機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「ぐっ……ぁっ、ざぃっ…………!!!」
苦悶に満ちた喘ぎ声が木霊し、続けてなにかの落ちる鈍い音が響いた。
「鎮静剤急げ! モニターから目を離すなよ!!」
「チッ、最近は落ち着いたと思ったらこれか!」
「ア・バオア・クーでの戦いが残ってるってのにここで潰れたんじゃキシリア様に殺される……! どうせ使い物にならなくなるなら場合を考えてくれよ!」
ドタバタと慌ただしく動くのは白衣を着た研究者たちであり、彼らの視線の先には手術台から床へ落ち、這い蹲る病衣姿の少女がいた。
その少女の病的なほど白い肌には玉のように汗が浮かび、整った顔は苦痛に歪み何かに堪えるようにして背を丸め、骨張った細い指がガリガリと床を削る。
「黙、れ……黙れ、黙れ、黙れ……!! 残骸風情が、しゃしゃるな……!」
───寄越せ、身体を……!
───俺がアイツを……!
───あの害獣を!!
少女、ジェーン・ドゥは痛々しい傷跡の目立つ素肌へ爪を突き立てたことで皮膚が破れ、生暖かい血液が零れて床を濡らすがその程度の痛みすら気にならないほどの苦痛が彼女を襲っていた。
『そう言う貴女はどうなのですか? 彼らを残り滓と蔑む貴女自身は?
かつての思いすら風化し、ただ憎悪だけが残る貴女は?』
忌々しい残骸たち、ただの残り滓、終わった存在が未だに醜くしがみついている事実に怒りの感情と共にジェーン・ドゥの内側には自分もそれの同類だと嘯く声がする。
ヘドロのようにへばりつく嘲笑の声にジェーン・ドゥは軋むどころか砕けるほどの力を込めて歯を食いしばりながら叫んだ。
「うるさい、うるさいうるさい……!! あの人が悪いんです……! あの人が!」
『アハハ! そうやって自分に都合が悪くなればすぐに逃げる。あの人のせいだと、自分は悪くないのだと、自分自身を被害者にして責任転嫁してしまうのやめたほうがいいですよ?
あぁ、それが出来ないから今の無様な姿があるんでしたね!!』
心底軽蔑と嘲りに満ちた笑い声にジェーン・ドゥは黙れ、黙れと叫んで額を硬い床へ打ち付ける。
鈍い音が響く度に視界が明滅し、激痛と赤い液体が宙を舞うが彼女にとってこの耳障りな声が紛れるのならむしろ構わないほどだった。
『そんなことをしても無駄ですよ、それくらい分かってるでしょう?』
「知らない! 知らない、知らない!!!」
「薬もってきました!」
「よしっ! 四肢を抑えろ!!」
「はいっ!」
「ぁあぁぁぁあっ!!! 消えろ、消えろ、消えろ!!」
研究者たちに四肢を拘束され、身動きが取れなくなるがそれに気づかずに陸に上がった魚のようにのたうち回るジェーン・ドゥ。
叫びすぎた弊害からか血の混じった唾を飛ばし、喋る度に痛みが増える中でもジェーン・ドゥは叫ぶ。
「薬、打ちます!!」
「効果が出るまで絶対に手を離すな!」
研究者の1人がジェーン・ドゥの細い首筋でピストル型の注射器の針を突き刺し、充填された薬液を注入した。
一息でそれなりの量の薬液が体内へ入り、一瞬でその身体へ流れたことで暴れ回っていたジェーン・ドゥの動きが段々と緩慢なものへ変わっていく。
しかし、完全に意識が失うまでもジェーン・ドゥは叫ぶのを止めなかった。
「死ね、死ね、死ね死ね死ね……! ぜん、いん、みんな、しんで、しまえ……!!」
『ふふっ、よく言いますよ。1番殺したいのは自分自身のくせに。あ〜あ、どこまでも無様で憐れです。
ほんと、あの時に死んでおけばよかったのに……ほんと、私と同じことを言うのが癪ですけど殺してくれなかったことを恨みますよ……』
暗くなっていく視界の中でジェーン・ドゥの顔を覗き込むもう1人の自分の姿。そして、その顔には嘲りの中にどこか憐憫も混じったものが形作られていた。
「たす、けて……レ、イ……ヴン…………」
