機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
───……夢を。いつも、夢を見るの。
───灼けた穹の下で銃弾が飛び交う夢を。
───そこでは私はトキになって、灼けた穹をただ一人で飛んでいる。
───誰も、私には気が付かない。どれだけ『私はここにいるよ』といっても誰も空を見ず、その顔を憎しみに歪めて銃口を突きつけあっていた。
───私以外にも穹には鳥はいたけど、その鳥たちは私のように明朗に鮮明に言葉を発さず、ただ穹を漂っていただけ。
───私はとても寂しかった。この世界に、穹にただ私一人だけなんだた……
───でも、そんな日々が唐突に終わったの。初めて、初めて私を見つけてくれた鳥がいたの。
───ツギハギでボロボロ、それでも懸命に灼けた穹を飛ぼうとする鴉が私を見つけてくれた。
───嬉しかった、幸せだった。私は1人なんじゃない。孤独じゃない。ここに私を見つけてくれる仲間がいたんだって。
───でも、私はその鴉と話せるだけだ決して共に飛べるわけじゃなかったの。
───その鴉は幾ら傷だらけになっても、私が辞めてと言っても飛ぶことを休もうとしなかった。
───『私はたどり着かないといけない』鴉はいつもどこか遠くを見てそう言うの。
───……私はその目がどうしても好きになれなかった。私はこんなにも焦がれてるのに、決してその目を向けてくれないという見にくい嫉妬心を抱いてしまう自分に。
───鴉は飛んで、空高く飛んでそして最後は…………
「…………また、この夢」
目を覚まし、呟く。
その内容は直ぐに忘れてしまうけれど、私が物心ついた時からずっとみ続けている夢。
知らないはずなのに知っている穹へ思いを馳せ、この胸の中には例えようのないほどの悲しみが涙となって零れ落ちる。
私の朝はいつも涙から始まるんだ。
政治家一族の女がとある財団一族の末席の男に一目惚れし、夜這い同然のアタックをして生まれたのがミアである。
世間一般では彼女は恵まれていると言えた。しかし、当の本人は常に己の心は伽藍堂のようで浮世離れした感覚があった。
もちろん、楽しいことがあれば笑うし悲しいことがあれば涙もする。だけだ、それはあくまでも肉体の反射とも言うべきもので彼女は心の底から全てを楽しみ、悲しみ、笑い、泣くことはない。
唯一ミアが熱中できたのがピアノであり、心を曝け出す音楽がたまたま彼女の胸の内を多少なりとも埋めることが出来た。
幸か不幸かもわからないが、ミアには音楽の神に愛されていると表せるほど才があり多数のコンクールを総ナメにし著名な音楽家や評論家からもその才を絶賛される。
けれど、それでもミアの空っぽな心は埋まらなかった。寧ろ余計に『なんで私の隣には誰もいないんだろう?』という疑問がより明確に明瞭に浮き上がってしまった。
コンクールで賞を取る度、レッスンで教師に褒められる度に、部屋の棚にトロフィーが増える度、ミアの心はより一層冷えていく。
楽しかったピアノも段々と面白くなくなり、世界の色が褪せていき、全てに嫌気がさしていった。
そんな時、地球でのコンクールでいつものように賞を取った後でココ最近ずっと地球とコロニーを行き来していた弊害か体調を崩し、ミアは病院へ入院することとなる。
その病院は地球圏でも有数なところらしく、ただの疲労による風邪で体調を崩した程度のミアは少し休むだけで直ぐに元の健康体に戻った。
しかし、何となくミアは元の暮らしに戻るのは嫌と思い仮病を使って入院することにした。
広々とした個室の中でミアは1人だけ。胸の空虚さは変わらず、けれどまだ幼いミアには暇だった為に病室を抜け出して夜中の広い病院をあてもなく彷徨う。
院内でも奥深くのエリアに迷い込んだミアは長い通路を歩いていると、不意に少し先の病室の戸が空いているのを見た。
何となくミアは近寄り、中をのぞき込む。
そこは広い病室だった。しかし、中は無数の機械とコードが乱雑に置かれ毛細血管のように這ったチューブや管が中心のベッドへ密集しており何処と無く内臓のような印象をミアは感じた。
戸を開け、ミアは室内へ入る。
数歩進み、彼女はベッドの上に誰かが寝かされていることに気がついた。加えて足元の管やチューブなどがその寝かされている誰かに繋がれていることに。
コードを踏まないように慎重に進み、ミアはそのベッドの近くへ辿り着く。透明なシート越しにミアはベッドに寝かされている存在が自分とそう変わらない歳の子供だと気がついた。
全身を包帯に覆われ、病的なほど細い手足や首筋、胸元へ点滴や管、チューブが刺され心電図からはか細い心臓の鼓動を知らせる電子音と波形が刻まれている。
このことからその存在は規則正しく胸を上下させており確かに生きているのだとミアは理解した。
そして、
『────誰』
その見た目からは想像できないほど少女の綺麗な声が出たことにミアは驚きに目を見開く。唯一包帯で覆われていない顔部分の目は覗いているミアを捉えており、その真紅の瞳のミアは目を奪われる。
「あ、その、えと……ごめん、なさい。扉、空いてて……その気になったから」
『そう……』
「邪魔そうなら、出ていくけど……」
ミアはそう言って踵を返そうとすると、ベッドの少女は口を開いた。
『待って』
「な、なに?」
『……ここは一人で退屈なんです。良ければ話し相手になってくれませんか?』
「あ、うん。別にいいよ。私も暇だったから」
『それは良かったです。……壁際に椅子があったはずです、それを使ってください』
少女が言うように壁際には折りたたみ式のパイプ椅子が立てかけられており、ミアは言われた通りにその椅子を持ってくると多少開けた場所に設置して腰かける。
「……」
『……』
さて話をしよう、といったところでミアと少女は互いに口篭る。悲しいことに両者ともに口火を切るような話題はなく微妙な沈黙となって出力されてしまい、ただ無為に時間が過ぎていった。
「えっと……」
『あの……』
「あ、そっちからでいいよ」
『えっと、そちらからで』
「あ、じゃあ」
『では……』
『「………………」』
どちらも普通の年頃なら有り得ないくらい会話のドッチボールが下手くそで、再び微妙な沈黙が訪れる。
「…………名前」
『……はい?』
「えっと、私……貴方の名前知らなくって……なんて呼べばいいかな?」
『…………アリア。アリア・レイです。貴方は?』
少女、アリアは自分の名を名乗るとミアへ尋ねた。それにミアは淡く微笑んで名を紡いだ。
「ミア。…………『ミア・フィウミチーノ』だよアリアちゃん。よろしくね」
『はい、よろしくお願いしますミアさん』
これが、ミアとアリアとの出会いだ。
フィウミチーノ川はルビコン川の旧名だそうです
後継機
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オリジナル機体