機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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85.The Empty Man

 月面都市グラナダ、そこにあるこれまで人類が宇宙へ向かうための歴史的遺物を展示する博物館に2人の人物が邂逅する。

 

 片方は顔の上半分を覆うマスクで顔を隠し、赤く染め上げた軍服を纏う美男子シャア・アズナブル。

 そんな彼の前に立つのは左目を隠すように髪が伸ばし、髭を生やした何処か影のある不思議な色っぽさを纏う男だった。

 

「本日付で配属になりました『シャリア・ブル』大尉であります。ジオンが誇る赤い彗星と会えるのは光栄であります」

 

 その者の名は『シャリア・ブル』とある事情からつい最近まで木星圏まで遠征していた『木星帰りの男』である。

 

「シャア・アズナブル大佐だ。今日から君の上司である訳だが私は君が言うほどの男では無いよ大尉」

 

 シャリアの世辞にシャアは淡い笑みを称えながら答えるが、それに対してシャリアは首を横に振るう。

 

「いえ、貴方は連邦の白い悪魔と蒼い死神と交戦し、生き残った上に連邦の最新鋭のガンダムをジオンへ齎しました。

 この功績を見れば誰だろうと貴方は凄い人だと思いますよ」

 

「うーむ、なんともむず痒い評価だ。私はただ逃げ帰ってきただけなのだがね」

 

「……貴方の中の彼らの戦いを見ればそれがどれだけ難しいか私程度の男でもよく分かりますよ大佐」

 

 シャリア・ブルのその言葉にシャアは僅かに瞠目し、小さく頷くと口を開いた。

 

「…………やはり、君はララァと同じようだな。総帥も君のような逸材を送るわけだ」

 

「いえ……私はただ他の人よりも勘が鋭いだけの凡人ですよ大佐」

 

「ふっ、才能ある者は皆そう言うのだよ。着いてきたまえ、君に合わせたい人物がいる」

 

「はっ」

 

 シャアは身を翻し、シャリアもそれに続く。

 

「人が宇宙で暮らし始めてもうじき一世紀……ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプという人の革新であり新たな新人類。君は知っているかね?」

 

「私がそれだと……?」

 

「少なくともキシリア閣下はそう思っているようだ。そしてギレン総帥が君を私の部隊へねじ込み牽制する程度にはね」

 

 天井に吊るされるロケットの模型、アポロ十一号のそばを通り音声ガイダンスが宇宙開発の歴史を紡ぐ。

 人類の歴史の歩みを追体験する目的の為に建設されたその施設はグラナダがジオンに占領されてからは足を運ぶ者がおらず、人気がなくて寂しげだ。

 

「しかし皮肉なものだよ。ジオン・ズム・ダイクンが口にしたニュータイプは人と誤解なく分かり合えるというものだというのに、キシリア閣下はそれを兵器として扱おうとしている」

 

「…………大佐はそれを許容しているように見えますが?」

 

「ふっ、君たちには隠し事ができんな。……初めは私は半信半疑であったのだがとある少女と出会ってね。その娘がいたから私はニュータイプは実在するのだと確信した。確信せざるを得ない。

 そして、君もアレを見ればそう思ってしまうさ」

 

 幾つものゲートを潜り、辿り着いたのは展望エリア。全面が分厚い強化ガラスで覆われたそのエリアでシャアは立ち止まり彼の隣にシャリアが並ぶ。

 

「あの、何をしようというのでしょうか?」

 

「うむ、もう少しだな。……ララァ、準備はいいか?」

 

 シャリアが聞けば、それに片手を上げて制しシャアは懐から取りだした通信機へ語りかけるとスピーカーからまだ若い少女の声が流れた。

 

『はい大佐、いつでも可能ですわ』

 

「わかった、では始めてくれ」

 

『はい』

 

 そして宙で1つの流星が流れる……いや、シャリアのその鋭い感覚で捉えたソレは流星ではない。

 認識した瞬間に、シャリアの意識はことなる位相へ移る。

 

 遠くから泡のような光り輝く物体が無数に流れ、どこまでも続く不可思議な空間。

 

 シャリアはその中心で漂いながら周囲へ目を配る。

 

『ここ、は……』

 

『ここは刻の世界ですよ緑の人』

 

『『刻』……いや、それよりも貴女は?』

 

 シャリアの前に漂う慈愛の笑みを称えた少女へ尋ねれば、その少女ララァ・スンは嫋やかに微笑んで答えた。

 

『私は貴方と同じよ。大佐がいうニュータイプ……というのでしょうね』

 

 ララァはそういえばおもむろに空間に流れる泡のような物体をその手に乗せるとシャリアにむけて緩やかにパスをする。

 

 それを反射的に受け取ればシャリアの手の中で泡がはじけて消えた。

 

