「固法先輩と黒妻が知り合いだったんですか!?」
あれから後日、いつものファミレスで話していた。
「ま、まぁはっきりとしたことは言ってないんだけどね」
あの後黒妻さんは固法先輩の腕章を見てふっと笑って「すぐに消えるさ」といって去っていった。連絡がなかったとか言ってたけど本当に消えてたんだよね。
「黒妻といったらビッグスパイダーのボスですよね!その黒妻と固法先輩がどうして!」
「その黒妻じゃなくてえっと……」
「私たちが追っていた黒妻が実は別人で名前を借りていたの。本物の黒妻が固法先輩の知り合いだった……ですよね?」
「そう、それよ佐天さん」
「気になりますね……といっても最近固法先輩来てないんですよね。携帯もつながらないし。能力者狩りだってあるのに……」
不安そうに話す初春。確かにあれはただならぬ関係ぽかったしなぁ。いろいろ考えるところがあったのかな。
「じゃあ直接聞きに行きませんか?」
「直接ってどこに……」
「決まってんじゃん。家。」
ファミレスから移動して固法先輩の家に訪れた。御坂さんがインターホンを鳴らす。するとちょっとしてから知らない女性が出てきた。
「あの、固法美偉先輩のお部屋ですよね?」
「美偉の後輩?ああ、あいつ出かけちゃってるのよ。」
三人から「また出直すか」みたいな空気が流れた。たしかに本人がいないと話ができないし仕方ないよね。けどもしかしたら同居人なら先輩の昔の事とか知ってるかもしれない。なんとか話付けなきゃ。
私はすっと一番前に出る。
「いやぁ、固法先輩に聞きたいことがあったんですけど残念ですね。けど私はお姉さんのほうにも興味がわいちゃいました。」
「え?私?」
「そうですよ、お姉さんですよ。とてもきれいな人だなぁって思って。」
「そ、そうかしら」
「髪とか肌とかすごく綺麗だからなに使ってるか聞きたくなっちゃって。あ、そうだ学校での先輩の姿とか気になりません?よかったら話しますよ。ね。」
「え、えと」
「え……お姉さん、だめ?」
「……ちょっと待ってて、お茶用意するわ」
お姉さんはバタンと扉を閉めた。
「やりましたよ皆さん!もしかしたら黒妻の話を聞けるかもしれませんよ!」
振り返ると三人ともジト目で私のことを見てくる。え、なんで!?
「鮮やかな犯行を見たわ……」
「女たらしですの……」
「佐天さんのどすけべ……」
「え、ちょっと!ひどくないですか!あとどすけべってなに!?」
結局家にお邪魔した。この人は
「それでお姉さんに話が聞きたいって?」
「あーそれなんですけど黒妻綿流という名前を知っていますか」
柳迫さんは少し驚いた顔したあと少し笑った。
「あいつが戻ってきたのね……まさか生きてたとは。ていうかそれ目的できたんでしょあなたたち。ちゃんと言ってくれればすぐお茶出すのに。」
「目的はそうですけどお姉さんがきれいだな思ったのは嘘じゃないですよ」
「もーー佐天さんは!」
隣の初春がプンプン怒り出した。そんな初春に関係なく御坂さんががたっと席を立ち柳迫さんに真剣な様子で尋ねる。
「黒妻をご存じなんですか!」
「っとその前にそっちの話を聞かせて?」
「え、先輩の学校の姿の話ですか?」
「それもそうだけど何があったのかを、ね」
私たちはこれまでのことを話した。すると柳迫さんは昔を懐かしむような表情で口を開いた。
「そっか、あのね美偉はビッグスパイダーのメンバーだったのよ」
「「「ええ!!」」」
三人が大きな声を上げる。正直予想はしてたんだけど……ほんとうなのはびっくりするよ。今回はやけに白井さんがおとなしい。分かっていたのか知らないけど妙にひりついている。長いこと一緒に居たからかも。
「先輩は風紀委員ですよ!それがどうして……」
「ああみえて昔はやんちゃだったのよ」
「やんちゃって!」
ここで白井さんがようやく重い口を開く。
「人様の過去をどうこう言うつもりはありませんけど仮にも固法先輩はレベル3の能力者。寄り道ならほかにいくらでもあったでしょうに。なんで寄りにもよって無能力者の集団であるスキルアウトなんかと」
たしかに白井さんの言う通り固法先輩はレベル3だ。そんな先輩がレベル0の集団であるビッグスパイダーに。
「あなたにはない?能力の壁にぶつかったこと。それがなかなか乗り越えられず暗い気持ちを持て余したこと」
……それはわかるなぁ。学園都市に来たときはずっとそうだった。
周りを見ると初春はなにか深く考え込んでいる感じだ。白井さんも少し暗い表情をしている。二人とも似たような悩みがあったのかな。
