とある佐天の天与呪縛(フィジカルギフテッド)   作:凡の人間

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スキルアウト1

学校が終わり放課後の夕日が学園都市を赤く染めて街灯が白く光り始める頃、私はルンルンでスキップしていた。

 

なんたってヤシの実サイダーのコンビニ限定アイスが買えたからね!昔発売されてた限定商品らしくて再販されないじゃないかって噂になってたらしいけど。人気商品だからすぐ売り切れるって聞いてたからかえてよかった~。

 

ていうかアイス溶けちゃうしもう歩きながら食べちゃえ。

 

コンビニ袋からアイスを取り出したとき前方の路地裏で話声が聞こえる。

 

男7人に女1人か……なんか気になるな。一応見てみてみようかな。

 

路地裏のほうにひょいと顔を出すと……あれ、婚后さん?なんか男たちが絡んでるけどその人レベル4なんですけど。

 

でももしかしたらということもあるし助けなくちゃ!

 

いざ行こうとしたとき甲高いモスキート音が鳴り響いた。

 

え、なにこれ。あの男たちが鳴らしているの?にしても何の意味が……いや婚后さんがやけに苦しそうな表情をしている。

 

「どうした、頭がいてえのか」

 

なんだかわからないけどこれやばいよね!

 

私は駆け出して余裕そうな男に飛び蹴りを食らわせた。

 

「な、なんだてめえ」

 

「婚后さん!大丈夫ですか!」

 

「佐天……さん」

 

いまにも気を失いそうだ。急がないと!

 

「おいおい、女の子にちょっかい出すってのはいただけねぇなあ」

 

反対側から突然謎の男が現れた。この人たちの仲間を倒して

 

「な、なんなんだてめえら」

 

「相手は二人だ!女のほうからやっちまえ!」

 

 

 

 

結局謎の男と協力してなんとか鎮圧した。文字通りの瞬殺。まあ高レベルの人がいなかったからね。

 

それにしてもあの人こういう喧嘩は慣れてるな。強者の雰囲気が肌で感じる。黒の革ジャンに背中に蜘蛛の刺青……すごい格好だな。まじまじと見ていると声をかけられる。

 

「お前、なかなかやるな」

 

「え、ありがとうございます……えっとあなたは……」

 

「いい体してるな」

 

「え?」

 

「その筋肉と胸、本当に学生か?」

 

「はい中学生ですけど……」

 

「中学生!?はは、すごいなお前」

 

筋肉と胸両方を指摘される日が来るとは。でもなぜだろう、男の人に胸のこと言われたのに不思議といやらしくない。

 

「悪いが俺はもう行く。またどこかで会おうぜ」

 

「あ!ちょっと!」

 

追いかけようとしたけど倒れた婚后さんが視界に入った。気になるけど風紀委員に連絡を入れなくちゃ。すごい気になるんだけどなあ、あの人。

 

ていうかアイスが溶けちゃう!!

 

 

 

「このところ頻発していたスキルアウトの能力者狩りもどうやらこれで打ち止めですわね」

 

到着した風紀委員がスキルアウトの人たちを連行するときに白井さんが言った。え、スキルアウトの能力者狩り?これが頻繁に起きてるのかぁ。

 

「まさか婚后光子と佐天さんを狙うとは。どれだけ徒党を組もうとも、レベル0のはぐれ者たちがレベル4の能力者とそれに相当する佐天さんに敵うはずがないとこの連中も骨身にしみて……」

 

「いや違うんです白井さん、婚后さんは能力を使っていません、というより使えなかったのほうが正しいですかね。それで私と……突然現れた謎の男とスキルアウトを倒しました」

 

「なんですのその謎の男は」

 

「いえ私にもわかりません」

 

「ためぞう……」

 

白井さんと話しているときに搬送されている男を見て固法先輩が呟いた。

 

「固法先輩?」

 

「ああ、ごめん。初春さんの聞き取りうまくいってるかな」

 

そういって固法先輩は話をそらして初春のほうに向いた。汗が出たし心臓の音でなんとなくわかるけどなにか隠してるよね、これ。なにあの運ばれてた人と関係が?

 

「あ、そういえば謎の男は黒い革ジャンに背中に蜘蛛の刺青が入ってました。名前を聞く

前にどこかに行っちゃいましたけど……」

 

「!!」

 

固法先輩がなにか驚いたような反応をした。

 

「固法先輩?どうかなさいまして?さっきから様子が」

 

「ううん、何でもないよ」

 

「なにか言えない事情でもあるんですか?」

 

「っっ!!なんでないわよ佐天さん」

 

「へえ……」

 

うん、やっぱり何かあるよね。あの男と知り合いとか?