目尻から涙を零し、それを最後にジェーン・ドゥの意識は完全に消える。
「……はぁ、ようやく静かになったか」
「えぇ、はい。まったく、こんな細い体のどこにあれだけの力があるのやら」
「同意する。能力だけ見ればララァ・スン以上なのだが……余りにも不安定すぎるなこの個体は」
ぐったりと脱力したジェーン・ドゥの手足を掴み、少々というには乱暴な手つきで研究者たちは持ち上げるとベッドの上へ運ぶ。
ベッドへ寝かすと四肢と胴体へ拘束用のベルトを巻いて、ようやく研究者たちは一息ついたとばかりにため息をこぼした。
「元々データ取りと実験を終えたら廃棄予定だったものをキシリア閣下が強引に実戦投入したからな。
でなけりゃ、あんな
研究者の1人の視線の先には魘され、呻き声をあげるジェーン・ドゥの姿がある。
「そういえば、私余りにあの白いエルメスのこと知らないんですけど?」
「……あぁ、お前は最近配属されたばっかりだったな。俺自身詳しいことは知らされてないが、この個体……ジェーン・ドゥの機体の『エルメス2号機』は特殊な機構があってな、あのララァ・スンですら起動できなかったんだよ」
「その時、私はその場にいなかったんですけど本当にあのララァ・スンが起動することができなかったのですか?」
「本当さ。キシリア様やフラナガン所長がその場に立ち会ってたけど、うんともすんともいいやしなかった。
だのに、物は試しとばかりにコイツを乗せてみたらあら不思議。模擬戦でララァ・スンのエルメスをボッコボコにして見せたのさ」
「……凄まじいですね、この個体……ジェーン・ドゥは」
「能力値が高くても、こうも暴れられたらたまったもんじゃないがね。
お陰で何人もの職員が顎を砕かれたり、骨をおったりして医務室送りだ」
そういって研究者が傾けた頬に見えるのは湿布であり、今会話している研究者の手首にも包帯が巻かれていた。
その事からも頻繁にジェーン・ドゥが錯乱し、暴れることで研究者がそれの鎮圧を何度もしていることが伺える。
「まぁ、それもア・バオア・クーで連邦の奴らを追い返せば終わりさ。そしたらジオンもある程度は余裕を取り戻せるし」
「そうだといいんですがねぇ……先輩は勝てると思います、この戦争?」
「あまり大きい声で言うなよ? ……声を大きくして勝てると断言したいが、厳しいだろうよ。
ブラウ・ブロなんていう実験機すら戦場に投入してるんだぞ? 話によっちゃ、ほかの戦場じゃろくなテストすらされてない検証機すら持ち出してるらしいし……戦後の身の振り方を考えおいた方がいいだろうさ」
「私たち大丈夫なんですかね……?」
「な訳ないだろ。だから、コイツみたいな廃棄処分されそうだった奴を必死こいて延命させてるんだ。
ア・バオア・クーでジオンが勝たなきゃ俺たちみたいなロクデナシは皆戦犯で絞首刑さ」
おどけたようにいう研究者に女の研究者の表情は引き攣った顔で僅かな呻き声を漏らすしかできなかった。
「はぁ、何をしてるのよあの男は……」
ホワイトベースの展望エリアにてセイラ・マスことアルテイシア・ソム・ダイクンは陰鬱なため息をこぼす。
彼女の胸中には言葉にすることすら躊躇うようなヘドロのような悪感情が支配しており、許されるならものに当たりかねない程に荒れていた。それをしないのは一重に幼少期の教育のお陰ともいえよう。
脳裏に過ぎるのは幼少期を過ごしたテキサスコロニーで出会ったマスクの男、ジオンの赤い彗星シャア・アズナブル。だが、その正体はアルテイシアがまだ幼い頃に己の前から姿を消した唯一の肉親『キャスバル・レム・ダイクン』
サイドセブンで出会った時は疑惑を抱くのみだった、しかしテキサスコロニーで再び顔を合わした時に名を問いかければあの男は肯定したのだ。
彼女は問う、何故世話になった老夫婦の息子の名と顔を騙りジオンの手先となったのかと?