「あの頃の美偉はどこにいても居場所がないって感じだった……そんな時輝いて見える人たちと出会った。」
「スキルアウトと言っても連中は気の置けない仲間たちと一緒にバカやってるだけ。そりゃ最初は私も心配したよ。わざわざ自分が能力者ということを隠していることなのって。」
「でも……『ビッグスパイダーは私が私でいられる場所』……美偉はそういってたわ。」
どこかうれしそうな表情だ。
やっぱり自分が好きでいられる居場所は大事だよね。今の私はここにいて幸せだもん。
初春と目が合ってお互いにっこり笑った。
「疎外感……自分探し……学園都市にいると必ずかかる麻疹みたいなものにあの時もかかっていたのかも」
「でも麻疹にかかるのは一度だけです。」
「お姉さま……」
御坂さんは納得がいってないみたい。きっと過去の居場所に戻りそうな先輩が嫌なんだろう。
家を出てからも御坂さんは不満そうな顔している。
「固法先輩がスキルアウトだったていうのもショックだったけど、でもなんで風紀委員休んでるの?何か関係あるわけ?」
「お姉さまそれは」
「昔は昔じゃない!今は先輩、風紀委員として頑張ってるじゃない!私たちに優しくて、たまに厳しくて、頼りになって、そんな先輩が好きなのになんで今更!」
「そんな簡単に割り切れないんですよ、過去というものは」
我慢できずに口を出した。
「過去の自分があって今の自分があるわけだし。それにその過去が最悪のひどい過去でも、楽しい特別な過去でも割り切ることはできないんですよ……それぐらい過去というのは……」
あ、ちょっと余計なこと言ったかも。
「やっぱり……やっぱりわかんないよ」
そりゃそうですよ。私も甚爾さんの記憶がなかったらわからなかったかもしれない。
甚爾さんは家を出ても自分を常に下に見ていて自尊心を捨てたままだった。過去は簡単に割り切ることはできないんですよ。
その後風紀委員からのメールが送られてきた。内容はスキルアウトの能力者狩りに対抗して一斉摘発を行うというものだ。
御坂さんがすぐに出ていったのを見てばれないようについていった。廃ビルの屋上に着いたときすでに先輩がいた。
「やっぱりここだったんだね」
「御坂さん、佐天さんも」
「え、佐天さん!」
「あ、さすがに聞きたくてついてきちゃいました」
(一応周りには気を使っていたのに気配すら感じられなかった。AIMも出さないから本当にわからないわ……)
「まあいいわ、で先輩、こんなところで何をしているんですか?明日の一斉摘発の事黒妻に伝えに来たんですか。」
「ここは、固法先輩がいるところじゃないと思います!」
真っすぐで、何も言い返せない正論だ。今は風紀委員の立場がある。でも立場があって、周りが変わって割り切れるほど、人の心は簡単じゃないんですよ御坂さん。
「そうね……ここは私の居場所じゃない……でもそれを教えてくれたのは黒妻なの」
あの人は仲間を一番大事にする人だ。まだ会って短いけどそれくらいはわかる。だからこその居場所なんだろう。
固法先輩は昔の話を始めた。彼が蛇谷のために助けに行ったこと。爆発に巻き込まれたこと。そして死んだと思っていたこと。
「そして、今の私がいる」
「でも、だからって、先輩は風紀委員じゃないですか!犯罪者を逃がすのはおかしいじゃないですか!それって」
「ああ、間違ってるよな」
振り返ると黒妻さんがいた。
黒妻さんは話し始めた。
「あれから二年か。あのあと目が覚めたら病院でさ。そのまま施設に送られて、出てこれたのがほんの半年前。」
「先輩、私!」
「この景色ももう二度と見ることはないと思ってたんだけどな」
「お前にも会わないほうがいいと思ってな。会えばまた」
「また一人で乗りこむつもりですか、あの時みたいに」
「ビッグスパイダーを作ったのは俺だ。潰すのも俺だよ。」
固法先輩が黒妻さんの腕をつかむ。
「行かないで!あなたはいつもそう!自分勝手に行動して!あなたがそんなだから、私は!」
「お前だってそうじゃねえか。だからここにきてるんだろ。もういいから帰れ。あの子たちが困ってるじゃねえか。」
黒妻さんがこちらに視線を向ける。いやさすがに困りますよこれは。
「じゃあな、今いるところを大切にしなよ」
「私も行きます。もう、あんな思いはしたくないんです。」
「いい加減にしろよ美偉。昔と今じゃ違うだろ。」
「今とか昔とか関係ありません!居場所が変わっても関係ありません!」