 

ちなみにアイスはぎりぎりセーフでした。

 

 

 

「婚后さんが襲われた!?大勢で女の子で襲うとか、男として最低じゃない!!」

 

次の日いつもの四人で喫茶店にお茶に来ていた。御坂さんは昨日の話を聞いてガンッと机をたたいて怒りをあらわにした。

 

「まあまあ落ち着いてお姉さま」

 

「御坂さんなんだかえらくテンション高いですね」

 

「いや、私はただ自分にできることをやろうともしないで現実から逃げてるやつらが許せないっていうか」

 

うわぁ前の私だったら矢が胸に刺さっていた言葉だなあ。もう大丈夫だけどね!

 

「でもスキルアウトっていえばやさぐれレベル0でしょう?それがどうして能力者狩りなんか」

 

憧れが嫉妬に代わるとものすごい負のエネルギーになる。それで能力者に牙向けたくなるのが痛いほどわかるんだよねぇ。さすがに他者を傷つけたりしないけど。でももし絶望してたあの時、初春に会わなかったら……もしあの後も能力者が非能力者をいじめているところを見たら私も……なわけないか。

 

「多勢に無勢。いかに優秀な能力者といえど大勢の人間を相手にするのは難しいですの。」

 

「それにビッグスパイダーという組織は闇ルートから非合法の武器を手に入れているという情報もあります。」

 

「それにしてもあの男通りすがりの正義の味方みたい……」

 

「とんでもない!アンチスキルでも風紀委員でもないのに力を行使するなんて言語道断!!れっきとした犯罪者ですわ!」

 

白井さんは風紀委員としてはあの男を正義とは認めたくないらしい。白井さんの言葉に私と御坂さんは明後日の方向を向いた。はい、すみません、正直心当たりしかないです。

 

 

 

 

白井さんは風紀委員一七七支部で能力者狩りについての報告書を深刻な顔付きで見る。

 

「またビッグスパイダーが?」

 

「今週だけで3件め……連中ピッチを上げてきてますわね」

 

「やっぱここは一発ドカンと!」

 

「お姉さま、お姉さまのドカンは被害が大きくなりすぎますの」

 

「じゃあ私が……」

 

「佐天さんもですの!ここは風紀委員の出番ですの」

 

あれ、私御坂さんより被害大きく出さないのに!?私だって力になりたいのに。

 

「ビッグスパイダーが勢力を伸ばしてきたのは2年ぐらい前からみたいですね。武器を手にして犯罪行為を繰り返すようになったのもちょうどそのころ」

 

「なるほど、武器を手に入れて調子づいたってわけね。でも学園都市の外からどうやって持ち込むんだろう?非合法のものは完全にシャットアウトされてるはずじゃない?」

 

「実は誰かが手を貸しているとか……管理の抜け道を使って高値で売買とかありそうですよね」

 

「バックがいると……確かにその線はありますわね、調べてみる価値がありそうですの」

 

これは甚爾さんの知識だ。甚爾さんは禪院家から盗んだり裏のルートから呪具を手に入れたりしてたから。

 

「それからもう一つ、ビッグスパイダーのリーダーがわかりました。名前は黒妻綿流(くろづまわたる)、かなりあくどい男の様です。仲間を平気で裏切るような奴らしいですね。グループから抜けようものなら背中から打ちかねない男だといわれています。」

 

「つまり最っ低の男ですわね」

 

「背中といえばその人背中に蜘蛛の刺青を入れてるらしいですよ」

 

「え!?私が見た男にも蜘蛛の刺青があったよ。あの人がそんなことするようには思えないんだけど」

 

「人は見かけによらずといいますからね」

 

確かにそうだ。けどあの人がそんなことするかなぁ。婚后さんを助けるやさしい人が背中から打つなんて想像できない。ぶん殴ってるのは想像できるけど。

 

「えっと第十学区の通称ストレンジといわれる地域を根城にしているそうです。」

 

白井さんがうなり始めた。

 

「行くんですか?」

 

「管轄外ではありますが第七学区内で起きた事件の調査だといえば筋は通りますの。固法先輩。」

 

「ごめん、今日中に報告書まとめなくちゃいけなくて……」

 

あきらかな嘘だ。なんで固法先輩は今回の事件に消極的なんだろう。昔因縁着けられたとか?

