機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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次回、次回こそ戦いが始まるからッ・・・!!


98.Light of Hatred

 

 漆黒の宇宙を縦横無尽に流星が駆け巡る。その流星は複雑な軌道を描き、デブリや艦艇、モビルスーツの間を縫うようにして突き進んでいた。

 

 連邦軍が最後の決戦に向けての準備をしている中で、とあるモビルスーツ部隊の間を抜けるようにしてその流星が飛来する。

 

『うわっ! な、なんだあれ!?』

 

『戦闘機か!?』

 

『それにしてはデカすぎだろ!』

 

 流星がすぐ側を通り過ぎて行ったことに驚き、モビルスーツのパイロットたちが飛んでいった流星を目で追いながら叫べば母艦からの通信が入る。

 

『今飛んできたのはホワイトベース隊の新兵器だ』

 

『はー……あのホワイトベースの?』

 

『なんでも『亡霊』対策のために上層部が彼女宛に特急便で持ってきたらしい。

 今やってるのはその慣熟訓練って連絡がつい先程きたわけだ』

 

『ソロモンであれだけ暴れ回ったのにまだ暴れるのか……ジオンの連中には同情するぜ』

 

『頑張ってくれよ星喰らい! 勝利の女神バンザイ!』

 

『彼女たちがいれば俺たちの勝ちは決まりだぜ!』

 

 既に遠くへと飛んで行ってしまった流星に向け、パイロットたちは手を振りながら声を投げかけるのだった。

 

 

 

 一瞬で前から後ろへ通り過ぎる艦艇やモビルスーツをバイザーに投影されたのを見ながら素早く操縦桿を動かし、フットペダルを細かく何度も浅く踏むのを繰り返す。

 その度に発生するGによって身体がシートへ沈み込み、軽減機構が作動して著しくシートを保持するアームや身体を固定する機械が前後した。

 

 内臓を絞りあげるような不快感によって喉奥から迫り上がる物があるが、それを無理やり飲み込む。

 一瞬でも意識が逸れればそれだけで自身の操作から手が離れ、あっという間にデブリの仲間入りなしかねない暴れ馬にアリアは叫んだ。

 

「こっの……大人しく、しろ……!!」

 

『警告:進路上に複数のデブリを確認。回避運動を推奨』

 

 けたたましい警告音とCOMの電子音声に答える間もなくアリアは大きく操縦桿の向きを下へ曲げれば、一瞬で視界が変わり身体が仰け反るような方向へGがかかり始める。

 

「ぐっ……ぁあっ!!」

 

『警告:前方にコロンブス級を確認。回避運動を推奨』

 

「わかっ……て、ま……す!!」

 

 身体全体を使うことで強引に操作を行い、視界がぐるりと回る。機体のすぐ側をコロンブス級の特徴的なコンテナ部分を掠めるように通過し、コンマ数秒遅れたらと……と背筋が粟立つ感覚になりながらも機体の姿勢を戻し、アリアは叫んだ。

 

「COM! 残りは!」

 

『報告:予定ルートは残り僅か、マーキングを表示』

 

「りょう、かいっ……!」

 

 視界の端に目立つように黄色いライン取りされたマップ経路を素早く目を通し、掠れた声で返せばアリアはフットペダルを踏み込んだ。

 

 一気に速度が跳ね上がり、ふたたび襲い来るGによって息が詰まるどころか呼吸すら覚束無い感覚になるが強引にねじ伏せてアリアは前を見据え操縦桿を握りしめ、アリアは一刻も早くこの新しい装備を使いこなせるように意識を集中させようとしたところで────

 

「……ん?」

 

 視界の端にナニかを捉え、アリアは急制動を掛けた。

 

 運動ベクトルを殺すために凄まじい程の噴煙かブースターが放たれ、反動によって酷い揺れに襲われる中でアリアは最大望遠で捉えたモノの正体を知る。

 

「……グワジン級?」

 

 それはジオンのザビ家かそれに近しいものにのに与えられる大型戦艦のグワジン級であった。

 それが1隻だけという怪しい事実にアリアは警戒心を滲ませるが、無視するわけにはいかず機体の向きを変えるとグワジン級に向けブースターを稼働させる。

 

 グワジン級までの距離をすぐに詰め、そろそろ向こうの射程に入ったところで光通信が届いた。

 

『我、敵意ハ無シ。貴殿ラノ総指揮官ニ面会ヲモトム』

 

「……む」

 