黒子視点
「ねえ黒子、時間がたっても、立場が変わっても、それでも変わらないものってあるのかな」
パソコンで作業しているときにお姉さまがそんなことを聞いてきた。きっと今日のことをいろいろ考えたのでしょう。
「むしろ、誰かが誰かを思うというのはそういうことなのかも。そしてそんな思いの積み重ねがその日の今を輝かせている。」
「積み重ね……」
「わたくしとお姉さまにも短いながらも積み重ねてきたものが」
そう、積み重ねてきたものがあるから居場所なんですの。これからも積みあがっていきますの。
「それがこれからも積み重なっていくんだね……あのさ黒子、ちょっと頼みがあるんだけど」
次の日、私とお姉さまは赤い革ジャンを着て第十学区に向かう固法先輩の背後にテレポートした。そしてすぐお姉さまは腕にあれを付ける。
「ちょっとなんなのこれ!」
「うん、やっぱりこうでなくちゃ!」
付けたのは風紀委員の腕章。確かに過去で積み上げてきたものもありますけど、風紀委員として積み重ねてきたものがありますの。
「これ、私の。どうやって……」
私がテレポートできるの忘れてませんよね、先輩。
「固法先輩、かっこいいですよ」
お姉さまの言葉に固法先輩はかみしめるようにうなずいた。
「お前ら、こいつらに俺たちの力を見せてやれ!」
まったく、大人数でぞろぞろと卑怯ですの。
拳銃すべてに金属矢をテレポートさせた。
「今度は、直接体内にお見舞いしましょうか?」
たくさんのスキルアウトと先輩、黒妻さんがいますの。
「だが、俺達にはあれがある!」
その瞬間甲高い音が鳴り響く。しまった。これでは能力が!
「これで能力は使えないなあ!」
困りましたわね。キャパシティダウンはお姉さまがなんとかするはずでしたのに、先に使われましたの。お姉さまも能力が使えず頭を抱えていますの。
「お前たちの敗因はあれを壊さなかったことだよ!ばかが!」
「はぁ……あなたたち、前回誰に無力化されたか、忘れましたの?」
「な、なにをいって」
「うわあああああ」
「な、なんだこいつ!」
悲鳴と何かを壊す音がした後、音が消えた。
「もう能力は使えますよ、けど黒妻さんと私だけで何とかしますから」
振り返ると
「これもういらないですよね。せいっ」
佐天さんは野球ボールを投げるように腕を振り……
ガッシャアアアアアアン!
私たちとスキルアウトの間にぶん投げましたの
「「「「「「…………………………」」」」」」
佐天さん……なんでわざわざ持ってきましたの?スキルアウトたちがびっくりしてますわよ。声すら上げずあなたに引いてますわねあれ。お姉さまも若干引いてますの。まあ気持ちを落としたのは大きいですけれど。
あの力はどこから出ていますの?
……わたくしも今一度フィジカルを鍛えてみるのもありですわね。能力上近接戦闘は必要ですし。自分の正義を貫き、守るための強さがいる……能力の強化とフィジカル強化、やってみますかね。
「おう佐天、邪魔すんじゃねえぞ、おれがかた」
「いえ、私も手伝いますよ、大切な居場所を大事にする気持ちは同じですから。ね、先輩」
「え、ええそうね」
「私は風紀委員のお手伝いですから。その分は仕事しますよ?」
「はあ、仕方ねえな。俺の取り分は多くしろよ?」
「それはわかりませんけど……あ、御坂さんたちは大丈夫ですよ。私たちだけでいけます。」
やけに佐天さんがやる気ですの。これは譲ってあげましょうか。
「お姉さま、お言葉に甘えて備えておきましょう。」
「え、でも」
「いいんですの」
黒妻さんと佐天さんが前に出て並び立つ。
「ま、そういうことで覚悟しろよ、あれ壊して終わりじゃねーぞ……」
「あー……さっき何かいってましたよね、えーっと、敗因?」
「「勝負はこれからだろ」」
佐天視点
「や、やれ!お前らぁ!」
周りを囲んでいたスキルアウトたちが一斉に襲い掛かる。
「死ねぇ」
鉄パイプが私に届く前に前蹴りで吹き飛ばす。すぐ後ろにいた人が動揺している間に近寄り腕をつかんで背負い投げ。
「くそ、くたばれ!」
「それはだめです」
横から拳銃を向けられたが引き金を引くよりも早く詰め寄り殴って落とす。次に殴りかかってきた人の拳を避けて後ろに回り込んで回し蹴りを入れた。
次々と落としていき残るは私の目の前にいる一人。あと一人だから問題なし。
「捕まえたぜ!いまだ!やれ!」
「!」
後ろからさっき倒してきた人に抱きつかれた。ど、どうしよう。前の人が殴りかかってくるし。だったらもう!