 

「じゃあいこっか!」

 

「行くってお姉さま!?」

 

「固法先輩のピンチヒッターよ!ほら!」

 

「ちょちょっ、お姉さま、ああ~ご無体な~~」

 

御坂さんが白井さんを引っ張って出ていった。白井さんはとっても笑顔でなるがままに引っ張られていた。

 

「「白井さん、うれしそう」」

 

ま、あの人たちなら大丈夫かな。それよりも私が気になるのは

 

「固法先輩、今回やけに静かですけどあのビッグスパイダーと何か関係ありますか」

 

「え……な、ないわよぉ」

 

「黒妻綿流とも?」

 

「っ!!」

 

ビンゴだね。ビッグスパイダー全体というよりは黒妻綿流と何か関係あるみたいだ。でも風紀委員の固法先輩と

黒妻綿流どんなつながりが?

 

「関係ないから……私は大丈夫よ。ちょっと疲れてるだけだから」

 

「……」

 

んー今は何言っても無理そうかな。完全に触れてほしくないって顔してるし。追及するのは今じゃなくてもいいよね。私は初春のほうに体を向ける。

 

「初春今暇でしょ」

 

「え、まぁそうですけど……」

 

「外で甘いもの食べに行こ~」

 

「あ~ちょっと佐天さん!」

 

私はぐいっと初春のうでを引っ張って部屋から出た。

 

 

「風が気持ちいい~」

 

「ですねえ~」

 

風紀委員の支部から出た後私たちは河川敷で並んでたい焼きを食べている。草の上で一緒に気持ちいい風に揺られながら。ここのたい焼きは甘くておいしい。

 

「それにしても私はわからなくないんだけどね。スキルアウトの気持ち」

 

「え?」

 

「やってもやってもレベルが上がんないとね。くじけそうになる時があるんだ。なんかもうなにもかもなげだしちゃおうかな、なんて。」

 

「佐天さん……」

 

「あ、でも私はもう投げ出したりしないよ。もうしないから。」

 

ちょっと心配そうな顔した初春に笑って返す。

 

「大丈夫ですよ佐天さん、佐天さんには私がついてますからね!もう、悲しい顔にはさせませんから」

 

ちょっとしんみりした顔で下を見つめる初春。きっとあの時のことを思い出しているんだろう。そんな顔しないでよ。私は初春の頭をなでる。

 

「ちょっ、何すんですか佐天さん」

 

「うん、私には初春がいるもんね!」

 

初春は今度は顔を赤くし始めた。顔がころころ変わって可愛いのぉ~初春。そのままスカートとかめくっても怒らなそう。私は右手で頭をなでつつ左手でスカートをめくる。

 

「えいっ!お、今日は赤色のストライプかぁ。」

 

「きゃあああああああ!佐天さんはもう!」

 

ほっぺを膨らまして怒る初春。かわいい。

 

スカートもめくってたい焼きを食べて満足して寝転がる。草の匂いと柔らかい風で気持ちよくて寝ちゃいそう。頭の後ろに腕を組み心地いい眠気に抵抗をせずゆっくりと目を閉じる。

 

「そういえば佐天さん」

 

「どした~」

 

「悪い人の記憶と能力を受け継いだって言ってましたよね。あの時は聞かなかったんですけどどんな人なんですか。すみません今になって気になっちゃって。」

 

「……」

 

やっべぇ、いきなりとんでもない質問してきたから一気に汗出てきた。まずいねこれ。鳥居くぐったら別世界で~呪霊がいて~とか話したら信じてくれるか?いや、頭がおかしくなったと思われて病院コースだな。内容が内容だし。オブラートに包んで話せば……いやどこを包めばいいんだよ!無理だよ!甚爾さんの話となると呪霊とか呪術師のことは言わなきゃいけないし。んーどうしよう。もう甚爾さん出てきて説明してくれない!?

 

「あ、あの、言いたくなかったら言わなくても大丈夫ですよ?」

 

必死に考えてる私を見て察してか初春があわあわしだした。ごめんね初春。

 

起き上がって初春のほうに体を向ける。けど目を見て話せない。

 

「あ~話せないことはないというかなんというか……別に初春を信用してないわけじゃないの。その時が来たらちゃんと話すから」

 

初春はじっと見つめた後にこやかに笑った。

 

「わかりました。私はずっと待ってますからね。」

 

「うん……ごめんね」

 

あ~なんか申し訳ないことした気分。気まずいので話題を変えることにする。

 

「それにしても御坂さんたち上手くやってるかな」

 

「あの二人なら大丈夫ですよ。常盤台のレベル4とレベル5ですからね!」

 

「まーそれもそっか」

 

確かにあの二人が負ける姿なんて想像できないな。能力が使えない限り。

 

……あれ、たしか婚后さんのときたしかあの甲高い音が出て能力が使えないって言ってたよね。

 

能力……御坂さんたち……音……ビッグスパイダー……

 

