とある佐天の天与呪縛(フィジカルギフテッド)   作:凡の人間

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失礼だな、純愛だよ


ベストフレンド

「御坂さん……」

 

「急にいなくなったから気になって探したんだけど…佐天さん、どうしたの?すごい汗よ。」

 

振り向いた先にいたのは御坂さんだった。

 

さっきまで周りの音が耳に入っていなかった。まずったなあ。

 

「いやぁ、暑くて汗かいちゃって……何でもないですよ、はい」

 

「そうなの?ああそうだ……はいこれ、落とし物」

 

そういってポケットの中から取り出したのは私がいつも持ってるお守りだった。きっと走った時にいつのまにか落としたんだろう。

 

「すみません。拾ってもらっちゃって。」

 

「それ、何時もカバンに下げてるやつでしょ。」

 

御坂さん、ちゃんと見てたんだ。

 

「ええ、そうなんです。母にもらったんです。お守りなんて科学的根拠は何もないのに」

 

入学前にもらったんだっけ。今でも思い出すあの頃の記憶。

 

『姉ちゃん超能力者になんの!かっけー!』

 

『へっへーん』

 

『お母さん、今でも反対だからね。はい、お守り。』

 

『うわぁ……非科学的……』

 

『何かあったらすぐに戻ってきていいんだからね。あなたの身が何より一番大事だからね』

 

 

「てな感じで迷信深いんですよ、私のお母さん。こんなもんで身を守れるわけないのに。バリアじゃないんですから。」

 

このお守りがあって今の現状がある。身を守るどころか逆に……。いや、お守りはあくまできっかけに過ぎないか。お母さんを言い訳にしようとする自分が醜い。

 

「いいお母さんじゃない。佐天さんを気遣ってお守りをくれたんでしょ?」

 

「わかっています。でもその期待が重い時もあるんですよ。レベルは0のままだし」

 

学園都市に行きたいといって反対しつつ送り出してくれたお母さんの顔が浮かぶ。これ以上迷惑かけられないよね。

 

「レベルなんて、どうでもいいことじゃない」

 

は?

 

聞いた瞬間体の奥から漏れてはいけないものが漏れだした感覚に陥った。

 

レベルなんて関係ない?それをレベル5のあんたが言うのかよ。そりゃあんたは才能があって努力したんだろうけど。上ばっか見て上り続けて下で才能に苦しめられたやつのこと知らないんだ。この学園都市は能力社会で能力のないやつは馬鹿にされる世界なんだよ。

 

あっちの世界でもそうだ。術式や呪力量に恵まれない奴の扱いはひどいものだった。甚爾さんなんて小さいころに呪霊がたくさん入った部屋に放り込まれたくらいだ。

 

ああ、もし私に呪力があったら今とんでもない量の呪力が体からあふれてるだろうな。

 

「え?佐天さんどうしたの?」

 

「……すみません。気分が悪いのでもう帰りますね。」

 

御坂さんのほうは一切見ずにこの場から走り去る。

 

 

 

 

 

10分ぐらい走った後、一度立ち止まった。

 

「あ~最低だな私」

 

御坂さんはきっと私のことを気遣ってくれたんだろう。なのにずっと最低なこと考えて挙句の果てに何も言わず逃げた。

 

これからどうしよう、家に帰るような気分じゃないんだけど。

 

「幻想御手を譲ってくれるんじゃなかったのか!?」

 

すると曲がり角の奥から声が聞こえてきた。

 

ちらりとみると廃ビル付近で一人の気が弱そうな男を三人で囲っている。

 

「こいつが欲しけりゃもう十万持って来いよ」

 

「だったら金を返してくれ!」

 

気弱そうな男がそういうと隣にいた男が腹を殴った。

 

「うぐっ!やめてくれえ!」

 

「うだうだ言ってないで金持ってこいや」

 

「お前らのレベルがどれくらい上がったのかそいつで試してみるか?」

 

うわぁものすごい状況に出くわしてしまった。とりあいずアンチスキルか風紀委員に連絡を……充電切れ!?