 その通信の後に砲塔の向きは下へ向けられ、アリアはグワジン級が武装解除をした事実に面食らう。

 けれど、念には念を入れてと思うとアリアは機体をグワジン級の艦橋へ近づけ、接触通信のワイヤーを射出した。

 

「こちらは第13独立部隊ホワイトベース隊所属のパイロットです。ザビ家の走狗が何用でしょうか?」

 

『こちら、グレードデギンの艦長。我々はあるお方をそちらの総指揮官へお連れするために来たのだ』

 

「あるお方……?」

 

 アリアが訝しげな声をあげれば、帰ってきたのは艦長の声ではない。

 

『すまないが、艦長。代わってもらってもいいだろうか?』

 

 嗄れながらも威厳のある声、アリアはこの声をどこかで聞いたようなデジャブを覚える。

 

『ハッ、こちらをどうぞ陛下』

 

『うむ、ありがとう。……ゴホン、我が名はジオン公国初代国王デギン・ソド・ザビである。

 突然の事で貴殿が警戒するのも無理はなかろう。しかし、私は和平交渉の為に来たのだ』

 

「…………」

 

 突然の爆弾に流石のアリアも困惑を隠せず、次に出たのは。

 

「本物……?」

 

 そんな言葉であった。

 

 

「進捗はどうか?」

 

 ア・バオア・クー攻略戦の直前、艦隊の総旗艦の艦橋にて本作戦の総大将として抜擢された地球連邦宇宙軍『マクファティ・ティアンム』中将は側近へと尋ねる。

 

 尋ねられた側近は手に持つタブレットへ視線を落とし、操作をした後にメインモニターへ現状の配置状況を投影した。

 

「ハッ、既に第一から第三大隊の戦力配置については問題ありません。

 細かいところを見れば予定よりも多少の遅れはありますが、その原因は『C兵器』のようです」

 

「あの新兵器群か。全く、技術屋たちは最後の最後にあんなモノたちを用意してるとはな」

 

「カタログスペック上ではあれ1機でかなりのものですからね。レビル将軍のヤラカシのせいで当初よりも投入可能な戦力が減ってしまいましたから苦肉の策というやつですよ」

 

「……全く、あのご老人は軍人なのだから個人の怨恨を戦場に持ち込まないで欲しいものだ。気持ちはわからんでもないが」

 

「ですね」

 

 本来ならこの場にいるはずの人物に対して同情ともとれるような感情を乗せてティアンムと側近は肩を竦めた。

 そんな2人の空気に混ざるようにして別の士官が宙を漂いながらティアムの近づく。

 

「ティアンム閣下」

 

「なんだ?」

 

「実は───」

 

 その士官から聞かされた内容にティアンムは目を見開き、驚愕をあらわにした。

 

「デギンが和平交渉にきただと……?」

 

「はい。その、デギン・ソド・ザビの乗艦するグワジン級を発見したモビルスーツパイロットからの報告ではこのように……どうしますか?」

 

「……突っぱねる訳にはいかんだろう。それに、無駄に血を流すよりもよっぽど良い。

 陛下殿をエスコートするようパイロットに伝えてくれ。その後は持ち場に戻るように、と付け加えてな」

 

「ハッ、了解いたしました!」

 

 

 

「……このようなことになるくらいなら、あの時、あの場でダイクンに寄らなければ良かったかもしれぬな」

 

 グワジン級1番艦『グレードデギン』にて疲れきった声を響かせるのはザビ家の家長にしてジオンの国王でもある『デギン・ソド・ザビ』のその人。

 

 その様相は年齢を加味しても1回り2回りも老けた出で立ちであり、彼を知る人物ならば記憶にある姿と違って今の弱々しい姿に労しさを感じるだろう。

 

 しかし、それは仕方の無いこととも言えた。ダイクンが己の不摂生のせいで勝手にくたばったせいで、元々なる気もなかった時代遅れの公王などになる羽目になり、子供たちは降って湧いた権力によって肉親だのに先の見えない連邦との戦争の中で血みどろの権力闘争を繰り広げ、挙句には最愛の末の子たるガルマが死んでしまった。

 

 これまでデギンはガルマがいるからこそ、彼を心の支えとしてやってこれたデギンにとってガルマが討たれたという報告を聞いた時は正しく生きる意味を失ったも同然と言えよう。

 

 せめてデギンはガルマの唯一残った部分を家族たちのみの静かに丁重に弔いをしたいという願いをギレンが国葬という国民たちの戦意向上という政治に利用したことで、益々憔悴し最早ただ朽ちるのみとなっていた。

