「え、風邪?」
「はい、すこし熱が出ててなかなか下がらないんです。」
初春風邪かぁ。夏風邪ってやつかなぁ。
初春がいないと授業中が退屈だ。今日も理論が何とかって。全然わかんないよ。
「暑い…」
授業が終わって暑いなか帰っていると公園で御坂さんと白井さんが涼んでいた。せっかくだし声掛けちゃおっと。
「御坂さん、白井さん」
「佐天さん」
「おいしそうですね、私もあそこで買ってきます。」
私はレモン味を買った。やっぱり夏はかき氷だね~
「おいし~あ、それってイチゴ味ですか?」
「よかったら一口食べる?」
御坂さんのスプーンで一口食べる。いちごはいちごでおいしいなぁ。体がひんやりしてきた。
「やっぱりいちご味もおいしいですね。お返しにレモン味も食べます?」
「ありがとう」
「あああああああああああああああああ!」
御坂さんに食べさせているところで白井さんが叫びだした。
「食べ比べですけど…」
それを聞いた白井さんは何かひらめいたようで変な笑顔で御坂さんに近づく。
「で、では私たちも間接キッ……もとい食べ比べを」
「あんたわたしと同じイチゴ味じゃない。」
その後白井さんは地面に頭を打ち付けていた。白井さん、御坂さんが関わるとIQ異常にさがるよね。
「ってことでお見舞いにきたよーん」
あの後御坂さんと白井さんも誘ってお見舞いに来ていた。
「37.3……まあ微熱だけど今日は一日寝てること。もうお腹出して寝ちゃだめだよ~」
「佐天さんがスカートめくるから冷えたんですよ。」
「そりゃあ初春の親友として毎日ちゃんとパンツ履いてるか確認しないと」
「履いてます!毎日履いてますから!」
「そういえば白井さん虚空爆破事件についてなにか真相ありました?」
「あるといえばある。ないといえばない。わかったのは能力がレベル2だってことですわ」
私が冷たいタオルを作っている間に白井さんと初春がそんな会話をしていた。あの威力でレベル2?あれってレベル4くらいじゃないの?
「佐天さん、なにかレベルが簡単に上がる都市伝説みたいなの言ってなかったっけ?」
「ああえっと…」
「能力のレベルを上げる!?」
「でも実態がわからない噂ですよ」
「実態がわからない?」
「噂の中身がばらばらで、ほんとに都市伝説みたいなものなんですよ」
うーんと白井さんがうねりだした。
どうやらバンクに登録にされた能力のレベルと被害状況に食い違いがあるらしい。重福さん、銀行強盗、虚空爆破とかその例だって。
え、幻想御手ってまじのやつですか?
「他に知ってることはない?」
「えっと…本当かどうかわからないですけどレベルアッパーを使った人がネット掲示板に書き込みしてるとか…」
「それどこの掲示板なの?」
「これじゃないですか?」
さっきまでベットの上で調べてた初春が出してきたのは私がこの前見た掲示板だった。仕事早すぎる。
「さっすが初春!」
「お手柄ですわ!あとはその連中の素性やたまり場を調べられれば…」
「素性まではわかりませんがたまり場は書いてありますよほら、ここに」
あの後御坂さんと白井さんは家を飛び出していった。今は私が初春の料理を作って初春には私が授業で分からないところを教えてもらっている。
「自分だけの現実のことって知識としてはあるんですけどねぇ。」
「私だけ…初春だけ…妄想とか?」
「妄想とはちょっと違いますけど思い込みとか信じる力とか、そういう強い気持ちじゃないですかね」
信じる力…か。
「あたしも信じていれば能力とか出るのかな。」
「佐天さんのは能力といえば能力なんですけどねぇ。まあでも佐天さんは思い込みが激しい人だから大丈夫ですよ。」
「何気にひどいこと言うね君は。」
ご飯食べ終わった後背中を流してあげているときに初春にこんなことを聞いてみる。
「高レベルの能力者になりたいっておもったことある?御坂さんや白井さんみたいな」
「たしかにレベルは高いに越したことはないですけど…進学とか断然有利ですし」
初春は思ったよりもまじめな理由だった。やっぱりみんな高レベルの能力者には憧れるよね。
「やっぱり普通の学校生活なら外の世界でもできるし、超能力に憧れて学園都市に来た人、結構多いと思うんだよね。私もさ、自分にはどんな力が秘められているんだろうってここに来る前に日はドキドキして眠れなかったよ。」
いまでも入学前のワクワク感を思い出す。クリスマスの前日より寝付けなかったことを。
「それが最初のシステムスキャンで『あなたには全く才能がありません、レベル0です。』だもん。あーあって感じで正直へこんだもん。」
「その気持ちわかります。能力レベルは大したことありませんから。でも白井さんと遊んだり、佐天さんと遊んだり、結構楽しいですよ。ここに来なければ皆さんに会うこともできなかったですから。それだけでも、学園都市に来た意味はあると思うんです。」
私は背中を流す手を止めた。
意味、ね。私に甚爾さんの記憶と能力を受け継いだのは何か意味があるのだろうか。それとも何か運命のようなものがはたらいているのかな。
この運命に何か意味があるとしたら私は何をなすべきなんだろう。