 

もう逃げよう。私程度の力じゃ意味がない。ここは見なかったことに。

 

「お前らレベル0は才能がない、この学園都市で生きてる価値がねえんだよこの『猿』が!ぎゃはははははは」

 

逃げようとしていた私の体は自然と声のするほうに方向に変えた。体がというよりもはや魂が逃げることを拒んだ。

 

そうして私は何も言わず男たちの前に立った。

 

「あん、なんだてめえ何か言いたいことあんのかよ」

 

「なんだよガキが取り込み中だぞ。でもよくよく見ると上玉だな。相手にしてやっても。」

 

一人の男が近づいて私のことを触ろうとしてくる。触ろうとした手を払い相手のお腹に右ストレートを放った。

 

「ぐはぁ!」

 

「お、おい。なんなんだてめえは」

 

もう一人の黒髪の男が辺りにあった鉄柱などの資材を浮かして私めがけて放つ。けど

 

遅い

 

飛んでくる資材をひらりと交わしながら近づいて踏み込んで右足でまっすぐ蹴る。

 

「うぐう!」

 

声にならない声を出して吹っ飛んだ。残りは金髪の男一人だ。

 

「やるじゃねえか、ヒーロー?目障りなんだよ。」

 

男が近づいて、いや周囲の光を曲げているのか。

 

私は光で作られた幻影に惑わされず男めがけて距離を詰めて右胴体を狙った蹴りを左腕で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

その勢いのまま男に蹴りをお見舞いした。

 

終わった……初めて人を殴った……銀行の時はナイフを落としただけだけど今回は本気で人に向かって殴ったりけったりした……。

 

「はあぁぁぁ……はあぁぁぁ……」

疲れたわけではないのに肩で息をする私。

 

「うう……くそ、なぜ効かない……」

 

「痛ぇ……」

 

「うっ……ぐうっ」

 

辺りを見渡すと私によって倒された人たち。

 

甚爾さんの記憶の光景が重なる。

 

 

 

『なあ甚爾、お前やりすぎじゃねえか?』

 

『あ?いいだろ別に。つーかこれが俺の仕事だろうが』

 

『いやまあいいんだけどよぉ、これだと処理が大変なんだよ』

 

『うっせえなじゃあ俺に依頼してんじゃねーよ』

 

辺りには穴が開いた人だった物体。鉄臭いにおいとその中にはいっていた血が地面にいっぱいに広がって……。

 

「うっ……お゙えぇ……」

 

腹から何かせりあがってくるものを感じた。気持ち悪い。

 

だめだ、立てない。

 

足元がふらついたとき突然誰かが現れて体を支えてくれた。

 

「佐天さん、大丈夫ですの。」

 

「白井さん」

 

支えてくれた白井さんの手を下ろす。

 

「大丈夫ですので……あの、もしかして途中から見てました?」

 

「ええ、割って入る前にあなたが終わらせましたの。」

 

「はあ……」

 

「よくぞやってくれたといいたいところですが……風紀委員に連絡して到着を待つのが鉄則ですのよ本当は。」

 

「すみません……」

 

「いいんですの。わたくしとしては犯人に逃げられたりするほうが厄介ですの。……佐天さん人を殴ったのは初めてでしょう?手、震えてますわよ。」

 

「え?」

 

私は自分の握った拳を見ると小刻みに震えていた。

 

「もうアンチスキルに連絡をしたからお気になさらず。それより佐天さん、あなた気持ちがブレブレですわね。まるで何かを恐れているようにも感じましたの」

 

「ぇ……」

 

白井さんの言葉に体が固まる。

 

恐れている、たしかに私は恐れている、何に?わからない?

 

「……気持ちが揺らいだまま進むとろくなことになりませんわよ。自分はできると信じなければなりません。たとえばお姉さまなんかは最初はレベル1でしたけど自分を信じて努力し続けた結果レベル5になりましたの。」

 

御坂さん、最初はレベル1だったんだ……なのに私はあんな態度とっちゃったんだ。私だめだなぁ。

 

 

アンチスキルが到着して私も車に乗った。

 

暴行傷害の犯人を抑える前にまず通報することと注意を受けて終わった。外に出ると太陽が赤色に染まって沈みかけている。もう夕方だ。

 

とぼとぼと考えながら白井さんに言われたことが脳に響いていた。

 

「佐天さん、あなた気持ちがブレブレですわね。まるで何かを恐れているようにも感じましたの」

 

