機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
月と地球の間、かつてはサイド5と呼ばれたコロニー群があった地点から離れた場所にその暗礁宙域はある。
戦争によって破壊されたコロニーの残骸や衛星、デブリが乱雑に集合し迷い込めばそれらにぶつかり、即座に仲間入りする危険地帯。
まともな感性なら絶対に近づかないだろう場所だというのに、その中へ入っていく一隻の輸送艦がいた。
それは地球連邦が宇宙で運用している補給艦の『コロンブス級輸送艦』であり、両舷に設けられた巨大なカーゴベイが特徴の双胴船のような艦はデブリの間を縫うようにして暗礁宙域の中を進む。
凡そ暗礁宙域の中心付近のエリアへ出れば、そこはデブリが避けるようにして開けた場所となっており、そこにはコロンブス級以外の艦船が複数おりそのどれもが地球連邦が運用する軍艦であった。
最早艦隊とも言うべき艦たちの列に加わるコロンブス級が不意に停止すると、船体側面の一部が開き中から移動用のランチが出てくる。
その移送艇は数いる艦の間を抜け、艦隊の中心へと出れば見えるのは1つの大型戦艦だった。
外観はマゼラン級戦艦と似ているが、サイズは目測でも3倍はありグワジン級よりも巨大でありその威容は正しく大戦艦と評せる。
そんな艦へランチが移動のための桟橋を接続し、中から人が移動した。戦艦内部のハッチが開くとその前に立っていた男が微笑みを浮かべながら声をかける。
「お疲れ様です将軍、さぞ窮屈な思いをしたでしょう」
「うむ、しかし志を同じくする同胞のお陰で脱出することが出来た。彼に感謝してもしきれない」
ハッチを潜り、現れたその人物は本来なら宇宙へいないはずの者だった。
「まさかゴップも監視の兵が貴方を脱出させるとは思わないでしょうね。レビル将軍?」
先の一件で降格し監視をつけられ閑職に回されたはずの地球連邦軍元大将であるヨハン・イブラヒム・レビルその人である。
「それだけ奴らが憎まれているということだよ君」
「でしょうな。では、行きましょう」
「うむ」
士官の先導のもとレビルは通路を進むと船内のとある一室へ案内された。
扉が開き、中へはいるとそこは会議室の様相を表しておりレビルより先に何人もの軍人がそこにいる。
「みな、よく集まってくれた。監視の目も厳しいだろうに」
上座の席へ立ち、レビルは視線を巡らせて言うと過激派将校たちはその目をギラギラと光らせながら答えた。
「我々も貴方同様に監視の兵の協力してもらい、整備用の部品コンテナに紛れ込んでジャブローから脱出したのです」
「私も同様に。多少窮屈でしたがこれからの事を思えば幾らでも我慢できますよ」
「あのカス共を根絶やしにできると思えばこの程度の忍耐など無いに等しいですからな」
彼らはレビル同様に問題行動や思想の面で監視付きで閑職に回された過激派たちであり、本来ならこんなところに居ない。
しかし、彼らを監視していたはずの兵士たちはいわば潜在的過激派であり彼らの協力の元に大多数の過激派がこうして宇宙へと上がっていた。
過激派の何人かはグレイヴの失態でレビルを見限ったが、それでもこうして派閥を形成するには問題ないくらいには彼の元へと集まっており今現在も続々と合流を果たしている。
連邦政府や軍上層部も過激派たちのジオンへの恨みつらみを想定していた。しかし、その想定を上回るほどジオンへの恨みの深さや憎悪の強さを見誤っていたのだ。
「さて、親交を深めたいところだが私はこれまでの戦況に関することを何一つ知らされていなくてね……教えてくれるだろうか?」
「はっ、つい先刻ですがジオンの宇宙要塞ソロモンが失陥した模様です。
そして攻略戦での損失を連合艦隊は再編を急いでおり、ルナツーから補充のために艦艇などか出撃しており内部の戦力が防衛に最低限にまで払底しているとのことです」
「そうか……『ガイア』の状態はどうだね?」
「はい、現在この艦の完成度は85%程であり航行には問題ありません」
「武器弾薬の搬入も急がせており、凡そ1週間もあれば全て完了するかと」
「それは僥倖。秘密裏に建造を命じていたとはいえジオンの目を掻い潜り、連邦からも監視の目につかず良くぞガイアをここまで形にしてくれた」
『ガイア級超弩級要塞戦艦1番艦 ガイア』
それこそこの艦の名前である。
その全長はジオンのグワジン級を大きく超える数kmを誇り、その全身にマゼラン級の主砲の口径を超える砲を多数装備。
加えてミノフスキー粒子下を想定してAS弾頭内蔵のミサイルサイロも準備しており、モビルスーツの運用も視野に入れて複数のカタパルトデッキも備えている。
先の1週間戦争での大敗でレビルが信のおける……ジオンを必ず殲滅するという考えの部下たちへ極秘裏に建造を命じ、建造の物資や費用など持てる権力全てを用いて隠蔽したことでゴップにすら判明していない正しく秘密兵器であり、
「ルナツーの例のモノの確保はどうなっている?」
「ハッ、現在ルナツーで保管されている弾頭全ての確保は完了しており、運び出している最中の模様です」
「ふむ、本命のものは?」
「トリントン基地に保管されていたモノは既にガイアに搬入されています。こちらがその起動キーであります」
「では例の装備プランも出来ているかね?」
「はい、もともとジムはガンダムのマスプロモデルでありますから規格は問題ありません。ですが、機動力の低下は否めませんが誤差の範囲でしょう」
「パーフェクトだ諸君」
打てば響くといえるほどスムーズに受け答えが行われ、レビルはその機嫌を良くする。
「感謝の極み」
レビルの労いに部下のひとりが恭しく頭を下げた。
その場の瞳には等しく狂気の炎が宿り、今か今かと解き放つ時が待っている。
そして、その時が近いことは想像にかたくない。
『排熱急げー!! 無補給で戦い続けたんだ! 熱が溜まりまくってる!!』
『ケラウノスのメンテも急げよ!! 試作品だからどんな不具合が起きてもおかしくない!』
『アーマーがあるからって素体のメンテもしっかりしろよ!! なんせモビルアーマーに鷲掴みにされたんだからな!!』
『使用済みのカートリッジは点検忘れるなよ!! メガビームランチャークラスの出力で連射してるんだ!