しかし、アルテイシアはその答えに疑問を抱く。何故ならばその時のキャスバルの胸の想いは復讐とは別のものだと感じ取ったからだ。
加えて、彼女はアリアが過去に地球での発言以来自分なりに考え、ランバ・ラルが従者となって彼から聞かされた話を組み立て推論からすればザビ家が父、ジオン・ズム・ダイクンを暗殺するメリットなど無いのだ。
そもそもあの時、ランバ・ラルの父のジンバが喧しく騒いでいたが、父を暗殺する理由もメリットなどザビ家にはないことはある程度ジオンの内情を知るものなら理解できるはず。
加えて、スペースノイドが連邦に搾取されているという話も眉唾ものだ。確かに割高気味に税を徴収されてはいるがコロニーの維持や各種行政を一手に連邦側がやっているのを見れば、スペースノイドの納める税も暴利という訳では無い。
アルテイシアは冷静にキャスバルを諭すように続ける。このようなことをしても意味は無いと、戦争などただ無意味に人命が失われる愚行なのだと。
復讐など父と母が喜ぶわけがない、確かにザビ家には含むものがある。けれど、復讐に身をやつしてまで人生を棒に振る必要はないのだ。
今なら戻れる、また家族として暮らそう。
心からアルテイシアは願った、けれどキャスバルはそれに否と突きつける。
ザビ家は許せぬ、奴らは父の意志を踏みにじり剰えニュータイプを戦いの道具にしてるのだと。
彼らを守る為、ニュータイプが新たな人類として健やかに過ごすためにキャスバルはザビ家を討つのだと……
アルテイシアはキャスバルが熱に浮かされたように紡ぐ姿を見て、かつての父のジオン・ズム・ダイクンが連邦から独立するために奔走していた時の姿を幻視する。
そして、理解した。
────あぁ、この男は何を言っても無駄だ……
最後にキャスバルはアルテイシアに向けて、ホワイトベースから降りろ、もしまた前に現れれば敵として討たねばならないと告げて姿を消す。
アルテイシアはその背を追いかける気にもならなかった。そもそもこの戦いに身をやつす原因が何を言っているんだという思いと、まだ幼い自分を捨てた過去、そして復讐に囚われニュータイプなどという幻想に縋る哀れな姿を見てその場で乾いた笑みを漏らすしかできなかった。
最早、自分の知る
「はぁ……ほんと、最悪な気分ね」
「……心中、お察しします姫様」
「姫はやめてランバ。……貴方だって似たような気持ちでしょう?」
「それは……」
アルテイシアのすぐ側で沈痛な面持ちでいるランバはアルテイシアからの言葉に喉を詰まらせた。
まさか、戦友が自身の主君の子息だったなどと想像が着くわけがない。
「……ほんと、どこで狂ったのかしらね」
アルテイシアは別にジオンの独立なんて望んでもない。ただ、父と母、兄と自分。そしてペットのルシファーさえいれば良かった。
平凡で在り来りな、そんな人生でよかったのだ。学業に励み、好きな人が出来て、結婚して子を産んで父と母に生まれた子を見せる。そんな人生を。
しかし、自嘲してもうそれは手に入れることはできないと理解した。
既に賽は投げられ、ルビコン川を渡ってしまっている。
「覚悟を決めないといけないのね」
アルテイシアは硝子越しに見える冷たい世界を見つめ、独り呟いた。
アムロとシャアの描写したら多分ア・バオア・クーです。
それぞれのシャアに対する評価
・アリア
便器に吐き捨てられたタンカス。死ね
・アムロ
靴底にこびりついたガムクソ。死ね
・テム
住んでるところを戦場にしたくせして、子供たちを戦争に巻き込みやがったクソがよぉ。死ね
・セイラ
鬼子がよぉ・・・・。死ね
シャアの内心
・ザビ家に復讐してぇ、ガルマの仇取りてぇ、ニュータイプこそ新人類や・・・・!!
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体