「そりゃ!」
力で無理矢理拘束を解いて向かってくる人にそのまま投げ飛ばした。
「よし!」
こっちは終わったかな。黒妻さんのほうに目を向けると、どうやらあっちも片付いたみたいだ。あとは蛇谷だけ。
「へ、へへ……これで勝ったつもりかよ。これを見ろ!」
蛇谷が革ジャンを開いて見せてきたのは体に巻き付かれた大量のダイナマイトだった。
「ダイナマイト!いつの時代の人ですの!」
それはそう。映画とかで見たことあるけど現実でやってる人初めて見た。そもそもこの状況が初めてだけどね。
「これ以上近づいてみろ!みんなドカーンだ!!」
蛇谷からは滝のような汗が流れている。死ぬ覚悟なんて全くできていないんだろう。白井さんが止めようとしたけど御坂さんが止めた。御坂さんも邪魔しちゃいけないって気づいたんだろう。
「あーあめんどくせえ」
黒妻さんは革ジャンを脱いで臆することなく蛇谷に近づく。
「蛇谷、昔は楽しかったよなあ」
「く、くるな」
「みんなでつるんで、馬鹿やってそれがどうしちまった」
黒妻さんが近づくほど蛇谷の顔が歪んでいく。
「く、くるな」
黒妻さんの拳が蛇谷の腹部にめり込んだ。声にならないうめきと衝撃が全体に響いた後、体についていたダイナマイトがぼろぼろと落ちた。
「どうしちまったよ蛇谷……」
「し、しょうがなかったんだ、しょうがなかったんだよ。俺たちの居場所はここしかねえ。ビッグスパイダーをまとめるには俺が黒妻じゃなきゃダメだったんだ!」
「だから、今更てめえなんかいらねえんだあああ!」
懐からナイフを取り出し黒妻さんを刺そうとしたが
ダンッ!
それよりも早く黒妻さんは蛇谷の顔面を殴った。吹き飛んだ蛇谷は地面に倒れる。
「蛇谷、居場所ってのは自分が自分でいられる場所を言うんだよ」
それからアンチスキルが来て、ビッグスパイダーの連中は手錠をかけられ護送車に入れられていく。派手にやったせいでけが人もいるだろう。蛇谷は血を出して気を失っていた。蛇谷も今回の一件で考えを改めてるだろう。
「あー終わった終わった……ほら」
黒妻は先輩の前に両手を差し出す。こればかりは仕方ないことだ。人助けをしていたとはいえ暴行容疑があるし立場上仕方がない。
「黒妻綿流、あなたを暴行傷害の容疑で逮捕します。」
手錠をかけられた黒妻さんは笑った。
「おー佐天、きょうはありがとな。お前めちゃくちゃ強いな」
「いえ、私が手伝いたかっただけなので」
「……お前、ああいう喧嘩とか戦った経験とか少ないだろ」
「え?」
「いや身体能力とか反射神経はすごいんだがどうもそれに頼ってる感じがしてな」
「あ……」
たしかに実際の戦闘経験は少ない。たまに攻撃が単調になったり焦ったりする時がある。ていうかこの人戦いながら気づいたのすごいな。
「残念ながら俺はお前に教えることができねえ。俺じゃ無理だ。……ま、お前にとっていい先生が見つかるといいな。」
「いや大丈夫ですよ。そもそも戦うことのほうが少ないですし」
「いざって時に必要な時が来るかもしれないだろ。大切な居場所を守る時とかな。」
「っ!」
そうだ。もしかしたらさらに強い敵が現れる可能性があるんだ。御坂さん、白井さん、初春。学園都市に入って自分が輝ける居場所を見つけたんだ。私は自分の居場所を守りたい。
「これからも頑張ります!」
「いい返事じゃねえか、頑張れよ」
黒妻さんは先輩に目を向ける。
「似合ってるぜ」
「ん……ああ」
「でもよ……その革ジャン、胸きつくねえか?」
先輩がすぐに顔を赤らめる。
「そりゃあ、毎日あれ飲んでましたから!」
「ん、ああ」
「「やっぱり牛乳はムサシノ牛乳!」」
二人とも一緒に言った後、笑いあった。それにしてもやっぱり……
「やっぱり胸のことを話しても」
「不思議といやらしくない」
「ですよね……」
三人の意見が一致した。ほんと、なんでなんだろう。
待たせてしまって申し訳ない。私の時間の使い方が下手すぎて想定よりも遅くなってしまった。あと次回も遅くなりそうで……。次は早めにあげたいですね。
次回、フレンダ?