「初春、御坂さんたちが向かったのはどこ?」

 

「え、第十学区のストレンジのほうだと思いますけど」

 

「地図ある?」

 

「は、はい持ってますよ」

 

初春は端末を取り出して地図を示す。第十学区のは隣だけどかなり離れているな。けど場所は大体わかった。

 

「ごめん初春私行ってくる」

 

「え!?なんでですか?」

 

「ちょーっと嫌な予感がしてね。じゃあいってくる!」

 

「佐天さん!」

 

一気に上空へ飛び上がった。

 

御坂さんたちが危ないかもしれない。急いでいかなくちゃ。

 

 

 

第七学区を飛び越えて第十学区まで突っ走った。確かこの辺りに……いた、御坂さんと白井さんだ。

 

上空にいた私は青い車の近くに降りる。あれまたあの音だ。

 

「御坂さん!白井さん!大丈夫ですか!」

 

「佐天さん!」

 

二人とも苦しそうだ。なにより二人とも囲まれているのに能力を使っていない。やっぱりこの音がダメなんだ。

 

「なんだ、あの餓鬼どもの知り合いか?」

 

「どいてください」

 

車の近くでなにか操作していた人を一撃でおとした。で、えっとこれはどうすれば止められるの?

 

「これ抜けばいいのかな」

 

配線を抜くと音が消えた。するとリーダーっぽい人が明らかに動揺する。

 

「な、なんだてめえ!能力者のはずだろうが!なんで動ける!」

 

「あー私能力者じゃないんで。レベルも0ですから」

 

「はあ!?」

 

「おうおうまた会ったな、嬢ちゃん」

 

後ろを見ると前に一緒に戦った謎の男だった。黒い革ジャンに、蜘蛛の刺青の男。

 

「あ、あなたは!?」

 

「お、おいあいつだぞ」

 

「黒妻さんあの男です!俺たちの邪魔をしやがったのは!」

 

黒妻さんといわれているリーダーの人はまるで幽霊でも見たかのような反応だ。

 

「嬢ちゃん、これ持っててくれるか」

 

渡されたのは牛乳。なんで?

 

「え、私も一緒に戦いますよ!」

 

「悪い嬢ちゃん、今回は俺だけで戦うから援護はいらねえよ」

 

男は黒妻?にゆっくりと近づいていく。

 

「久しぶりだなあ、蛇谷」

 

「あ、あんたは死んだはずだ。あれだけのことがあって生きてるはずがねえんだ!」

 

「じゃあ幽霊ってことでいいや」

 

え、蛇谷?じゃあ本物の黒妻綿流ってあの人だったの?

 

「お前らぁ!やっちまえ!相手はたかが一人だ!こっちには武器もあるだろうが!」

 

「蛇谷……お前変わったな」

 

周りにいた人たちが一斉に襲い掛かった。でもあの人は襲い掛かる人を一人一人殴っていく。後ろから来てもすぐに反応して的確に仕留める。荒々しい戦い方だ。

 

「死ねぇ!」

 

一人が拳銃を向ける。まずい、さすがに止めなくちゃ!けど私の体が動く前にあの人は拳銃を持った人を止めた。

 

「やめとけ、おまえ等の腕じゃ同士討ちが関の山だぜ!」

 

自分のほうに引き寄せて顔を殴りつける。その後も向かってくる人を殴り蹴りで吹っ飛ばした。武器を持っていたとしても初撃を交わした後距離を詰めて仕留める。あれが喧嘩か。やっぱり戦いなれてるって感じがするなぁ

 

ものの数分で向かってくる奴ら返り討ちにした。リーダーを含めて何人か逃げ出したけど。

 

終わった後に私は牛乳を持って行った。

 

「あの、これ……」

 

「おう、牛乳持ってくれてありがとな。そっちの二人は調子はどうだ?」

 

「まだ力が入らない感じなんだけど何とか。あの男黒妻じゃないの?」

 

「昔は蛇谷って言われてたんだがなぁ。今は黒妻って言われてるらしい。」

 

「じゃああなたが黒妻綿流さんですか」

 

「そう呼ばれていた時もあったかな」

 

黒妻さんは持っていた牛乳を豪快に飲む。この人牛乳好きなんだ。

 

「やっぱり牛乳は」

 

「ムサシノ牛乳」

 

黒妻に言葉をかぶせるように言ったのは固法先輩だ。

 

「やっぱり、固法先輩と関係があったんですね」

 

「なんだ、知ってたのか?久しぶりだなみい」

 

「「え、え、ええええええええええええ!」」

 




来週は忙しいので遅くなるかもしれません。

次回、スキルアウト2?
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