そうだなぁ今日は幻想御手手にして喜んで、御坂さんの言葉に怒ったと思ったらあの男たちの言葉に怒って。本当にブレブレ。

 

私はこれからどうしたら……

 

「佐天さん?」

 

突然声をかけられた。この声は

 

「初春……」

 

「佐天さんどうしたんですか……ひどい顔ですよ、さっき白井さんから連絡があって探してたんですよ。」

 

「白井さんが?」

 

なんでだろう、気をまわしてくれたのかな。

 

「佐天さんすごい疲れてますよ、あそこの公園で座って話しませんか?」

 

 

 

 

ふたり並んで公園のベンチに座る。夕日を眺める席で日の光が目に入って鬱陶しい。

 

「佐天さん、肩使います?」

 

「え、いいよ別に。」

 

「いいじゃないです。ほら、ん。」

 

そういって初春は肩を突き出す。あーーこれはやらないと初春怒るやつだな。私にはわかる。

 

私は初春の肩によりかかる。小さくて滑らかな肩だな。

 

寄りかかってから初春と私は何もしゃべらず沈黙のまま時間が進んだ。

 

きっと初春は待っているんだ、私が話してくれるのを。

 

話す必要性はない、ないんだけど……

 

「これは私の知り合いの話なんだけどさ……」

 

頭ではわかっていても口が勝手に動いた。その勢いのまま言葉をつなげる。

 

「その人は学園都市に憧れていたの。自分にはどんな能力があるんだろうって。でもレベル0だった。その人は周りに嫉妬して自分を卑下するばかりの日々。無価値でお荷物なんだって。でもね、ある日突然能力が手に入ったの。その能力には前に所持した人がいてね、前の人の記憶が植え付けられたの。」

 

忘れもしない、人生を変えたあの出来事を。少しトーンを落として続ける。

 

「記憶を見るとね、前の人は悪人だったの」

 

それを聞いた初春はハッとして少し座りなおした。

 

「悪人は殺し屋で人をたくさん殺しててね、ひどい記憶だったの。しかも悪人の生まれた環境がひどくてさ、周りの人に悪人の能力を認められないどころか忌み嫌って人間扱いしなかったの。親にも嫌われてさ、『猿』とか言われてて。最後にその悪人は死んじゃったんだけど。」

 

初春のほうを見ると下のほうをじっとみている。

 

「そんな記憶を植え付けられてその人は能力に自信が持てなくなったんだよ。これは嫌われた能力なんだって。元々自己肯定感が低いのも相まってさ。自分がどうしたいのかわからないんだって。」

 

「……」

 

「私はその人になんて声をかけるべきなのかな……初春がもし同じ立場になったら……どうする?」

 

後半の質問は意地悪だ。自分で考えなきゃいけないのに。でも初春の答えが気になった。

 

初春は少し黙った後に口を開いた。

 

「私だったら自分の信じる正義、いいことに使いますね。」

 

「え?」

 

「きっとその悪人さんは生まれた時から悪人ってわけじゃないですよね。きっと悪人になっちゃったのは生まれた環境が悪いせいで、誰にも愛されなかったから自分を好きになりたくて誰かに認められたかったんじゃないですか。表では嫌われているから。」

 

「あ……」

 

ある記憶がよぎる。

 

 

『タダ働きなんてゴメンだね』 いつもの俺ならそう言ってトンズラこいた だが目の前には覚醒した無下限呪術の使い手 恐らく現代最強と成った術師

 

否定したくなった 捩じ伏せてみたくなった 俺を否定した禪院家 呪術界 その頂点を 自分を肯定するために いつもの自分を曲げちまった

 

自尊心(それ)は捨てたろ」

 

自分も他人も尊ぶことない そういう生き方を選んだんだろうが

 

 

 

そっか、甚爾さんは誰かに認められたかったんだ……

 

初春は立ち上がって数歩歩いた後腕をバッと大きく広げて振り向く。

 

「だから伝えるんです!あなたの能力はすごいんだ、みんなに認められて愛されるものなんだって!そうやって悪人さんの無念を晴らしてやるんです!そうしたらきっと悪人さんも笑顔になると思います!」

 

笑顔で高らかに宣言する初春は後ろの太陽よりも輝いて見えた。……やっぱり初春はすごいな

 

「ていうかこれ、佐天さんの話ですよね?」

 

ジト目になって私のほうを見る。まあばれちゃうよね初春だもん。

 

あれ、なんか怒ってる?