『キラキラして美しいでしょう? 私はここが好きなのよシャリア大尉』

 

『私の名を……?』

 

『ふふっ、木星では大変でしたのね。貴方はすごい人よ』

 

『……いえ、私はそんな大した男では』

 

『あら、ならそういうことにしておきましょう。ふふっ、貴方にとって大佐はどんなふうに思ったのか教えてくれてもよろしいかしら?』

 

『シャア大佐のこと、ですか?』

 

 ララァに聞かれ、シャリアは彼と対面した時の事を思い出す。

 

『……複雑な方でした。様々な思いが胸の内で絡まり、混沌としており……ですが深い愛情をもつお人だと思います』

 

『まぁ、初めて会ってそこまで見通せるのね。可愛い人でしょう?』

 

『かわ、いい……ですか?』

 

『えぇ、とても可愛いのよあの人は』

 

 クスクスと微笑むララァに対してシャリアは曖昧な表情を浮かべた。

 

『だからシャリア大尉、あの人のために力を貸してほしいのです』

 

『……私はニュータイプではありませんよ。ただ、木星帰りの勘が鋭いだけのただの凡人です』

 

『私だって、ただ勘が鋭いだけよ? でも、私は大佐が好きなのです。大切で、愛おしくて私を救い上げてくれたただ一つのお星様』

 

 ララァは真紅に輝く泡を胸元へ抱き、愛おしそうに母親のように慈しみながら言う。

 

『貴方のその空っぽな心だって大佐なら埋められるかもしれません』

 

『それ、は……』

 

『貴方だって気づいているのでしょう? あの2人がいては私たちの未来はろくな事にならないと。

 ニュータイプのため、ひいては人類のため……大佐はそれをお考えなの』

 

『人類の未来……ですか』

 

『ええ、そうよ。シャリア・ブル大尉、貴方はどうしたい?』

 

 ララァはそう言い、抱いていた泡を離してその手をシャリアに向ける。

 シャリアは己の手を見つめ、そして顔を上げれば────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりね、勇ましいオチビさん」

 

「やぁ、ジャブロー以来だな」

 

「シイコさんにユウさん? グレイファントムの補充人員は貴方々だったんですね」

 

 ホワイトベースの展望エリアにて再開した2人の人物を見てアリアは僅かに驚きによって目を見開く。

 

 ジャブロー侵攻において、グレイヴ一派の戦闘の救援によってかけつけた2人とその後ろの見た事のない部下2人を連れたシイコとユウのモルモット隊。

 

 グレイファントムのモビルスーツ部隊のスカーレット隊の欠員を補充するとは聞かされていたが、まさか彼らだったとは思ってはいなかったのだ。

 

「おい、シイコにユウよぉ。こんなおチビちゃんがあの蒼い死神のパイロットってマジなのかよ?」

 

「流石にシイコさんも同じことを言ってたので疑ってはいませんでしたが、こうして目にすると驚きを隠せませんね…………」

 

 そして、その後ろにいた金髪の男と茶髪の童顔の青年がアリアを見て驚きを隠せない様子でユウとシイコの声をかける。

 

「だから言っただろう? 『フィリップ』、『サマナ』。ブルーディスティニーのパイロットに会えば驚くって」

 

「いや、だってよぉ? あんなシミュレーションのデタラメな動きを体験してる身からすると、てっきりメスゴリラみてぇな女を想像するだろ? 

 それがこんなめんこい嬢ちゃんなんて信じられるわけがねぇだろ」

 

 金髪の男ことフィリップが言ってアリアの頭からつま先を見やり、まだ納得がいってないのか首を傾げる。

 しかし、彼の言っていることも無理はない。連邦で最も活躍しているパイロットの片割れがこんな小さな少女ですと言われて、はいそうですか等とすぐに納得できるのはマトモな人間ならいないだろう。

 

 何故なら一般的な常識があるなら、普通はジュニアスクールに通っているような子供を戦場へ放り出すことなどしないからだ。

 

 それを理解しているのに加えて、彼らの心が善性の者であることを感じ取ったアリアは僅かに考える素振りを見せると薄く微笑んで口を開く。

 

「なら、1つ模擬戦しませんか? 何事も体験するのがいいですし。4対1でも構いませんよ?」

 

「ふむ……」

 

「へぇ……」

 

「おぉ?」

 

「えぇ?」

 

「あぁ、どうせならハンデも付けますよ。ブレードだけでライフルは使いませんし」

 

 ユウとシイコはその発言に面白そうに口角を上げ、逆にフィリップとサマナは引き攣ったように口角をゆがめる。

 

「同じ部隊の仲間ですし親睦を深める意味も込めて……どうでしょう?」

 

 妖しい微笑みと共にアリアはそう言うのだった。




モルモット隊合流〜

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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