機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「諸々のデータを合わせて、ジオンが隠れ潜むことができそうなのがこの暗礁宙域が最も可能性が高い訳ですが……」
『何もいないな……』
『こうも障害物が多いとどうにもできないものね』
『うーむ、こうもデブリが多いと隠れられちゃ見つかるもんも見つからねぇよな』
コンペイトウから離れた位置にあるデブリ宙域を進む複数の艦影。ホワイトベースを中心にして僚艦のサラミス級2隻が哨戒活動を行っていた。
先のコンペイトウで駐留中の第2連合艦隊へ行われた攻撃と複数の兵員から報告された『歌』という怪奇現象の調査のためにホワイトベースは事前にサイド5跡地のテキサスコロニー周辺のデブリ帯に入るジオンの艦艇を目撃したという報告を元に調査へと赴く。
『いくら遠隔誘導端末といえども母艦がなければエネルギーなどの補充もできません。
加えて、奴らが身を潜めるとなると距離的にもこのデブリ帯がもっとも可能性が高い訳ですが…………』
『流石に広すぎるよなぁ』
『なんか感じ取れるかいセイラさん?』
『全然まったく。アムロやアリアちゃんが気づいてないのなら私だって無理よ?』
『そりゃそうか』
それぞれが乗機の中から外の景色を眺めながらホワイトベースで感の鋭い4人が話し合っており、セイラは何かを集中するように目を細めたがすぐに首を横に振ってカイが肩を竦めた。
『にしてもジオンの連中とんでもない武器を作り出したもんだな……』
『ミノフスキー粒子下でも無線誘導で攻撃出来る射撃端末ね……』
アリアが解析によって判明した攻撃方法、それはミノフスキー粒子下であっても遠隔操作を可能とした端末による遠距離からの攻撃。
一年戦争が勃発する前の戦場では似たようなことが出来たとはいえ、現在の戦場ではミノフスキー粒子のせいで遠隔から兵器を操作して攻撃するという行為は不可能となっていた……はずであった。
しかし、ジオンはどんな絡繰を用いたかは現状不明であるが、確かにこうして遠隔誘導を可能とした新兵器を投入してきたことは事実である。
現在は幸いにも何も無いが、このデブリの中から攻撃されてはひとたまりもない上に向こうは好き放題狙えるのだ。
一応その端末が稼働している時の前兆とも呼ぶべき『歌』を感知できる4人が反応できるようにモビルスーツに乗り、ホワイトベースの四方を囲むようにして配置されている。
アリアのレイヴンが前方を見張り、アムロのアレックスが後方、セイラの『フルアーマーガンダム』が左方、カイのガンナーガンダムが右方という布陣だ。
それぞれのガンダムはセンサー類を強化してるのもあるが、4人の第六感というべきモノが頼りでありこうして彼女たちだけが艦の外で待機している。
といっても、『歌』は現在知覚出来ておらずアリア含めて多少の警戒はあってもこうして通信で会話をしているわけだが。
「一応、敵の新兵器の動きを予想したシミュレーションは事前に新しく組んでホワイトベースのクローズドネットワーク内のNESTにアップロードしておきましたが……どれだけ通用するかは未知数ですね」
念には念を入れてNESTへ
『俺としてはあんな殺意の高い全方位攻撃してくるようなやつが相手なんてごめん被るね』
『心底同意するわ。四方八方からの即死攻撃を対処しながらのモビルスーツ戦なんて命が幾つあっても足りないもの』
「そんなに難しいですかね?」
『……クリアした僕だから言えるけど、多分あれを攻略できるのは現状僕ら以外無理だよアリア』
アリアの言葉にアムロがなんとも言えない顔で言うが、彼女からしたらなぜ初見でアレをクリアできるのか意味がわからないとしか言えないのだ。
とある企業の傭兵部隊の首席隊長をモデルに色々と魔改造し、あくまでも『こういった敵との生き残り方』という想定で組んだのであってクリアさせる気など毛頭なかったりする。
「兄さんならもっと難しくしてもクリアできますよ。というか既に作ってます」
『妹からの期待が重いなぁ……』
割と渾身のシミュレーションを初見でクリアされた為に、アリア自身無意識に負けん気を発揮してたりするがアムロはそれに気づかない。
そして、この会話を聞いていたホワイトベースに待機していた他のパイロット含むカイたちは『え、アレよりまだ難しいのあるの……?』と顔を引き攣らせた。
『……お前たち、仮にとはいえ敵の腹の中なんだ。少しは緊張感を持て』
『でもよぉブライトさん、アムロとアリアが感じ取れないなら俺らも無理だって』
『でももへちまもない! ……それで、アリア、アムロ。なにか感じ取れるか?』
『僕は何も』
「私も同じく……それにしてもきな臭いですね」
『……何がだ?』
アリアの言葉にブライトが尋ね、それにアリアは周辺に目を走らせながら続ける。
「いくらこの宙域が可能性が高いとはいえ、調査するまえに友軍の哨戒部隊がジオンの艦艇を発見した……わざとらしいとは思いませんか?」
『……誘い寄せる撒き餌ということか?』
「ですね。恐らく連中は
『……いや、お前の予想は馬鹿に出来ん。クルー達に言い含めておこう』
「なんとも随分な評価ですね」
『お前のこれまでの行動を見てきた身としては色んな意味で信頼があるからな』
「褒めてます?」
『ノーコメントだ』
ブライトのしかめっ面で言った言葉にアリアは首を僅かに傾げつつ警戒を続けていると、不意に脊髄を突き刺すような不快感を捉えた。
「…………兄さん」
『視られてるな』
兄に声をかければ、同様に険しい目つきで虚空を睨んでおり2人は即座に兵装のセーフティを解除する。
それとほぼ同時に。
『艦の前方に艦影を検知! シルエット照合……ジオン軍が運用しているザンジバル級巡洋艦と推定!!』
『聞いたな! 総員第1種戦闘配置! アムロ、アリア行けるな?』
「何時でも」
『同じく』
『わかった。順次モビルスーツ隊を発進させろ! セイラ、カイは直掩に周りアリア、アムロは先行させる!