 

 公王としての権限もギレンによって殆ど奪われ、最早お飾りとなったデギンであったが、ギレンが『マハルコロニー』の住人を疎開させ、スペースノイドの故郷と言えるコロニーすら兵器として利用するという愚行を目の当たりにして漸く、デギンは己の最後の役目を自覚する。

 

 心の置いた臣下からの報告によれば、あの愚かなレビルは何やら不祥事を起こしたことで総指揮官から降ろされたらしい。

 その後釜の人物ならばこのろくでもない戦争を終わらせることに賛同してくれるだろう、と判断し極秘裏に自身の乗艦のグレートデギンを持ち出し和平交渉の為に赴いたのだ。

 

「それに、あのような怪物と戦い悪戯に若人を殺す訳にはいくまい……」

 

 ブリッジの窓から見えるのは直掩に付き、こちらを監視する巨大な機体を見ながらデギンは呟く。

 サイド6において確認された連邦の新型の機体。その漆黒の機体は正しく星を喰らうかの如くジオンの猛者たちを食い殺し、ソロモンに於いても鬼神の如く活躍を行い我が子でもあるドズルを白い悪魔と共に討ち取ったジオンにとっての死神。

 

 その死神の背に禍々しい物体を背負った姿は正しく悪魔そのものであり、最早まともな人材が残っておらず学徒動員をしてどうにか頭数を揃えているア・バオア・クーであんな化物が暴れれば戦後がどうなるかなど考えたくもない。

 

 今更そんなことを言っても虫のいい話としか言われないだろう。けれど、デギンにはもうこれ以上命を失われるようなことなどあってはならないのだ。

 せめて失うのなら己の命だけで済ましたい、その覚悟とともにデギンは前へ視線を見据える。

 

 しかし、既に全てが遅いのだ。『時機を失する』という言葉があるように、彼の行動全ては……

 

 

 

 

「ふん、まったく父上も老いたものだ」

 

 ア・バオア・クー要塞内にて、ジオン公国総統ギレン・ザビはつまらなそうに鼻を鳴らし吐き捨てるように呟く。

 

 ギレンにはデギンが何をしようとしているかなど全てお見通しであった。故に彼はわざと見逃したのである。

 

 徐に椅子から立ち上がり、ギレンは執務室の椅子から降りれば秘書であり内縁の妻でもある美女がすぐ後ろに控えるように3歩後ろから追従する。

 

「今更和平交渉? フンッ、愚かな民衆に押され戦端を開いておきながら何を言うか。

 引き金を引いた時点で勝つか負けるしか無いのだよ。それに、人はあまりにも増えすぎた。管理するには私のように優れた人間こそが相応しい。

 そうだとは思わんか、セシリア?」

 

「はい、総帥のように優れた方こそが人類を導くお方ですから」

 

「うむ、地球連邦はたしかに有史以来国家の統一を成し遂げたことこそ褒めるべきだろう。だが、それ以降の体たらくはなんだ? 

 悪戯に人口を増やしておいて、ろくに管理すらできず結局は口減らしの棄民同然にコロニーという閉鎖空間へ捨て、地球という貴重な資源を生み出す母星を悪戯に汚し、壊していくのみ。

 ただ無為に壊死していくだけで、根の腐った大木などさっさと伐採したほうが後の世のためであろう」

 

 熱が入ったようにギレンは口を動かす。その瞳には野心と狂気が綯い交ぜとなり、己を上位者であると信じて疑わない光が煌々と輝いていた。

 

「私だ。私こそが人類を管理し、正しく導くことが出来る。

 人類に輝かしい黄金の時代をもたらす変革者なのだ。

 いずれ、地球圏だけではなく太陽系のさらに先、外宇宙にすら人は手を伸ばす。

 ただ安寧という名の泥濘、地球という太母の腕の中で微睡むのはならんのだ。宇宙世紀といいながら、広大な宇宙(フロンティア)へ手を伸ばすことのない欺瞞など破壊し、本当の栄光を私が掴み取るのだ……!」

 

 掲げた手を握りしめ、ギレンは高らかに叫ぶ。彼の目には連邦など己の進む道にある小高い丘程度にしか見えていない。

 彼にとって肉親も、国も、その民も全ては人類を新たな段階へと進める願いを叶えるためにの燃料だ。

 

 故に、今からすることになんの躊躇いもない。

 