 

「実はそうなんだけど……あの……なんか怒ってます?」

 

「そうです!わたしは怒っているんですよ、佐天さん!」

 

表情が変わってむすーとした表情になった。

 

「佐天さん自分で言いましたよね。能力が認めてもらえなかったって。じゃあなんで能力のすごさを認めない人たちの言葉を聞いちゃうんですか!その能力がすごいって自分で気づいているはずなのに!」

 

「え……」

 

「佐天さんは元から自分を卑下しすぎなんです!記憶を持つ前から無価値だと決めつけて自分で自分を呪っているんです!だから認めない人たちの言葉のほうが正しいと感じてしまうんですよ!」

 

ああそうだ……能力のない自分をずっと呪っていたんだ。きっと甚爾さんも一緒で自分を好きになれなかった。

 

涙がにじんで初春のことが見えずらい。

 

「いきなり自分を信じろなんて言いません。だから……」

 

初春は私に近づいて両手でパンっと私の顔を挟む。不思議と痛くない。

 

「私を……私たちを信じてください!固法先輩、白井さん、御坂さん、私……あなたの周りの人は佐天さんを無価値だなんて思っていません!呪いの言葉のほうを聞いてつぶれている佐天さんなんて見たくないです。ミーハーで、笑顔で、私のスカートをめくる、元気な佐天さんが見たいんです!」

 

「うい……はる……」

 

「私のことちゃんと見えてますか?」

 

今まで自分を呪って気づけなかった。外のことを見ていなかった。あったんだ。自分の居場所が、見てくれてる人が。

 

涙でぼやけていてもぽたぽたと涙を流す初春の姿がはっきりと見えた。

 

「うん…見えてる……見えてるよ……初春……」

 

「佐天さんは無能力者でもいつも私を引っ張ってくれるじゃないですか!無能力者でも、悪人の能力を持っていても、原石でも、私の親友なんです!道を踏み外しそうな時は…私がひっぱたいてあげます!」

 

「うん」

 

「自分を無価値だとか欠陥品なんてそんな悲しいこと言わないで……」

 

「佐天さんは佐天さんですよ」

 

そこで私の目からずっと我慢していた涙があふれだした。

 

「うう……ああああああああああああああういはるぅぅぅぅぅぅ!!」

 

私は立ち上がって初春を抱きしめた。初春は思っていたよりあったかくて心地いい。このあたたかさを逃さないようにぎゅっと強く抱きしめる。すると初春は私に抱き返してくれた。

 

「もうっそんなに強く抱きしめても私は逃げませんよ……ずっとそばにいますから」

 

「ごめん、ごめんねぇういはるぅ。私何も見えてなかったよ」

 

「いいんですよ佐天さん、こういうときはごめんよりありがとうですよ」

 

「うう…ありがとう」

 

今ならわかる気がする私が恐れていたもの。それは自分が消えて甚爾さんみたいになるのが怖かったんだ。自分を呪っている根っこのところが一緒だから。自分が嫌いなのに消えるのが怖いなんて勝手かもしれないけど。

 

でも今ならもう大丈夫。私には私のことを見てくれる人がいる。居場所がある。それだけで十分。

 

甚爾さん、見てますか?私頑張りますよ。

 

「消えましたか?雑念は」

 

「うん、雲一つないよ……ありがとう初春(ベストフレンド)

 

私の体は天与呪縛でこれから先ずっと呪われたままだろう。けど心にかかった呪いは初春によって解呪された。

 

もう日の光は鬱陶しいと感じなかった。

 




固法先輩出してないから急にでてきたみたいな感じになってしまった……申し訳ない。

ここは重要なのでかなり筆が乗りました。長くなったけどその分楽しかったです。

佐天さんは幻想御手回避になります。もし帰りに初春に会わずもう一回非能力者が虐げられている場面に出くわしていたら学園都市を去るかスキルアウトになって逆夏油(スキルアウトを率いて能力者狩り)のようなことをしていました。

次回は未定です。
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