2人とも、敵は旧サイド5のテキサスゾーンにいるザンジバル級1隻だが油断はするなよ?』
「言われなくてもしませんよ」
『ブライトさん、本隊からの増援は頼めるんですか?』
『ミノフスキー粒子とデブリのせいで遠距離通信は無理だ。モビルスーツ隊を発進させ次第信号弾で行うつもりだ』
「ふーむ……奇襲は無理そうですね。こうも障害物が多いとテュフォンでぶち抜くのも難しそうですし」
『そもそも敵の艦はコロニー内に入ってしまっている時点でレイヴンのライフル含めて過剰威力だから使用は控えるように』
「…………」
『バレなきゃやってもいいよなとでも思ってるだろうが絶対にやめろよ?』
「やった場合は?」
『私の胃が死ぬ』
ガチトーンで言われ、アリアは優しい笑みを浮かべてあげた。
「そもそも今のレイヴンのアーマーは
『答えになってないんだが?』
「アリア・レイはガンダム・レイヴンで出ます!」
『おい、無視するんじゃない! アリア!? おい、アリア!!?』
『アムロ・レイ、行きます!』
ホワイトベースから離れた黒と白の機体が同時に飛翔していき、ブライトが艦長席から立ち上がり受話器へまくし立てるようにして叫ぶ。
『できる限りコロニーに被害を出すんじゃないぞ!!』
先行した2機のガンダムがデブリ帯を進んでいる途中、ほぼ全く同時にその場から別れるようにして軌道を逸らした。
直後にビームが先程までいた空間を薙ぎ払い、軌道上にいたデブリや残骸を吹き飛ばす。
「……来ましたか」
『ずっと僕らを見てたヤツだな?』
──La……La
冷静に状況を把握しながら四方から放たれるビームを避け続けながらアリアとアムロはデブリを盾にしつつ『歌』の聞こえてくる方向へ距離を詰めた。
だが……
「いない?」
『こっちもか……!』
デブリの陰に回り込めばそこには何もおらず、舌を打ちならばといったところで死角から現れた2機のモビルスーツが2人へ斬りかかる。
『「ッ!」』
サーベルとブレードを展開、叩きつけられたソレを受け止めれば鍔迫り合いによって飛散した粒子が周囲を照らし下手人の姿を表した。
「その機体は……!!」
アムロのアレックスと鍔迫り合いをする機体を見てその目を見開く。
細身なシルエット、肩に増設されたブースター、口元のダクトを撤去しマスク型のフェスパーツと姿は大きく替えているがサブモニターに映し出される機体反応は確かに己の妹が本来なら搭乗するはずだったガンダム……プロトNT-1を示していた。
そして、その中にいるであろうパイロットの正体も。
「シャア!!!」
『久しぶりだなガンダムのパイロット!!』
至近距離からのオープン回線で聞こえてきた忌々しい声にアムロは顔を顰めながら返す。
「火事場泥棒した挙句随分下品な色に塗り直したな!」
『ぬかせ! 私も
起きろ!!
「この感覚……まさか!?」
アムロの身体に覚えのある纏わりつくような不快な感覚、プロトNT-1の装甲の表面から滲み出すようにドス黒いオーラが立ち昇った。
「EXAMだと!?」
『これがガンダム、悪魔の力だ!!!』
プロトNT-1はEXAMのオーラーを纏わせ、アムロのアレックスへと襲いかかる。
「チッ、なんですか貴方は……?」
『申し訳ありませんが、貴方は大佐の元へ向かわせる訳には行きません。
ここで足止めさせてもらいます』
アリアは不快な感覚に顔を顰め、引き金を引く。銃口からビームがフルオートで放たれるがそれを目の前のリック・ドムの恐らく発展型と思わせる青い機体は最小限の動きで躱しつつも肩に担いだバズーカ型兵器の砲門をレイヴンに向ける。
大口の砲門からは太いビームの光が放たれ、クイックブーストで移動すれば斜線上にあったデブリを砕く。
ならばと急接近し、ブレードを展開。両断しようとするがドムは装備したビームナギナタで受け止め……ようとはせずに手首を回転させ衝撃を受け流し背中に回るとレイヴンにむけてビームバズーカを撃とう……とするが展開したブレードによる回し蹴りによって中断。
距離をとるドムに対してアリアは距離を詰めようとして、どこからともなく飛んでくるビームを察知して連続クイックブーストでオールレンジ攻撃を躱す。
「やりにくい……!」
───LaLa……Laaa……
「オマケに鬱陶しい!!」
周囲のデブリに紛れるようにして宇宙を漂うドローン、障害物が邪魔でレイヴンの機動力を活かしきれずアリアは堪らず舌をうつのだった。
そして、彼女の前にはシャリア・ブルの駆るリック・ドムIIとララァ・スン専用モビルアーマー『エルメス』が立ち塞がる。
プロトNT-1はレッドウォーリアに進化した!!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体