 扉を潜り、入ったのア・バオア・クーの中央司令室。士官たちが忙しなく室内を走り回るなかで主であるギレンが入ってきたことで作業の手を止め、敬礼しようとするがそれを制してギレンは口を開く。

 

「『ソーラレイ』の準備は?」

 

「ハッ! 『アサクラ』大佐より既に総帥の合図のみで何時でも発射可能とのことであります!」

 

「よろしい。最終確認へ移行せよ」

 

「発電システム異常なし!」

 

「マイクロウェーブ送電良好!」

 

「出力8500ギガワット・パー・アワー!」

 

「発射角調整ダウン012。ライト0032」

 

「基本ターゲット、ゲル・ドルバ!」

 

 指揮官席へ足を組んで座り、背もたれへ身体を預けたギレンは中央モニターに映る煌々と輝く砲門を見ながら口を開く。

 

「撃て」

 

 瞬間、世界に光が溢れた。

 

 

 

 

「ッ!!!? なにっ、なにか、来るッ……!?」

 

 ホワイトベース直庵にて繋留させていたレイヴンのコクピット内で脊髄をヤスリで擦るような不快感と脳髄を突き刺すような悪寒にアリアは顔を青く染めて叫ぶ。

 

 その数秒後にアリアはその原因が何なのかを目の前で目の当たりした。

 

 遥か遠方、ナニかが瞬いたかと思えば膨大な極光が進路上にあるものを消し飛ばしていく度に死の感覚が彼女の内へと流れ混む。

 

『俺さ、母さんの作るグラタンが好きなんだよ』

 

『この戦いが終わって、長期休暇をとったら久しぶりに家族に顔を出そうかな?』

 

『ハネムーンはどこのリゾートに行く?』

 

『あーあ、早くこんな戦い終わんないかなぁ〜』

 

『あれ、何か光っ────

 

『俺の体いったいど──こ───

 

 な───れ────え──────

 

 死、死、死、死────死───死──死─死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死──────死────

 

「ぐぅぅっ……!!?」

 

 頭が割れるほどの無数の思念()に堪らず頭を抑え、砕きかねないほどの強さで食いしばる。そうしなければ己の意識が持ってかれかねないからだ。

 

 思念の奔流が流れ終えるまで時間にすればほんの少しかもしれない。けれど、精神的にすればずっと長い時間なのだと錯覚しかねないほどの苦痛がアリアを苛み続ける。

 

 そして、漸く原因とも言える極光が掻き消えたと同時にアリアは目の前の光景に言葉を失った。

 

 何も無い。そこに居たはずの艦艇、モビルスーツ、軍人たち。その全てが消え失せ、プラズマによる雷が走っているのみ。

 

「なん、だ……これ……は…………?」

 

 余りの出来事に絶句し、アリアは思わず操縦桿を動かし機体を操作させ繋留ワイヤーを引きちぎり、飛び上がった。

 

「……マトモな思考ならこんなこと出来ないのに、それをしたというのですか?」

 

 普通の兵器ではまず生み出せない破壊の痕跡を前にしてアリアは畏怖を滲ませる。

 

「こんな規模を消し飛ばせるようなものを連発できるわけが無い……と考えるのは時期尚早でしょうね。

 私は運が良かっただけですね。あのビームらしき射線……総旗艦があった場所でしょうか?」

 

 グレートデギンを送り届けた後にオペレーターから持ち場に戻るのではなく、あの場で待っているように言われてたらと思えばアリアの背筋か寒くなるような感覚になるが今はその事は置いておくべきだ。

 

「……損害はどの程度なのでしょうね。このまま戦闘に突入するのですか?」

 

 恐らく、ティアンム中将は死んでるだろう。加えて、周囲にいた艦艇も考えるまでもない。

 明らかに戦う前からのこの損害、撤退を視野に入れてもおかしくはないだろう。

 

『アリア! 聞こえるか、アリア!』

 

「ッ、はいっ。こちらアリア。どうなさいました?」

 

 そうしていると、ブライトからの通信が入りアリアは思考を中断させて応対するために意識をそちらへ向ける。

 

『損傷した艦艇や兵士の受け入れ作業を行う! 誘導を頼めるか!?』

 

「わかりました。……主力艦隊はどうなりました?」

 

『……情報が錯綜しているせいで断定はできないが、ティアンム閣下は恐らく』

 

「……わかりました。誘導に行ってきますね」

 

 そこで会話を区切り、アリアは漂っていたヘルメットを被るとレイヴンを駆けさせるのだった。




レイヴンの背負いもの・・・一体なんだろな

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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