いままでレベル0だった私にこの力は重過ぎる。意味があるかどうかなんて全然わからない。
ああ、いま初春に全部話せば楽に、なるのかな。
「あのさ、初春」
「はい?」
「私のこの力はね…」
言いかけたその時家の電気が消えた。
「あれ、停電?」
「このままじゃ何も見えないですしなにか懐中電灯とか持ってきます!」
間が悪いと思ったのと同時に少しほっとした。
うん、やっぱり言っても混乱するだけだし言うべきじゃない、かな。
「やっぱりないなぁ」
帰ってきて私は自室のパソコンでにらめっこをしている。都市伝説だし何か特別な方法で手に入れるのかもしれない。
「ん?隠しリンク?」
違和感があるところをクリックすると画面が表示される。
TITLE:Level Upper
ARTIST:UNKNOWN
これって…
「佐天さん遅いなぁ」
私の指定した待ち合わせ場所で待ってそんなことをぼやく初春、のスカートを私はめくっている。今日は青のストライプかー。って気づいて私にポカポカしてくる。かわいいやつめ。
「見せたいものがあるって聞きましたけど…」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。刮目せよ!ついに手に入れた噂のアイテムを!」
じゃっじゃーんといって音楽プレイヤーを初春に見せつけた。
「音楽プレイヤーですよね。」
「中身が問題なのよね~教えてあげる。暑いし喫茶店でも行かない?」
喫茶店を探しに歩いていると御坂さんと白井さんがいたので笑顔で張り付いてみた。あと一人は…誰だろう。
「へぇー脳学者さんですか…白井さんの頭に何か問題が?」
「幻想御手について相談してましたの!」
このダウナー系の美人は脳学者の木山春生さん。白井さんと御坂さんは幻想御手について意見を聞いてるところだったらしい。お、幻想御手の話なら…
「あ、それなら……」
「黒子が言うには幻想御手の所持者を保護するんだって」
え。
「どうしてですか?」
「まだ調査中ですので、はっきりしたところは言えませんが使用者に副作用が出る可能性がありますの。それに容易に犯罪に走る傾向が見受けられまして…」
え……なんて言った今。保護?私は捕まって幻想御手は回収されるってこと?せっかく手に入れたのにだめなの?私の最後の希望なのに。
私の頭の中がぐるぐると回りだした。喫茶店は涼しいはずなのに、音楽プレイヤーを握っている手が、異常に熱を出して汗が出る。
私が焦っていると初春が急にこっちを見てきた。
「佐天さん?」
「え、いや別に……」
動揺して机にあったアイスコーヒーをこぼしてしまった。それも木山先生の脚に。
「すみません!」
「ああ、問題ないよ、かかったのはストッキングだけだから脱いでしまえば……」
木山先生が公衆の面前で脱ぎ始めた。まさか都市伝説であった「脱ぎ女」ってこの人だったのぉ!?そりゃ目撃情報がたくさんあるわけだ。
「なっ、何をいきなりストリップしてますの~!?」
「しかし起伏に乏しい私の姿を見て劣情をもよおす男性がいるとは……」
「趣味嗜好は人それぞれですの!それに殿方でなくても歪んだ情欲を抱く同性もいますのよ!?」
やけに熱のこもった白井さんの言葉が喫茶店中に響く。で、御坂さんの反応はというと……うん、無反応でした。
喫茶店が終わった後みんなの目を盗んで私は走った。
なんでかはわからない。みんなにばれたくないから?あの話を聞いちゃったから?手放すのが嫌だから?
そんな言い訳のようなことをぐちゃぐちゃと考えながら走って人手の少ない高架下のような場所で立ち止まった。
「やっぱり手放したくない……」
私からしたらこれは最後のチャンスだ。それを手放すなんて絶対嫌だ。
これを聞けば甚爾さんの記憶と体も消えるかもしれない。これで消えて普通の能力者になれば願った通りになる。
そうだ、もともと能力に憧れてこの学園都市に来たんじゃないか。結局レベル0で、才能がないといわれて努力してきてもダメだったんだ。それでずるをして何が悪いんだ。いいじゃない、ちょっとくらい能力者の気持ちを味わっても。才能の壁につぶされて終わるよりよっぽどいい。
ていうか今聞けばいいんじゃない?
私は音楽プレイヤーを取り出した。
この体にはもともと縛りがある。この世界でも縛りを破ったことによるペナルティがあるのだろうか。ペナルティの内容がわからないけど死ぬことはないと信じよう。
幻想御手の副作用のほうも死ぬことはないはず。死んでたら白井さんたちが話題に挙げてるはず。ニュースにもなるかもしれない内容だろう。
私はイヤホンを耳に近づける。額から汗がにじみ出てつうっと顔の中心を通る。息をするのを忘れたみたいで呼吸がしづらい。
びびっちゃだめ、これで全てが終わるんだ、聞け、聞け!
意を決して聞こうとしたとき、人の気配がした。慌ててその気配があるほうに振り向いた。
「御坂さん……」
「急にいなくなったから気になって探したんだけど…佐天さん、どうしたの?すごい汗よ。」
中途半端ですがここで切ります。もうちょっと地の文を長く上手く書けるようになりたいですね。