瞬時に上方向へクイックブーストすることで回避し、背後を取れば肩部に格納されていたビームキャノンが展開。青白いビームが放たれ撃ち抜いた。
『死ねぇ!!』
「見え見えですよ」
『なぁっ!?』
腰部ユニットが展開し、先端部からは大出力のビーム刃が形成され切りかかってきたリックドムの斬撃を受止めた瞬間に熱量に耐えきれずヒートサーベルが溶断。
自分から突っ込むようにしてビーム刃に切り裂かれる。
「その程度で……!」
『く、来るなぁ!!』
ビームライフルを連射するゲルググの攻撃をかわし、肉薄した瞬間に大型ビームライフルのその鋭利な先端を勢いに乗せてコクピットへぶっ刺し、引き金を引いた。
「……次」
『消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!』
「酷い邪気だっ! そこ!」
身の毛がよだつような悪意を前にアムロは顔を顰めながらも最小限の動きで飛んできた複数のビームをかわし、宙返りをするようにしてビームを撃った。
その進路上に飛んでくるようにしてリックドムのコクピットが撃ち抜かれ、それを確認することなく背面撃ち。
『ぎゃあっ!?』
「ふたつ」
脚部のブースターを吹かし、横向きになった瞬間にバックパック中央部にマウントしていたバズーカから弾頭が放たれ、レイヴンへ迫っていたゲルググの背中を撃ち抜く。
「みっつ」
ビームサーベルを引き抜き、回転斬り。ザクII改を切り裂いた。
「よっつ、次!」
指先からバルーンを射出し、それに紛れるようにして2機のゲルググをすれ違いざまに両断した。
「も、モビルスーツ隊押されています!」
「ふざけるな、敵はたったの2機だぞ!? こちらはその何倍もいるはずだろう!」
キリングは泡を食ったように取り乱してオペレーターからの報告を否定するが、艦橋のすぐ外に広がる光景は無慈悲に現実を叩き付ける。
「ッモビルスーツ隊を下がらせろ! 艦隊の防空圏に誘いこめ!!」
「指揮官は私だ! 勝手なことをしないでもらいたい!!」
「黙れ! このまま大人しく丸裸になれって言うのか!? 護衛機がいない艦がどうかるかなど子供でもわかるだろうが!」
キリングが怒鳴るが、負けじとコンスコンが怒鳴り返す。その正論に呆気にとられたようにキリングの眼鏡がズレるが、震えた指先で位置を戻すと怒気を押し殺して呟いた。
「艦を後退させ、あの2機に向けて艦砲射撃をしろ…………! それと直ぐにc型を出せ!」
「なっ!? まだ味方がいるんだぞ!!」
「黙れ! 貴様は私の指示に従ってればいいんだよ!! 早くしろ!」
「は、はいっ……」
拳銃を引き抜き、コンスコンの眉間へ構えたキリング。突然の凶行にコンスコン含むクルーたちは絶句するが、彼の部下も拳銃を引き抜いたことでオペレーターは指示に従わざるを得ない。
そして、チべの主砲が動けば今も戦っている友軍機とレイヴン、及びアレックスに向けてビームが放たれた。
「ッ!」
『うわっ!?』
アリアとアムロは咄嗟に立ち止まれば、少し先の位置はビームが通過し冷や汗を流す。
「また友軍がいるのに……?」
『ジオンは味方ごとやるつもりなのか!?』
周囲へ目を配らせれば明らかに誤射をしかねない母艦からの射撃に動揺しているモビルスーツ部隊の姿があり、明らかに彼らも想定していない事態のようだ。
『ヒャハハハ!』
「チッ!」
しかし、グレーに塗装された機体はそんなこと関係なく攻撃を仕掛けてきた為に後ろに向けてビームキャノンで撃ち抜き、動きの悪い別のザクII改へビームライフルの引き金を引く。
アムロも動揺から抜け出し、手早く周囲のモビルスーツ達を無力化したところで不意にチべ級のカタパルトハッチからバズーカを装備したザクが出てくるのが見えた。
「……まさか!」
『核を撃つ気なのか!?』
即座に正体を看破し、核を撃たせまいと2人がそのザクへ向かおうとした所で邪魔をするかのごとくグレーのモビルスーツ達が群がり始める。
「邪魔ッ!」
『退け!!』
かなりの数を二人で減らしはしたが、それでもまだ10機以上はおり油断はできない。
加えて敵モビルスーツ隊の中で屍喰鬼隊は恐怖心が無いのか、粘つく殺意と悪意を伴って攻撃してくるために煩わしさが酷かった。
2人が足止めされる間に核弾頭を発射できるバズーカを装備したc型ザクは悠々と宇宙を進み、サイド6に向けてその銃口を向ける。
「やめなさいっ!!」
『核を撃たせるなァッ!!』
まとわりつく敵を蹴散らし、2人は阻止せんと迫る。しかし、それよりも引き金を引く速度が早い。
ザクがバズーカの引き金を引こうと────した瞬間に飛来してきたビームがそのコクピットを撃ち抜いた。
「『ッ!』」
『おー、危ね……後詰めのご到着だ! お前らは好きに暴れろ!!』
「ナイスですカイさん!」
『流石!!』
はるか遠方、Gファイターの背に乗る1機のモビルスーツがいた。機体の全長にも迫る大きさのスナイパーライフルを構え、バイザーの奥に隠れた双眸が確かにザクを撃ち抜いたことを捉えている。
ガンキャノンから新たに受領した機体『ガンナーガンダム』のコクピットでカイはニヒルに笑いながら引き金を引いた。
放たれたビームは敵艦の主砲を撃ち抜き、次々と無力化していく。
そしてそれに続くように連邦のモビルスーツ達がその牙をジオンのモビルスーツ部隊へ突き立てていった。
『行くぞアリア!』
「はい、兄さん!!」
敵の防衛網に穴が開き、2機のガンダムが一気に敵艦隊の旗艦へと迫る。
当然近づかせまいと対空機銃が視界を埋め尽くすように稼働するが、アムロとアリアはその隙間を縫うように直進。
「『ハァッ!!』」
互いに代わる代わるライフルを放ち、2色のビームが次々とチベの武装を破壊。
レイヴンは長大なブレードを展開し艦橋をすれ違いざまに切り裂き、それに続くようにアレックスがビームを叩き込んだ。
「次っ! 沈みなさい!!」
ビームライフルの出力を最大にしたことでバレルが展伸、膨大なビームの奔流がムサイ級を両断。真ん中からへし折れ巨大な火球へと姿を変える。
ガシュン!
ライフル後部のマガジンが排出され、回転機構が作動し別のマガジンが装填。
残りの艦に向けて引き金をひこうとした瞬間、その艦から信号弾が打ち上げられた。その色が示す意味は降伏であり、周囲を見渡せば武装を放棄して投降する敵モビルスーツたちの姿が見える。
「…………ふぅ、終わりましたか」
熱の篭った息を吐き出す。時間にしてみれば短いが、内容の濃い騒動がここに集結したのだと彼女は理解して肩の力を漸く抜くのだった。
ポケ戦編はあと数話で終わりですね〜
後継機
-
既存機体を魔改造
-
オリジナル機体