少しでも損傷があったら爆発しかねないんだぞ!!』
ソロモン攻略戦を終え、ホワイトベースへ着艦し専用の格納デッキへ機体を収納すれば控えていた作業員たちが慌ただしく機体へと取り付く。
漆黒の装甲は空気が揺らめくほど熱を帯びており、機体各部のメンテナンスハッチが解放されるとそこへ排熱ガスを吸気するチューブと冷却ガスを供給するチューブが接続。熱の篭った機体を冷やし始める。
レイヴンのコクピットから外へ出たアリアはヘルメットを脱ぎ火照った頬を手で仰ぐが、レイヴンから放たれている熱気のせいでぬるい風が飛んでくる為にすぐにやめた。
宙に漂いながらアリアはレイヴンを見やり、その全身を見つめる。
今回の戦いで大した被弾はないが、それでも漆黒の装甲の全身には傷がついており、いかに激戦であったことを物語っている。
「アリア・レイ、戦闘お疲れ様でした」
「ケイトさんですか」
そうしていると、白衣姿のケイトがアリアの傍へと宙を進んで近づいてきた。その手には冷えたスポーツ飲料の入った容器が握られており、アリアへと手渡す。
それを受け取ったアリアは封を空け、ストローで中の液体を吸い上げて火照った体を内側から冷やし始めるとその横でケイトが手に持ったタブレットをみながら口を開いた。
「ひとまずザッとレイヴンの稼働ログは見ましたが、素晴らしいデータをありがとうございます。
貴方は実にサンプルとして素晴らしい存在です」
「それ褒めてます?」
ケイトをジト目で見やるが、当の本人は何処吹く風である。
「体調に変化はありますか?」
「いえ、特には」
「ふむ、問診では問題なしと……では精密検査に行きましょうか」
「えー……疲れてるんですけど?」
ケイトに言われ、アリアは気だるげに言う。今の今までジオン相手にドンパチしてきた彼女は疲れきってるので検査はブッチしたい気分なのだ。
断固として拒否する姿勢のちびっ子を前にケイトはタブレットから視線を上げ、一言彼女へと告げる。
「テム大尉が頑張ったら沢山褒めてくれますよ」
「何してるんですか早くしてくださいケイトさん。こんなのパパっと終わらせますよ」
「んー、なんでしょうねこの変わり身の早さ。言った私が言うのもなんですが釈然としません」
「ハリーハリー」
「分かりましたからまずはスーツを脱いでくださいアリア・レイ。…………さすがにここで脱ぐのはやめてください。私がクリスに怒られますので」
「グレイファントムのスカーレット隊に被害があったのですか?」
「ええ、らしいですね。敵の最後にでてきた大型モビルアーマーの流れ弾に巻き込まれてしまったようですよ」
「それはご愁傷さまですね」
専用のノーマルスーツを脱ぎ、その下のインナー姿となったアリアは出撃後に恒例となっている検査の最中でケイトから今回の戦いの被害を聞かされていた。
しかし、仲間と言っても面識のないアリアには実感というのがあまり湧かないらしくその表情はいつもの澄まし顔である。
「それにしても要塞の攻略戦ってもっと長くなると思いましたが、随分早く終わりましたね」
「連邦のソーラー・システムで敵の戦力を大幅に削りましたからね。加えて敵の司令官……ドズル・ザビの判断も早かったですから」
「ドズル・ザビ?」
「あの大型モビルアーマーに搭乗していた人物です」
「……アレに? なぜ司令官がわざわざ前線に出るんでしょうか?」
アリア自身、戦略とかそういうことには疎いためよく分からないし北米の時もそうだが、なぜジオンというのは司令官がわざわざ前線へ出張ってくるのだろうか?
そんな彼女の疑問をケイトは肩を竦めて答える。
「さぁ? 大方ジオンお得意の武人精神というやつでしょうか。馬鹿馬鹿しいですよね」
「ですね。はぁ、早く戦争終わって欲しいです」
「ソロモンも落ちましたから、後はア・バオア・クーを残すのみです。
そこを落とせばジオンの敗北は決定的でしょうから降伏するでしょうね」
「……降伏しなかった場合は?」
「それこそ泥沼の殲滅戦でしょうね」
「……ろくでもないですね、ホント」
「知りませんか? 戦争というのはろくでもないのですよ」
ケイトのその言葉にアリアは気だるげに肩をすくめるのだった。
「初めましてシャア大佐、シャリア・ブル大尉であります」
そして、木星帰りの男は仮面を被った男と対面する。
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体